Shopifyが売上高1.1億円以下のデベロッパーへのアプリストア手数料を免除

AppleやGoogle、そして直近ではAmazonなどの動き同様に、eコマースプラットフォームのShopify(ショッピファイ)は米国時間6月29日、同社のアプリマーケットプレイス、そして新しいShopify Theme Storeでデベロッパーに課す手数料を下げると発表した。同社のUnite 2021カンファレンスで、Checkout、API、デベロッパーツール、フレームワークなどへのアップデートを含む他のデベロッパー関連のニュースとともに発表された。

Shopifyのアプリデベロッパーパートナーは2020年に、2018年と2019年の合算を上回る2億3300万ドル(約260億円)を売り上げた。これは部分的には新型コロナウイルスパンデミックとそれにともなうeコマースへの急速なシフトによるものだと同社は話す。今日では、Shopifyのアプリストアでは6000超のアプリが提供されていて、販売事業者は経営のために平均6つのアプリを使っている。

Shopifyはアプリデベロッパーの売上にかかる手数料を、同社のプラットフォームでの年間売上高が100万ドル(約1億1050万円)以下であれば20%から0%に下げると話す。このベンチマークはプラットフォーム上で毎年リセットされ、売上高が100万ドル前後のデベロッパーにさらに稼ぐ可能性を提供する。そしてShopifyの売上高シェアが適用されると、その取り分は「余分の」売上の15%となる。つまりデベロッパーは100万ドルを超えた分の売上の15%だけを手数料として払うことになる。

同じビジネスモデルがShopifyのTheme Storeにも導入され、デベロッパーは7月15日から申し込める。

ShopifyのアプリストアとTheme Storeは別事業であり、売上高100万ドルというメトリックはそれぞれ別に適用される。新しいビジネスモデルは8月1日から展開され、アカウント情報をパートナーダッシュボードで提供して登録しているデベロッパーが利用できる。

これまでよりもデベロッパーフレンドリーなビジネスモデルはShopifyにとっては売上減を意味するが、さらにイノベーションと開発を促すことが見込まれるため、売上減の影響が「かなり大きなものになる」とは考えていない、と同社は話す。

Shopifyのアプリストアへの変更は、デベロッパーに課す手数料をめぐるアプリストアマーケットにおけるシフトに続くものだ。

2020年、アプリストア運営に対する規制当局の監視が厳しくなる中で、Appleは新しいプログラムのもとに零細事業者に課すアプリストア手数料を減額すると発表している。年間最大100万ドル稼ぐデベロッパーはアプリ内購入で払う手数料は15%に抑えられる。その後、GoogleAmazonも似たような動きを見せた。たとえばGoogleの場合、デベロッパーが稼ぐ最初の100万ドルでは15%の手数料を取る。Amazonはまだ20%と高い手数料を徴収しているが、特典としてAWSクレジットを付けている。

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AppleとGoogleは特に、こうした変更がアプリストア独占疑いでの独禁法調査から自社を守るのに役立つことを望んでいて、一方で自社のアプリ経済に参加する良い理由をデベロッパーに提供している。

モバイルはさておき、Microsoftは2021年、ライバルへの圧力を強める手段としてEpic GamesのWindows Storeでのゲーム販売の手数料を12%とすることに同意した。新しいWindows 11 Storeの大規模なアップデートでは、アプリにかかる手数料は15%のままだが、デベロッパーは独自の決済プラットフォームを使うことができる。

これまで、マーケットの大方はアプリとゲームの販売の手数料を下げることにフォーカスしてきた。Shopifyのアプリプラットフォームは他のものと異なる。eコマース事業を促進するのに使われるアプリを扱っている。出荷や配達、マーケティング、マーチャンダイジング、ストアデザイン、顧客サービスなどに関するものだ。これらは消費者向けのアプリではないが、アプリストアで販売されている。

デベロッパーの事業への変更は6月29日開催のUnite 2021で発表された大きなニュースである一方で、それはShopifyが発表したプラットフォームに関する一連のアップデートを打ち消しはしない。

主なアップデートは次の通りだ。Netflixが最初にテストしたShopifyのLiquidプラットフォームへの、よりフレキシブルでカスタマイズ可能なアップデートであるOnline Store 2.0のデビュー。すばやい対応のためのカスタムストアフロントへの投資。Hydrogenというカスタムストアフロント構築のための新しいReactフレームワーク。OxygenというShopifyでのHydrogenストアフロントをホストする方法。プロダクトと類似プロダクト、カスタムコンテンツでのMetafieldsのサポート。これまでよりも迅速なSpotify Checkout。Checkout Extensions(デベロッパーによって構築されるカスタマイゼーション)。従来より簡単でパワフルなShopify Scripts。サードパーティ決済ゲートウェイのCheckoutへの統合のためのPayments Platform。ストアフロントAPIへのアップデート。

Shopifyはまた、新たにいくつかの事業メトリクスを共有し、たとえば2020年4億5000万人超がShopifyで決済を行い、流通取引総額は1200億ドル(約13兆2640億円)だったと明らかにした。アプリデベロッパー、テーマビルダー、デザイナー、代理店、専門家などを含むShopifyパートナーの2020年の売上高は125億ドル(約1兆3815億円)と前年比84%増で、これはShopifyプラットフォームの売上高の4倍だった。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Shopifyeコマースアプリ

画像クレジット:Thomas Trutschel / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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