モバイルゲームと認知行動療法を組み合わせたアプリで睡眠、メンタルヘルス問題に取り組むRevery

シェイクスピアは「マクベス」の中で、睡眠を「この世の饗宴における最高の滋養」と表現した。だが、シェイクスピアの主人公と同じように、多くの大人がよく眠れていない。Revery(レベリー)は、不眠症のための認知行動療法(CBT)とモバイルゲームのコンセプトを組み合わせたアプリで、その手助けをしたいと考えている。

2021年3月創業のReveryは、現在ベータ版のステルスモードで、2021年後半に米国でアプリ立ち上げを予定している。同社は米国時間8月3日、Sequoia Capital Indiaのサージプログラムがリードしたラウンドで200万ドル(約2億2000万円)を調達したとを発表した。参加者にはGGV Capital、Pascal Capital、zVentures(Razerのコーポレートベンチャー部門)の他、MyFitnessPalの共同創業者であるAlbert Lee(アルバート・リー)氏、ゲーム起業家のJuha Paananen(ジュハ・パーナネン)氏、CREDの創業者であるKunal Shah(クナール・シャー)氏、Mobile Premier Leagueの創業者であるSai Srinivas(サイ・スリニバス)氏、Carolin Krenzer(キャロリン・クレンザー)氏、Josh Lee(ジョシュ・リー)氏などのエンジェル投資家が名を連ねた。

Reveryの創業者であるTammie Siew(タミー・シュー)氏とKhoa Tran(コーア・トラン)氏は、共通の友人であるリー氏の紹介で出会った。シュー氏はSequoia Capital India、Boston Consulting Group、CREDで勤務経験があり、トラン氏はGoogle(グーグル)でプロダクトマネージャーを務めていた。

Reveryは、将来的には他のメンタルヘルスの問題にも取り組む予定だが、まずは睡眠から始める。「睡眠はメンタルヘルスと非常に強い相関関係があるからです。当社は、不眠症に対する認知行動療法など、30年間試行錯誤されてきた強固な手順を活用しています」とシュー氏はTechCrunchに話した。「これが最初の適応症ですが、目標は他の健康適応症のためにも複数のゲームを開発することです」。

調査会社Infiniumの調査によると、世界の成人の約30〜45%が不眠症を経験しており、この問題は新型コロナウイルスの流行により悪化している。慢性的な睡眠不足は、高血圧、脳卒中、うつ病、免疫力の低下などさまざまな健康問題と関連している

Reveryのチームには、ZyngaやKingでリードゲームデザイナーを務めたKriti Sawa(クリティ・サワ)氏やソフトウェアエンジニアのStephanie Wong(ステファニー・ウォン)氏などがいる。彼らの睡眠へのこだわりは個人的なものだ。

Zoomで話すReveryのチーム

「私たちのチーム全員が、このミッションに深い関わりを持っています。というのも、チーム全員が、家族や友人がメンタルヘルスの問題に直面した経験があるからです」とシュー氏は語る。「介入が遅れるとどんな結果になるかを目の当たりにしてきました。そうしたことは、もっと早く助けを求めていれば避けられたかもしれないのです」。

トラン氏は15歳のときに、高血圧症とその他複数の健康上の症状について診断を下され、投薬治療が必要になった。睡眠時無呼吸症候群が原因だとがわかったのは26歳になってからだ。手術を受け、同氏の血圧は正常になり、他の多くの症状も改善された。

「睡眠障害の治療を受けて初めて、睡眠がメンタルヘルスに与える影響に気づきました」とトラン氏はいう。「私の場合、医師が睡眠障害を見つけてくれたことは本当に幸運でしたし、治療を受けるための時間とリソースがあったことも非常に幸運でした。多くの人にとって、治療へのアクセスはかなり得難いものになっています」。

Reveryの医療顧問チームには、トラン氏の手術を担当したスタンフォード睡眠外科フェローシップのディレクターであるスタンフォード大学のStanley Liu(スタンレー・リュー)博士、スタンフォード大学教授で行動睡眠医学の専門家であるFiona Barwick(フィオナ・バーウィック)博士、そして臨床心理学者でビデオゲームを使ったセラピーの研究を行っているRyan Kelly(ライアン・ケリー)博士がいる。

睡眠アプリというと「Calm」や「Headspace」などの瞑想をテーマにしたものや、癒し系の音などが思い浮かぶ。Reveryのチームは、立ち上げ前のアプリの詳細について明らかにしていないが、携帯電話のカジュアルゲームを参考にしていると話す。カジュアルゲームは、短時間のプレイを長期間にわたって繰り返し楽しんでもらえるように設計されている。目標は、ゲーミフィケーションを利用して、CBTをインタラクティブで楽しいものにし、ユーザーの日常生活の一部にすることだ。

「ZyngaやKingが採用しているのと同じようなゲーム性を持っているので、クリティの経験は非常に参考になります」とシュー氏はいう。カジュアルゲームは、ちょっとした行動に報酬を与えることで成り立っている。Reveryアプリでは、より良い睡眠に資する習慣を積極的に強化することを意味している。例えば、携帯電話を置いたときに報酬を与える。

「多くの人は、睡眠を解決するのは寝るときだけだと誤解しているようです。睡眠がその日の行動に影響を受けていることを理解していません」シュー氏は語る。「そのため、効果的かつ持続的に睡眠を改善するためには、眠ろうとする時以外の思考や行動も変えていく必要があります」。

GGV Capitalのマネージング・ディレクターであるJenny Lee(ジェニー・リー)氏は声明で「私たちは、成長するメンタル・ウェルネス市場に期待しています。Reveryのユニークなモバイルゲームベースのアプローチには、大きなインパクトを与えるチャンスがあると信じています。このような使命感を持ったチームを支援できることをうれしく思います」と述べた。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Revery資金調達メンタルヘルス睡眠アプリ

画像クレジット:JGI/Jamie Grill / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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