強制的にメディアプレビューを表示するTwitterのやり方には大反対(但し理屈にはあっている)

いよいよ時が近づきつつある。Twitterは上場に焦点をあてて活動を行っている。そしてもちろんマネタイズについても真剣に取り組んでいる。たとえば、最近投入された新機能も、まず広告主のことを念頭において実現されたものだ。それに加えて、いわゆるメインストリームユーザー(さほどテック系に詳しくない一般の人)の気持も掴みたいと考えている様子。

今回の記事でまず注目しておきたいのは、ビジュアルコンテンツをタイムラインに表示するようになったことだ。ウェブ版、Android版、そしてiOS版のいずれにおいても、ストリーム内で写真および動画プレビューが見られるようになった。

(ハロウィーンの時期と重なったことは、全くの偶然というわけでもなかろう。新機能を強くアピールするのに、ハロウィーンコスチュームの投稿による盛り上がりはうってつけの機会だ。またフロントカメラとリアカメラの写真を合成して投稿できるFrontbackなどでも、ハロウィーン関連投稿は多く見られた)

そもそもTwitterとは、140文字の中につめ込まれた、密度の濃い情報伝達行うというところにオリジナリティを持つものであった。しかしビジュアルメディアとの連携を深めるに連れて、そのオリジナリティも変容しつつもあるようだ。

非常に多くの写真共有アプリケーションが世に登場していることからもわかるように、写真というのは非常に魅力的な素材で、利用者の目をひくものだ。別の言葉で言えば、文字コンテンツを押しのけて自己主張をする面もある。こうした素材をタイムラインに投入することで、情報消費のやり方は大きく変わっていくことになる。

写真があると、どうしても視線はそちらに引かれる。広告主はとしては、ぜひとも使いたいコンテンツだろう。興味のないプロダクトであっても、派手な写真にはどうしても目がいってしまう。写真素材にはそういう性質があるのだ。

しかし文字情報のやり取りを主とするところにビジュアル要素を持ち込むと、どうしても文字情報の伝達能力を落ちてしまうこととなる。

単純に物理的な要素もある。ビジュアルメディアを埋め込んだツイートは、文字だけのツイートよりも大きな場所を占めることになる(もちろん改行があれば話は別だが)。よってタイムラインの見た目は投稿された写真やVineのビデオが大きな面積を占めることとなっていく。

さらに、ビジュアルを多用した広告投稿が数多く見られるようになるのだろう。ビジュアルを活用することで、文字情報中心のやり取りの中で「目立つ」広告を配信することができるわけだ。

こうした流れはつまり、コミュニケーションの密度を希釈化してしまうということもできるだろう。タイムライン上でビジュアルコンテンツが広いエリアを消費することで、情報量が減じてしまうことになるのだ(今でもノイズだらけになってしまうと感じる人もいるかもしれないが、人気のテレビ番組やスポーツなどのリアルタイムイベントが、ますますTwitterを耐え難いものとしてしまう危険性もあると思う)。

もちろん、流される写真やビデオは邪魔にしかならないと言っているわけではない。しかし見るか見ないかの判断が利用者の手から奪われることにはなってしまったわけだ(これまではテキストを読んで、面白そうだと思ったらリンクをクリックしてメディアファイルを表示するという流れだった)。

たとえばTwitterのウェブにも、ビジュアル情報が流れてくるのを止める方法はない。強制的に視線を持っていかれるという意味で、Google+やFacebookでのコンテンツ消費スタイルに近づいたということが言えるかもしれない。

Twitterによるモバイルアプリケーションではビジュアルメディアの表示をオフにすることもできる(おそらく速度とデータ量を気にする人が多いからだろう)。しかしウェブ版には、これをオフにする機能はつけていないとTwitterが言っている。

オプトアウト機能を実装しない理由があるのかという質問に対しては、今のところまだ返信はない。

すなわち、もしTwitterの魅力が迅速な情報伝達にあると考えている(ビジュアル情報などは余計なものだと考えている)場合、たとえばTweetbot(Mac App Storeにて2000円で販売されている)などのサードパーティー製クライアントを使う必要があるわけだ。

(Twitterは提供APIの機能を制限することにより、サードパーティーの動きをコントロールしてきた実績がある。ビジュアル系をオプトアウトする仕組みも、そのうちに制限されてしまう可能性はあるだろう)

個人的には、強制的にメディアプレビューを表示する今のやり方は、とても「クール」とは言えないものだと思う。サービスのクオリティが下がったようにも感じてしまう。但し、もちろん逆の見方もあるのだろう。ビジュアル情報というのは、情報をわかりやすく伝えることもできる。また、メインストリームユーザーを取り込むのにも役立つだろう。全ての情報がテキストの中に埋め込まれている状態が、誰にでもわかりやすいものだとは言えないのだ。つまり、今回のTwitterの判断にも合理的意味があるわけだ。

文字情報のみで構成されるタイムラインは、使い慣れた人にとっては便利なものだろう。しかし、いったいどういうものなのかとTwitterを使いはじめる人にとっては、とっつきにくい面があったことも事実だ。Twitterの狙いとしては、より広いそうにアピールして、そしてメインストリームユーザーを獲得していくことが大事なのだ。巷間言われる成長の課題に対応しようとしているとも言える。

つまりTwitterはテック系以外の人にも、より多く使ってもらうようにしていきたいと考えているわけだ。そうした方向性を示すのは、ビジュアルコンテンツのプレビューを行うようになったことのみに現れているわけではない。

たとえば8月には、@リプライによる会話の流れを示す会話ビューにおける表示順の変更を行っている。但し、物理的な表示幅が広がってしまったことと、通常のタイムラインと別の考え方で接する必要が出てしまったことで、既存の形式に馴れた利用者からは、むしろ改悪であるとの声も聞かれた。

しかし新しくTwitterの世界に入ってきた人にとっては、会話の流れがわかりやすくなり、どういうサービスなのかを理解する助けになったのではないかと思われる。

Twitterがこうした「一般化」の方向性を目指す中、ちょうど母親のTwitterアカウント開設を手伝う機会があった。設定するうちに、誰もフォローしていない状態からTwitterを役立つものにしていくのは、なかなか大変であることを思い知らされた。

自分のタイムラインに表示する人を探すのもなかなか苦労する。自分が興味を持っていることを呟いている人を探すのも簡単なことではないのだ。Facebookは知り合いとのネットワークを構築するというのが第一の目的だ。しかしTwitterについては、母の周辺では使っている人もほとんどいないという状況なのだ。こうした状況もあって、Twitterは新加入者に対して有名アカウントのフォローを推奨しているのだ。多くをフォローする中で、Twitterの愉しみを理解して欲しいと考えているわけだ。

TwitterのIPOが間近に迫り、投資家たちの注目も改めて集まることとなっている。そうした中でTwitterは、サービスを一般の人の中で広げていく方法を多く提示していく必要があるのだ。そうした中で本質部分にもいろいろと手を加える必要があり、それは時にベテラン利用者の気持ちを逆撫ですることになったりもしている。

また、多くのサービスが写真共有や、Instagramなどのようなビジュアル要素を活かしたソーシャルネットワークの開発に注力していて、また注目も集めている。Twitterとしてもそうした流れにのるために、テキストだけの世界から抜け出す必要性を感じていたりもするのだろう。

タイムラインに写真などを表示して見栄えをよくしてみるというのは、Twitterの今後の方向性の沿った改良だということだ。ただ、ずっとTwitterを使っていて、文字情報による伝達密度の高さを気に入っていた人たちに対し、オプトアウトの手段を与えていないことには不満を感じる。

対象とするメインストリームユーザーがオプトアウトしてしまうような間違いを防ぎたいという気持ちもあるのだろう。ならば設定画面を非常に深いところに置いてもらっても結構だ。これまで使い慣れていて、そして気に入っているTwitterを奪い取らないで欲しいと思うのだ。

視線をあちこちに彷徨わせて、面白そうなものをうろうろと眺めていたいということなら、もうとっくにGoogle+などのサービスに移っていたと思うのだが…。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。