AI(人工知能)を活用してマーケティングの意思決定を支援する台湾のスタートアップ企業Appierは、シリーズCにおいて名だたるアジアの投資家勢から3300万ドルを調達したことを本日(米国時間8/30)発表した。投資を行ったのは、ソフトバンクグループ、LINE、Naver、EDBI(シンガポール経済開発庁の法人投資部門)、そして香港に本拠を置く金融サービス企業AMTDグループ。
これにより、今までAppierが調達した資金の総額は8200万ドルになった。前回のラウンドを率いた主な投資家は、Sequoia CapitalやPavilion Capitalなど。Appierの共同創業者兼CEOのChih-Han Yuは、シリーズCで調達した資金を、シンガポールを含む台湾以外の国のエンジニアリング、および研究開発チームの成長に投じると述べている。
Appierは他の地域への展開を検討する前に、アジアにおける影響力を高めていく意向だ。
「我々はアジアのインターネット企業に焦点を置いており、今回のラウンドの出資者の皆さまに、アジア全体に展開するための多大なパートナーシップを頂いたと考える」。Yuはそう述べた。
ソフトバンクグループとLINE株式会社はいずれも日本に本社を置き、Naverは韓国最大のインターネット企業の1つだ。日本と韓国の両国は、北アジアにおけるAppierの最大の市場。(930億ドルのSoftBank Vison Fundは現在、前代未聞の投資規模として注目を浴びているが、Appierに対する出資はソフトバンクグループが行った)。EDBIは、もう1つの重要な市場である東南アジアを代表する企業であり、AMTDは香港への架け橋だ。
2012年にAppierが設立された当時、同社はクロススクリーン・マーケティングに焦点を当てており、それは他の製品を展開する下地として役に立ったとYuは語る。Appierは現在2つのメイン製品を持つ。1つはCrossX Programmatic Platformと呼ばれる製品。企業がデジタルマーケティングのキャンペーンにAIを活用できるよう制作されたものだ。2つ目はAxion。企業が顧客の行動を理解し、予測するのを支援するデータインテリジェンスプラットフォームだ。クロススクリーンマーケティングの基盤があるため、Appierはその予測の基礎となる強力なユーザーデータのグラフを持っているとYuは言う。
「マーケティングは企業と関わるうえで最初の出発点となり、そしてまた多くの素晴らしいパートナーと出会うことができた。ここ何年にもわたり我々は、多数の問題解決や、ユーザーに関するより深い洞察と分析、ユーザーの行動予測に対するより良い理解などを行うため、多くの企業がAIを活用したいと思う強いニーズを見てきた」とYuは述べる。
例えばある化粧品会社は、Appierのソフトウェアを使用して、小売店の売上やアプリなどといった様々な部門や情報源から来るデータを同期する。CrossXは顧客のエンゲージメント率をどのように高めるかを考え出すのを支援し、Axionはどういった顧客がリピーターになるのか、いつ製品を再び購入する可能性が高いのかなどといった、顧客層に関するさらに詳細な洞察を提供する。
Appierが現在ビジネス共にしている企業は3つのカテゴリーに分類できる。1つは消費者ブランド、2つ目は既に多くのユーザーデータを持っており、予測の精度を高めたいeコマース企業、3つ目は020サービスや、ゲーム内の行動におけるユーザーのエンゲージメントのパターンの理解を深めたいモバイルコマースやゲーム開発会社だ。
ソフトバンクグループ株式会社の執行役員兼事業副統括の田中錬は、事前に準備された声明の中で以下のように述べた。
「ビッグデータやIoTなどの革新的なテクノロジーと組み合わせることにより、AIは産業革命以上のインパクトを世界に与えようとしている。AIは既に我々の生活の多くの場面で役立っており、企業においても大きな役割を果たしていくものと考えている。Appierの法人向けAIというアプローチはユニークであり、ソフトバンクはAppierのパートナーとして、新しい画期的なAIソリューションの構築を楽しみにしている」。