5月21日に、日頃控え目なテンセント(騰訊)の創業者でCEOのポニー・マー(Pony Ma、馬化騰)氏が、米国と中国の間の高まる緊張に重点をおきつつ珍しくコメントを出した。競争力を維持するためにより自助努力を行わなければならないと中国内のテック企業たちに呼びかけたのだ。
「中国は開発の最前線に立っています。外部から最善なものを取り込んで改良しなければならない局面は、ますます少なくなっています。ZTEとHuawei(ファーウェイ、華為)のケースが悪化する中で、私たちは貿易戦争が技術戦争に転化するかどうかを見つめてきました」と、マー氏は中国雲南省で行われたイベントで語った(口述記録がテンセントからTechCrunchに送られてきた)。
こうしたマー氏の心配は予想外のことではない。最近の米中交渉が示すように、深圳を拠点とするこの電気通信とスマートフォンの巨人は、貿易衝突に深く関わっている。米国商務省は、先週に米国企業が部品やその他の技術をファーウェイに販売することを制限した。ファーウェイをトランプ政権が国家安全保障上の脅威であるとラベル付けしたためである。とはいえ、その後禁止範囲は縮小した。その結果として、ファーウェイはGoogleの特定のサービスや、Qualcomm(クアルコム)やIntel(インテル)によって製造されたチップ、その他の米国のサプライヤーから切り離されることとなった。
世界的なイノベーションをリードするための中国の努力にもかかわらず、そのテック系スタートアップやチャンピオンの多くは、製品やサービスを提供するために、今でも輸入技術に大きく依存している。人びとはこのような相互依存の状況を、貿易の結果として喜んで受け容れていた。しかし今や、米国と中国の分離が両国の企業を傷付け、世界的な技術経済の分岐につながることを、ますます心配するようになって来ている。
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「(中国の)デジタル経済は砂の上に構築された高層ビルであり、私たちが基礎研究や重要な知識に懸命に取り組み続けなければ、持続することは難しいでしょう。もちろん古い体制から新しい体制への変化や、高品質な開発は言うまでもありません」とマー氏は指摘した。
テンセントの宿敵であるアリババ(阿里巴巴)の創業者ジャック・マー(Jack Ma、馬雲)氏も、ファーウェイのライバルであるZTEに対して、昨年4月に似たような米国製部品の販売制限がかけられた際に、似たような主旨の発言を行っている。
South China Morning Post(南華早報)のレポートによれば、業界イベントでアリババのマー氏は「大企業にとってコア技術で競い合うのは、切迫した責務なのです」と語っている。
米国からの最新の技術禁止により、ファーウェイの技術的自立性向上への取り組みは加速している。その中には、独自のチップの設計や、独自のスマートフォンOSの提供も含まれている。とはいえオブザーバーたちや株主たち、そしてファーウェイの創業者であるレン・ツェンフェイ(Ren Zhengfei、任正非)氏自身も、短期的にそれらが提供できるかどうかに対しては疑問を呈している。
「私たちは、挑戦します。OSを作ることはそれほど難しくはありません。難しいのはエコシステムです。どうすればエコシステムを構築できるでしょう?これは大きなプロジェクトですし、時間がかかることでしょう」と、ツェンフェイ氏は5月21日に行われた国内メディアによるインタビューの中で述べている。
ファーウェイの自家製チップに関しては、ツェンフェイ氏は「米国品質の半導体を当社で製造することは可能だが、だからといって米国のものを買わないということではない」と、述べている。一方、ロイターがインタビューしたチップの専門家たちは、ファーウェイの主張を疑わしいものと主張し、同社がネットワーク機器を米国のサプライヤーなしで製造するのは難しいだろうと述べている。
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(翻訳:sako)