Kubernetes利用システムのリソース支出を視覚化し管理とインサイトを与えるKubecost

ウェッブ・ブラウン氏とアジェイ・トリパシー氏(画像クレジット:Kubecost)

2021年はKubernetesの採用が爆発的に増え、このクラウドネイティブツールを今では560万ほどのデベロッパーが使っている。前年に比べ67%の増加だ。

Kubernetesはオープンソースのコンテナプロジェクトで、アプリケーションを自動化しモニターし実行するために2014年にGoogleが作ったシステムだ。

Kubernetesはクラウドネイティブのデベロッパーが最も多く使っているツールの1つで、企業が大きくなると扱いが難しくなることもあるが、しかしKubecostはそんな成長痛の一部を、Kubernetesの大きな支出をモニターし、管理し、最適化するオープンソースのツールで軽減しようとする。

同社は2019年に2人の元Google社員、Webb Brown(ウェッブ・ブラウン)氏とAjay Tripathy(アジェイ・トリパシー)氏が創業した。どちらもGoogleのインフラストラクチャーやGoogle Cloudのための、インフラストラクチャモニタリングの仕事をしていた。

「インフラモニターの分野には、コンテナへの本格的な移行に要する費用とパフォーマンスと信頼性をめぐって問題があった。それらのチームは優遇されていたが、支出の可視性は完全に犠牲にされていた。それを数百万人ぶんの給与に例えると、どれだけの額がどの部やどのチームに行くのか分からない、という状態だった」とブラウン氏はいう。

Brown氏の説明では、そういう可視性がなければ、ダウンストリームに起きることも往々にして無駄と見なされる。彼が実際に見た例では、チームが80%も過大支出をしていて、しかもプロダクトの正しいコストを誰も知らなかった。

チームに支出の安全ネットがあって、今後のショックを和らげられるために、Kubecostはリアルタイムの費用可視性と、Kubernetes関連の何百万ドル(何億円)ものクラウド費用を継続的にモニターして軽減するために必要な、インサイトを提供する。

同社のコアプロダクトはオープンソースで、チームが自由に使える。ブラウン氏がいうのだから真実だろう。またエンタープライズ向けの商用プロダクトもあり、その機能は数分でインストールできて、セールスに持ち込まなくても試用や現用ができる。

顧客は情報をKubecostと共有しなくてもよいが、その代わりにその技術はオープンソースの情報を使い、それを顧客の環境に持ち込み、それをクラウドやオンプレミスのデータセンターに統合する。

そこから、情報はリアルタイムで集められて、企業がリソースに支出しているすべての領域と、費用の高騰やその理由を示すインサイトが提供される。それからKubecostは、費用を削減する方法のインサイトを提供し、アラートを送ったり、今後の長期的管理を可能にするポリシーを設定する。

画像クレジット:Kubecost

Kubecostはすでに2000社以上と仕事をしており、そのうち、エンタープライズ級は100社ほどとなる。それは2021年の1年間で3倍になり、エンゲージメントの数は5倍になった。同社が現在管理しているKubernetesの支出は総額20億ドル(約2300億円)ほどに達する。同社の年間経常収益は、前年比で3倍だ。ブラウン氏はKubecostの評価額を明らかにしないが、2021年の5倍だという。

同社を採用する企業がこれまでのペースで増えていくという想定で、同社は2500万ドル(約28億7000万円)のシリーズAを調達した。これをリードしたのはCoatue Management、そしてシード投資家からの参加としてFirst Round CapitalとAfore Capitalの名がある。Coatueのパートナー、David Cahn(デビッド・カーン)氏がKubecostの取締役会に加わる。

この新たな資金は全社的な雇用増に充てられる。Kubecostのルーツはオープンソースだが、ブラウン氏の計画では、そのコミュニティへの相当な投資により、機能をもっと増やしたいという。また、そのエコシステムのその他のプロダクトの統合や、インサイトと最適化の開発も進めたいとのこと。

さらに、Kubecostの管理を他に任せたい顧客企業やチームのために、その付加価値バージョンである「Hosted Kubecost」も開始する。

「全体的にいえるのは、これまではクラウドからコンテナへの本質的で重要な変革の波があり、それはデータセンターからクラウドへの変化よりも大きな変化だと私は認識しています。だからそれは、これからも続くだろう」とブラウン氏はいう。「Kubernetesは今や、モダンなエンタープライズのテクノロジースタックの心臓部です。私たちの計画は、そこに深入りすることによって移行を興し、すべてのアプリケーションをそこから動かせるような高スケールのプロダクトに到達したい」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ヘルスケアデータを構造化するScienceIOがステルス状態から脱出

Gaurav Kaushik(ガウラブ・カウシク)氏は、混乱した医療データの世界を整えるために今回立ち上げたステルス事業の数年前からすでに、より良い視覚化が医療結果にどのような影響を与えるかについて、少しずつ構想を深めていた。2018年にこの新進起業家は、ボストンのがん研究企業ならびにFlatIron Health(フラットアイアン・ヘルス)と協力して、がん患者、がんの変異、健康状態の結果のすべてがどのように関連しているかを調べていた。

最終的には、特に有色人種の女性に酷い結果をもたらすトリプルネガティブ乳がんの患者が、免疫療法によく反応するという分析結果を得た。

カウシク氏は、整理されていない患者データを治療計画に結びつけることのインパクトを理解して、元ティールフェローでDorm Room FundのマネージングパートナーであるWill Manidis(ウィル・マニディス)氏と共同で、新しいスタートアップScienceIO(サイエンスIO)を創業した(マニディス氏がCEOを務めている)。このスタートアップは、自然言語処理とデータ分析を用いて患者データの巨大なデータベースを構築し、関係者が患者をよりよく理解し、総合的に治療することに役立てようとしている。

「地図がなければ旅ができないのに、医療には地図がないのです。例えば、どの患者さんが切実で満たされていないニーズを抱えていて、特別な配慮や新たなソリューションを必要としているのか、あるいは希少疾患に対する新しい治療法を見つけようとしているのかなどの、基本的なことを理解しようとすると、何千時間もの労力と何年もの期間が必要になるのです」とマニディス氏は述べている。

ヘルスケアデータの状況をなんとかしようとするスタートアップは、ScienceIOが初めてではない。そして、それはおそらくこれが最後のものでもないだろう。だが、このスタートアップの差別化ポイントは、何年もかけて、最も代表的なデータを集めたデータベースを構築してきたことだ。

カウシク氏は「私たちは過去2年間をかけて、この種のものとしては初のヘルスケアAIプラットフォームを構築しました。私たちは、データファーストのアプローチを人工知能に適用し、バラバラのヘルスケアデータを高品質で計算可能なデータに変えるために必要な技術を開発しています。ヘルスケア分野では、データを活用したソリューションを構築する機会が非常に多く、当社のプラットフォームや幅広い自然言語処理ルネッサンスから恩恵を受ける、企業のエコシステムが生まれることを期待しています」という。

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NLP(Natural Language Processing、自然言語処理)とは、人間の音声をコンピュータが理解しやすくするための最新技術だ。同社は、ソーシャルメディアの投稿を見て、その投稿を行った人間がどのように感じているかを予測する技術であるセンチメント分析に、NLPがどのように利用できるかを説明した。ScienceIOのNLPアプリケーションは、機械学習と組み合わせられることで、900万以上の医療条件、薬剤、機器、遺伝子を潜在的な手がかりとして、患者の健康に影響を与える変数を見つけ出す。

ScienceIOの動作画面(画像クレジット:ScienceIO)

幅広いというのは、その製品がさまざまな潜在的顧客に適用できるということを意味する。例えば臨床医が患者の背景に基づいて患者の全体像を把握できるようになると、カウシク氏は考えている。

「扱う患者さんにはさまざまなヘルスケアイシューがありますので、それに対してがんをよく理解しているとか、社会経済状況を別途理解しているというだけでは十分ではないのです」とカウシク氏はいう。「あらゆる分野に驚くほどの深さがありますし、そうした問題を最小化することなく患者全体を把握することが必要なのです」。

さらに彼は「3年間、世間には公表しないままこのデータセットを構築してきた理由は、患者をバイオリスクに還元するのではなく、患者を医師が見るべきものとして表現するためだったのです」と付け加えた。

マニディス氏は、保険会社が毎日、莫大な数の医療プランや、請求コード、コスト、症状などのデータを受け取っていることを例に挙げた。

マニディス氏は「そこでは、請求をどのように優先させるか、裁定に回すか、不正行為の検出などを行うかで常に悩まされています。そこでScienceIOを使えば、データを構造化し、請求内容を理解して、患者への保険金をより早く、正確に支払うことができます」という。

注目すべきは、ScienceIOはトラッキングを行うのではなく、データをより検索しやすくし、有用な洞察を生み出すことのできる分析結果を作成するのだということだ。ScienceIOは、現在いくつかの顧客とパイロットプログラムを行っているということだが、具体的な名前は明かしていない。カウシク氏によれば、これらのパイロットの結果によって、一般公開までの現実的なスケジュールが左右されるということだ。

これまでの進展によって、これまで秘密裏に行われていたビジネスが、800万ドル(約9億1000万円)のシード資金を調達することができた。今回のラウンドには、Section 32やSea Lane Venturesなどの機関投資家の他、Lachy Groom(ラッチー・グルーム)氏やJosh Buckley(ジョシュ・バックリー)氏といった起業家も参加している。

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画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:sako)