GoogleのBristleconeプロセッサーは同社を量子超越性へ一歩近づけた

今では大手テクノロジー企業のすべてが、コンピューティングの次の大きな飛躍的技術革新として、量子コンピューターに着目している。Googleでも、Microsoftでも、IntelやIBMでも、そしてさまざまなスタートアップや学術研究機関が、量子超越性(quantum supremacy, 量子スプレマシー)を自分が最初に実現しようとしのぎを削っている。量子超越性とは、これまでのコンピューターでは逆立ちしてもできなかった複雑なアルゴリズムの計算が、量子計算機だからこそできた、と言える瞬間のことだ。

Googleによると今日(米国時間3/5)は、同社の最新の量子プロセッサーが同社を未来の量子超越性へ向かう道程上に乗せた、と信じられるという。Bristleconeの目的は、Googleによれば、同社の研究者たちが、“同社の量子ビット(qubit, キュービット)技術のシステムエラーレートとスケーラビリティ、および量子計算によるシミュレーション最適化, そして機械学習などのアプリケーションを研究”していくための、テストベッドを提供することだ。

すべての量子コンピューターにとって大きな問題のひとつが、エラーレートだ。量子コンピューターはふつう、数ミリケルヴィンという超低温と、環境に対する遮蔽を必要とする。今日の量子ビットはまだ極端に不安定で、ノイズによるエラーを起こしやすいからだ。

そのために、現代の量子プロセッサーの量子ビットは単一のqubitではなく、複数のビットを組み合わせてエラーに対応する。目下のもうひとつの限界は、これらのシステムの多くが、自分の状態を100マイクロ秒未満しか維持できないことだ。

Googleが以前デモしたシステムは、読み出しで1%のエラーレートを示し、単一のqubitでは0.1%、2qubitのゲートでは0.6%だった。

Bristleconeチップは、1基が72 qubitsだ。業界の一般的な想定では、量子超越性を達成するためには49 qubitsが必要、と言われている。しかしGoogleは用心深く、量子コンピューティングをqubitだけで云々することはできない、と言っている。“Bristleconeのようなデバイスを低いシステムエラーで運用するためには、ソフトウェアと制御用電子回路とプロセッサー本体に関わるすべての技術の調和を要する”、とチームは今日書いている。“それを正しく達成するためには、細心のシステムエンジニアリングを何度も繰り返して実践する必要がある”。

Googleの今日の発表は、実用レベルの量子コンピューターの開発に取り組んでいるそのほかのチームにプレッシャーを与えるだろう。業界の現状でおもしろいのは、だれも彼もがそれぞれ違ったアプローチをしていることだ。

Microsoftは、そのチームがまだqubitを作り出していない、という意味でやや後れているが、しかしそのアプローチはGoogleなどとまったく異なり、qubitを作れるようになればすぐに49 qubitsのマシンを作れてしまうだろう。Microsoftはまた、量子コンピューティングのためのプログラミング言語も作っている。

IBMの研究所には今50-qubitのマシンがあり、デベロッパーたちはクラウド上のシミュレーションで量子コンピューターを動かしている

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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