国際政治というのはたいてい対応が難しいものだ。しかし対立の最中にあっても、地図や検索機能など公平なサービスを提供しようとする企業はどちらかの側につかなければならない。論争の的であるロシアによるウクライナからのクリミア併合に関しては、Apple(アップル)は少なくともロシアの肩をもつことにした。そしてGoogle(グーグル)もまたロシアの要望に沿う措置を取った。
黒海北部にある大きなクリミア半島は、クリミアを巡ってウクライナ国内が政治的に不穏な状態だった2014年にロシアの支配下に置かれた。世界のリーダーたちはこの動きについて「ロシアがウクライナの危機を利用するために故意的に扇動し、軍事力を持ってウクライナの主権を侵した」と表現した。
一連の動きについての議論はまだ続いている一方で(実際、動きそのものもある意味まだ続いている)、アップルやグーグルのような企業は地図アップデートのために、歴史の評価を待つだけの余裕はない。両社とも過去にはクリミアの都市をウクライナの一部として表記していた。しかしロシアが公に両社に苦情を入れ、クリミアをロシア以外の領土と表記することは犯罪行為ととらえられると警告した。そして、両社はロシアに譲歩した。
アップルの地図と天気のアプリはいま、ロシアから閲覧するとクリミアのロケーションをロシアの一部として表示する。ロシア当局は11月27日、「アップルは義務を果たした。アップル端末のアプリはロシアの法に則るものになった」と述べた。
もしあなたが米国から閲覧すると、アップル、グーグルともに中立的なスタンスのようなものを表示する。中立と呼ぶスタンスがあればの話だが。クリミア半島は、アップルとグーグルの地図ではロシアとしてもウクライナとしても表示されず、かなり特異な状態だ。
具体的には、Googleマップではクリミアとヘルソン州(ウクライナの州)の境の北部にははっきりとした線がある。これは他の州の間に引かれている線よりもずいぶん太い。境界線上のヘルソン州をクリックすると、説明とアウトラインが表示されるが、クリミア側をクリックすると何も表示されない。クリミアの都市をランダムにクリックすると、通常は国が表示されるところには何も書かれていない。
アップルとグーグルの地図では、通常はタマン湾をはさんで表示されるクリミアとロシアの境界線がない。湾をはさんだ片側はっきりとロシアの領土と表示されるが、もう片側は国の表示がない。
いつ、どのように地図に変更を加えることを決めたのか、私はグーグルとアップルにコメントを求めたので、返事があればアップデートする。両社とも、現地の法律を遵守しなければならないという事実によって決断を正当化することが考えられる。しかし、同じロケーションに2つの法律が存在している場合はどうなるのか。
アップデート:グーグルの広報は「我々は紛争地域を客観的に表示するよう務めている。Googleマップのローカル版があるところでは、名称や境界線の表示に関しては当地の法律に従う」と話した。
私の主張は、どちらかの肩をもつことではなく、アップルやグーグルのような企業がこうした状況にとても苦慮していて、そうした企業が提供する情報は完全なものでもなければ厳然たるものでもないということだ。今回のケースでは、場所によって異なる結果を表示し、国際的な懸念にもかかわらず特定の政府に譲歩し、論争を避けるためにサービスの一部を非機能的なものにした。
グローバル企業が提供するサービスで情報を調べるとき、心に留めておくべきことがある。それは、そうした企業は客観的なソースではないということだ。
画像クレジット:MLADEN ANTONOV/AFP/Getty Images / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)