従業員の死や過酷な労働時間への批判をよそに中国のeコマースPinduoduoの株価・ダウンロード数に揺るぎなし

急成長している中国のeコマースプラットフォームのPinduoduo(拼多多、ピンドゥオドゥオ)は、1人の従業員の死が会社の過酷な労働時間に対する批判に火をつけた後、そのPRの嵐を乗り切っている。

話題になっている21歳の従業員は2020年末の深夜、会社からの帰宅途中に倒れた。死因は明らかにされていないが、ネットユーザーは彼女が過労死したのではないかと推測している。

ハッシュタグ「#PinduoduoEmployeeSuddenDeath」の付いた投稿は、中国のSNS微博(ウェイボー)で3億の投稿数に達した。これとは別に、中国時間1月9日には別のPinduoduoの従業員が27階のアパートから飛び降り自殺した。現地の労働当局は、上海に拠点を置くPinduoduoの労働条件を精査していると報じられている

中国時間1月10日には、元Pinduoduoの従業員が、動画で同社のストレスの多い労働文化に抗議の声を上げ、Alibaba(アリババ)最大のライバルに対する世間の非難に油を注いだ。彼は、Pinduoduo本社の従業員は月に最低300時間(週に約75時間)の勤務を要求されるのに対し、新しく設立された食料品デリバリー部門の従業員は最低380時間の労働時間を要求されていると主張した。帰宅途中に倒れた従業員は、新疆ウイグル自治区西部にあるPinduoduoの食料品事業に従事していた。

事情に詳しい筋がTechCrunchに語ったところによると、Pinduoduoの特定のプロジェクトで働く従業員は月に300時間以上働く可能性があるものの、強制ではないという。会社全体では、スタッフは午前11時から午後8時まで勤務することが義務付けられているとのこと。

Pinduoduoからのコメントは得られなかった。

中国での長時間労働はPinduoduoに限ったことではない。一連の事件は、週6日午前9時から午後9時まで働く従業員を指す用語である「996」をめぐる議論を再燃させている(この言葉は中国の熾烈なインターネット業界で見られる、他の形態の過酷な労働体制を指すこともある)。

大衆の反発やPinduoduoに対するボイコットを求める声にもかかわらず、同社の市場での地位は揺るがないようだ。データ分析会社のJiguang(ジグアン、极光)によると、同社のアプリのダウンロード数は2週間前の最初の従業員の事件以来、安定しており、インストール数がわずかに増加している日もあるという。2021年1月8日現在、Pinduoduoのインストール数は約6億5000万件に達している。

ニューヨークで取引されている同社の株式は、米国時間2020年12月28日の144ドル(約1万5000円)から2021年1月5日には187ドル(約19000円)まで上昇し、1月11日には174ドル(約18000円)までわずかに下落した。TechCrunchがコンタクトを取ったPinduoduoのVC投資家数名は、この記事へのコメントを差し控えた。

これらの数字は多くを物語っているかもしれない。中国の富裕層が住む都市部でより多くのユーザーを引き付ける努力をしているにもかかわらず、相当な数のPinduoduoユーザーは中国の内陸部や農村部の町に住んでいる。大都市を拠点とするテック大手の「996」文化は彼らにとっては遠い存在かもしれないが、「バカ安い」商品で有名なeコマースアプリ「Pinduoduo」のお買い得品は、目に見えて触れられるものなのだ。

関連記事:中国の長時間労働にスタートアップが反撃

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pinduoduoeコマース中国

画像クレジット:Jack Ma via Weibo

原文へ

(翻訳:Nakazato)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。