Disrupt 2020でスタートアップ3社が量子コンピューティングへのそれぞれのアプローチを語る

量子コンピューティングは現在興味深い地点に到達している。十分成熟し、実際の問題を解くことができるところまで来ているのだ。パーソナルコンピューターの黎明期にそうであったように、テクノロジーの根底にある基本的な物理的問題を解決するために、さまざまな企業がさまざまなアプローチを試みている。 また一方では、多くのスタートアップがこれらのコンピューターを従来のコンピューターにどう統合させるか、そしてそのためにどうソフトウェアを設計するか、その方法を模索しているのである。

米国時間9月14日〜18日にかけて開催されるDisrupt 2020では、 D-Wave(Dウェーブ)CEOの Alan Baratz(アラン・バラッツ)氏、Quantum Machines(カンタム・マシンズ)の共同創設者兼CEOのItamar Sivan(イタマール・シバン)氏、IonQ(イオンQ)の代表取締役兼CEOのPeter Chapman(ピーター・チャップマン)氏がパネリストとして登壇する。 これら3つの企業のリーダーたちは、みな異なる角度から量子コンピューティングに取り組んでいるものの、目標は共通している。この新しいテクノロジーを主流にするという目標だ。

D-Waveは一足先に発足し、初期にスマートなマーケティング活動を展開したことにより、量子コンピューティング企業として最も名の知られた企業となった。バラッツ氏は、同社のR&Dの最高製品責任者兼エグゼクティブ事業部長を数年務めた後、今年初めにCEOに就任した。バラッツ氏のもと、D-Waveはテクノロジー、特にD-Wave量子クラウドサービスの開発を続けている。Leap 2は今年はじめに始まったその取り組みの最新版である。またD-Waveのテクノロジーは量子アニーリングを重要視する点で、他の多くの取り組みと異っている。初期にはこれを疑いの目で見る向きが多かったが、現在は実証されたテクノロジーであり、同社はハードウェア、ソフトウェアプラットフォームの両面で一歩抜きん出た存在である。

バラッツ氏と同様、IonQのチャップマン氏も創設者ではない。彼は2019年にIonQに入社するまでは、Amazon Prime(アマゾン・プライム)のエンジニアリングディレクターであった。チャップマン氏のもと、同社は2019年後半の資金調達ラウンドで5500万ドル(約58億円)の資金を、そして先月さらに700万ドル(約7億4000万ドル)を調達した。また彼は、量子ビットの生成が比較的簡単にできる同社のトラップイオンテクノロジーへの注力を続けている。同社によるとこのテクノロジーにより同社は量子ビットの制御に集中して取り組むことができているとのことである。また、このアプローチはIonQのマシンが室温で稼働可能という点で同社を有利にしている。競合他社の多くはそのマシンを稼働させるために絶対零度にできるだけ近い温度にマシンを冷却する必要があり、量子プロセッサの小型化を目指す彼らとって、それ自体が工学的な課題である。

Quantum Machinesは、D-WaveやIonQとはやや異なる役を演じている。 シリーズAラウンドで最近1750万ドル(約18億5000万円)を調達した同社は、現在量子プロセッサを制御するために新たなカスタムハードウェアを組み合わせた量子オーケストレーションプラットフォームと、量子アルゴリズムをプログラミングするための独自のQUA言語を開発中である。量子マシンがもう少し成熟したら、標準PCの速度では量子プロセッサの制御には不十分になるからである。Quantum Machinesは、シバン氏がワイツマン科学研究所で物性物理学および材料物理学の博士号を取得後、共同創設者とともに立ち上げた初めてのスタートアップである。

米国時間9月14日~18日まで開催されるDisrupt 2020にて、上記3社やその他の話が聴ける。その他の登壇者など、イベントの詳細は以下の特設ページで確認して欲しい。

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(翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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