PC時代のソフトウェア産業というものは、モバイル時代のアプリケーション開発に当たるだろうか。そうだとすると、アメリカはPC時代の栄光を失いつつあるようだ。モバイル関連データ分析を行っているFlurryの最新データによると、モバイルアプリケーションの開発で、アメリカが世界をリードするという状況にはないようなのだ。モバイルアプリケーション開発国別のマーケットシェアを見ると、2011年時点でアメリカの占める割合が45%であったのが、2013年には36%に落ち込んでいる。ちなみにPC時代の2008年を振り返れば、販売されたソフトウェアの68%程度がアメリカ産という状況だった。ある意味で、モバイルアプリケーション産業というのは、真の国際化を実現しているのだとも言える。
但し、別の観点でみればアメリカのアプリケーション業界も相変わらず頑張っているという見方もある。すなわちエンゲージメントないし利用者数の観点から言えば、アメリカ発のアプリケーションが好成績をおさめているのだ。アプリケーションの利用時間や利用者数、利用頻度等を考えた場合は、アメリカ産アプリケーションが依然として牽引者としての立場を維持しているのだ。但し、こうした面を考慮にいれて計算した市場占有率も2011年の75%から、2013年には70%と低落傾向であることは間違いないようだ。
さらに、国別で考えると、また別の側面が見えてくる。すなわち、アメリカ国内で考えた場合は、全アプリケーション利用時間の59%が国内で生産されたアプリケーションによるものとなっている。中国でも国内発アプリケーションの比率が64%となる。一方でイギリスやブラジルをみると、国内産アプリケーションの率はそれぞれ13%および8%となるのだ。
中国での利用時間を見ると、アメリカ産アプリケーションの占める割合はわずか16%ということになる。中国のアプリケーション市場の規模は大きく、ますます成長していく傾向にある。それを考えるとアメリカ産アプリケーションの比率はますます下がっていくことになるだろうと、FlurryのSimon Khalafは書いている。
アメリカ産アプリケーションがシェアを失いつつあるらしいことの一因は、「ローカライズ」ということだろう。これまでは英語というのは世界中で使われているのだということに甘えてきた面があると思われる。英語利用国以外は、懸命にアプリケーションの各国語対応を考えてきた。フィンランドやデンマーク、ブルガリアやスロヴェニアに開発者たちは、おかげでローカライズの技術を積み上げることができたのだ。たとえばフィンランドのRovio(Angry Birds)、ロシアのZepto Labs(Cut the Rope)、そしてオーストラリアのHalf Brick Studios(Fruit Ninja)などのアメリカ外メーカーが、世界的なマーケットを獲得しているのは注目に値する。
ところで、アプリケーションの製作は比較的安価で行える。アプリケーションストアもあるのでグローバル化したものを販売しやすいという性質がある。但し、Flurryの調査によるとプロモーションにかかる費用が高騰しつつあるのだそうだ。Fiksuもアメリカ国内の調査を行って、2011年あたりと比べると、ユーザー獲得のための費用が高騰していると報告している。今年を見ても6月には1.50ドルだったものが、7月には1.80ドルになっている。2011年12月以来の最高値となっているそうだ。
Facebookのモバイルアプリケーション広告プラットフォームも、プロモーション費用の応答の一因となっているだろう。稼いでいる会社がますますプロモーションに力を入れ、すると弱小のところも対抗上プロモーション費用を用意しなければならなくなってくる。アプリケーションストアではビッグネームによる寡占状態に拍車がかかり、新参者がトップ250に入ることがますます難しくなってきている。アプリケーションマーケットの世界でも強者がすべてを獲得する(winnter-takes-all)仕組みが生じているわけだ。そしてどうやら、今回のFlurryの報告を見るに、勝者の多くはアメリカ発ではないようだ。
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(翻訳:Maeda, H)