Google(グーグル)は、さまざまな技術を組み合わせて、零細企業のオーナーが、かかってくる電話にうまく対処できるようにする方策を提供する。そこでは、仮想電話番号、音声からの文字起こし、自動レポート作成と分析、といった技術が活躍する。社内のインキュベーション活動から始まったプロジェクトは、CallJoyという名前で、米国時間5月1日にサービスを開始した。米国内で3020万社にもおよぶ小さな企業のオーナーを対象にして、カスタマーサービスの代理機能を提供する。低価格ながら、迷惑電話をブロックすることや、電話をかけてきた人に会社の基本的な情報を伝えること、顧客の要望に応じてSMSを使った来店の予約やテイクアウトの受注、といったことまでが可能となる。
処理しきれない要望や質問については、本来の会社の電話番号に通話を転送する。一般的には、このようなカスタマーサービスの電話代理業務は、零細企業のオーナーにとって、とても手が届かないもの。しかしCallJoyは、毎月定額の39ドル(約4350円)という価格設定で、この技術を利用しやすいものにしている。
他の仮想カスタマーサービスのシステムと同様に、CallJoyも発信者に音声で応えて、会社の営業時間や住所といった基本情報を伝えることができる。また事業主は、増え続ける迷惑電話に対処する必要がなくなるので、そのせいで時間を浪費することもなくなる。その方が適切だと判断した場合は、電話をかけてきた顧客をオンラインに誘導して要件を完了させることもできる。
そのために、CallJoyの仮想エージェントは、顧客が望む場合には、SMSのテキストメッセージでURLを送信する。後はそのウェブサイト上で、予約や注文などといった要件もオンラインで完了できる。
たとえば、エージェントは顧客に「食品を注文するリンクをお送りしてもよろしいでしょうか?」と尋ねる。そこで顧客が「はい」と答えれば、テキストは直ちに送信される。この機能をカスタマイズして、さらにいろいろな情報を提供することも可能だ。たとえば、会社の電子メールアドレスや、オンラインの顧客サポートのURLなどを送信してもいい。
ただし、顧客が固定電話からかけている場合、このようなテキストで返信する機能は発動せずに、会社の電話に転送することになる。
一般的なカスタマーサービスのソフトウェアが、「品質を向上するため通話内容を録音させていただきます」などとことわるのと同様、CallJoyもかかってきた電話を録音する。そのことは相手に通知される。これは迷惑電話を削減するのに有効だ。というのも、迷惑電話の発信者は、録音されていることがわかると、たいていは切ってしまうからだ。
録音された通話は暗号化され、文字起こしされて、CallJoyのダッシュボードから検索可能となる。
ここには、通話に関する情報、つまり相手の電話番号、音声、そこから起こしたテキストが保存される。事業主は、そこで通話にタグを付けて、自分のビジネスの展望に役立つ分析を含むレポートを生成させることもできる。たとえば、あるヘアサロンに「結婚式のヘアスタイル」について問い合わせる電話が多くかかってくるようなら、自分のウェブサイトにそうした情報を載せるべきだと判断することができる。あるいは、レストランなら、予約の電話が1日に何件かかってくるかを継続的に調べたいこともあるだろう。
また、電話の件数、通話時間帯のピーク、新規の顧客と以前にもかけてきたことのある人の比率、といった分析も可能だ。こうした情報は、オンラインのダッシュボードで見ることができるだけでなく、電子メールで毎日受け取ることもできる。
このサービスは、米国時間5月1日から利用可能だ。利用のためには、既存の固定電話、携帯電話、Google Voiceまたは他のクラウド電話プロバイダの番号が必要となる。通話を、その番号に転送する必要があるためだ。
とはいえ、そうした既存の電話番号をCallJoyが直接利用するわけではない。Google Voiceと同様、会社のある地域の市外局番と、仮想のCallJoy番号を組み合わせたものが、会社の受付番号として使われる。
その電話番号での受け付けを始めるには、事業に関する情報を、すべてその新しい番号に書き換える必要がある。ウェブサイト、名刺、オンラインの事業者リスト、広告、ソーシャルメディア、その他、電話番号が記載されているもの全部だ。
CallJoyは、基本的に1つの住所と1つの電話番号にだけヒモ付けられている。CallJoyダッシュボードを使って、独自の電話番号を持つ住所を追加することも可能だが、その際は回線ごとに追加料金がかかる。
サービス開始時には、CallJoyは招待制としてのみ利用可能となっている。利用を希望する企業は、CallJoyのホームページでリクエストを提出して待ち行列に入る必要がある。招待は毎日発行される。やがて、このシステムは誰でも利用できるようになるだろう。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)