経験豊富なポッドキャスターに愛用機材やワークフローを聞く

ポッドキャストのいいところは誰でもすぐに始められることだ。ポッドキャストを作るのは見るのと同じくらい簡単だ。こういうメディアは他にないだろう。しかも複数の人間がまったく同じポッドキャストをすることはありえない。NPRの完備したスタジオからUSBスティクとSkypeという手軽なセットアップまでやり方は無数にある。2020年3月TechCrunchに「家に閉じこもる今、ポッドキャストを始めるためのヒント」という記事を書き、これまで使ってきた各種のハード、ソフトについて紹介した。

最近、私のポッドキャストに作家、ジャーナリスト、ポッドキャスターのSarah Enni(サラ・エンニ)氏がリモートインタビューで登場し、ポッドキャストを始めた経緯やセットアップについて詳しく語ってくれた。

エンニ氏も(私同様)、新型コロアウイルス(COVID-19)の流行で「直接に会って話す」というアプローチを修正せざるを得なかったという。エンニ氏のFirst Draftは著名な作家、アーティストにインタビューするポッドキャストだ。最近、 アメリカで本が出版されるまでのステップを詳しく紹介するTrack Changesというミニシリーズをスピンオフさせている。

以下はエンニ氏のインタビューをまとめたものだ。

2014年に私(サラ・エンニ)はワシントンD.C.で司法関係を扱う記者をしながら著作家を目指していた。NPRのスター司法記者であるNina Totenberg(ニーナ・トテンバーグ)のような存在になりたいと願っていたわけだ。これがきっかけで私は「First Draft」(第1稿)というポッドキャストを始めた。

司法記者として大勢の上院議員や弁護士に取材してきたが、そのとき使っていたのは小さいICレコーダーだったので、ポッドキャストとなればもっとまともな音質でしかもポータブルなマイクと録音装置が必要になった。

まずZoom H2n ハンディーレコーダーを選んだ。これはステレオでもサラウンドでも収録できる小型マイクで、ポッドキャストを始めて最初の2年はこのマイクを三脚に載せて著作家のインタビューに使った。Zoomは手頃な価格だが優れた音質で持ち運びにも適しており、コンパクサイズで相手と顔を合わせてインタビューするときに最適だった。First Draftは作家、著作家に対するロングインタビューがテーマで、「直かに会って話す」のは打ち解けた空気を作り、相手の本音を引き出すために必須と考えた。

収録データは外部ハードディスクにバックアップし、GarageBandで編集した。ヘッドホンはSony MDR-7506 を使い、LibSynでインターネットにアップした。

3年ほど前にポッドキャストをリニューアルしようと決心した。Hayley Hershman(ヘイリー・ハーシュマン)氏にプロデューサーをお願いした。ハーシュマン氏はオンデマンド契約のプロデューサーでセットアップにも詳しく、新しいシステムを紹介してくれた。Zoom H2nをZoom H6にアップグレードし、カーディオイド型コンデンサーマイクのShure BETA 87Aを併用することにした。

携帯についてはTimbuk2のドップキットバッグを購入し、 ポータブルスタジオとして使うことにした(下のGIF画像参照)。これらをGoRuck GR1に詰めて運んでいる。ちなみにGoRuckとはとても相性がいい。他のバックパックではてきめんに肩、腰を傷めてしまう。なおインタビューのときには必ず質問事項を事前にまとめて用意して行く。手書きのほうがゲストをリラックスさせるのに良いようだ。

インタビューはZoom H6nで収録し、オーディオファイルをAirTableにアップロードする。AirTableは私のチームが制作プロセスの管理に使っているスプレッドシートとデータベースを統合したツールだ。ポッドキャストを始めてからの5年間で発見した中で最高のツールだと思う。AirTableは私のポッドキャストのワークフローを全面的に変えた。インタビューと付随するボイスオーバーのオーディファイルと編集指示のテキストをまとめてAirTableにアップしてしまう。

プロデューサーはその通知を受けるオーディオブック制作ツールのHindenburgで編集する。各回のエピソードが完成するとプロデューサーはLibSynにドラフトとしてアップする。私はエピソードをチェックした上でLibSynとSquareSpaceを使って私のウェブサイトで公開するという手順だ。その後でさらに文字起こしツールのTemiにアップロードしてテキスト化する。

パンデミック以前の245本のポッドキャストはすべて相手に直接に会ってインタビューしていた。しかし新型コロナウイルスの感染が問題となり始めたため、パンデミックに進展する前からZoomやSkypeを使い始めた。インタビューを依頼し、日程を決めるときにUSBマイクやスマートフォンのボイスメモアプリを使ってリモートで会話を録音にしてもらうよう依頼した。するとプロデューサーはこうしたファイルをつなぎ合わせ、ブラッシュアップしてゲストと私があたかも対面して会話しているような雰囲気を作ってくれるわけだ。

現在、私はTrack Changesという米国の書籍出版の内幕を紹介するミニシリーズを製作している。機材や仕事のワークフローは上で紹介したとおりだ。新型コロナウイルスのために直接インタビューすることができなくってしまったことを別にすれば、プロデューサーとのコミュニケーションにはAirTableを使っており、ハードウェアもそれ以前と同じだ。しかし新シリーズの編集作業のためにGoogleドキュメントでのファイル共有や電話打ち合わせの回数は増えているかもしれない。

5年間インタビューのポッドキャスティングを続けてきたわけだが、新シリーズでは1つのストーリーに沿ったノンフィクションの制作に挑戦している。困難は多々あるが、こうした新しい試みに没頭できることをたいへん幸運だと考えている。

以上がサラ・エンニ氏へのインタビューとなる。また、著名なポッドキャスターにワークフローや使っているハード、ソフトについてインタビューしてきたので参考にしていただきたい。

RiYL remote podcasting edition
Family Ghosts’ Sam Dingman
I’m Listening’s Anita Flores
Broken Record’s Justin Richmond
Criminal/This Is Love’s Lauren Spohrer
Jeffrey Cranor of Welcome to Night Vale
Jesse Thorn of Bullseye
Ben Lindbergh of Effectively Wild
My own podcast, RiYL

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。