初心者でもタッチスクリーンをスワイプして飛行機を操縦できるようにするSkyryseが約228億円調達

創業5年目のスタートアップであるSkyryseは、2億ドル(約228億円)のシリーズB資金を調達し、飛行自動化技術スタックであるFlightOSの開発を進めている。FlightOSは、経験豊富なパイロットが新しいタイプの航空機を操作するのに役立つだけでなく、まったくの初心者でもすぐに飛行のコツを学ぶことができると同社は述べている。


ここで最も重要なのは、FlightOSはあらゆる航空機に後付けすることができ、同社によれば、タッチスクリーンとジョイスティックを操作できる人なら誰でもフライトコントロールができるようになる可能性があるということだ。現在、そのタッチスクリーンにはiPadが使用されているが、SkyryseはTechCrunchに対し、完成品では「航空規格に適合したタッチスクリーン」に変更されると述べている。

スクリーンとジョイスティックに加えて、FlightOSスタックにはアクチュエーターとフライトコントロールコンピューターが含まれており、航空機の既存の機械システムを置き換えることになる。このように1対1で置き換えられるということは、システム全体が「コストニュートラル」であることを意味し、OEMメーカーは既存の航空機と同じコストでFlightOSを搭載した機体を製造することができるという。

Skyryseは設立当初、都市部でのエアモビリティサービスの立ち上げを念頭に、完全自動化システムを追求していた。しかし、同社はオペレーターとしての活動を縮小し、代わりにFlightOSスタックの開発を本格的に進めている。

FlightOSは完全な自動化ではなく、やはりジョイスティックを操作する人間が誰かいなければならない。しかし、それに近いものがある。現在、Mark Groden(マーク・グローデン)CEOは、短期的な目標は認定パイロットのスキルを向上させることだが、長期的にはもっと野心的な計画を立てていると述べている。

グローデン氏はTechCrunchの取材に対し、こう語った。「当社の短期的な目標は、航空業界の安全性を向上させ、既存のパイロットに家族と一緒にさまざまな天候下で飛行できるという安心感を与え、彼らに新しいタイプの航空機を開放することです。我々の長期的な目標は、2億2千万人の免許を持つ(自動車の)ドライバーが、あらゆる航空機を安全かつ効果的に操作できるようにすることです」。

しかし、このシステムでは、航空管制官とのコミュニケーションや、どのような状況であれば安全に飛行できないのかという理解など、認定を受けたパイロットが学ぶようなことは考慮されていない。しかし、グローデン氏は、自動車の運転免許を取得しても注意深い運転ができないのと同じように、現在の認証プロセスだけではパイロットの安全性を確保することはできないと語った。

SkyryseのCEOマーク・グローデン氏(画像クレジット:Skyryse)

「現実には、FAA(連邦航空局)のパイロット免許取得のための最低ラインは、安全で効果的であるためには十分ではありません。当社の目標は、それを実現することです」と同氏はいう。「一般的に、免許を取得するには平均50時間の運転経験が必要と言われています。これに対し、FAAは自家用機パイロットになるために40時間しか必要としません」。

この40時間という要件は、すべての種類の航空機の運航に適用されるわけではないことに注意が必要だ。例えば、民間航空会社の飛行機を操縦するためには、パイロットは合計1500時間の飛行時間が必要だ。しかし、Skyryseのシステムを使えば、経験の浅いパイロットでも、長時間の追加訓練をすることなく、新しい種類の航空機に挑戦できる可能性がある。

Skyryseは現在、Robinsons Helicoptersを含む固定翼機および回転翼機のメーカー5社と提携している。FlightOSがeVTOLやヘリコプターに搭載されるには、まずFAAの認証を受ける必要がある。既存の航空機に組み込むことで、例えばeVTOLの開発者が行わなければならないような、まったく新しい機体の認証を受ける必要がなくなるため、プロセスが短縮される可能性がある。

この技術は世界的なパイロット不足の解消にも役立つだろうと、同社は述べている。その状況は、10年以内にエアタクシーが実用化されれば、さらに悪化する可能性がある。

今回の資金調達により、同社の累計調達額は2億5000万ドル(約284億円)に達した。今回の資金調達は、Fidelity Management & Research CompanyとMonashee Investment Managementが主導し、ArrowMark Partners、Republic Capital、Raptor Group、Infinite Capital、Embedded Ventures、Fortistar、K3 Ventures、Rosecliff、SV Pacific Ventures、Laurence Tosi(ローレンス・トシ)氏、Dmitry Balyasn(ドミトリー・バルヤスニー)氏が参加した。既存投資家のVenrock、Eclipse Ventures、Fontinalis Partnersも参加した。

画像クレジット:Skyryse

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

投稿者:

TechCrunch Japan

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