ヒトタンパク質を使い母乳に最も近い乳児用ミルクを開発するHelainaが約22億円を調達

世界初となる乳児用ミルクを製造しているHelaina(ヘライナ)は、最初の製品の製造と商業化プロセスを開始して次の成長段階へ進むため、シリーズAで2000万ドル(約22億円)を調達したと発表した。

ニューヨーク大学で食品科学を教えている食品科学者のLaura Katz(ローラ・カッツ)氏は2019年に同社を設立した。「機能性ヒトタンパク質を食品用に製造する初の企業」とうたっている。

これを実現すべくHelainaは、母乳に含まれるものとほぼ同じタンパク質を開発するために酵母細胞をプログラムして製造のハブとなるように教える精密な発酵プロセスを活用している。

「私たちがHelainaを始めたとき、多くの産業に多くのテクノロジーが導入されていましたが、赤ちゃんへの栄養補給はあまり進展していませんでした」とカッツ氏はTechCrunchに語った。「どの人々の栄養と健康を向上させるかを考えたとき、乳幼児と親が真っ先に思い浮かびました」。

2026年には1030億ドル(約11兆7300億円)の市場になると言われている乳児用粉ミルク市場が成長する一方で、幼少期の子どもたちにどのような食事を与えるべきかについては、恥ずべき部分や偏見が残っている。Helainaは、誰もが手に入れやすい価格の食品を親に提供するだけでなく、親が自分の選択を検討するのをサポートすることを目指している。

Helainaは、最初にタンパク質を作り、現在は母乳のすべての成分を1つずつ作りたいと考えている。Helainaの製品はカロリーを供給するだけでなく、真菌、細菌、ウイルスなどの病気に対する免疫力を高めるのにも役立つ。

今回の資金調達はSpark CapitalとSiam Capitalが共同でリードし、Plum Alleyと Primary Venture Partnersも参加した。今回のラウンドにより、Helainaの資金調達総額は2460万ドル(約28億円)となり、その中には2019年と2020年に行われたプレシードとシードの合計460万ドル(約5億円)が含まれているとカッツ氏は話した。

シリーズAは計画的なラウンドだったが、カッツ氏が予想外だったと指摘したのは、投資家からの同社に対する「圧倒的な関心」だった。

「資金調達をしてわかったことは、私たちがやっていることに個人的なつながりがあるということです」とカッツ氏は付け加えた。「フードテックの分野では多くのことが起こっていますが、この技術を人々の心に近い製品に使うことができるのを目にするのはすごいことです。多くの人が私たちの取り組みに興味を持ってくれています」。

今回のシリーズAでは、商品化に向けて製造パートナーとの連携を強化する。その目的は、製造能力を高め、経営陣を充実させ、市場投入計画を最終決定することにある。

同社は、米国食品医薬品局から製品の承認を得ることを目指している。その後、臨床的に証明された多数の消費者向け製品に同社のタンパク質を使用する計画で、 これは本質的に栄養の定義を免疫にまで広げ、消費者部門に新たなカテゴリーを創出するものだ。

より栄養価が高く、母乳に最も近いミルクを作ろうとしているのは、Helainaだけではない。2021年初めには、ヨーロッパのブランドをモデルにしたミルク開発のためにBobbieがシリーズAで1500万ドル(約17億円)を調達した。ByHeartもミルクを開発中で、Biomilqは「世界で初めて母乳以外の細胞培養された母乳」を製造したとしている。

カッツ氏は、自社が行っているタンパク質の製造方法や、健康面でより優れた製品を作ることに注力している点が、競合他社との違いだと話す。

「Helainaは、ヒトのタンパク質を食品に導入した最初の会社です 」とカッツ氏は付け加えた。「これまで誰もやったことがありません。育ち盛りの子どもに食べさせるための技術を親に展開することで、消費者向けの免疫学のようなこの新しいカテゴリーを創出しているのです」。

一方、同社はSita Chantramonklasri(シタ・チャントラモンクラスリ)氏が新たに設立したファンドSiam Capitalの最初の投資先の1つだ。チャントラモンクラスリ氏によると、同ファンドは持続可能性と消費者のニーズが交差するビジネスに投資しているという。

チャントラモンクラスリ氏はフードテック分野に多くの時間を費やしており、カッツ氏とつながるずいぶん前にSpark Capitalのシードラウンドを担当したKevin Thau(ケビン・タウ)氏からHelainaのことを聞いた。

当時、チャントラモンクラスリ氏は母乳の分野を深く掘り下げ、Helainaの競合他社の斬新な技術に注目していた。同氏はカッツ氏と多くの時間を過ごし、カッツ氏の背景やHelainaがこの分野で何をしているのかを理解した。実験室で過ごし、同社の酵母工学の取り組みを見て、Helainaは科学的に優れた製品を提供していると感じた、とチャントラモンクラスリ氏は話した。

「ローラはすばらしい創業者で、年齢以上に賢く(29歳!)、Helainaのミッションを見届けたいと思っています」と付け加えた。「市場の競争はますます激しくなり、顧客のロイヤリティと同様にタイミングが勝負です。Helainaは、母親や家族の擁護者となるべき立場にあります。技術的な観点からは、何が起こるかを判断するのは時期尚早です。Biomilqのような他の細胞培養技術にも革新が見られますが、Helainaは進歩の面でこの分野のリーダーとなるでしょう」と述べた。

画像クレジット:Helaina / Helaina founder Laura Katz

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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