【レビュー】Facebook Portal Go、ライバル不在の「携帯性」がポイントのスマートディスプレイ

発売当初から、Portal(ポータル)製品ラインはある大きな疑問に悩まされてきた。Facebook(フェイスブック)がなぜこれを開発したのかということではなく、Amazon(アマゾン)とGoogle(グーグル)がスマートアシスタントとディスプレイの分野でそれぞれ先行しているのに、いったいなぜ人々がこれに興味を示すのだろうかということだ。

Facebookサービスとの連携に加えて、Portalの当初の目玉機能は物体検知を利用して対象を追いかける「スマートパンニング」だった。これはクレバーな追加機能だったが、ライバル製品ではなくFacebook製を買うことを正当化するほどのものではなかった。以来、Google、AmazonそしてApple(アップル)さえもそれぞれ独自技術を導入し、Facebookの優位性を失われてしまった。

画像クレジット:Brian Heater

Portal Goは、「なぜ」という大きな疑問に答えるものではないが、ポータビリティー(携帯性)を追加することで、スマートディスプレイの枠にとらわれないFacebookの能力を改めて示している。

正直なところ、ライバルたちはまだこの「ポータビリティー」を採用していないことに驚いている。Amazonは、ポータブルBluetoothスピーカーのTapを少し前に販売終了している。

それ以外だと、同じようなポータブル製品はAlexa内蔵のFireタブレットやサードパーティー製くらいしかない。あるいは、AmazonとGoogleのソリューションは、実質的に、使うつもりの部屋全部にデバイスを置くようにユーザーを説得しているともいえる。個人的には、各メーカーがなぜバッテリー搭載モデルの便利さを認めないのかいつも不思議に思っている。

Goは携帯性を前提につくられており、本体の背面にはハンドルもある。重量はまあまあ軽い(たとえばAppleが発表したばかりのMacBook Proの4.7ポンド[約2.13kg]と比べて)3ポンド(1.36 kg)だ。ところで、持ち歩けるスマートディスプレイが必要な人はいるのか?もちろん、スマートディスプレイを必要とする人以上にはいないが、その柔軟さについてはいうべきことがたくさんある。主として動画のために作られたデバイスにとって、どこへでも持っていけることは間違いなくうれしい。

画像クレジット:Brian Heater

鍵は内蔵バッテリーとワイヤレス充電だ。後者は独自の3ピン充電パッドでケーブルにはUSB-Cプラグがついている。この充電器はプロダクトデザイン上最大の不満かもしれない。Facebookが移動するためにプラグを抜かなくてもよいようにと充電ケーブルをやめた理由は理解できる。しかし、有線でもっと早く充電するオプションがあればもっとよかった。少なくとも、マグネットでピタッと収まる充電パッドは欲しかった。ピンを合わせて充電するのは面倒だ。

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ディスプレイは10インチのタッチスクリーンで解像度は1280×800。特にいうべき点はないが、リモート会議やFacebookでショートビデオを見るなど、これを使うほとんど人のにとって十分なのは間違いない。これに12メガピクセルの前面カメラと4基のマイクアレイがつく。ここでもこれは、世界が一変しすべてのミーティングがバーチャルなった時に資産を投入したリモート会議システムと比べるものではないが、家族と話したり、ちょっとした仕事の打ち合わせには十分だ。布地で覆われたデバイスの背面には後ろ向きのスピーカーとウーファーが2基内蔵されている。音質はすばらしくはない。少しこもる。日々の音楽鑑賞に使いたいものではないが、いざというときには役立つ。

筐体はほとんどのスマートディスプレイよりも大きめだ。角は丸く、ベゼルは太く、覆っている布地は昨今の家庭用製品では標準的だ。実際このデザインは、EchoかNestスタイルのホームデバイスと子どもをターゲットにした何かとの中間という感じだ。

画像クレジット:Brian Heater

堅牢とはいえないが、ちょっと叩いたりぶつけたりしたくらいなら、おそらくNest Homeより強いだろう。以上の機能に子ども向けの物語コンテンツが加わったPortal Goは、小さな子どものいる環境に向いているだろう。前面カメラには物理的シャッターがついている。もしあなたが私と同じなら、90%の時間、事実上ビデオ通話中以外いつでも、閉じることになるだろう。これでマイクはオフにならないが、ボリュームボタン横の丸いボタンで切ることができる。ボタンを押すとカメラとマイクがオフになり、赤いランプがそのことを示す。

Facebookで通話を始めるのは簡単だ。「hey Portal, call such and such(ヘイ、ポータル、誰々にかけて)」と言えば、名前を表示して意図した人物かどうかを確認する。これこそがこの製品の核心であり、Facebook Messenger(メッセンジャー)を通じて会話することに合わせてつくられたデバイスならではだ。フィルターをかけたり、友だちと一緒にビデオを見たり物語を読んだりすることもできる。このデバイスの強みはこのような体験の共有であり、Facebookのソフトウェアに特化して作られていることだ。

画像クレジット:Brian Heater

シェアできる物語本は祖父母が孫たちとリモートでつながった時に最適だ。Facebook Messenger組み込みのフィルターはまあまあオーケー。おかしな帽子をかぶらせたり、時々声を変えたりできるが、見かけの欠点を隠すようなものではない。良くも悪くも。遅いWi-Fiで調子が悪いことがあり、Facebook Watchのビデオでも同じことが起きた。遅延が見られることもあり、エフェクトが少々損なわれた。

Facebook以外のアプリセレクションは少ない。Spotify(スポティファイ)、Tidal(タイダル)、Dezer(ディーザー)、Pandora(パンドラ)は良い。Goはディスプレイ付きポータブルBlootoothスピーカーとしても使える。私はカメラをオフにして寝室に持ち込み、タッチスクリーンでSpotifyを操作して音楽を聴いた。リモート会議についてはZoom(ズーム)、WebEx(ウェブエックス)、Blue Jeans(ブルー・ジーンズ)などまずまずの選択肢が揃っている。何でもあるわけではないが、そこそこの仕事の会議には対応できるはずだ。

画像クレジット:Brian Heater

リモート会議の具合はいい。実際、その携帯性と組み合わせると、最も有効な使い方かもしれない。主要なスマートディスプレイは、サードパーティー製リモート会議アプリとの互換性が高いが、どこへでも持っていけて、コンセントを探さなくてよいことは、1日中デスクに縛り付けられたくない人にとってはうれしい。

これ以外、アプリのセレクションは最小限だ。ニュースとクッキングのアプリがいくつかある他、YouTubeなどの人気サードパーティ製サービスがブラウザーのショートカットから利用できる。もし、Netflix(ネットフリックス)を見たかったら、ブラウザーでサイトを訪れて見ることができる。最終的にはほとんどのことはそこに落ち着く。もしあなたが、すべてをFacebookアプリ(およびそれがもたらす厄介なことすべて)に捧げている人なら、これはおそらくあなたのデバイスだ。

携帯性に関して言えば、現時点でGoに直接のライバルはいない。この製品はPortalラインについての広い意味の「なぜ」には答えていないが、少なくとも「どこで」には対応している。

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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