ドイツ裁判所は、了解なくユーザーデータを組み合わせることを禁止する現地競争当局の先駆的プライバシー保護命令に対するFacebookの上訴を検討していたが、同裁判所はヨーロッパの最高裁判所に付託することを決定した。
現地時間3月24日のプレスリリースでデュッセルドルフ裁判所は次のように書いた。「Facebookの上訴は、欧州司法裁判所(ECJ)に付託した後にのみ裁決できるという結論に達した」。
「Facebookがドイツ市場におけるソーシャルネットワーク提供者としての独占的立場を乱用し、EU一般データ保護規則(GDPR)に反してユーザーのデータを収集、利用していたかどうかは、ECJに付託することなく結論を下すことはできません。なぜなら、欧州法の解釈についてはECJが責任を負っているからです」。
ドイツ・連邦カルテル庁(Bundeskartellamt)の「搾取的不正使用」の告訴は、Facebookが自社製品のユーザーに関わるデータを、ウェブ全般、サードパーティーサイト(同社がプラグインや追跡ピクセルを提供している)、および一連の自社製品(Facebook、Instagram、WhatsApp、Oculus)を通じて収集する能力を、同社の市場支配力と結びつけている。すなわち、このデータ収集はユーザーに選択権が与えられていないため、EUプライバシー法の下で違法であると主張している。
したがって関連する争点は、不適切な契約条項によってFacebookが個々のユーザー毎に専用データベースを作ることが可能になり、ユーザーの個人データをそこまで広く深く集められないライバル他社に対し、不公正な市場支配力を得ているかどうかにある。
カルテル庁のFacebookに対する訴えは、(通常は)別々であり(かつ矛盾すらある)競争法とプライバシー法の論理を組み合わせている点で、極めて革新的だとみられている。実際にこの命令が執行されれば、Facebookのビジネス帝国の構造分離を,さまざまなビジネスユニットの分割命令を下すことなく実現できるという興味深い可能性をもっている。
ただし、現時点(カルテル庁がFacebookのデータ慣行の捜査を開始した2016年3月から早5年)での執行には、まだ大きな疑問符がつく。
ユーザーデータ照合を禁止する2019年2月のカルテル庁による命令からほどなくして、Facebookは2019年8月の控訴によって命令を停止させることに成功した。
しかし2020年の夏、ドイツ連邦裁判所はこの「スーパープロファイリング」禁止命令の停止を解除し、テック巨人による無断データ収集に対するカルテル庁の挑戦を復活させた。
この最近の展開が意味しているのは、これまでEUのプライバシー規制当局が失敗してきたことが競争法の革新によって遂行されるのかどうかは、当分待たなくてはわからない、ということだ。Facebookに対する一般データ保護規則を巡る複数の訴訟が、アイルランドデータ保護委員会のデスクの上に未決のまま置かれている。
どちらの道筋をとるにせよ、現時点でプラットフォームの支配力を「迅速に動いて破壊する」ことが可能になるとは思えない。
陳述の中でデュッセルドルフ裁判所は、Facebookのデータ収集のレベルについて問題を提起しており、ユーザーに選択肢を与え、幅広いデータソースではなく、自分でアップロードしたデータのみをプロファイリングに使い、InstagramやOculusのデータ利用方法について問い合わせることで、Facebookは反トラストの問題を回避できることを示唆した。
しかし、同裁判所はカルテル庁のアプローチの欠陥も見つけている。Facebookの米国およびアイルランドにおける事業体が、ドイツのFacebookに対する命令が発行される前には公正な発言機会を与えられなかったことなどいくつかの手続きの不備を指摘した。
欧州司法裁判所への付託は、最終結果が得られるまで数年かかることがある。
今回のケースで欧州司法裁判所は、カルテル庁が権限を逸脱していないかの検討を依頼されている可能性が高いが、実際に付託されている内容は確認できない。プレスリリースによると、今後数週間のうちに書面で公表される見込みだ。
Facebook広報担当者は、裁判所のこの日の発表に対する声明で次のように述べた。
本日デュッセルドルフ裁判所は、カルテル庁の命令の正当性に疑問を呈し、欧州司法裁判所に付託することを決定しました。当社はカルテル庁の命令が欧州法にも違反していると確信しています」
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook )