AWSが愛国者の拠点となったソーシャルメディアParlerに対し日本時間1月11日午後のサービス停止を通告

Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領が主要なテック系ソーシャルプラットフォームのすべてから締め出された(未訳記事)ことをきっかけに、保守派の間での人気が新たな高まりを見せたソーシャルメディアネットワークのParler(パーラー)が、消滅の危機に瀕している。

BuzzFeed Newsの報道によれば、Parlerのバックエンドクラウドサービスを提供するAmazon Web Services(AWS、アマゾン・ウェブ・サービス)は、今後24時間以内に同社との関係を断つ意向であることを伝えたという。Parlerのアプリケーションは、AWSのインフラの上に構築されているため、AWSは同プラットフォームの運用に欠くことのできないサービスだ。米国時間1月10日未明、Apple(アップル)はGoogle(グーグル)に追随して、Parlerに対してコンテンツのモデレーション不足を理由に、App Storeからアプリを排除することを発表した(未訳記事)。

主要ソーシャルメディア上での大統領の沈黙に動揺したユーザーたちが殺到したことで、勢いが急上昇したParlerは、今では言論の自由とオンラインでの説明責任の境界をめぐる争いの対象となるサイトとなっている。

ParlerのJohn Matze(ジョン・マッツェ)CEOは、AWSからの通告を受けて、「ゼロから作り直しを行うため」プラットフォームが少なくとも1週間はオフラインになると発言している。Twitter(ツイッター)で共有されたスクリーンショットにあるように、一部のParlerユーザーが、AWSのデータセンターを暴力的に攻撃することをほのめかす反応をしているようだが、おそらくこれがAmazonの主張を裏付けているのかもしれない。

米国時間1月6日の国会議事堂での暴動と、TwitterやFacebook(フェイスブック)で暴力を扇動したアカウントの粛清をきっかけに、Parlerは全国の国会議事堂や州議事堂での暴動の実行を、武装した「愛国者」たちに呼びかける、過激な意見のための拠点となっていた。

直近では、同サイト上の保守過激派が「愛国者」たちに、1月6日の行動をさらに拡大して、1月19日には武器を持ってワシントンDCを行進しようと呼びかけていた。

Appleや、従業員たちがParlerへのサービスの提供を停止するように求めていたAmazonからの圧力にさらされたという事情はあるものの、Parler自身もプラットフォーム上の投稿をモデレートする対応を取ろうとしていた。

同社は、トランプ大統領支持者のLin Wood(リン・ウッド)氏がParler上の一連の声明の中で行った、 Mike Pence(マイク・ペンス)副大統領の処刑を求めた投稿の一部を削除したことを認めた。

過去数カ月に渡って、Ted Cruz(テッド・クルーズ)上院議員Devin Nunes(デビン・ヌネス)下院議員を含む共和党議員たちが、ウッド氏のような保守的扇動者とともに、Parlarを拠点として、自由気ままに陰謀論を発信してきた。

BuzzFeed News(バズフィードニュース)が引用したメールの中では、Amazon Web ServicesのTrust and Safety Team(トラスト&セーフティチーム)が、Parlerのプラットフォーム上で拡散していた暴力を呼びかける声が、AWSの利用規約に違反していることを、Parlerの最高ポリシー責任者であるAmy Peikoff(エイミー・ペイコフ)氏に伝えている。またBuzzFeedによれば、AWSのチームはボランティアを使ってプラットフォーム上のコンテンツをモデレートするというParlerの計画は上手く行かないだろうと指摘しているという。

「最近、貴サイトにおいて、このような暴力的なコンテンツが着実に増えてきておりますが、これらはすべて規約違反となります。Parler様がAWSのサービス規約を遵守するための効果的なプロセスを保持していないことは明らかです」と、AWSからのメール内容をBuzzFeedは報じている。

以下、AmazonからParlerへの手紙の全文を示す。

親愛なるエイミー様

本日(米国時間1月9日)は早い時間にお話しいただきありがとうございました。

昨日も今朝も電話でご相談したように、私どもの利用規約に対する違反の繰り返しで困惑しております。過去数週間にわたり、明らかに暴力を奨励したり煽ったりするような書き込みの例を98件、当社よりParler様に報告して参りました。以下のものは、以前にお送りしたものの中からいくつかを抜き出したものです。【前述のスクリーンショットなど】

最近、貴サイトにおいて、このような暴力的なコンテンツが着実に増えてきておりますが、これらはすべて規約違反となります。Parler様がAWSのサービス規約を遵守するための効果的なプロセスを保持していないことは明らかです。また、Parler様はいまだに、コンテンツのモデレーションについての立場を決めかねているように思えます。当社または他者からの連絡があった場合には、一部の暴力的なコンテンツを削除されることがありますが、必ずしも緊急性を持って対応していただいているわけではありません。最近、御社のCEO様が「責任を感じていないし、プラットフォームも責任を負うべきではない」と公言されました。今朝は、暴力的なコンテンツをより積極的にモデレートする計画があるという計画をお話しいただきましたが、そのプランの実施はボランティアによる手作業だということになっています。ボランティアを活用して危険なコンテンツを迅速に特定し、削除するというこれから実施される計画は、暴力的な投稿が急増している現状を考えると、うまくいかないと考えております。これは、私どもがすでにお送りしたコンテンツの多くを、いまだに取り下げていらっしゃらないことからも明らかです。先週ワシントンD.C.で起きた不幸な出来事を考えますと、この種のコンテンツがさらなる暴力を誘発するという深刻な危険性を否定できません。

AWSは様々な政治的立場を横断して、顧客に技術とサービスを提供しており、サイト上でどのようなコンテンツを許可するかを自ら決定するParler様の権利を、引き続き尊重しております。しかしながら、他者への暴力を助長したり煽ったりするコンテンツを、効果的に特定し削除することができないお客様に対しては、サービスを提供することができません。Parler様は当社の利用規約を遵守なさることができず、公共の安全に非常に現実的なリスクをもたらしているため、(米国時間)1月10日(日)午後11時59分(PST)(日本時間2021年1月11日月曜日16時59分)にParler様のアカウントを停止する予定です。私たちはお客様のデータがすべて保存されることを保証し、お客様自身のサーバーへのデータ移行を可能な限りお手伝いさせていただきます。

– AWSトラスト&セーフティチーム

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AWSParlerソーシャルメディア

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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