ノーコードビジネスインテリジェンスサービスのy42が3.2億円のシードラウンドを実施

ベルリンを拠点とするy42(旧称Datos Intelligence)が、現地時間3月22日、La Famiglia VCが主導する290万ドル(約3億2000万円)のシード資金調達を行ったことを発表した。y42はデータウェアハウスを中心としたビジネスインテリジェンスサービスを提供しており、企業がエンタープライズレベルのデータに、表計算ソフトのような手軽さでアクセスできるようすると約束する企業だ。同時に、Foodspring(フードスプリング)、Personio(パーソニオ)、Petlab(ペタラブ)の共同創業者たちも出資している。

2020年に創業されたこのサービスは、100種類以上のデータソースを統合しており、Airtable(エアテーブル)からShopify(ショッピファイ)、Zendesk(ゼンデスク)といった標準的なB2B SaaSツールや、Google(グーグル)のBigQuery(ビッグクエリー)などのデータベースサービスを網羅している。ユーザーは、こうしたデータを変換して視覚化し、データパイプラインを編成し、そのデータに基づいて自動化されたワークフローを起動することができる(売上が下がったときにSlackで通知を送ったり、独自の基準に基づいて顧客にメールを送ったりするといった用途を想像して欲しい)。

類似のスタートアップ企業と同じように、y42は従来分析のために使用されていたデータウェアハウスのコンセプトを拡張し、企業によるそうしたデータの活用を支援する。このサービスの中核は多くのオープンソースで構成されており、例えば同社はGitLabs(ギットラブ)のデータパイプライン構築用プラットフォームMeltano(メルタノ)の開発に貢献している。

y42の創業者でCEOのフン・ダン氏

y42の創業者でCEOのHung Dang(フン・ダン)氏は「私たちは、最高のオープンソースソフトウェアを採用しています。本当に達成したいのは、本当にわかりやすくて、誰もが効率的にデータを扱うことができるツールを作ることなのです」と語る。「私たちは非常にUXにこだわっていますし、自分たちをノーコード / ローコードのBIツールと表現していますが、私たちのサービスはエンタープライズレベルのデータスタックのパワーとGoogle Sheetsのシンプルさを兼ね備えています」。

ベトナム出身のダン氏は、y42以前に、10カ国以上で事業を展開する大手イベント会社を共同創業し、数百万ドル(数億円)規模の売上を達成した(ただし、利益率は非常に低いものだった)が、同時にビジネス分析に的を絞った自身の研究を進めていた。その結果、B2Bデータ分析に特化した2社目の会社を創業することになったのだ。

画像クレジット:y42

彼によれば、イベント会社を創業した際にも、常に製品やデータを重視していたという。「お客様の声を収集し、業務データと統合するためにデータパイプラインを構築していましたが、当時は本当に苦労していました」と彼はいう。「Tableau(タブロー)やAlteryx(アルテリックス)などのツールを使っていたのですが、それらを組み合わせるのはとても難しく、しかもとても高価でした。そこで、その欲求不満から、かなり使える社内ツールを開発し、2016年にはそれを使って、実際の会社を起業することにしたのです」。

彼はその後、その会社をドイツの大手上場企業に売却した。この取引の詳細についてはNDAによって彼から聞き出すことはできなかったが、彼がy42を設立する前にはEventim(イベンティム)に在籍していたという事実から、なんらかの想像は可能だろう。

こうした彼の経歴を考えれば、y42がデータエンジニアの生活を便利にすると同時に、ビジネスアナリストにプラットフォームのパワーを提供することに重点を置いているのは当然のことかも知れない。ダン氏は、y42が新規顧客を獲得した際には、通常コンサルティングを提供しているが、それは顧客が素早いスタートを切ることができるようにするためだという。製品の持つノーコード / ローコードの性質によって、ほとんどのアナリストたちはすぐに使い始めることができる。また、より複雑なクエリの場合には、グラフィカルなインターフェースからy42のローコードレベルに降りて、サービスが提供するSQLの方言でクエリを書くこともできる。

このサービス自体はGoogle Cloud(グーグル・クラウド)上で動作しており、25人のチームが顧客のために1日あたり約5万件のジョブを管理している。現在同社の顧客には、LifeMD(ライフMD)、Petlab(ペットラブ)、Everdrop(エバードロップ)などがいる。

今回の資金調達を行うまでは、ダン氏は自己資金とエンジェル投資家からのある程度の資金で会社を運営していた。しかし、スタートアップ企業と伝統的な企業を結びつけることに特に重点を置いているLa Famiglia VCが、自社をy42にふさわしいと判断した。

LaFamiglia VCのゼネラルパートナーであるJudith Dada(ジュディス・ダダ)氏は「最初に製品デモを見たとき、その優れた分析能力に加えて、y42プラットフォーム上で多くの製品開発が行われていることに驚かされました」と語る。「ますます多くのデータを扱わなければならなくなった結果、組織内のデータサイロが増え、混沌と不正確なデータにつながっています。y42は、データの専門家であるかそうでない人かを問わず、強力な真の単一情報源を提供してくれるのです。昔データサイエンティストやアナリストだった身としては、その頃y42の機能があればよかったのにと思っています」。

ダン氏は、もっと資金を集めることもできたが、この時点ではチームの出資比率をあまり下げたくないと考えたのだと語る。「小さなラウンドですが、このラウンドによって正しい体制を整えざるを得ません。2021年末に予定しているシリーズAでは、10倍の次元の話を進めています」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:y42ノーコードローコードドイツ資金調達

画像クレジット:Jonathan Kitchen / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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