新型コロナを追い風に米国のeコマース売上高は2022年までに109兆円超えか

Adobeのeコマース部門が米国時間3月15日に発表したレポートによると、新型コロナウイルスのパンデミックは米国のオンラインショッピングを1830億ドル(約19兆9980億円)押し上げた。この数字はパンデミックが米国で始まった2020年3月から2021年2月までの間のオンラインショッピングの増加額だ。

この期間、米国の消費者はオンラインで計8440億ドル(約92兆1500億円)を使った。一方、2020年の消費額は8130億ドル(約88兆7630億円)で、前年比42%増だった。1830億ドルという増加額は、2020年11月と12月にオンラインで使われた1882億ドル(約20兆5480億円)という2020年のホリデーショッピングシーズンの規模に近いとAdobeは指摘する。同社はこうした成長が今後も続き、2022年までに1兆ドル(約109兆1800億円)に達すると予想する。

パンデミックは多くの産業にとってアクセルとなって数年前倒しさせた。これはパンデミックがなければ成し得なかった。

eコマースもこのトレンドの恩恵を受けた。消費者は外出禁止命令に直面し、必要不可欠ではない小売店舗は休業を余儀なくされ、実在店舗での買い物の多くはオンラインコマースに取って代わられたからだ。パンデミックだけで「20%の押し上げに相当するオンライン支出の稀な段階変化」を生み出したとAdobeは話し、たとえパンデミックが数カ月内に終焉を迎えてもこの影響は続くと指摘した。

たとえば同社の分析では、2021年1月と2月に米国の消費者はすでに計1210億ドル(約13兆2130億円)を使っていて、これは前年同期比34%増だ。

またこの期間、オンラインショッピング向けの信用販売は前年比215%増で、注文数は18%増えた。これはパンデミックによる変化がもたらした売上増のもう1つの要因だ。

Adobeは、現在の成長率が続けば2021年の売上高は8500億〜9300億ドル(約92兆8250億〜101兆5615億円)に達すると予測する。そして2022年には米国のeコマースにとって初の1兆ドル台となるとみている。

eコマース売上高の増加意外にも、パンデミックは人々がどのように買い物し、何を購入するかという点で長期的変化につながったかもしれない。

実在店舗とカーブサイドでのピックアップサービスの浸透は2021年2月時点で前年同月に比べて67%アップした、とAdobeはいう。消費者はこの買い物のハイブリッドモデルにかなり受容的なようだ。例えばAdobeの直近の調査では、米国の消費者の30%が通常の配達よりもピックアップを好んでいることが明らかになった。

定期的なオンラインショッピングへのシフトは後に、典型的な「セールホリデー」に影響が出るかもしれない。過去においては、買い物行動は年の後半に活発になる傾向があった。2020年のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)の買い物の増加は同じ週の他の日より20%少なく、売上高は3200万ドル(約34億9380万円)減ったとAdobeは指摘した。レイバーデーとプレジデンツデー(大統領の日)でも同様の傾向が見られた。そして注目すべきことに、2020年のサンクスギビングからサイバーマンデーにかけての5日間でも売上高は9%減、額にして6億ドル(約655億円)減った。

しかしながら、小売業者は新たなオンライン買い物客の波に十分に対応していないことを示す要素もあった。2020年7月のピーク時には「在庫切れ」のメッセージが一般的で、これはパンデミック前に比べて3倍の多さだった。2021年1月には在庫切れのメッセージはパンデミック前の水準の4倍に増えた。これは特にグローサリー、ペット用品、医薬品で顕著だったとAdobeは話した。

オンライングローサリーも消費者行動の変化の恩恵を受け、停滞する兆しはない。2021年2月にオンライングローサリーはパンデミック前の2020年1月に比べて230%成長した。

消費者調査と違い、Adobeのデータは1兆回を超す米国小売サイトへの訪問や1億超のSKU(在庫管理の最小単位)をカバーしているAdobe Analyticsで直接見られる傾向を元にしていて、米国のeコマース産業や消費者支出をより全体的にそしてリアルタイムにとらえている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:eコマースアメリカ

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。