Appleが新たに無料、割引で提供できる「サブスクリプションオファーコード」を導入

Apple(アップル)はサブスクリプションの仕組みに変更を加える。別に政府から反トラスト法(独占禁止法)調査を受けたりEpic Games(エピック・ゲームス)との訴訟を抱えているからといって、同社の取り分を減らすわけではない。アップルは開発者が新しい「オファーコード」の機能を使ってサブスクリプションを提供できるようになると発表した。開発者はユーザーに1回限りのコードをデジタルまたはオフラインイベントで印刷して配布し、無料または割引価格でサブスクリプションを提供できる。

同社によれば、この機能により開発者が加入者を獲得、維持、再獲得するのに役立つとのことだ。

開発者は新しいコードに付す価格オプションを3つの中から選択できる。期間は開発者が選択する任意の長さに設定できる。無料オファーコードでは、加入者は試用期間中無料でサービスにアクセスできる。従量課金制オファー(pay-as-you-go offer)では、加入者は一定の期間中、毎回の請求時に割引料金を支払う。例えば月額1.99ドル(約210円)で試用し、数カ月後に月額9.99ドル(約1060円)の標準サブスクリプションに変更する。3番目のオプションの前払いオファー(pay-up-front offer)では、加入者は一定の期間に対し一括価格を、例えば6カ月のサブスクリプションに対し9.99ドル(約1060円)を前払いする。サブスクリプション更新時に、開発者は標準価格を導入できる。

画像クレジット:Apple

オファーコードは電子メールのようにデジタルで配布したり、イベントで渡したり、物理的な製品(サブスクリプションがついているハードウェアデバイスなど)と一緒に提供したりできる。

コードは作成後最大6カ月で有効期限が切れる。ユーザーは1つのコードにつき1回しか恩典を受けられないが、開発者が選択する構成よっては、1つのサブスクリプションで複数の恩典が利用できる場合がある。

ユーザーは1回限りのコードのためのURLにアクセスすれば、iOS 14かiPadOS 14以降のバージョンでコードの恩典が受けられる。もしくは開発者のアプリがコードの受け入れに対応するAPIを実装している場合は、アプリ内でコードが使える。アップルはコード使用に関するその他全部の手続きの運営を担う。オファーの詳細を表示する画面、アプリのアイコン、サブスクリプションの表示名、期間、価格などだ。

開発者がこの機能を使うには、レシート検証やステータス更新通知受信のためにサーバーの設定が必要だ。このため、小規模な開発者やアプリのためのサーバーを設けていない開発者は使えない可能性がある。

オファーコードがあれば開発者はアプリを初めて使うユーザーに従来なかったエクスペリエンスを提供することもできる。例えば有料サブスクリプションの価値やその機能を強調することが考えられる。

新しいオファーコードは、アップルがすでに用意している2つのサブスクリプションオファーであるお試しオファーとプロモーションオファーに加わることになる。アップルによると、開発者はビジネスの目的に応じて、任意の組み合わせを選ぶこともできるし、3つのオファーを同時に提供できることも可能だ。

開発者からは、サブスクリプションをエンドユーザーに提示する方法について柔軟性を求める声が上がっていた。ユーザーは通常、事前にアプリを使ってみなければ有料でサブスクリプションを始めようとは思わないからだ。

ただし、オファーコードはアップルのサブスクリプションからの取り分が高すぎるという開発者の不満への回答にはなっていない。アップルの取り分は、1年目が30%、2年目以降は15%へと下落する。開発者が顧客開拓やアプリの宣伝のために実際に電子メールを送ったり見本市へ出席したりして新規に顧客を獲得したときは、自身の決済の仕組みに誘導する方法もある。ただしアップルが認める条件の下で、といった議論は残る。一方オファーコードは、アップル独自の決済の仕組みであるApple Pay(アップルペイ)を介して新規加入者を誘導する方法の1つだ。

アップルによると新しいオファーコードは間もなく利用可能になる。(日本語版サイトには「今年の終わりには」とある)

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:Mizoguchi