バイデン政権の大規模インフラ法案の「悲惨な」修正提案を暗号資産コミュニティが非難

バイデン政権が発表した超党派のインフラ整備計画は、共和党と民主党の間に、まれに見る協力関係を生んだが、暗号資産(仮想通貨)の規制に関して政権が提案した修正がこの法案の障害となっている。

政権は、インフラ整備計画のうち280億ドル(約3兆800億円)を、これまで規制が緩かったデジタル通貨の税務コンプライアンスを強化することで捻出しようとしている。橋や道路の再建を目的とした法案に暗号資産が登場したのはそのためだ。

特に「デジタル資産移転を実行するサービスに責任を持ち、当該サービスを定期的に提供する者」をブローカーと認定し税務報告義務を課すとしている点が、同法案の大きな批判の的となっている。

この定義は、伝統的な金融の分野ではそのまま当てはまるかもしれない。だが、暗号資産の開発者や企業、さらにはデジタル通貨を採掘する人までもが、ユーザーの情報を集めて報告する義務が生ずる可能性がある。非中央集権的な金融システムでは設計上不可能なことだ。

そして今、この重要な歳出パッケージに加えられた新たな修正が、問題をさらに悪化させる恐れがある

意図しない結果

Square(スクエア)、Coinbase(コインベース)、Ribbit Capital(リビットキャピタル)などの関係者は、法案の内容に関する共同書簡の中で「金融監視」と、暗号資産の採掘者や開発者に対する意図せざる影響について警告した。また、電子フロンティア財団Fight for the Futureというプライバシーを重視するデジタル著作権団体もこの法案を非難した。

暗号資産業界からの反発を受け、有力上院議員2人が、新しい報告ルールを明確にするための修正提案を行った。財務委員会のRon Wyden(ロン・ワイデン)委員長(民主党、オレゴン州)は、同じく財務委員会のPat Toomey(パット・トゥーミー)委員長(共和党、ペンシルバニア州)とともに、法案に反対し、法案の文言に対する修正を提案した。

修正案では新たな報告対象が「ブロックチェーン技術やウォレットを開発する個人を含まない」と定め、この問題に関する法案の曖昧さを解消している。

「ブローカーの定義を明確にすることで、採掘者、ネットワークバリデーター、その他のサービスプロバイダーなどの非金融仲介者(その多くは米内国歳入庁に様式1099を提出するために必要な個人識別情報を持っていない)が、超党派のインフラパッケージで規定された報告義務の対象とならないことを保証します」とトゥーミー氏は述べた。

ワイオミング州選出のCynthia Lummis(シンシア・ランミス)上院議員も、トゥーミー氏とワイデン氏の修正案を支持し、Jared Polis(ジャレッド・ポリス)コロラド州知事も支持を表明した。

勝者と敗者の選択

ドラマはここで終わらない。法案の交渉は続いており、週末には法案がまとまる可能性があるなか、2人の上院議員が競合する修正案を提案したものの、暗号資産コミュニティの支持を得ていない。

Rob Portman(ロブ・ポートマン)上院議員(共和党、オハイオ州)とマーク・ワーナー上院議員(民主党、バージニア州)の修正案は、エネルギーを大量消費する「プルーフ・オブ・ワーク」システムに参加する従来の暗号資産採掘者は新たな財務報告義務が免除される一方「プルーフ・オブ・ステーク」システムを採用する採掘者にはこのルールを適用するというものだ。ポートマン氏は財務省と協力し、インフラ法案の暗号資産に関する部分を作成した。

プルーフ・オブ・ステークシステムは、複雑化する数学の問題を解決するコンピューティングハードウェアへの投資(および電気代)を必要とせず、参加者が特定のプロジェクトの金銭的持ち分を保有し、暗号資産の一部を抱え込み、新しいコインを生成するというものだ。

プルーフ・オブ・ステークは、気候変動に配慮した魅力的な代替案として浮上しており、プルーフ・オブ・ワークのマイニングに必要な重いコンピューティングと膨大なエネルギーを削減できる。そのため、今回の改正でプルーフ・オブ・ワークのマイニングが特別に免除されることになったのは不可解だ。

Cardano(カルダノ)のような人気の高いデジタル通貨の中には、すでにプルーフ・オブ・ステークで開発されたものがある。規模第2位の暗号資産であるEthereum(イーサリアム)は、システムの規模拡大と手数料削減のために、プルーフ・オブ・ワーク方式からプルーフ・オブ・ステーク方式への移行を進めている。ビットコインは、プルーフ・オブ・ワークに頼る最も注目すべきデジタル通貨だ。

ワーナー・ポートマン修正案は「妥協案」とうたわれているが、ワイデン・トゥーミー修正案と現行法案の中間に位置するものではない。多くの暗号資産擁護者が自分たちの活動の存亡をおびやかす新たな危機とみなす問題を招くだけだ。

Square(スクエア)の創業者であり、ビットコインを支持するJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏をはじめとする著名な暗号資産コミュニティのメンバーらは、ワイデン・ランミス・トゥーミー修正案を支持する一方で、第2案は見当違いで有害だと非難している。

暗号資産のシンクタンクであるCoincenter(コインセンター)のエグゼクティブディレクターは、ワーナー・ポートマン修正案を「悲惨だ」と表現した。CoinbaseのCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏もその言葉を繰り返した。「マーク・ワーナー氏は11時間が経った時点で、暗号資産の基礎技術をどれにするか、どれにしないかを決める修正案を提案しました」とアームストロング氏はツイートした。「どの種類の暗号資産が政府の規制に耐えられるかを上院が決めることになるかもしれません」。

残念ながら、暗号資産コミュニティ、そしてプルーフ・オブ・ステーク・モデルの約束された将来に対し、ホワイトハウスはワーナー・ポートマン修正案を支持しているようだが「11時間の交渉」が続けば変わる可能性もある。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産アメリカ

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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