クリエイターのコミュニティ形成を支援するPlayground、ベータ版の展開を開始

米国時間12月2日よりベータ版の展開が始まったPlayground(プレイグラウンド)は、人々がコミュニティを発見し、発展させることを支援するとともに、クリエイターには視聴者の収益化を可能にさせることを目指すソーシャルプラットフォームだ。すでにそのウェブサイトでは、Museum of Modern Art(近代美術館)や、コメディ司会者のAlexis Gay(アレクシス・ゲイ)氏、Aboritionist Teaching Network(アボリショニスト・ティーチング・ネットワーク)、活動家のNupol Kiazolu(ヌポル・キアゾル)氏、マレーシアのバーチャルダンスクラブなど、さまざまなユーザーが名を連ねている。現在のところ、ベータ版はカルチャー分野(アート、音楽、ウェルネス、ゲームなど)の一部のクリエイターにのみ公開されており、コミュニティメンバーに関してはウェイティングリストが用意されている。

台湾系米国人の娘という移民として、文化的に多様性のあるサンタフェ地域で育った創業者のJia Ling Yang(ジアリン・ヤン)氏は、人々を結びつけることの価値を理解している。しかし、フリーランスのクリエイティブディレクターとして、Facebook(フェイスブック)、Google Play(グーグル・プレイ)、E! Entertainment(E!エンタテインメント)などのブランドと仕事をしているうちに、彼女は新しい方法でオンラインコミュニティの構築に貢献したいと思うようになった。もちろん、ソーシャルメディアでは、地域における本の交換グループから、One Direction(ワン・ダイレクション)の熱狂的ファンによるTwitter(ツイッター)まで、すでにさまざまなコミュニティが生まれている。しかし、オンライン生活では孤立してしまうこともある。

「スクロールしてお互いの生活を見るのではなく、一緒にバタバタしようよと言っているのです。一緒にフィリピン料理を作ったり、一緒にトレーニングしたりしましょう」と、ヤン氏は語る。

画像クレジット:Playground

現在のところ、Playgroundではユーザーが文化機関やクリエイターと一緒に参加できるイベントを、オンラインと対面の両方で見つけられるようになっている。最終的には、ヤン氏はPlaygroundを、クリエイターがビジネスを運営できるオールインワン&エンド・ツー・エンドのプラットフォームにしたいと考えている。つまり、クリエイターはPlaygroundを利用して、ファンのサブスクリプション管理、ニュースレターの送信、イベントや記事やポッドキャストの投稿、分析結果の閲覧、物販などが可能になるということだ。ヤン氏と9人のチームは現在、コミュニティのメンバー同士が互いにつながることを手助けするソーシャルツールを開発中だ。

「私たちは、メンバー間で議論するためのフォーラムを作りたいと考えています」と、ヤン氏はTechCrunchに語った。「単にコンテンツを押し付けるだけのオーディエンスと、コミュニティとの違いは、メンバーが主催者の外で実際に交流できるかどうかということです」。

クリエイターにとって、1つのアカウントで管理できるオールインワンのプラットフォームは価値がある。Discord(ディスコード)、Patreon(パトレオン)、Eventbrite(イベントブライト)、Mailchimp(メールチンプ)など複数のアカウントを使い分けるよりも楽だからだ。しかし、ビジネスの全体像をスタートアップ企業に委ねることには、それなりのリスクもともなう。だが、Playgroundでは、クリエイターがサブスクリプション会員のリストとその連絡先を完全にコントロールできるため、ファンへのアプローチに関して、Playgroundのプラットフォームに依存することはない。

「自分のコミュニティを自分のものにできないことは、本当にフラストレーションが溜まります」と、ヤン氏はいう。「例えば、Clubhouse(クラブハウス)などでファンを獲得した後、そのプラットフォームがなくなってしまったらどうでしょう? そうなると、あなたのファンは、Instagram(インスタグラム)のDMであなたにメッセージを送ってきた人だけになってしまいます」。

クリエイターはPlaygroundのプラットフォームを無料で利用できるが、有料チケットや会員プログラムなどのマネタイズ機能を利用するには、希望するカスタマイズのレベルに応じて、月額15ドル(約1700円)または30ドル(約3400円)を支払う必要がある。

画像クレジット:Playground

ヤン氏は、Web3がPlaygroundの将来にどのように関わってくるかについても考えている。彼女の会社は設立以来、Animoca(アニモカ)、SoGal(ソーギャル)、Gaingels(ゲインジェルズ)、Anomaly(アノマリー)から230万ドル(約2億6000万円)のシード資金を調達している。出資している企業の1社であるAnimocaは、ブロックチェーンベースのプロジェクトに投資していることで知られているが、Playgroundがターゲットとしている文化系クリエイターの間では、暗号資産に対する反感も目立つ。NFT(非代替性トークン)の可能性を歓迎するアーティストがいる一方で、環境コストや規制のない市場で詐欺の蔓延を心配するアーティストもいる。しかしヤン氏は、暗号資産の世界にはコミュニケーションの問題があると考えている。

「この世界では文化が語られていません」と、彼女はTechCrunchに語った。「文化的なクリエイターは、自分で自分のアートを所有し、コミュニティを収益化し、コミュニティの統治方法を自分で決めることができる、そんなコンセプトを好みます。これらはすべて、クリエイターが本当に夢中になれる原則であり、私たちはその会話を、少しだけ橋渡ししているだけだと感じています」。

ヤン氏は、ブロックチェーンを利用したPlaygroundの将来性に興味を持っているものの、今はベータ版のローンチ後、クリエイターやコミュニティメンバーを育成することに注力している。

画像クレジット:Playground

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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