韓国のPUBG開発元がインドでの配信停止から1週間後に中国Tencent Gamesとの配信提携を解消

人気のバトルロイヤルゲーム「PUBG」の開発元である韓国のPUBG Corporationは米国時間8月8日、インド政府が先週にゲームなど117本の中国製アプリを禁止したことを受けて、中国ゲーム大手のTencent Games(テンセント・ゲームス)がインドでの配信パートナーではなくなると発表した。8月8日の発表の前まで、Tencent GamesはインドでPUBG Mobileを配信していた。

PUBG Corporationは、「今後は、PUBG Corporationがインド国内での配信についてすべての責任を負うことになります。近い将来、インドで独自のPUBGを提供する方法を模索し、ファンのためにローカライズされた健全なゲームプレイ環境を維持することで実現することを約束します」声明で述べている。そして、インドでこれまでに最も人気のあるモバイルゲームであるPUBGは「最近の禁止を取り巻く状況を積極的に監視している」とし、「インドの熱狂的なプレイヤーとの係わり合いに尽力している」と続けた。

インド政府は先週、プライバシーとセキュリティの懸念を理由に118本の中国製アプリを禁止した。この動きは、6月に同様の理由でTikTokを含む60本近くの中国製アプリを禁止したことに続く動きだ。インドはいずれの禁止命令にも中国の名前を具体的に挙げていないが、その動きは2つの核保有国間の地政学的緊張に起因している。

最も人気のあるモバイルインサイト企業によると、PUBGはインドで月間アクティブユーザー数が約4000万人で、収益ではNetflixやTinderを抜いてトップアプリとなっていた。韓国に本社を置くPUBG Corporationは「PUBG Corporationは、プレイヤーデータのプライバシーとセキュリティは同社にとって最優先事項であるため、インド政府が採った措置を完全に理解し、尊重しています。インド政府と手を取り合って、インドの法律や規制を完全に遵守しながら、ゲーマーが再び戦場に足を踏み入れることができるような解決策を見つけたいと考えています」とコメントしている。

グーグルとアップルはインド政府の命令を受けて、PUBGのゲームやほかのアプリをそれぞれのアプリストアから削除した。しかし、TikTokなどの禁止されたアプリとは異なり、PUBGはインド国内の既存ユーザーはまだプレイできると複数のユーザーが語っている。しかし、この状況ははすぐに変わるかもしれない。

テンセントは、PUBG MOBILE Nordic Map: LivikとPUBG MOBILE LiteのPUBGシリーズの開発にも関わっているようで、インドでの問題をさらに複雑にしている。

インドのゲーム市場の長年のアナリストであり、ニュースメディアの「Mako Reactor」を運営しているRishi Alwani(リシ・アルワニ)氏は「アプリの配信についてPUBG Corporationに移管されるかもしれないが、ゲームの開発はテンセントが担当するのだろうか?もしそうだとしたら、インドのデータプライバシー法に違反することになるのではないだろうか?テンセントがまだゲームを開発している場合、この動きは応急処置ように見える」とツイートしている。

画像クレジット:Ajay Kumar / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

台湾が中国製ストリーミングサービスのiQiyiとWeTVを禁止へ

iQiyi(アイチーイー)とTencent(テンセント)のWeTVという中国の2大人気ストリーミングサービスが、来月台湾で禁止される可能性がある。地元の提携企業を通じて運営できる規制の抜け穴を政府が塞ぐ準備をしている。

台湾経済部が今週公開した声明で、台湾の企業または個人が中国本土拠点のOTT(ストリーミングサービス)のためにサービスを提供することは禁止されることが明らかになった。規制案は9月3日に発効する前に、市民の意見を聞く期間が2週間設けられる。

人口約2400万人の台湾は独立自治を保っているが、中国政府は自国の領土であると主張している。本規制案は、台湾がインドや米国などの国々と同じく、中国テック企業に対して強硬な姿勢をとっていくことを意味している。

iQiyiとTencentのWeTVは、台湾で「違法」な提携を通じて事業を行っていると経済部が声明文で語っている。両社は香港の子会社を通じて台湾企業と契約を交わしている。

4月に国家通訊伝播委員会(NCC)は、Act Governing Relations between People of the Taiwan Area and the Mainland Area(台湾地域と大陸部の人民の関係を統治する法令)の下、中国のOTT会社は台湾で運営することを許されていないと宣言した。当時内閣報道官は、当該の中国企業と台湾のパートナーは「違法すれすれ」で事業を行っている(Forcus Taiwan記事)と発言した。

しかしのNCCのWong Po-Tsung(ウォン・ポー-ツン)報道官は、規制案は中国のストリーミング業者だけを標的にしたものではないと語った。Taipei Times(タイペイ・タイムズ)によると、同報道官は「本法案が必要なのは、すべてのオーディオビジュアル・サービス・プラットフォームを規制する一律の基準を適用するようケーブルテレビ業者が委員会に依頼したためであり、対象にはOTTサービスもフルマれる。これはiQiyiやその他のOTT事業者に起因する問題への対応だけを求めるものではない」とのこと。

ウォン報道官は、台湾は民主主義国家であり政府は人々がiQiyiやその他の中国製ストリーミングサービスを見るのを妨げることはない。例えば、国際支払いサービスを使って中国内でサブスクリプション料金を支払うことでサービスを利用することは可能であることを付け加えた。

ひとたび法案が通れば、違反した台湾企業は5万~500万新台湾ドル(約18万~1800万円)の罰金を課させる。

TechCrunchはiQiyiとTencentにコメントを求めている。

画像クレジット:VCG / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米政府のTikTok、WeChatの排除命令の全文とその背景

トランプ米大統領が署名した、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)と、米国人・米国企業との取引を禁じる大統領行政命令(米政府リリース)、WeChatに関するほぼ同様の命令(米政府リリース)が公開されている。ホワイトハウスではTencent(テンセント)が運営する中国で広く利用されているチャットサービスのWeChatとの取引も禁じたと発表している。ただし米国ではTikTokに比べてWeChatの利用は極めて少なく、在住中国人コミュニティが中心だ。

これらの大統領行政命令は45日後に発効するが、最大の問題は文言が不明確なことだ。伝えられるところによれば、どのような行為が禁止の対象になるのかについてウィルバー・ロス商務長官でさえ現在は答えられず、今後45日間で検討するという。さらにこれらの命令が米国におけるTikTok、WeChatおよびTencent製アプリなどの中国系アプリの運営そのものに与える影響も明瞭でない。

命令の文言自体はTikTok、WeChatの運営そのものを直接に禁じていないが、政府はこれらを他の方法で間接的に禁じることができる。トランプ大統領は8月6日に「中国の信頼できないサービスを追放する」と発表した。 このクリーン・ネットワーク・プログラムはWeChatとTikTokの禁止が含まれるものと考えねばならない。

Tencentの広報担当者は「影響を判断するために大統領行政命令の検討しているところだ」と述べた。

TikTokは「この命令の根拠は誤っており、デュープロセス(適正な手続き)を欠いている。これは世界のビジネスに対し米国が法治主義であることを疑わせる危険がある」と反論している。

大統領行政命令は冒頭で国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)と国家非常事態法(National Emergencies Act)を根拠として挙げている。ここで「合衆国におけるアプリの運営」を安全保障上の脅威と認定しているのは極めて異例で、おそらくは適法性を巡って訴訟が予想される。ByteDanceはインド政府による禁止を解除させる努力(未訳記事)を続けている。インドは7月にTikTokと59のアプリを一括して禁止した。米国同様、インドもこれらアプリによる個人データの収集が国家安全保障に脅威となるとしている。

一方、Microsoft(マイクロソフト)はTikTok事業をByteDanceから買い取る交渉を進めていると発表した。交渉の期限は9月15日だ。大統領命令が発効するのはマイクロソフトが発表した交渉期限の直後だ。ByteDanceはTikTokの所有権をマイクロソフトに引き渡すことに原則的に同意している(ロイター記事)と報じられた。ただし少数株主の地位を求めているようだ。.

ByteDanceに関する大統領命令は「中華人民共和国の企業によって製造、所有されるモバイルアプリ利用の拡大は、米国の安全保障、外交政策および経済をは脅かしている。現時点では、これらのモバイルアプリ、特にTikTokによる脅威に対する措置が必要と認められる」と述べている。

これに続いて行政命令は、発表から45日以降、 米国の司法権がおよぶいかなる人物あるいは組織もByteDanceおよび一切の子会社と取引が禁じられるとしている。ただし「関連ある放棄によって特に許される場合」は除かれる。命令はTikTokの位置情報、閲覧履歴、検索履歴を含むよるユーザーデータへのアクセスについて「中国共産党による米国人の個人データおよび知的所有権を持つデータへのアクセスを許し、連邦政府職員並びに契約諸機関の位置情報ならびに個人に対する詳細情報を取得させ、 こうしたデータが脅迫、産業スパイ行為のために利用される危険がある」と認定している。

トランプ大統領は先月末、行政命令によって Tiktok の利用を禁止するつもりだと述べた。大統領とマイケル・ポンペオ国務長官を含む政府高官はこの数週間、TikTok が米国の安全保障に対する脅威であることで次第に強い表現を使っていた。TikTokは北京に本拠を置く企業、ByteDanceが開発、所有しており、Tiktok の中国版であるアプリ(Douyin)も運営している。これに対しByteDanceはikTokの運営をできるかぎり中国から遠ざけようと努力し、そのデータも中国国外に保存されているとした。

Tencentのアプリも全面禁止の可能性

トランプ大統領のWeChatを禁止命令は、 TikTok 禁止に比べればやや意外だったが、完全に驚きというわけではなかった。ポンペオ国務長官が今週大統領は近くTikTokに対して措置を取るとした発表の中で、対象としてWeChatその他の中国製アプリも挙げているからだ。 ByteDanceの場合と同様大統領はWeChatのデータ収集は中国共産党にユーザーデータへのアクセスを許す危険性があり米国の安全保障にとって脅威であると述べている。またこの命令の中でWeChat は中国政府にとって政治的に問題のあるコンテンツを検閲しているとも述べている。

命令の禁止範囲はWeChatだけにとどまらず、米企業に対してがTencent Holdingおよびその子会社との取引を全面的に禁ずるものとなっている。

商務長官が今後45日の間にどのようにして禁止される取引の具体的な範囲を決定できるのも大きな疑問の一つだ。Tencentが米国のテクノロジー企業、エンタテインメント企業に対して行っている投資を考えると、行政命令は結果としてこれらのビジネスに多大な不利益を与えるおそれがある。Tencentの米国における投資は広汎さや巨額さでソフトバンクの投資と比較されることがある。過半数株主は株式への配当以外にも取締役への特別ボーナスなど様々な方法で利益の還元を得ることが可能だ。

例えばTencentは長年、Spotify、Snap、Reddit, Tesla, Warner Music、Universal Music、reddit、Teslaなどの大企業を始め、Fortniteの開発元のEpic GamesやLeague of LegendsのRiot Gamesのような高収益のゲーム企業にも投資を続けてきた。

この点に関してLos Angeles Timesは、ホワイトハウス高官が「行政命令による禁止はWeChat に関連する取引のみに限定され、他のTencent Holdingsとの取引には関連しない」と説明(Los Angeles Times記事)したと報じている(。しかし命令の文言からこのように読み取れるかどうは不明だ。

TechCrunchの取材に対してマイクロソフトはコメントを避けた。TechCrunchはホワイトハウスにも取材を続けている。

画像:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook