Adobeが自動化されたワークフローとカスタマーエクスペリエンスをWorkfrontで統合

5カ月前にAdobe(アドビ)は、マーケティング部門のワークフロー構築を支援するWorkfront(ワークフロント)を、15億ドル(約1625億6000万円)で買収した。米国時間4月27日、Adobeはその利用計画を公式に発表した。企業のマーケティング幹部たちが、顧客にカスタマイズされたエクスペリエンスを構築しながら、その戦略をクリエイティブプロセスに適用するためのバランスを取ろうとする際に、Adobe Experience Manager(AEM、アドビ・エクスペリエンス・マネージャー)にぴったりと組み合わされる何らかのマーケティングワークフローツールが必要とされていた。Workfrontはそこにうまく着地できたのだ。

かつてWorkfrontでCEOを務め、現在はAdobe WorkfrontのVPでGMを務めるAlex Shootman(アレックス・シュートマン)氏は、このツールをAEMの内部でマーケティング部門の記録を行うシステムとして捉えていると語った。この説明そのものにもマーケティングの要素が少なからず含まれているが、Workfrontのワークフローから得られるデータが、クリエイティブプロセスの記録として機能するのだ。

Adobeの一部として、彼らはExperience ManagerとCreative Cloud(クリエイティブ・クラウド)にフックを組み込んで、マーケティングのクリエイティブ作業が組織的かつ監査可能なプロセスを経て、何が起こったかを正確に知ることができるデータ証跡を残す、マーケティング記録システムを提供する。

シュートマン氏は、この記録システムがあることで、マーケティングチームはいろいろなことができるようになるという。まず第一に、戦略と実行を結びつけることができるようになる。彼は「あるCMOのことをを考えてみましょう、彼または彼女のチームは、年間または四半期の意思決定のための重要な優先事項を策定しています。私たちのツールを使うことで、そうした重要な優先事項を、マーケティング組織内の活動を推進するために役立てることができるのです」という。

そしてそのためには、変化に応じてチームが反復的に作業を再計画できるように、マーケティング部門の人材、プロセス、データを単一のシステムに統合する必要があるという。そこで活躍するのがWorkfrontだ。

CRM Essentials(CRMエッセンシャル)のリードアナリストであるBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、このアプローチは非常に理に適っているという。彼は「お客様のニーズの変化に合わせて、つながりを保ち続けるために、十分にパーソナライズされたコンテンツを大規模に作成していくのは、チームスポーツです。そこにはクリエイティブプロセス全体を通した緊密なコラボレーションが必要になります。AEM内部のWorkfrontは、そうしたクリエイティブプロセスに高度なプロジェクト管理機能をもたらすのです」という。

パンデミックに見舞われたことで、売上の大半がオンラインに移行したため、その対応が必須となった。そのため、速度と敏捷性の必要性が高まったのだ。このワークフローツールをAdobe Experience Managerに内蔵したことで、マーケティングチームが顧客向けのカスタマイズエクスペリエンスを構築できるようになるだけでなく、そうしたカスタマイズの裏側にあるワークフローを自動化することも可能になる。

実際の利用時には、まずマーケティングチームがキャンペーンを作成し、それでWorkfrontの中に展開するといった利用方法が考えられる。そうした展開を行うことで、クリエイティブ部門にタスクが割り当てられ、そのタスクがCreative Cloud上に表示される。割り当てタスクが完了すると、それは自動的にWorkfrontに戻され、そこでレビューが行われて、最終的に承認されてデジタルアセットマネジメント(DAM)ツール上に公開され、マーケティングチーム全体で使用できるようになる。

買収そのものが、どれほど成功したのかを知ることは難しい。しかし、Workfrontは特にAdobeのエコシステムに適しているように思える。それはクリエイティブプロセス全体に不足していた、ワークフローの自動化コンポーネントを提供し、マーケティング幹部が戦略の成果を正確に確認できるようにするツールなのだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AdobeマーケティングWorkfrontワークフロー

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

Adobeがマーケティングワークフロー管理のWorkfrontを約1600億円で買収

Adobe(アドビ)は、マーケティングワークフロー管理のスタートアップであるWorkfront(ワークフロント)を15億ドル(約1600億円)で買収すると発表した。Bloombergが米国時間11月9日、この売却取引を最初に報じた

Crunchbaseによると、Workfrontは2001年設立の会社で、これまで3億7500万ドル(約390億円)を調達した未公開企業だ。そのうち2億8000万ドル(約290億円)が2019年に流通市場で調達した資金であったことは注目に値する。

Adobeはこの買収により、同社のExperience Cloudに適合するオンラインマーケティングツールをさらに増やすことができる。企業がマーケティング部門内(または社内の他の部署)で複雑なプロジェクトを管理するのに役立つツールだ。

Adobe Experience Cloudのプラットフォームおよび製品担当副社長であるSuresh Vittal(スレシュ・ビタル)氏は、両社が協働し、お互いの営業チームが顔を合わせることがよくあるという。パンデミックが広がり、分散環境でうまく機能するこの種のツールを会社で使うことが合理的になり、過去数カ月をかけてついに取引が成立した。

「ニューノーマルの下でマーケティングチームやエクスペリエンスデリバリーチームは分散し、リモートで働くようになりました。仕事の管理方法、コンテンツを作り出すスピード、コンプライアンスとガバナンス機能の提供方法などに関する新しいアイデアが出現し始め、あらゆる資産が組織から流出することを防いでいます。そして、クリエイティブやマーケティングチームを経由して外に出て行き、ブランドを正しい方法で表現することになります」とビタル氏は説明する。

WorkfrontのCEOであるAlex Shootman(アレックス・シュートマン)氏は、この取引により大企業への接触が可能になり、計画実行が加速するとみている。「当社はマーケティングの表面にわずかに触れている程度であり、そうした素晴らしい有機的な関係を持つだけで飛躍的に成長できると考えています」と同氏は述べた。

Constellation Research(コンステレーションリサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、この買収でアドビの顧客はマーケティングプロジェクト管理の複雑さを容易に管理できるようになると述べた。「仕事のスケジューリングと管理は企業にとって桁違いに複雑になりました。AdobeはWorkfrontの買収で対応し、仕事の新しい未来のためのより良いツールを提供します」とミューラー氏はTechCrunchに語った。

Workfrontの960人の従業員はAdobeの一部に、そしてAdobe Experience Cloudの一部になる。シュートマン氏は引き続き経営に関与し、Adobeのデジタルエクスペリエンスビジネスのエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるAnil Chakravarthy(アニル・チャクラバルシー)氏に報告する。

Workfrontの顧客には、Home Depot(ホームデポ)、T-Mobile(Tモバイル)、Deloitte(デロイト)が含まれ、Workfrontの合計3000社の顧客のうち1000社は両社共通の顧客だ。実際Workfrontには、マーケターが頻繁にアクセスする同社の製品ファミリーのうち、Adobe Creative CloudとExperience Cloudに接続するAPIがある。

Adobeはマーケティングオートメーションの分野でSalesforce(セールスフォース)、SAP、Oracle(オラクル)と争う中、近年小切手帳を使って追加の火力を獲得している。この買収はAdobeが2018年にMagento(マジェント)に16億ドル(約1700億円、未訳記事)、Marketo(マルケト)に47億5000万ドル(約5000億円、未訳記事)を費やした後に続くものだ。2年足らずで3社に約80億ドル(約8400億円)を使った。Adobe Experience Cloudの一部を社内で開発しているにもかかわらずだ。これらはすべて、Adobeがこの価値の高い分野で前進することにどれほど真剣であるかを示している。

カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)は、オンラインでも対面でも常に取引の重要な要素だ。顧客に対し、ブランドとの取引における満足感をもたらすからだ。顧客に繰り返し戻ってきてもらうだけでなく、顧客が会社の大使として行動することを促す。これには信じられないほどの価値がある。

逆に、質の悪い体験は正反対の影響を及ぼす可能性がある。見込み客、ひいては企業にとって良い顧客でさえブランドを見捨て、オンラインで友人に直接悪口をいうようになる。Adobeは新しいマーケティングツールを導入することで、顧客のオンラインでの体験を向上させる可能性を高めることができると期待している。これにより、会社で働くマーケティング担当者は、ワークフローを通じてマーケティングプロジェクトをアイデアから実行に移すことができる。

この取引はAdobeの会計年度の第1四半期に完了する予定だ。例によって、当局による精査の対象となる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AdobeWorkfront買収

画像クレジット:Lisa Werner / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi