EC商品のリモート写真・動画撮影を容易にするSoonaがシリーズAで約11.1億円を調達

eコマースのエコシステムでますます高まるコンテンツのニーズを満たすことを目指すスタートアップSoonaは、Union Square Venturesが主導するシリーズAラウンドで1020万ドル(約11億1000万円)を調達したと発表した。

2019年にSoonaについての記事を書いたとき、同社のモデルは、24時間以内に動画や写真を提供できる撮影の演出に焦点を当てていた。このスタートアップは現在もオースティン、デンバー、ミネアポリスで撮影スタジオを運営しているが、共同創業者兼CEOのLiz Giorgi(リズ・ジョルジ)氏によると、パンデミックの間に、Soonaは完全なバーチャル / リモートモデルにシフトしたという。顧客はSoonaに商品を郵送し、その後、リモートで撮影の様子を見てすぐにフィードバックを提供し、実際に欲しい写真(各39ドル、約4200円)やビデオクリップ(各93ドル、約1万円)に対してのみ料金を支払うというものだ。

場合によっては、スタジオが必要ないこともある。ジョルジ氏によると、Soonaのフォトグラファーと撮影クルーの30%は自宅で仕事をしているという。

Soonaは現在、Lola Tampons、The Sill、Wild Earthなど、4000社以上の顧客と取引しており、2020年の収益は400%増加した。ジョルジ氏は、より大規模な対面での撮影が可能になったとしても、多くの顧客にとってこのアプローチは理に適っている、と語る。

「オンラインで販売する商品でビジュアルを必要としないものはありませんが、すべてのビジュアルが1日がかりの大規模な撮影を必要とするわけではありません」と同氏はいう。

画像クレジット:Soona

ジョルジ氏は、Soonaのアプローチが「新しいレベルのスケーラビリティ」をもたらしたと考えている。彼女は次のように付け加えた。「Soonaのスタッフはみな、リモート撮影は効果的だと信じています。効率的なだけでなく、ブランドマネージャーをマイアミから飛行機に乗せて、ニューヨークの倉庫で1日過ごさせる必要がなくなり、よほど楽ですからね。(従来の方式は)コストが高いだけでなく、参加者全員にとって時間がかかり、疲れるプロセスでした」。

今回の資金調達は、120万ドル(約1億3000万円)のシードラウンドに続くものだ。ジョルジ氏は、今回のシリーズAによって、Soonaはより多くのコラボレーションツールを備えたサブスクリプション製品を開発し、どのような種類のビジュアルコンテンツが最も効果的かについてのデータを増やすことができるという。

「eコマースのビジュアル・エコシステムを初めから終わりまで支配するチャンスがあります」と同氏は語る。

またジョルジ氏は、投資家にセクシャルハラスメントや差別の苦情に直面したことがあるかどうか開示することを義務づける「candor clause(率直条項)」をSoonaが引き続き採用していることも指摘した。この条項は現在、人種差別、身障者差別、反LGBTQ差別をめぐる苦情にも拡大されている。

「これはある意味、トラブルメーカーの関与を防ぐためのゲートですが【略】投資家と創業者とのより深い結びつきを促すものです」とジョルジ氏は語った。「これにより私たちは、自分たちの価値観や、世界の見方について話し合うことができます。資本やキャップテーブルについて多くのことを語るのと同時に、平等や正義についても話し合えるわけです」。

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タグ:Soonaeコマース資金調達写真写真編集動画撮影

画像クレジット:Soona

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(文:Anthony Ha、翻訳:Aya Nakazato)

インディーズ映画制作者にAIを活用したVFXを提供するWonder Dynamicsが2.7億円を調達

最近の映画作品には必ずと言っていいほど視覚効果が必要とされているが、インディペンデントクリエイターには、最高のCGを手に入れるための資金やノウハウが不足していることが多い。VFXエンジニアのNikola Todorovic(ニコラ・トドロヴィッチ)氏と俳優のTye Sheridan(タイ・シェリダン)氏が設立したWonder Dynamics(ワンダー・ダイナミクス)は、AIを活用することで、予算の少ない映画制作者でもそうしたプロセスを利用できるようにすることを目指している。このたび同社が、その実現のために250万ドル(約2億7000万円)を調達した。

同社の設立は、2017年にシェリダン氏とトドロヴィッチ氏がRodrigo Garcia(ロドリゴ・ガルシア)監督の映画「Last Days in the Desert」の撮影現場で出会ったことがきっかけとなった。彼らは、大規模なスタジオ映画で利用されていたツールを、誰でも使えるようにすることにチャンスがあると考えたようだ。

Wonder Dynamicsは、そのツールが正確には何をするものなのかについては、とても口が堅い。Deadline(デッドライン)ニュースでMike Fleming Jr(マイク・フレミング・ジュニア)氏は、その限定的なデモを見た上で「ほどほどの予算で世界を創造する分野の、どのような部分で価値を発揮できるかがわかります。対象のプロセスを、すばやくしかも従来のコスト構造の何分の1かで、行うことができるようになるでしょう」と語った。だがそのコメントを読んでも何かが詳しくわかったよう気はあまりしない。

シェリダン氏とトドロヴィッチ氏はWallace Pro(ウォーレス・プロ)という名のこのシステムについて、仕上げや特定の効果ではなく、ある種のVFXの煩雑な作業を代行してくれるものだと説明した(彼らは私が送った質問に2人で答えてくれた)。

「私たちは、CGキャラクターやデジタルワールドを含むコンテンツのプロダクションとポストプロダクションの両方のプロセスを、大幅に高速化するAIプラットフォームを構築しています。プラットフォームの目的は、プロセスの『客観的』な部分を自動化して、アーティストに創造的な『主観的』作業を任せることで、こうしたプロダクションに関連するコストを削減することです」と彼らは語っている。「こうすることで、予算を上回るビジョンを持つ映像制作者に、より多くの機会を与え、力を与えることができればと考えています。多くは説明しませんが、このシステムはアーティストの具体的なニーズに応じて、映画制作の3つのステージ(プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダクション)すべてに適用することができます」。

こうしたことから、彼らのシステムはワークフローを改善するものだと思われる。それを使うことで広く使われているエフェクトを実現するための時間が短縮され、そのために必要な費用が削減されるのだ。はっきりさせておきたいのは、これはWonder Dynamicsが別途開発中の、映画プロダクションの過程でバーチャル・インタラクティブ・キャラクターを作成するための、特定目的の製品(間違いなく同社の初期アプリケーションではあるが)とは違うものだということだ。

この技術は小規模なテストが行われているが、2021年の後半にはプロダクションに投入できる機能を備える予定だ。「この技術を一般に公開する前に、この技術を使用する最初の映画制作者を厳選して、高いレベルの映画が制作できるかどうかを確認したいのです」と彼らはいう。第一印象は大切だからだ。

今回の250万ドル(約2億7000万円)のシードラウンドにはFounders Fund、Cyan Banister、Realize Tech Fund、Capital Factory、MaC Venture Capital、Robert Schwab(ロバート・シュワブ)氏が参加した。シェリダン氏とトドロヴィッチ氏は「テクノロジーと映画の交差点にいる私たちは、この2つの産業が将来的にどれだけお互いに依存するかを理解している投資パートナーを得たいと思っていました」と語る。「Founders Fundと並んで、MaC Venture CapitalやRealize Tech Fundにも協力してもらえたことは幸運でした。両ファンドのおかげで、シリコンバレーとハリウッドのベテランを組み合わせたユニークなファンドを得ることができました」。

ご想像のとおり、Wonder Dynamicsはこの資金を、エンジニアリングとVFXチームの規模を拡大し、製品のさらなる開発と拡張を行う……それがどういう製品であるにせよ。

まあ彼らのアドバイザリーボードがきちんと機能していれば、間違いを犯すことは難しいだろう。彼らは「私たちは、非常に幸運なことに、AIと映画の両方の分野から最も優秀な人材を迎えることができました」と彼らは語っているが、それは決して誇張ではない。現在のアドバイザリーボードに含まれているのは、Steven Spielberg(スティーブン・スピルバーグ)氏とJoe Russo (ジョー・ルッソ)氏(映画制作とイノベーションに関する明らかな天才)、UCバークレー校ならびにGoogleのAngjoo Kanazawa(アンジュ・カナザワ)氏とMITのAntonio Torralba(アントニオ・トラルバ)氏(ロボットと自律性に関する長年のAI研究者)、そして「会社をどのように前進させるかを考えているときに、豊富な知識を提供してくれる」映画界や金融界の数多くの人たちだ。

AIは多くのハイテク企業や企業の内部に深く組み込まれて、その業界ではしっかりとした収益源となっているが、クリエイター主導の映画やテレビの世界では、まだ縁遠い概念のままだ。それでも、「The Mandalorian(マンダロリアン)」の撮影に使用されたILMのStageCraft(ステージクラフト)のようなハイブリッド制作技術は、従来の3Dモデリングやゲーム制作に使用されていた技術が、映画制作にも十分適用できることを示している、それどころか場合によってはライブ配信さえも可能なのだ。NVIDIA(エヌビディア)やAdobe(アドビ)といった先駆者たちが示しているように、AIはますます世界の一部になってきていて、それが映画に取り込まれるのは必然のように思える。たとえそれが正確にはどのような形になるかを今いうのは難しいとしても。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:映画VFX動画撮影 / 動画編集Wonder Dynamics資金調達エンターテインメント

画像クレジット:Wonder Dynamics

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

リモートでの動画制作をシンプルにするOpenReelが20.7億円調達

OpenReelは、リモートで簡単に動画を記録できるというスタートアップだ。同社はこのほど、シリーズAで1900万ドル(約20億7000万円)を調達した。

CEOのLee Firestone(リー・ファイアストーン)氏とCTOのJoe Mathew(ジョー・マシュー)氏は最初、動画の代理店を始めたが、リモートでの制作を含む大きな仕事を任されると、既存のソリューションでは満足できず、結局、自分たちでその技術を作ろうという結論になり、開発に1年あまりを費やした。

もちろん、リモートのビデオプロダクションはすでにいろいろ存在しており、それぞれが独自のやり方で仕事をしていた。特に2020年、彼らは忙しかった。TechCrunchでも、カメラやライトをライターへ送り、その後、トラブルシューティングで大量の会話をする羽目になった。

しかしOpenReeの「リモートカメラ」技術は、そんな作業を大幅に単純化してくれる。さらにプロダクションのメンバーに、細かいコントロールができる。同社ソフトウェアを使うとリモートのディレクターが現場のウェブカメラやモバイルデバイスをコントロールすることが可能で、リアルタイムの音声とカメラはそれぞれ最大4人を配置できる。4K画質も可能なその動画はローカルに保存でき、撮影後に自動的にアップロードされる。テレプロンプターといった周辺機能もサポートしている。

「私たちの顧客に聞いてみるとわかりますが、彼らが自分でやると、いろいろな技術を自分たちで組み合わることになり、現場へ送るかどうかも自分で決めなければなりません。それがすべてうまくいったとしても、自分たちと相手で同じクオリティとシームレスなエクスペリエンスを揃えることができません」とファイアストーン氏はいう。

当然ながら、2020年には需要が急増。これまで1年に数千本の動画撮影をサポートしたが、その数は10倍か20倍になってしまったとファイアストーン氏はいう。

事実、OpenReeによるとDell、HubSpot、ViacomCBSそしてTechCrunchの親会社Verizon Mediaなどのクライアントが、マーケティングビデオ、社内コミュニケーション、顧客の証言などを記録するためにこの1年間で、年間経常収益は12倍に増加したという。200社以上のエンタープライズクライアントに加え、同社は「数百社」のSMB(中小企業)のお客様を抱えている。

「これらの組織では、コンテンツに対する潜在的な需要があります。私たちのテクノロジーは【略】そのロックを解除した」とファイアストーン氏はいう。また、パンデミック後には、対面での撮影がより安全になるとは考えていないとのこと。

シリーズAはFive Elms Capitalからのもので、これによりOpenReelの調達額は、融資も含めて2390万ドル(約26億円)になる。今回の資金は、メディアへの録画だけでなく、ライブストリーミングするといった新機能の開発に使いたいという。2020年はグローバル化も努め、125カ国でローンチしたが、このグローバルでの成長は今後も続けたいとのことだ。

Five ElmsのThomas Kershisnik(トーマス・ケルシスニック)氏は声明で「Five Elmsは、古いやり方を変えることにチャレンジしている企業を好んでいる。OpenReelは、まさにそれだ。同社はリモートテクノロジースタックの重要な一部であることを自ら実証し、多様なコンテンツ創作ツールを収めたツールボックスの中でも必須のツールとして、エンタープライズのコンテンツを強化し、さらに多くを作れるようにする」と語る。

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カテゴリー:その他
タグ:OpenReel資金調達動画撮影

画像クレジット:OpenReel

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

デジタルデザインのCanvaが静止画・動画から背景を消すKaleidoを買収

動画と画像から背景をドラッグ&ドロップで簡単に消してしまうサービスであるKaleidoが、今急成長中のデジタルデザインプラットフォームのCanvaに買収された。買収額などの詳細は明かされていないが1億ドル(約106億円)前後と推測されている。

これは正しいタイミングで正しい場所にいたという好例だろう。オーストリアの首都ウィーンに本拠を置くKaleidoは、2019年に画像からすばやく簡単に背景を除去する無料ツールremove.bgを発表した(日本語版サイト)。このツールは、邪魔な背景を取り除きたいがPhotoshopを開いて面倒な作業はしたくないという人々に圧倒的な人気を得た。

続いて2020年末にKaleidoはUnscreenを披露した。簡単にいえばUnscreenは動画向けのremove.bgだ。このツールのコンセプトはremove.bgと同じだったが、実現にははるかに複雑なエンジニアリングが必要だった。高性能、単機能のこれらの製品はやがてAdobeのような大きなフレームワークの一部となることが明白だったが、オーストラリアのデザインプラットフォームCanvaがライバルを打ち負かしたようだ。

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テーブルに積まれた本の背景が取り除かれるデモ(画像クレジット:Unscreen)

Canvaはこの買収と同時にプロダクトのモックアップを簡単に生成するSmartmockupsを発表した。Canvaがプロダクトの拡張に意欲的であることを示している。

Kaleidoの共同ファウンダーでCEOのBenjamin Groessing(ベンヤミン・グレシンク)氏はプレスリリースでこう述べている。

Kaleidoはスタート当初から一貫して投資家を介さず、自力で事業を拡大してきました。会社は我々2人のファウンダーとすばらしいエンジニアリングチームによって運営されてきました。スタート当初から黒字であったため、今回の買収は会社が存続するために必要不可欠なものではありません。単に多くの側面で理に適っていると考えたからです。

ドイツのメディアDie PresseDer Brutkastenの報道によれば、関係者はこの買収はオーストリアで最大の現金化だったRuntastic(2億2000万ユーロ、約283億7000万円)に次ぐものと見ているという。また買収額は1億ドル弱と見ている。

買収を祝うカレイドのチーム。メンバー1人ひとりの写真から切り抜いてデジタル的に合成された写真(画像クレジット:Kaleido)

正確な金額がいくらだったかは別として、チームは大いにハッピーなようだ。集合写真はKaleido自身のプロダクトを使ってデジタルで合成されている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:CanvaKaleido画像編集動画編集買収

画像クレジット:Unscreen

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook