Amazonが倉庫タイプの配送センター「Whole Foods」をNYブルックリンにオープン

8月31日の週の初めにAmazon(アマゾン)は、ブルックリンの海辺近くに外観はまさに典型的なWhole Foods(ホール・フーズ)スーパーという施設をオープンさせた。ただし、一般向けのものではない。新しい配送センターだ。

「グローサリー配達は引き続きアマゾンで最も急成長している事業の1つだ」と同社はセンター設置についての声明で述べた。新たに数百人を雇用したことにも言及した。「グローサリー配達へのアクセスを増やすことを楽しみにしている」。

こうなることは誰もが予想していた。それでもさまざまな規模の施設を建てたりeコマース配送センターに改造したりするペースにはやや驚かされる。商業不動産サービスのCBREによると、2017年以来、米国内の少なくとも59のプロジェクトで1400万平方フィート(約130万平方メートル)の小売スペースが1550万平方フィート(約143万メートル)の産業スペースに変わった。そしてこの傾向は「継続するのは確かだ」とCBREの産業・ロジスティック研究のアソシエート・ディレクターであるMatthew Walaszek(マシュー・ワラシェク)氏は話す。

これまでもよくあったが、アマゾンは密かに取り組み、たまにメディアで明らかになる。例えば2020年8月にウォール・ストリート・ジャーナルは、拡大するばかりのアマゾンが米国最大のショッピングモール所有者であるSimon Property Group(サイモン・プロパティ・グループ)と、プロダクトをより迅速に配達できるようJCPenney(JCペニー)とSears(シアーズ)の店舗を配送ハブに変えることで協議していると報じた。

アマゾンはスペースを必要としている。一方でSimonは賃料が払えるテナントを求めている。しかし小売店にとって賃料の支払いは現在難しい。新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミック対応で米国では3月、広範にわたってロックダウンされたために多くの小売店が影響を受け、客足はほぼなくなった。

実際、Simonは最近、破産したBrooks Brothers(ブルックス・ブラザーズ)やLucky Brand(ラッキーブランド)を買収するために他のアパレル企業と提携したものの(Simonと同業のBrookfieldはJCPenneyの買収交渉をかなり進めていると報道されている)、こうした動きは1つの核テナントに対応するのに施設を再設計するための時間稼ぎだという指摘もある。

ノースイースト・オハイオの郊外にあるランドールパークモールではすでにそうしたシナリオが実行された(偶然にもクリーブランドで育った筆者はティーンエイジャーのころ、このモールに通っていた)。かつてはPiercing PagodaやSpencer’s Giftsといった派手な店が入居していたこのモールは、1976年のオープン時には世界最大の屋内型ショッピングセンターだった。しかし現在、モバイルロボティック配送システムが設置された広さ85万5000平方フィート(約7万9430平方メートル)の施設になっている。

地元のメディアによると、コンベヤーベルトをまっすぐ伸ばすと長さ10マイル(約16キロメートル)超になる(FOX 8記事)とのことだ。

もちろん、こうした小売施設をかっさらっていくのはいつもアマゾンというわけではない。急速に実在店舗を拡大しているeコマース大企業は多い。常にチャンスをうかがっているデベロッパーは、米国が新型コロナ後に国内生産によりフォーカスすると踏んでいる。

アマゾンのWhole Foodsのように、配送センターの設置に力をさらに入れている大手グローサリーチェーンは他にもある。ときには、そのセンターは客が出入りする店舗の中だったりする。例えば、南サンフランシスコにあるAlbertson(アルバートソンズ)の店舗では、注文品のピックアップや配達の準備を整えるセンターの自動化された置き棚システム周辺で顧客が買い物している。

ある意味、現在展開されている施設使用法のシフトは避けられないものだ。米国には1人あたりの小売スペースは24平方フィート(約2.2平方メートル)という変な決まりがある。比較対象として、カナダの場合は16.8平方フィート(約1.5平方メートル)、オーストラリアは11.2平方フィート(約1平方メートル)だ。「米国には多くの小売店がある。ありすぎだ。だから、不動産が苦慮しているのは驚くことではない」とワラシェク氏は話す。

パンデミックはすでに燃えていた火に油を注いだだけのことだ。Forbes(フォーブズ)は、今年米国で1万4000超の実在小売店舗が店仕舞いすると推測している。一方、Digital Commerceが解析した米商務省のデータによると、2020年上半期に消費者は米国のオンライン小売で3472億6000万ドル(約37兆円)を費やした。前年同期の2668億4000万ドル(約28兆円)から30.1%増だ。

これはひと晩で起こる変化ではない。1つには小売から産業への転化には、混雑や騒音、汚染などを懸念する地域の当局が賛成しているという事実もある。また、小売の賃料は産業のものよりもかなり高い。一部のマーケットでは倍以上する。そのため「小売施設の所有者にとって売上がさほど大きくなりそうでない産業スペースに変えるのは厳しい契約となる」とワラシェク氏は指摘する。

それでも、小売産業の苦境とアマゾンの爆走成長(USA Today記事)が相まって、大小の配送センターがものすごい勢いで増え始めている。

アマゾン初の「永久にオンラインのみ」のWhole Foodsがブルックリンにできたように、そうした店舗は最もありそうにない場所に出現するかもしれない。

画像クレジット:Amazon

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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