Nielsenが現状に合わせて従来のテレビ放送とデジタル配信の視聴率調査統合を準備

Nielsen(ニールセン)は、テレビ視聴率の調査を、リアルタイムで見る人と、さまざまな配信サービスやデバイスを使ってオンデマンドで見る人とが混在する世界を反映させた方式に刷新する。

同社は長年にわたりテレビ視聴率調査の標準的方式を提供してきたが、テレビがデジタルで視聴できるようになり、物事は大変に細分化されてしまった。そこで、間もなく運用が開始されるNielsen One(ニールセン・ワン)プラットフォームは、他社とそう変わらない新しいデジタル視聴率調査方式を提供するだけではなく、Nielsenの中核的な測定基準を刷新するものとなる。

「私たちの主な目的は、測定方法が複数メディアをまたぐ広告枠買い付けの妨げになっている現状を打開することです」とNielsen視聴率調査ジェネラルマネージャーScott Brown(スコット・ブラウン)氏は話す。

2022年秋にNielsen Oneの運用が開始されると、テレビ番組の視聴に関するNielsenの報告には、昔ながらのかたちでテレビを観ている人の数だけでなく、視聴者の現実の数が反映されるようになる。

さらに、オンライン世界のプログラマティック広告や、同等の広告枠買い付けツールが従来型のリニアなテレビ放送にも広がりつつあることを考えれば、「みんなが同じ広告を見る」という考え方は捨て去るときがきたとブラウン氏はいう。

つまり、このプラットフォームはNielsenのC3とC7という視聴率基準から「離れる」ことを意味する。この基準とは、テレビ番組の広告を、C3は3日間、C7は7日間の放映の間にどれだけの人が見たかを示す値だ。

ブラウン氏によれば、Nielsenは各プラットフォームごとに、何人の人が広告を見たかをきめ細かく調査できるようになるという。「個々の広告に推定視聴者数が示される」ことになり、2024年秋までには従来型測定方法の全廃を目指す。

画像クレジット:Nielsen

またNielsen Oneのスタートにともない、ブラウン氏が「新しいデータバックボーン」と呼ぶものが導入され、Nielsenのクライアントは、同社が報告書で示す数値の元となるデータに、もっと直接的にアクセスできるようになる。

このデータを提示するためには、テレビ視聴率の一般調査員「パネル」の協力に今後も依存することになるが、これからは「本当のクロスプラットフォーム」のデータになる点が違うとブラウン氏は話す。同社は、Amazon(アマゾン)、Hulu(フールー)、Roku(ロク)、Vivio(ビジオ)、Google(グーグル)およびYouTube(ユーチューブ)をすでに利用しているパートナー企業から追加データを引き出すことにしている。

多くのネットワークやメディア企業が独自の配信サービスを立ち上げたり買収したりしているが、誰もがNielsenで視聴率や広告の検証をしたがっているはずだとブラウン氏は示唆する。だが、Netflix(ネットフリックス)やDisney+(ディズニープラス)などの一部のサービスはインセンティブが低い。広告ではなくサブスクリプションのビジネスモデルに依存しているからだ。

「すべての視聴率がわかります」と彼はいう。「しかし私たちに寄り添い、一体となれる企業には、より細かい数値と、より総合的な調査を提供できるようになります」。

私は、オンラインの世界で議論されている大きな問題についても尋ねてみた。Facebook(フェイスブック)は動画を3秒間見たかどうか、Netflixは、番組の「視聴することを選んでいる」人が少なくとも2分間見たかどうかをチェックしているが、実際に何をもって1回のインプレッションと数えるのか?

「はっきり公表できるものとしては、最終的な答えは出ていません」とブラウン氏。だがNielsenでは、2021年にこの問題を細かく整理する作業部会を設ける予定だ。同時に、「1秒単位の解像度で測定」できる技術を構築し、どのようなルールが決められようとも対応できる体制を整える。

「現在の細分化された測定環境では、複数のプラットフォームにまたがるキャンペーンの計画、実施、検証が過度に複雑になり、予測がますます困難になっています」とデジタルエージェンシーEssence(エッセンス)の最高メディア責任者Adam Gerber(アダム・ガーバー)氏は声明の中で述べている。「アドレサブル広告モデルへ移行し、リーチを優先化し、成果をあげるための最適化を行うようになるほど、一貫した単一ソースによる測定ソリューションが必須となります。Nielsenの複数メディアにまたがるこの新しいアプローチは、総合的なキャンペーンを成功させたい広告主が求める信頼性と透明性を届ける重要なステップとなります」。

関連記事
ニールセンがデジタルメディアの視聴率計測方法を刷新
Netflixの2019年Q4における有料会員数は予想を上回る880万人増

カテゴリー:その他
タグ:Nielsenメディア動画配信

画像クレジット:Karunyapas Krueklad / EyeEm / Getty Images

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。