Snapがマインドコントロールヘッドバンドのメーカー「NextMind」を買収

Snapは米国時間3月23日朝、NextMindを買収したことを確認した(買収額非公開)。パリに本拠を置く同スタートアップは、脳の信号を利用してPCのインターフェイス上で画像を動かす、自らの名前を冠したコントローラーで知られている。CESで399ドル(約4万8000円)の開発キットを発表した後、2020年第2四半期に出荷を開始している。TechCrunchは同年末に試す機会があり、このハードウェアを「稀にみる『すごい』もの」と評した。

「NextMindは、Snap Lab内で長期的な拡張現実の研究活動を推進するためにSnapに参加しました。Spectaclesは進化し、反復する研究開発プロジェクトであり、最新世代は、拡張現実の技術的限界を探る開発者を支援するように設計されています」と同社はブログで述べている。

このニュースは、同社がソーシャルメディア企業のハードウェア研究部門Snap Labに統合されたことを示している。また、NextMindの開発キットのスタンドアローン版も終了する。この技術の一部は「Camera」や「Spectacles」といったAR機能を含む、将来のSnapの製品に搭載されることはほぼ確実だ。

神経科学者とハードウェアエンジニアのチームによって2017年に設立されたNextMindの技術は、脳波計を内蔵したウェアラブルヘッドバンドを利用して、大脳皮質の神経活動を検出して読み取れる。装着者がディスプレイ上の画像を見ているときに、ヘッドセットがそれを動かしたいかどうかを判断することが可能だ。このようなマインドコントロールのインターフェースは、拡張現実にとって非常に理に適ったものだ。特にヘッドマウントディスプレイは、長い間コントローラーの問題に悩まされてきたが、このような技術はその解決への道筋をつけることができるだろう。

「この技術は、神経活動をモニターして、コンピューティングインターフェイスと対話するときのユーザーの意図を理解し、それに集中するだけで仮想ボタンを押すことができます。この技術は、思考を『読む』ことも、脳に向けて信号を送ることもありません」とSnapは付け加えた。

NextMindは、2018年半ばに460万ドル(約5億6000万円)のシードラウンドを調達している。引き続きチームはパリで活動し、その従業員のうち20人(主に技術系)がSnap Labsに加わり、より長期的な研究開発に注力する予定となっている。2021年5月、SnapはARヘッドセットに使用される部品を製造するWaveOpticsを買収した。同月、同社は第4世代のSpectaclesを披露し「拡張現実を実現する初のメガネ 」と称している。

画像クレジット:NextMind

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

心でコンピュータを操作するNextMindの開発キットは技術に対する新鮮な驚きを与えてくれる

NextMind(ネクストマインド)は、2019年のCESでその開発キット用ハードウェアを初披露していたが、ようやくその発売が開始され、同スタートアップはお試し用として私に製品版を送ってくれた。NextMindのコントローラーは、脳の視覚野の電気信号を読み取るためのセンサーで、それを入力信号に変換して接続されたコンピュータに送るというもの。眼球運動や電気的インパルスを検出する革新的な入力ソリューションを開発する企業は多いが、NextMindは私が試してきた中でも、即座に、素晴らしく機能する初めての製品だった。コンピュータ利用におけるパラダイムが比較的成熟してきた現在となっては、滅多に出会える機会がなくなった本当の驚きを与えてくれた。

基本情報

NextMindの開発キットは、まさに、NextMindのハードウェアとAPIを利用するソフトウェアの開発に必要な一切合切を開発者に提供することを意図した製品だ。これには簡単なストラップ、Oculus VRヘッドセット、さらには野球帽などのさまざまなヘッドギアに装着できるNextMindのセンサー、パソコンで機能させるために必要なソフトウェアとSDKが含まれている。

画像クレジット:NextMind

NextMindが私に送ってくれたパッケージにはセンサー、布製のヘアバンド、エンジンがインストールされたSurface PC、同社がインストールしたデモの中の1つで使用するUSBゲームパッドが入っていた。

センサー自体は軽量で、1回の充電で連続8時間まで使用できる。充電はUSB-Cで行う。ソフトウェアはManとPCの両方に対応している。さらにOculus、HTC、Vive、Microsoft(マイクロソフト)のHoloLensにも対応している。

デザインと機能

NextMindのセンサーは、驚くほど小さくて軽い。本体は手のひらに収まる程度のサイズで、2つのアームがわずかにはみ出る感じだ。ほぼあらゆるものに取り付けられる汎用クリップマウントが付いていて、頭にしっかりと固定できる。装着の際には、2極が一対になった9組の電極センサーを肌に密着させる必要がある。NextMindの説明には、ヘッドバンドを頭にしっかりと装着してから、「櫛でとく」要領でセンサーを少し上下に動かせと書かれている(上下に動かすことで、挟まっている髪の毛をどかすわけだ)。

装着感は悪くないが、電極が肌に押しつけられている感じが伝わってくる。特に長時間着けていると、その感覚は強くなる。普通の野球帽にもクリップで取り付けられる仕様は、取り付けも装着も簡単にできてとても便利だ。Oculus RiftとOculus Questのヘッドストラップにも、簡単にすばやく取り付けられる。

画像クレジット:NextMind

セットアップは楽勝だった。私はNextMindの開発者たちからご教授をいただいたが、とてもわかりやすい説明書も付属している。最初に、パソコンに表示されるアニメーションを見ながら行う調整プロセスがある。NextMindに最適化されたソフトウェアを使うときに目的の操作が行えるよう、後頭葉から発せられる特定の信号を検知するためのものだ。

ここで、NextMindが「心を読む」方法を解説しておこう。基本的にセンサーは、脳が「アクティブな視覚焦点」と同社が呼ぶ状態に入ったことを検知する。これは、ソフトウェアのグラフィカルユーザーインターフェイスの操作対象の要素にオーバーレイされる共通の信号を使って行われる。そうすることで、特定のアイテムに視点を合わせると、それが「押す」や「掴んで動かす」といったアクションや、その他数々の対応可能な出力結果に変換できるようになる。

NextMindのシステムは、優美なまでにシンプルなコンセプトで成り立っており、力強い豊かな使用感はそこからくるのだろう。私は調整プロセスを済ませると即座にデモに飛びついたが、脳と連動して実際に幅広い操作を行えることがわかった。まずはメディアの再生とデスクトップのウィンドウの操作。次に音楽の作曲、テンキーパッドでPINコードの入力、いろいろなゲームもプレイした。あるゲームプラットフォームでは、USBゲームパッドの手の操作を心の操作が補うという、他の方法では決して味わえないまったく新しいレベルの楽しくて複雑なプレイが楽しめた。

これは開発キットなので、付属しているソフトウェアはNextMindで実際に何ができるかを体験するだけの簡単なサンプルに過ぎないのだが、これで開発者たちは、独自のソフトウェアを作れるようになった。驚いたのは、一部のサンプルはそれ自体が息を呑むほど素晴らしい内容であったことだ。それらは、あらゆる可能性を最高のかたちで表していて、大変に刺激的な体験を味合わせてくれる。NextMindのハードウェアがさらに小型化されて、コンピュータのあらゆる使用状況に溶け込んだ未来を想像してみてほしい。これまでの入力方法が、実にじれったいものになるはずだ。

まとめ

NextMindの開発キットは、まさに開発キットそのもの。同社のユニークで安全で便利なかたちのブレインマシンインターフェイスの利点を活かして独自のソフトウェアを生み出そうとする開発者のための製品だ。キットの価格は399ドル(約4万1000円)。すでに出荷が始まっている。NextMindは、ゆくゆくは消費者向け製品を出したいという計画があり、OEMと協力して実装を行いたいと考えているが、現在この段階ですでに、私たちの日常的なコンピュータ利用における大きなパラダイムシフトの一面を、非常に刺激的なかたちで覗かせてくれている。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:NextMind

画像クレジット:NextMind

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(翻訳:金井哲夫)