専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが総額5.7億円調達、遠隔医療センターの構築や海外展開を加速

専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが総額5.7億円調達、遠隔集中治療モニタリングシステムなどの製品化や海外展開を加速

遠隔ICUサポートサービスを提供するT-ICUは2021年12月28日、第三者割当増資による総額5億7000万円の資金調達を発表した。引受先は、パソナグループ、Beyond Next Ventures、SMBCベンチャーキャピタルおよび個人。

調達した資金を用いて、NTT西日本との「遠隔医療におけるエッジコンピューティング技術を活用した情報処理の実現方式に関する共同実験」およびNEDO助成事業「スコアに基づく遠隔集中治療モニタリングシステム」の製品化、地方と都市の医療格差の課題解決に向けた遠隔ICUにとどまらない遠隔医療センターの構築、JICAの受託事業「新型コロナウイルス感染症流行下における遠隔技術を活用した集中治療能力強化プロジェクト」を足がかりとした海外展開を加速させる。

遠隔相談サービス「リリーヴ」

遠隔相談サービス「リリーヴ」は、「全ての病院に集中治療医を」を形にする重症患者診療の支援システム。全国的に専門家が不足する重症患者診療の現場を集中治療医・集中ケア認定看護師で構成されたメディカルチームが24時間365日サポートする。命に関わる重症患者診療を担う医療スタッフの不安に寄り添い、呼吸・循環管理、鎮静・鎮痛、感染症治療などの全身管理を最新の知見と豊富な経験で支援する。専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが総額5.7億円調達、遠隔集中治療モニタリングシステムなどの製品化や海外展開を加速

遠隔モニタリングシステム「クロスバイ」

遠隔モニタリングシステム「クロスバイ」では、ベッドサイドに配置した高性能カメラによる細やかな患者観察を実現。患者の表情や顔色、呼吸様式の観察も可能で、人工呼吸器を含む各種医療機器と接続することで、多面的な患者情報を院内の離れた場所へ届けることが可能な遠隔モニタリングシステムという。複数の患者を一画面で同時にモニタリングし、医療機器との接続でそのグラフィックモニターを表示することもできる。感染隔離中のCOVID-19診療において非常に有効な手段という。専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが総額5.7億円調達、遠隔集中治療モニタリングシステムなどの製品化や海外展開を加速

 

自宅往診サービスのコールドクターが24時間対応体制確立、夜間・休日に加え平日昼間のオンライン診療・医療相談も提供

自宅往診サービスのコールドクターが24時間対応体制確立、夜間・休日に加え平日昼間のオンライン診療・医療相談も提供開始

自宅往診サービス「コールドクター」(Android版iOS版)を運営するコールドクターは12月27日、従来の夜間・休日に加えて新たに平日昼間のオンライン診療および医療相談サービスの提供を本日より開始したことを発表した。

コールドクターは、往診サービスの認知度が高まる中で「夜間・休日に限らず、医師に相談したい」というユーザーの声を受け、今回のオンライン診療・医療相談サービスの提供をスタート。新たに「医療相談」という選択肢を増やすことで、「体調が少し変かもしれない」という段階から気軽に医師や看護師に相談することを可能にした。コールドクターは今後も、より幅広い患者の声に応え、患者とその家族に寄り添い、サービスの向上を目指したいという。

コールドクターは、健康保険が適用可能なの往診サービスで、ウェブサイトおよび専用アプリから予約可能。医療機関との連携により約400名の医師が登録されており、最短30分で医師が診察に訪問、その場で薬の処方もされる。支払いは、クレジットカード払い、または後日郵送で請求(GMO後払い:コンビニ払い・銀行振込が選択可能)。

また専用アプリは、診察の予約操作や診察後の情報管理機能、往診する医師の現在地や到着時間がわかる「到着時間予測機能」、処方薬の情報を確認できる「お薬情報機能」、クレジットカード決済機能、ユーザー本人だけでなく家族の情報も登録できる機能などを備えている。

診察エリア(北海道)

  • 北海道:札幌市(中央区、東区、西区、北区、白石区、厚別区、豊平区、手稲区、清田区、南区)、石狩市、当別町、江別市、北広島市

診察エリア(関東)

  • 東京都:23区、武蔵野市、調布市、府中市、小金井市、国分寺市、国立市、小平市、西東京市、東村山市、狛江市、東久留米市、清瀬市、稲城市、東大和市、立川市、日野市、町田市、昭島市、多摩市、武蔵村山市
  • 神奈川県:川崎市(全区)、横浜市(青葉区、都筑区、港北区、鶴見区、神奈川区、緑区、旭区、保土ケ谷区、西区、南区、瀬谷区、中区、港南区、磯子区、戸塚区、泉区)、大和市、相模原市(中央区、南区)、座間市、綾瀬市
  • 埼玉県:さいたま市(大宮区、見沼区、浦和区、西区、北区、南区、緑区、中央区、桜区)、川口市、蕨市、戸田市、草加市、八潮市、朝霞市、新座市、志木市、上尾市、北足立郡伊奈町、桶川市、北本市、蓮田市、白岡市、比企郡(川島町、吉見町)、和光市、さいたま市岩槻区、三郷市、吉川市、越谷市、春日部市、南埼玉郡宮代町、北葛飾郡杉戸町、久喜市、加須市、富士見市、入間郡三芳町、東松山市、ふじみ野市、所沢市、行田市、鴻巣市、幸手市、坂戸市、鶴ヶ島市、川越市

診察エリア(近畿)

  • 大阪府:大阪市(北区、淀川区、東淀川区、都島区、旭区、城東区、東成区、鶴見区、中央区、天王寺区、生野区、阿倍野区、東住吉区、西区、大正区、港区、福島区、此花区、西淀川区、浪速区、西成区、住吉区、住之江区)、豊中市、吹田市、摂津市、守口市、門真市、寝屋川市、大東市
  • 兵庫県:尼崎市、伊丹市、西宮市、宝塚市、川西市

診察エリア(中部)

  • 愛知県:名古屋市全区、刈谷市、清須市、豊明市、日進市、みよし市、東郷町、大府市、東海市、瀬戸市、春日井市、長久手市、北名古屋市、岩倉市、尾張旭市、あま市、海部郡、飛島村、津島市

診察エリア(九州)

  • 福岡県:福岡市(東区、博多区、中央区、南区、城南区、西区、早良区)、小郡市、春日市、大野城市、那珂川市、糟屋郡(志免町、須惠町、新宮町、粕屋町、宇美町、篠栗町、久山町)、久留米市、飯塚市、八女市、筑紫野市、古賀市、宮若市、朝倉市、糸島市、朝倉郡(筑前町)、三井郡(大刀洗町)、八女郡(広川町)
  • 佐賀県:鳥栖市、三養基郡(基山町、上峰町、みやき町)、神埼市、神埼郡(吉野ヶ里町)

難聴治療と多発性硬化症治療の新薬をFrequency Therapeuticsが発表、第II相試験の不本意な結果を受けて試験を再設計

Frequency Therapeutics(フリークエンシー・セラピューティクス)は設立から間もないが、浮き沈みを経験している。研究開発イベント期間中の米国時間11月9日、同社は、主力の難聴治療薬の開発状況を補足する多くの発表を行い、いくつかの方向性を示した。

2015年に設立されたフリークエンシー・セラピューティクス(以下、フリークエンシー)は、難聴のための再生医療アプローチに取り組んできた。このアプローチでは前駆細胞の再生を軸としている。前駆細胞は、最終的に蝸牛の中で音を伝導する重要な有毛細胞となる。これらの有毛細胞が不可逆的に消失したり損傷したりすると、最も一般的な難聴である感音性難聴になる。

同社は2021年11月、難聴の治療薬候補であるFX-322に関する発表をいくつか行った。フリークエンシーは、初期の試験で蓄積されたデータを示し、FX-322が臨床的利点をもたらすこと、第Ⅱ相試験の結果が思わしくなかったのは、試験設計に不備があったことを説明した。そして、新しい難聴治療薬と多発性硬化症治療薬のプログラムを発表した。

FX-322試験設計の刷新

感音性難聴のほとんどの症例は、人工内耳または補聴器のいずれかを使用して治療される。突発性難聴を発症した場合は、ステロイド治療を施すことがあるが、感音性難聴の治療や改善を目的として承認された治療薬はない。

FX-322はすばらしいスタートを切った。1件の第Ⅰb相試験では、15人にFX-322を投与し、8人にプラセボを投与したが、有害な副作用は認められなかった。FX-322を投与した4人は、特定の言葉を聞く能力において、臨床的に意義のある改善が見られた。

ちなみに、フリークエンシーは単に音を聞く能力ではなく「言語知覚」に基づいて治療薬の効果を評価している。人工内耳に関する他の治験でもこの指標が使用されており、チーフサイエンティフィックオフィサーのChris Loose(クリス・ルース)氏によると、この方法で聴覚治療薬を評価することの有用性について、同社とFDAの意見は「一致」しているという。

フリークエンシーの最高開発責任者であるCarl LeBel(カール・ルベル)氏によると、治療薬の効果は長期的に持続している。5人の被験者を1~2年追跡調査して得た未発表の耐久性データから、3人の被験者に統計的に有意な改善が今なお続いていることがわかった、とカール・ルベル氏はTechCrunchに語っている。

「このことは、一部の被験者は効果を維持できることを示しています。その効果は1年持続するかもしれません。あるいは2年かもしれません。こうした改善が見られる患者をさらにモニターする必要はありますが、この薬は実際に疾患修飾効果があることを示しています」とルベル氏は述べた。

しかしFX-322に関する良いニュースは長くは続かなかった。第Ⅱa相試験では、プラセボと比べて難聴の改善が見られなかった。

この試験は95人の被験者を対象に実施された。半数にFX-322が4回投与され、残りの半数にプラセボが投与された。両群とも改善は限定的なものであり、同社はその試験でFX-322の「明確な効果はなかった」と報告した。

このニュースが発表された日、フリークエンシーの株価は36ドル(約4100円)から7ドル(約800円)に下落し、それ以来、過去の高値を大きく下回っている。これを受けて、一部の株主は、2021年3月23日以前の収支報告、プレスリリース、SEC提出書類、プレゼンテーションで、経営陣がFX-322について事実を曲げて伝えたとして、集団訴訟を起こした。

この時点で、経営陣は、この試験は公平ではない判断によるの悪影響を受けたと主張している。ルベル氏によると、患者は臨床試験を受けるために、自身の聴力を過小評価した可能性があるからだ(そして試験は、その可能性を考えて適切に調整されなかった)。

TechCrunchの取材に対し、ルベル氏は「患者が試験に参加する際、過去の言語知覚スコアと試験のベースライン訪問時のスコアが一致しなかった」と述べている。

フリークエンシーのコーポレートアフェアーズ上級副社長であるJason Glashow(ジェイソン・グラショウ)氏は、同社はこれを試験の「設計上の問題」だと考えていることを明らかにした。

「この試験は公平ではない判断の影響を受けましたが、それは参加した被験者の責任ではありません」と同氏は続けた。

研究開発イベント時に、フリークエンシーは3つの第Ⅰ相試験で蓄積したデータについて報告し、FX-322が反応パターンを示していたこと、第Ⅱ相試験の結果は異常値だったことを主張した。

フリークエンシー・セラピューティクスが実施したFX-322に関する3つの試験で蓄積したデータは、ある反応パターンを示した。第Ⅱ相試験ではプラセボと比べて効果は確認されなかったが、経営陣は、この試験は公平ではない判断の悪影響を受け、試験設計が不十分だったと主張している(画像クレジット:Frequency Therapeutics)

このニュースが、進行中の訴訟にどのような影響を与えるのかは不明だ。しかしこの経験が、FX-322の今後の試験の構造を特徴づけたと言える。

フリークエンシーは、FX-322に対する新しい第Ⅱb相試験の開始をすでに発表している。124名の被験者が参加するこの試験では、ベースラインの聴力を測定する前に、被験者の聴力をモニターする1カ月の「リードイン」が設けられた。最初の患者は、2021年10月にFX-322が投与された。

また、どのようなタイプの難聴を対象とするかについても同社は焦点を絞り込む。対象となるのは、騒音性難聴または突発性感音難聴と診断された被験者になるだろう。微妙な違いではあるが、治療の対象となる難聴のタイプのパラメータがわずかに変わってくる(CDCの推定によると、騒音性難聴は年間1000万〜4000万の人々に影響を及ぼしている)。

新しい治療薬候補と多発性硬化症プログラム

フリークエンシーはその地歩を固めるために、初めて、FX-322以外の製品にも取り組もうとしている。同社は、FX-345という新しい製品の試験も計画している。FX-345は、FX-322に含まれる小分子の効能を改良したものだ。ルース氏によると、この効能により、FX-345は蝸牛の深部にまで浸透することができる。

同社は、2022年第2四半期に、新薬治験開始申請(IND)を進める予定だ。

フリークエンシーは、FREQ-162という多発性硬化症の治療薬も開発中である。これは同社が以前から明確に述べていた目標の1つ「再生医療へのより幅広い取り組み」に向けた新たな一歩だ。

TechCrunchが確認した説明によると、同社は、治療薬がオリゴデンドロサイトの発生を促進できることを示す、マウス試験から得た予備データを持っている。多発性硬化症の患者は脂肪鞘が劣化しているが、オリゴデンドロサイトはその脂肪鞘を産生する。

しかし、同社は今後の試験のスケジュールを明らかにしていない。

今のところ、FX-322と新たに設計された試験への重点的な取り組みは変わらない。新たな試験では、未解決の問題の解決策が見つかる可能性がある。

画像クレジット:Science Photo Library – VICTOR HABBICK VISIONS / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

メルクのコロナ飲み薬「モルヌピラビル」米FDAが緊急使用許可、抗ウイルス剤として2番目

Pfizer(ファイザー)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)抗ウイルス剤は、米国ではすでにいくつかの競争相手がいる。AP通信の報道によれば、米食品医薬品局(FDA)はMerck(メルク)の経口治療薬「Molnupiravir(モルヌピラビル)」について、緊急使用許可を出したという。この治療薬は、理想的には発症からすぐに投与し、ウイルスの遺伝コードに「エラー」を挿入することで、SARS-CoV-2ウイルスの複製を抑制し、リスクの高い患者の軽度または中等度の症例が重症化するのを防ぐというもの。

しかし、この薬は、PfizerのPaxlovid(パクスロビド)のようには広く使用されないかもしれない。若い患者の骨や軟骨の発達に影響を与える可能性があるため、Merckの薬は18歳以上の大人にしか使用できないが、Pfizerの製品は12歳以上の患者に使用できる。また、薬が胎児に影響するリスクがあるため、妊婦や妊活中の服用は推奨されていない。FDAは、治療中も治療後も避妊具を使用し、(妊娠を試みる前に)女性は数日、男性は3カ月待つべきだとしている。

さらに、MolnupiravirにPaxlovidほどの効果は期待できないようだ。Pfizerのソリューションが入院や死亡を90%減少させたのに対し、Merckの飲み薬は30%しか減少させることができなかった。この薬は、特にPaxlovidが使用できない場合の第二の選択肢となるかもしれない。両社の製品は変異したスパイクタンパク質をターゲットにしたものではないため、同ウイルスのオミクロン変異株にも引き続き有効だと考えられる。

それでも、新型コロナウイルスによる入院や死亡を最小限に抑えるためには、これも有効な手段の1つとなるかもしれない。米国が1000万人の患者に対応できるだけの量を発注した場合、Pfizerの薬が最も入手しやすくなるが、Merckの薬は310万人に対応できるだけの量があるという。たとえ効果が限定的であっても、それによって何十万人もの人々の命がこの病気の最悪の事態から救われるかもしれない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Jon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Merck

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(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

米FDAがファイザーの新型コロナ経口薬を12歳以上に認可

米食品医薬品局(FDA)は、Pfizer(ファイザー)の抗ウイルス剤Paxlovid(パクスロビド)を緊急認可し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の軽度から中等度の症例を治療する最初の経口療法となった。この治療法は、重症化のおそれのある12歳以上のリスクの高い患者だ。FDAは数日以内に使用を認めているため、オミクロン株の襲来に対して有効かもしれない

Paxlovidは処方箋のみで入手可能で、新型コロナの症状に気づいてから5日以内に服用することになっている。Pfizerのテストによると、高リスクの患者でも入院や死亡を88%防ぐことができる。この治療薬は、ワクチン接種者と非接種者の両方に処方することが可能で、30錠を5日間かけて服用する。タンパク質阻害剤であるニルマトレルビルと、その阻害剤が体内で分解されないようにするリトナビルが含まれており、副作用として味覚障害、高血圧、下痢、筋肉痛などがある。

FDAの医薬評価調査センターのディレクターであるPatrizia Cavazzoni(パトリツィア・カヴァッツォーニ)博士は「この認可により、新たな変異種が登場したパンデミックの緊急事態において、新型コロナウイルスと戦う新しいツールを提供し、重症化のリスクの高い患者に抗ウイルス治療へのアクセス性を高めることができた」と述べている。

ニューヨーク・タイムズによると、これまで米国は1000万人分の薬を注文している。同社は、1週間以内に6万5000人の米国人をカバーするのに十分な錠剤を納入する予定だ。その後、2021年1月に15万個、2月に15万個と生産が拡大される予定となっている。この薬は唯一の抗ウイルス剤というわけではない。Merck(メルク)の対抗となる治療薬も間もなく承認される見込みで、Pfizerよりも容易に入手できるようになる可能性が高い。ただし同社の治療薬ははるかに効果が低く、入院や死亡を30%しか防ぐことができない(それでも、何も治療しないよりはましだ)。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のDevindra HardawarはEngadgetのシニアエディター。

画像クレジット:Pfizer

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(文:Devindra Hardawar、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Coral Capital、スタートアップ企業の従業員・家族向け新型コロナワクチン合同職域接種3回目の実施を発表

Coral Capital、スタートアップ企業の従業員・家族向け新型コロナワクチン合同職域接種3回目の実施を発表

シードステージを対象とするベンチャーキャピタル(VC)のCoral Capitalは12月23日、「Coral新型コロナウイルスワクチン合同職域接種プログラム」(Coralワクチン合同接種プログラム)による接種済み対象者への第3回ワクチン接種に向けて、実施体制を整えたことを発表した。前回同様、小児科・内科クリニック「キャップスクリニック」を展開するCAPSグループ、接種会場の無償提供を行った三菱地所との協力体制のもと実施する。接種対象者は、投資先スタートアップ企業およびパートナーVC45社の投資先スタートアップ企業の従業員、またその家族。開始日は2022年4月11日を予定。

「Coral新型コロナウイルスワクチン合同職域接種プログラム」概要

  • 開始日:2022年4月11日から(予定)
  • 場所:Coral Capital本社イベントスペース(東京都内)
  • 接種想定人数:約1万8000人(前回接種の7~9割の希望者を想定。年明けより希望者調査を実施し確定)
  • ワクチン:政府より配布されるワクチン

Coral Capitalは、2021年6月23日から8月11日にかけて、CAPSグループとの協働でCoralワクチン合同接種プログラムを実施。大手町の接種会場において、投資先のスタートアップ企業などの従業員、その家族を対象に1日に2000人、合計2万1563人にモデルナ製ワクチンの2回の接種を完了した実績を持つ(参考:Coralスタートアップ合同職域接種、2万人超へのワクチン接種を完了)。

3回目の合同職域接種となる今回は、CAPSグループの人員拡大とオペレーションのさらなる効率化によって、1日あたりの接種人数を2500名に拡大し、1週間程度での接種完了を目指す。

Coral Capitalは、福利厚生の面でワクチン接種が後回しになりかねないスタートアップ従業員に対して確実なワクチン接種の機会を確保すること、日本の未来を作るスタートアップの従業員・関係者の健康を守り社会のイノベーションを加速すること、効率の良い合同接種オペレーションの構築とその知見を他社の職域接種に広めることを「スタートアップ向けの合同職域接種の意義」として挙げている。

CAPSグループは、キャップスクリニックを運営するナイズとクリニックチェーンマネジメント事業を展開するCAPSで構成。年間15万件以上のワクチン接種実績や、22万回以上の新型コロナワクチンの接種実績を有する。また、コロナ禍において2万回以上のオンライン診療を実施し、高齢者向けの新型コロナワクチン接種の際には破棄リスクのあるワクチンをキャンセル待ちの人に回す取り組みを行なってきた。

レブコムの音声解析AI電話MiiTelが東京都全域の保健所で採用、新型コロナ陽性患者への電話業務・療養支援に活用

東京都がレブコムの音声解析AI電話「MiiTel」を全保健所に導入、新型コロナ感染者対応などの電話業務を効率化へ

音声技術とAIでコミュニケーション課題を解決する企業RevComm(レブコム)は12月22日、音声解析AI電話「MiiTel」(ミーテル)が東京都のすべての保健所に採用され、新型コロナウイルス感染症の陽性患者に対する電話業務に活用されることになったと発表した。

MiiTelは、IP電話、自動文字起こし、音声解析などがひとつにまとまった、電話業務効率化のためのシステム。固定電話器がなくてもPCで利用が可能になる。たとえば、通話内容をAIが自動的に解析し、文字起こしと要約を行ってくれるほか、営業やコールセンターで活用できるさまざまな機能を備えている。

2021年11月には、東京都福祉保健局が、新型コロナウイルス感染症の陽性患者に対する積極的疫学調査や健康観察のための電話業務を効率化する目的で、すでに一部の保健所に「MiiTel」を導入していた。今回、多摩地区と島しょ部を含む、東京都全域のすべての保健所に導入が広げられることになったわけだ。東京都福祉保険局では、保健所の電話業務の効率化と、迅速な患者の療養支援に向けたサポートを行うとしている。

Oracleが電子医療記録会社Cernerを約3.2兆円で買収、ヘルスケアに進出

ホリデーウィークはニュースが少ないなんて誰が言っているんだ?Oracle(オラクル)は、年末の記事執筆に疲れたテック系ジャーナリストのために、米国時間12月20日、いくつかのビッグニュースを提供してくれた。この大手データベース企業は、電子医療記録会社のCernerを、総額283億ドル(約3兆2000億円)で買収すると発表した。

「OracleとCernerは本日、OracleがCernerを1株あたり95ドル(約1万800円)、株式総額にして約283億ドルをすべて現金で支払い、買収することで合意に至ったと、共同で発表しました」と、同社はプレスリリースで述べている。

今回の買収により、Oracleは成長市場であるヘルスケア分野に大きく進出することになる。Synergy Research(シナジー・リサーチ)によれば、Oracleが最近起ち上げたクラウドインフラストラクチャ事業は一桁台に低迷しているというが、Cerner買収はこの事業の強化にもつながるはずだ。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、買収を繰り返してきたOracleの歴史の中でも、今回は最大の買収になると述べている。

「Oracleにとって、これは賢明な行動です。同社のテクノロジーをヘルスケア分野にさらに深く浸透させ、現在と、そして特に将来の、多くの作業負荷をOracle Cloud(オラクル・クラウド)にもたらすことになります。Oracleが、最大かつ最速で成長している垂直型産業を買収するということは、いうまでもありません」と、ミューラー氏は筆者に語った。

この成長の可能性を、OraclのSafra Catz(サフラ・カッツ)CEOが見逃すはずはない。「当社がその事業を世界の多くの国に拡大していく中で、Cernerは今後何年にもわたって巨大な追加収益成長エンジンとなるでしょう。これはNetSuit(ネットスイート)を買収したときに採用した成長戦略とまったく同じです。違いは、Cernerの収益機会がさらに大きいということです」と、カッツ氏は声明で述べている。

だが、カッツ氏が国際的な事業拡大について語っている間に、Microsoft(マイクロソフト)が2021年4月、Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ )を197億ドル(約2兆2000億円)で買収すると発表し、ヘルスケア分野で同様の取り組みを行っていたことにも注目しておくべきだろう。しかし、この買収は英国の規制当局からの逆風に直面している。年が明けて今回の買収が進むにつれ、同じ様に規制当局の監視にぶつかることになるかどうかは、興味深いところだ。

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Cerner側では、10月に社長兼CEOに就任したばかりのDavid Feinberg(デヴィッド・フェインバーグ)氏が、これを株主にとっての好機と見て掴まえることにした。もちろん、同氏はこの買収を、他の多くのCEOと同じように、独立した会社としては不可能な方法で市場を拡大するための手段と捉えている。

「Oracleのインダストリービジネスユニットに参加することで、電子医療記録(EHR)の近代化、介護者の体験の改善、そしてより接続された高品質で効率的な患者ケアを実現するための、当社の活動を加速させる、これまでにない機会を私たちは得ることができます」と、フェインバーグ氏は声明で述べている。

米国時間12月20日朝、このニュースを受けてOracleの株価は2.68%下落し、一方、Cernerの株価は0.92%とわずかに上昇した。

現時点で今回の発表は、米国証券取引委員会への正式な申請を含む一連のステップの最初の段階に過ぎない。現在の規制環境の中、この買収が順調に進んで最終的に完了するかどうかは、まだわからない。

画像クレジット:Justin Sullivan

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モデルナの主要投資元Flagship Pioneeringの新たな投資先、tRNAを用いて「何千もの病気」の治療を目指すAlltrna

米国時間11月9日、モデルナの主要投資元であるFlagship PioneeringはRNAに関心を寄せる企業のポートフォリオに新たな企業を追加したことを発表した。この1年、mRNAが話題になったわけだが、Alltrnaと呼ばれる新しい企業は転移RNA(tRNA)ベースの薬剤の開発に乗り出そうとしている。

メッセンジャーRNA(ModernaやPfizerの新型コロナウイルスワクチンに使用されているmRNA)が、細胞にある特定のアミノ酸を組み立てそれらを結合してタンパク質を作るよう指令する遺伝子情報であることを知る人は多いだろう。では、tRNAとはなにかというと、これはL型をした分子で、mRNAにより集められたアミノ酸を実際に組み立てる働きをする分子である。tRNAは人の細胞が遺伝子コードを取得し、それを体内で機能的なタンパク質に変えるための最後のステップの1つを実行する。

Flagshipの設立期からのパートナーでAlltrnaの共同創設CEOである Lovisa Afzelius(ロヴィサ・アフゼリアス)氏がTechCrunchに語ったところによると、Alltrnaでは、1つのtRNAを「何千もの病気」を治療するのに活用できると考えている。同社は、過去3年間プロトモードにあったのだが、その間、30人からなるチームでtRNA治療開発のための「プラットフォーム」を開発してきた。

「これは本当に重要な分子です。しかし現在まで、創薬手法としては完全に過小評価されてきました。当社が開発したのは広範囲にわたるtRNAプラットフォームで、これを使用することで、tRNAの生物学的側面全体を探求することが可能になります」と、アフゼリアス氏は語った。

ModernaやPfizerの新型コロナワクチンは、mRNAテクノロージの可能性について非常に説得的に証明してきた。しかし、2021年は他のRNAプロジェクトの資金調達に大きな動きのある年となっている。

5月、Flagshipは次の10年間で100種類のエンドレスRNA(eRNA)製品および薬剤プログラムの開発を目指す企業、Larondeに関する発表を行った(eRNAはFlagshipにより開発されたRNAの一種で、体内で特定の薬の治療効果を引き伸ばしたり、治療用タンパク質の「持続的な」発現を生み出したりするように設計されている)。

Larondeは2021年シリーズBでの資金調達で、Flagshipからの投資に加え、T. RowePrice、CPPinvestments、Fidelity Management and Research Company、Federated Hermes Kaufmann Funds、BlackRockが管理する資金とアカウントより、約4億4000万ドル(約501億円)を調達した

tRNAを用いた薬剤のアイデアは比較的新しいものだが、次第に注目され始めている。2021年9月にC&EN が報じたところによると、ReCode Therapeutics、Shape Therapeutics、Tevard Biosciencesの三つのスタートアップは、tRNAを用いた治療法の開発に向け、合わせて2億4000万ドル(約273億円)を調達した。

Alltrnaは、さまざまな病気に介入しうるtRNAの可能性を大いに喧伝している。Flagshipのプリンシパルで、共同創設兼Alltrnaのイノベーションオフィスの責任者でもあるTheonie Anastassiadis(セオニー・アナスタシアディス)氏は、 tRNAには「翻訳の多くの側面」を制御する機能があるという。

例えば「増殖tRNA」の一部は細胞分裂に関与している(またいくつかの研究では、 tRNAを下方制御することにより細胞の増殖を抑えることができ、癌への対応策となりうることが示唆されている)。

また、tRNAにより、遺伝子コードのエラーに起因する問題を修正することができる。一部の遺伝子には、早すぎる時点でタンパク質生成の停止を促す「終止」サイン(終止コドンとも呼ばれる)として機能する変異が含まれている。これらの終止サインは、特定のタンパク質について、それが完全に生成されきっていない状態であるのに、生成を停止するよう指示する。この時期尚早な終止コドンは遺伝性疾患の大きな要因であり、すべての遺伝性疾患または癌の10%から30%程に関係しているとされている。

アフゼリアス氏によると、tRNAエンジニアリングの背後にある考え方は、tRNAがそれらの終止サインを読み込んだ場合でも、完全なタンパク質を組み立てられるということである。

「何千という病気にこれらの終止コドンがまったく同様のかたちで関与している可能性があります。これらのタンパク質に挿入すべきアミノ酸は同一のものです。実際に広範囲に渡る遺伝性疾患に同一のtRNA薬剤を使用することが可能です」。とアフゼリアス氏は語った。

AlltrnaのtRNA に対するアプローチはtRNAベースの薬剤開発を実際に行うのに必要なツールを拡張するところから始まる。tRNAを発現させ、そのレベルを計測し、修正し、そして合成する基本的な手法は現在「非常に技術的に難しい課題です」とアナスタシアディス氏は述べた。

「プラットフォームの一部としてまず私たちが行ったのは、実際にこれらのAlltrnaの独自のツールを構築したことでした」。

tRNA治療のためのプラットフォームの開発は、計画にそって進んでいる。現在のところ、同社はどこと提携しているかや、どういった病気を治療対象と考えて開発に取り組んでいるかについては明らかにしていない。

Flagshipは現在までに、Alltrnaに5000万ドル(約54億円)を提供している。これは2021年FlagshipがLarondeに最初に提供した額と同額である。アフゼリアス氏は今後「適切な時期が来たら」外部からの投資も求めたい考えだと語った。

画像クレジット:LAGUNA DESIGN / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

AIを利用して神経疾患の治療薬開発を行うNeuraLight、神経学的評価とケアのデジタル化を目指す

NeuraLight(ニューラライト)は、AIを利用して神経疾患の治療薬の開発を進めるため、550万ドル(約6億3000万円)のシード資金を調達し、ステルスから脱してローンチを果たした。同社はCorus.ai(コーラス・ドット・エーアイ)の共同創業者で元社長のMicha Breakstone(ミカ・ブレイクストーン)氏によって共同設立された。Chorus.aiは2021年初め、5億7500万ドル(約656億円)でZoomInfo(ズームインフォ)に売却されている。ブレークストーン氏は現在、NeuraLightのCEOとして、共同創業者でCTOのEdmund Benami(エドモンド・ベナミ)氏とともに同社を率いている。

このシードラウンドには、MSAD、Kli、Tuesday(チューズデー)、Operator Partners(オペレーター・パートナー)、VSC Ventures(VSCベンチャーズ)が参加した。エンジェル投資家としては、Instacart(インスタカート)のCEOであるFidji Simo(フィジー・シモ)氏、Clover Health(クローバー・ヘルス)のCEOであるVivek Garipalli(ヴィヴェック・ガリパリ)氏、Immunai(イムナイ)のCEOであるNoam Solomon(ノーム・ソロモン)氏などが名を連ねている。

オースティンとテルアビブに本社を置くNeuraLightは、神経学的評価とケアをデジタル化することで、神経疾患に苦しむ人々を支援することを目指している。ブレイクストーン氏とベナミ氏は、Google(グーグル)、Chorus.ai、Viz.ai(ヴィズ・エーアイ)出身の同窓生の他、研究・医薬品業界から人材を採用してきた。

同社のチームは、顕微鏡での眼球運動の測定値を自動的に抽出するプラットフォームを構築した。この測定値は、神経疾患の信頼できるデジタルエンドポイントとして機能する。同社のプラットフォームでは、AIと機械学習を利用して動画から光と動きを取り除き、より正確な動画を得ることができる。

「この高度に拡張された高精度動画から眼の計測値を抽出することで、顕微鏡的な動きから神経疾患の進行を予測することを可能にしました。そして、神経学のためのより良い方法で薬を開発する手段として、製薬会社への販売が実現したのです」とインタビューでブレイクストーン氏は語っている。

このプラットフォームは、最終的には臨床試験を加速し、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、その他の神経変性疾患の将来的な治療の成功確率を高めることを目的としている。

同社のプラットフォームは専用のデバイスを必要としないため、製薬会社はNeuraLightを臨床試験やリモート環境に統合できる、とブレイクストーン氏は説明する。何千人もの患者から匿名化されたデータを収集することで、最大規模かつ独自の匿名化された眼球測定データベースを構築し、AIを適用してデータから洞察を得る。それがNeuraLightの見据える展望である。

画像クレジット:NeuraLight

ブレイクストーン氏の話では、この分野に競合する企業は多くなく、既存企業が提供するものにはカメラのアイトラッカーや瞳孔計などの専用デバイスが必要になるという。これらの企業とNeuraLightの違いについて同氏は言及し、NeuraLightのプラットフォームは、標準的なスマートフォンやウェブカメラの動画さえあれば機能する点を強調した。同社は開発中の技術を保護するための仮特許を申請中である。

NeuraLightは次のように指摘している。世界中で10億人を超える人々が神経疾患に苦しんでいるが、現在の神経学的評価は非常に主観的であり、症状の手動検査に依存するものとなっている。そのため、製薬会社は的確な治療法を開発するための有効なツールを持ち合わせていないのが現状だという。

「過去20年間製薬業界で働いてきましたが、デジタルエンドポイントは神経学の未来であると自信を持っていえます」と語るのは、NeuraLightでチーフイノベーションオフィサーを務めるRivka Kretman(リヴカ・クレティマン)氏だ。「この技術は、製薬会社が神経疾患の薬剤開発を効果的に、そして最終的にはより成功させるために必要としながらも、欠落していた要素でした。これらの会社の薬剤開発パイプラインのための新しい測定基準の確立に、この技術は大きな役割を果たすことになるでしょう」。

550万ドルのシード資金に関してNeuraLightは、製薬会社と提携して新薬開発の成功率を高め、開発コストを削減することを視野に入れている。同社はまた、製薬会社が医薬品を市場に投入するまでの時間を短縮できるよう支援することも目標に据えている。ブレイクストーン氏によると、NeuraLightはイスラエルでパーキンソン病の独自の測定を開始し、現在3つの製薬会社と協働しているという。製薬会社の名前は今のところ明らかにされていない。

「私たちは神経学の完全な変革を実現し、新世代の薬の開発につなげたいと考えています。世界の変革を担うことを実際に意識し、今日の神経学的ケア評価の方法を変える象徴的な会社の構築を支援したいと志す人々の雇用と招致を確実に進めました」とブレイクストーン氏は語っている。

NeuraLightの科学諮問理事会は、イスラエルのRabin Medical Center(ラビン・メディカル・センター)にある運動障害センターの責任者、Ruth Djaldetti(ルース・ジャルデッティ)氏が率いる。さらに、ノーベル賞受賞者のAlvin Roth(アルヴィン・ロス)氏、Flatiron Health(フラットアイアン・ヘルス)の元CTOのGil Shklarski(ジル・シュカルスキー)氏、Pomelo Care(ポメロ・ケア)のCEOであるMarta Bralic Kerns(マルタ・ブラリック・カーンズ)氏が理事会のメンバーとして、同社の科学的ビジョンに関する助言を行う。

画像クレジット:NeuraLight

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(文:Aisha Malik、翻訳:Dragonfly)

医療情報提供サービス「ユビーAI受信相談」、新型コロナ関連症状に対応可能な都内約2000件の発熱外来が検索可能に

医療情報提供サービス「ユビーAI受信相談」、新型コロナ関連症状に対応可能な都内約2000件の発熱外来が検索可能に

「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションとするヘルステック領域スタートアップUbie(ユビー)は12月8日、気になる症状から参考病名と適切な受診先が調べられるサービス「ユビーAI受診相談」で、発熱外来のある東京都内約2000件の医療機関を検索できる機能の提供を開始した。

東京都に住む人が、新型コロナウイルス感染症関連の症状に対応する、いわゆる「発熱外来」にかかるには、都の発熱相談センターに電話をして対応可能な医療機関を調べてもらう必要がある。しかし感染が急拡大した第5波においては、電話がなかなかつながらない状態が続いてしまった。そこで都では、2021年9月から、発熱外来のある医療機関をホームページで公開。これを受けて、Ubieと東京都医師会は、「ユビーAI受診相談」で、より便利に都内の発熱外来が調べられる「発熱外来検索機能」を提供することにした。

ユビーAI受診相談では、体調に関する20問ほどの質問に回答すると、その症状に関連する参考病名と、それを診てくれる近くの医療機関が示される。発熱外来検索機能では、地域は東京都内に限定されるものの、「熱がある」「喉が痛い」「咳が出る」「味覚がおかしい」といった新型コロナウイルス感染症に関連する症状を回答すると、発熱外来のある最寄りの医療機関が示される。

このサービスは、東京都が公表した発熱外来医療機関のデータを活用したもの。ユビー受診相談の新機能とすることで検索性を高めている。新型コロナウイルス感染症関連症状のある人が、最寄りの発熱外来を速やかに受診できるようにして、「重症化と感染拡大の防止につなげること」を目指すとUbieは話している。

IoT在庫・発注管理を提供するスマートショッピングが資金調達、累計調達額16億円に

IoTを使った在庫・発注管理のためのDXソリューション「スマートマットクラウド」および「スマートマットライト」を展開するスマートショッピングは11月26日、第三者割当増資による資金調達を行い累計調達額が16億円に到達したと発表した。引受先はエムスリー、スズケン。今回調達した資金は両サービスの利用者拡大に向けた施策にあてる。

スマートマットクラウドは、製造業や医療機関などのB2B向けに展開している、あらゆる在庫の管理・棚卸しや発注を自動化するSaaS。今回の資金調達により、サービス・製造業はもとより、医療機関など現場の在庫・発注管理ニーズにより応えられるよう、プロダクトのソフト・ハード両面を進化させる。また、様々な現場へのスムーズな導入を支援するカスタマーサクセスなどビジネス面の体制を強化する予定。

もう一方のスマートマットライトは、B2C向けのソリューション。面倒な日用品の買い物を自動化しゼロクリックショッピングを実現している。こちらでは、ユーザーとの共創によってさらにユーザビリティの高いプロダクト・サービスへの進化を加速させる。またそれに向けて、特にエンジニアなどキーとなるポジションの人材獲得を強化する。

スマートショッピングは「日々のモノの流れを超スマートに」をビジョンとして掲げ、2014年11月に設立。IoT重量計「スマートマット」を活用した在庫管理と発注の自動化ソリューションを開発し、これを基にB2B向けスマートマットクラウド、B2C向けスマートマットライトを提供している。

東京大学がヒトiPS未分化細胞培養における世界最高レベルの超高密度化に成功、細胞あたりの培養コストを8分の1に低減

iPS細胞で犬をはじめ動物再生医療に取り組む、日本大学・慶應義塾大学発「Vetanic」が総額1.5億円を調達

東京大学大学院工学系研究科は11月22日、未分化(特定の機能を持つ細胞に分化する前)の状態でiPS細胞を超高密度に培養する独自のシステムを開発し、培養コストを1/8に低減できたことを発表した。増殖因子(増殖を促すタンパク質)の量を変えずに8倍の増殖を可能にしたということで、その密度は1mlあたり細胞3200万個と、世界最高となった。

東京大学大学院工学系研究科の酒井康行教授らからなる研究グループは、カネカ、日産化学との共同で、ヒトiPS細胞の未分化増殖のコストを1/8に低減する小規模培養システムを開発した。透析膜で仕切られた上下2つの空間を持ち、その上部で細胞を培養する。そこに増殖因子を溜めておくが、栄養素や老廃物は下部と行き来できる。ここに多糖を添加することで、増殖を従来の8倍に高密度化できた。

再生医療で大いに期待されているiPS細胞だが、増殖因子の高い価格が、その未分化細胞の大量増殖のネックになっている。増殖因子を低分子化合物に置き換える研究も進んでいるが、コストを下げるまでに至っていない。透析膜を使った培養工学的手法も研究されているものの、増殖密度が低かったり、コストの削減は実現されていなかった。

同研究グループのシステムは、高価な増殖因子をフルに使える構造になっている。さらに、実験の結果、iPS細胞から「自己組織化能の現れ」として、iPS細胞自らが分泌する増殖因子「Nordal」の濃度が培養につれて増加するという現象が認められた。これが大量の細胞培養につながったと考えられている。

東京大学がヒトiPS未分化細胞培養における世界最高レベルの超高密度化に成功、細胞あたりの培養コストを8分の1に低減

今回のシステムは細胞培養部の容量が約2mlと小さいため、スケールアップが必要だと研究グループは考えているが、増殖密度が8倍になったことで、システムのサイズは1/10程度に小型化することが可能となる。今後はより高密度化を進め、さらに、未分化細胞の増殖に比べて数十倍のコストがかかる臓器細胞への分化誘導にこの方式が有効に働くかの検討を行うとしている。すでに、未発表ながら、肝臓や膵島分化の第一段階(内胚葉分化)で、増殖因子の使用量を1/8程度に低減させることに成功しているとのことだ。

患者の治療に専念できるようになる、AI診断可視化プラットフォームLifeVoxelが約5.7億円のシード資金を調達

サンディエゴのスタートアップLifeVoxel(ライフボクセル)は、より迅速で正確な予後のためのAI診断可視化プラットフォームのデータインテリジェンスを強化するため、シードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)を調達した。

Prescientという名称のプラットフォームは、診断、ワークフロー管理、トリアージに使用され、医師や病院はソフトウェアやハードウェア技術の管理でストレスを受けることなく、患者の治療に専念することができる。

Software-as-a-Service (SaaS) プラットフォームは、放射線科、循環器科、整形外科などのさまざまな医療分野で、医療施設が遠隔診断に使用する。Prescientには診断用の画像が保存されており、医師は携帯電話を含むあらゆるデバイスから必要に応じて画像を解析することができる。また、診断結果の注釈やレポートを作成する機能もある。

LifeVoxelの創業者でチーフアーキテクトのKovey Kovalan(コベイ・コバラン)氏は「今回のラウンドで確保した資金は、診断の効率と精度の向上のために、類似性や異常性、予測診断を識別できるデータインテリジェンスを提供できるよう、深層学習AIモデルや機械学習アルゴリズムの構築に役立てる予定です」と話す。

「つまり、当社が成長を続けることで、医療関係者が患者のどこが悪いのかをこれまでよりも迅速に把握できるようにし、より早く治療に取り掛かることができるようになるのです」とコバラン氏は述べた。

今回のラウンドには、医療や放射線の専門家、医療技術に関心のある富裕層など、さまざまな投資家が参加した。

マレーシアで生まれ育ったコバラン氏は、オハイオ州立大学でコンピュータサイエンスを学び、卒業後は人工知能を専門とするようになった。その後、研究のため、そして好奇心から、GPUを使った人工知能を医療画像の分類に応用し、その結果「インターネット上で医療画像のゼロレイテンシーのインタラクティビティを可能にする」プラットフォームの開発につながった。

このプラットフォームは、ソフトウェアを使用する病院のテクノロジーコストを約50%削減するように設計されていて、施設のニーズに応じて拡張または縮小することができる。また、医師が世界中のどこからでも患者やそのデータにアクセスできるようになり、よりスピーディーな治療が可能になる。

コバラン氏は、このプラットフォームを利用して、画像がオンプレミスで管理されているために共同作業がしづらいという医療画像の現状を変え、人工知能を活用したものにしたいと考えている。LifeVoxelはこの技術を使って、インテリジェントな可視化による診断結果の向上を目指している。

「専門家が不足している地方の人々は、どんなデバイスでも放射線技師のワークステーションにすることができるこのプラットフォームによって、都市部と同じように画像検査のレビューで専門医のネットワークにアクセスできます。最近ではパンデミックの間に、これまでにないインタラクティブな3D VRテレプレゼンスを実現するために、数千マイル離れた遠隔地のプロクターと手術室内の外科医との間でこのような技術が展開されました」。

新型コロナパンデミックをきっかけに、より多くの医療機関がリモートや遠隔医療の機能を拡大している中で、LifeVoxelの技術はタイムリーなものだ。加えて、従来のクラウドベースのシステムから脱却し、患者の予後を向上させるためにAI技術を採用する病院が増えている。

LifeVoxelの共同創業者で社長兼CEOのSekhar Puli(シェーカル・プーリー)氏は「医療用画像処理および放射線科には、従来のシステムの不備を補うダイナミックなソリューションが必要です」と話す。

「今回の資金調達により、世界中の医療用画像アプリケーションの事実上のプラットフォームになるというビジョンを加速させるだけでなく、ヘルスケアの未来のために、遠隔医療イメージングや高度な技術ベースのAIソリューションを大きく前進させることができるでしょう」。

画像クレジット:phuttaphat tipsana / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

BNPLの成功を高騰する医療費に、金利なしの「先に治療・後払い」フィンテックPayZen

米国でヘルスケアのコストは増加の一途をたどっており、患者が自己負担しなければならない割合もそれにともない増加している。2019年のギャラップ調査によると、米国の3世帯に1世帯近くが、費用を理由に治療を遅らせたことがあるという。

ヘルスケアフィンテックのスタートアップであるPayZen(ペイゼン)は、AIを活用して患者の医療費債務を引き受け、患者が治療を受けて長期的に分割払いできるようにするソリューションを展開するため、シリーズAラウンドで1500万ドル(約17億1000万円)を調達した。

今回のラウンドはSignalFireがリードし、新規でLink Ventures7WireVentures、さらに既存投資家のViola VenturesとPicus Capitalが参加した。同社は、2021年初頭にシード資金として500万ドル(約5億7000万円)を調達しており、今回のシリーズAにより累計資金調達額は2000万ドル(約22億8000万円)に達した。

PayZenの「先に治療・後払い」ソリューションはすべての患者が利用でき、患者は手数料や金利なしで、治療費を時間をかけ分割払いすることができる。このプラットフォームの基盤となる人工知能(AI)技術により、病院は患者のデータを活用して、管理コストを抑えながら各患者に特化した支払いプランを決定することができる。

PayZenは、2019年にフィンテックのベテランであるAriel Rosenthal(アリエル・ローゼンタール)氏、およびItzik Cohen(イッツィク・コーエン)氏、Tobias Mezge(トビアス・メズガー)氏の3人によって設立された。現在PayZenのCEOを務めるコーエン氏は、消費者債務のフィンテック、Beyond FinanceでCEOを務めていた。

コーエン氏は、TechCrunchのインタビューで、患者の自己負担額は過去10年間で2倍になったが、今後10年間でさらに2倍になると予測されると語った。

「(創業チームは)フィンテック業界出身だったため、例えば、『先買い・後払い(BNPL)』を導入したeコマースでは、イノベーションと信用の拡大を受け、人々がより高額な商品を購入できるようになったのを見てきました。そこで、患者からの請求業務をますます多く担うようになっている医療機関も、苦労しているのではないかと考えました。それでは彼らも悪い状況に追いやられてしまいます」とコーエン氏はいう。

PayZenのプランを利用する患者には金利がかからないため、医療機関はこれらのコストを自分たちの帳簿に残すことができる。コーエン氏は、患者とその経済状況に合ったプランを優先的に提供することで、査定プロセスを逆転させ、支払いの遵守率を高めたと述べている。

フィラデルフィアを拠点とするGeisinger Hospital(ガイジンガー病院)では、PayZenの導入後、支払いの回収率が23%向上したという。コーエン氏は、米国のほとんどの主要な医療機関の平均営業利益率は1%と非常に低く、業界は人材不足に悩まされていると付け加えた。

「市場の状況が少しでも変化すれば、率直に言って、彼らは損失を被ることになるでしょう。彼らは今、この時間を利用して最適化を図り、多くのプロセスを自動化する技術に投資しています」とコーエン氏は語った。

設立からまだ1年も経っていないこのスタートアップは、2022年1月に大幅な製品の拡張を発表する予定だ。

ニーズの増加に対応するため、PayZenは現在35人のチームを2022年末までに約100人の従業員に成長させる予定だという。

画像クレジット:PayZen

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Aya Nakazato)

専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUとNTT西日本が遠隔医療のエッジコンピューティング活用に関し共同実験

専門医による遠隔集中治療ソリューションを提供するT-ICU西日本電信電話(NTT西日本)は11月18日、「遠隔医療におけるエッジコンピューティング技術を活用した情報処理の実現方式」に関して共同実験を開始したと発表した。同実験の成果を生かし、ウィズコロナ・アフターコロナ時代を見据えたリモートワールド(分散型社会)を実現し、地域医療の人材不足といった社会課題の解決を目指す。実験期間は2021年11月~2022年2月(予定)。

共同実験では、実証実験に協力している病院からNTT西日本の閉域ネットワークを介して、サーバーが設置されているエッジコンピューティング拠点まで映像を転送する。T-ICUの技術でその情報処理を行い、モニタリングセンターからの医師・看護師などによる遠隔モニタリングを実現する。

共同実験では、遠隔モニタリングに用いる高品質な映像が病院からNTT西日本の閉域ネットワークへ転送できること、容体悪化の兆候に関してAIによる推論ができることを評価するとともに、エッジコンピューティング技術に必要とされる要件についても評価する。こうした取り組みを通じ、医療情報を電子的に管理する上で準拠すべきガイドラインを念頭に、今後遠隔医療を提供する際に必要となる要件や技術課題を把握することを目指す。

・T-ICU:遠隔ICU技術の提供、遠隔モニタリングに必要な情報処理技術の検討
・NTT西日本:エッジコンピューティング技術の提供、クラウド化にかかる要件の検討

同実証実験では基本的な動作確認と要件確認を行い、得られた知見を活かして新たな遠隔ICUサービスの実現について継続して検討する。T-ICUとNTT西日本は、同サービスにより、地域の人材不足など社会課題の解決を目指す。

2016年創業のT-ICUは、「Anywhere, we care. すべての病院に集中治療医を」をミッションに、遠隔ICUにおけるサポートサービスを実施。集中治療医・集中ケア認定看護師のチームを擁し、病院向けに専門性の高いサポートを提供している。

T-ICUは、遠隔相談システム「リリーヴ」を契約している病院からの相談に対応する一方で、院内での遠隔モニタリング支援するシステム「クロスバイ」を提供し、導入病院内での効率的な医療提供に貢献してきた。

リリーヴは、命に関わる重症患者診療を担う医療スタッフの不安に寄り添い、呼吸・循環管理、鎮静・鎮痛、感染症治療などの全身管理を最新の知見と豊富な経験で支援する遠隔相談システム。全国的に専門家が不足する重症患者診療の現場を、集中治療医・集中ケア認定看護師で構成されたメディカルチームが24時間365日サポートする。専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUとNTT西日本が遠隔医療におけるエッジコンピューティング活用に関する共同実験

クロスバイは、ベッドサイドに配置した高性能カメラを利用した遠隔モニタリングシステム。患者の表情や顔色、呼吸様式の観察といった患者観察が可能。また、人工呼吸器を含む各種医療機器と接続することで、多面的な患者情報を院内の離れた場所に届けられる。新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病院での医療の提供、また医療従事者への感染防止策としても導入されているという。専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUとNTT西日本が遠隔医療におけるエッジコンピューティング活用に関する共同実験

クロスバイ導入施設においては、重症患者への看護人員が不足する中、医療従事者によるモニタリングが常時実施されており現場の大きな負担となっているという。このような中、医療現場からT-ICUに対し、重症患者管理を専門とする集中治療医が不在となる夜間などの時間帯において、T-ICUが遠隔でモニタリングのうえ重症度に応じたアドバイスを提供してもらいたいという要望があるそうだ。ただ、この要望の実現には、モニタリングの際に発生するデータを低遅延かつセキュアに処理することが必要不可欠としている。

福岡市がワクチン接種証明による特典を提供し経済復興支援の検証を開始、感染拡大防止と経済活動の活性化を目指す

福岡地域戦略推進協議会(FDC)、KDDIauコマース&ライフ(auCL)、ミナケアは11月18日、福岡県福岡市において、ワクチン接種証明による経済復興支援の検証を目的とした実証実験を行なうと発表した。期間は11月18日から12月31日まで。

現在、新型コロナウイルス感染症の感染状況は下降傾向にあるものの、将来の再拡大の可能性に備えて引き続き警戒が必要な状況にある。一方、対面型サービス業を中心に依然集客が厳しい商業施設の活性化が課題となっている。ワクチン接種証明を活用することでその両立を図ることができるのか、今回の実証実験によって検証する。

同実証実験の内容は、KDDIとauCL運営の総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」から福岡市を中心とした対象店舗(11月18日現在で18店舗。随時拡大予定)の事前購入型飲食店チケットを購入したうえで、当日店頭でワクチン接種証明を提示すると、ワンドリンクサービスやデザートサービスなどの特典を受け取れるというもの。店舗の検索や予約はau PAY マーケットの特集ページより行なえる。

またワクチン接種の証明は、福岡市がワクチン接種管理アプリとして利用しているミナケア製「Health Amulet」(ヘルスアミュレット。Android版iOS版)の活用を推奨している。

FDCは、同実証実験で得られた結果を福岡市における経済復興支援策の立案に活かしていくとのこと。実証実験においてKDDIとauCLはau PAY マーケットの運営とワクチン接種証明の提示による特典付き商材の提供を行なう。ミナケアではHealth Amuletの運用、接種記録機能の同実証実験向け提供を担う。さらにKDDI、auCL、ミナケアの3社は、今回の実験で得られたノウハウを基に、感染拡大防止と経済活動活性化の両立を目指す他の地域・自治体への展開を視野に入れ連携を強化していく予定。

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学は11月17日、国際宇宙ステーション(ISS)に1カ月滞在したマウスを解析し、宇宙旅行の際には、腎臓が中心となって血圧や骨の厚さなどを変化させることを発見した。また1カ月の宇宙旅行では血中の脂質が増え、腎臓で余った脂質の代謝や排泄に関わる遺伝子が活性化していることもわかった。

東北大学大学院医学系研究科の鈴木教郎准教授と山本雅之教授らの研究グループは、JAXA筑波大学と共同でこの実験を実施した。同グループは、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在した12匹のマウスの腎臓を解析したところ、血圧と骨量の調整に関わる遺伝子群の発現量が変化していることを突き止めた。また、血液中の脂質が増加していて、腎臓で脂質代謝に関係する遺伝子の発現が増加していることもわかった。

地上では、重力に逆らって姿勢を保ったり血液を体中に押し出す必要があるが、それらを必要としない微小重力環境では、体の基礎的なエネルギー消費量が低下する。これまで、宇宙では重力の変化により、血圧と骨の厚さに変化が起きることはわかっていたが、その仕組みは明らかになっていなかった。今回の研究で、そこに腎臓の遺伝子群が関わっていることが判明したわけだ。

この結果から、宇宙旅行の際には、腎臓の健康状態を確認したり、薬剤などで腎臓の機能を調整するなどの腎臓の管理が重要になるとことが示された。今回得られたデータは、東北メディカル・メガバンク機構とJAXAが共同で整備する公開データベースに登録され、世界中の研究者がアクセスできるようになっている。

RespiraのウェアラブルSylveeは肺の健康状態をモニター、COPDや肺機能低下を検知

この数年、身体のあらゆる側面を測定するウェアラブル製品が登場しているが、肺活量の測定はそれら他の側面よりも難解だ。Respira Labs(レスピラ・ラボ)が開発した「Sylvee」は、肺機能を継続的に測定するまったく新しいウェアラブルデバイスだ。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息患者をはじめ、一時的に肺機能が低下している人に最適だ。特に、肺機能に影響を与えるあのパンデミックが思い浮かびあがるだろう。

Sylveeは、胸郭の下部に装着する製品で、息を吹きかけなくても簡単に継続的に肺機能を評価できることを約束している。このパッチにはスピーカーとマイクが内蔵されており、音響的な共鳴の変化を測定する。同社によるとこれは、肺機能検査の基本である肺気量の変化をよく表しているとのことだ。

使われている技術は非常に巧妙だ。Sylveeは、スピーカーからノイズを発生させ、その発生した音をマイクで測定する。空洞があると音の質が変わるという理論で、ドラムセットのドラムヘッドを叩いた後に、綿や羊毛、液体を詰めて同じように叩いたときと同じだ。私は医者ではないが、肺の中には一般的に空気腔があるものと思われる。このウェアラブルは、収集したデータをもとに、肺の容積、容量、流量、そして空気の滞留を測定する。

「確立された科学では、低周波音を使って空気のとらえ込みを90%以上の精度で測定できることがわかっています。慢性閉塞性肺疾患患者と健常者では、音響共鳴スペクトルに明らかな違いがあります。慢性閉塞性肺疾患、新型コロナウイルス(COVID-19)、喘息の患者数は1億人を超え、高齢化も進んでいるため、肺機能を遠隔で正確にモニターし、問題を早期に発見して深刻な事態を回避することは、命を救うことにつながります。私たちの目標は、異常を早期に発見し、自宅での早期治療を可能にし、患者さんが自らの健康を管理できるようにすることです」。とRespira Labの創設者兼CEOであるMaria Artunduaga(マリア・アルトゥンドゥアガ)博士は説明してくれている。

Sylveeは、胸郭に装着して使用する。肺の健康状態を判断するために、音を出し、肺の共鳴をとらえる(画像クレジット:Respira Labs)

製品名のSylveeは、慢性閉塞性肺疾患を患い、発見できずに症状が悪化して亡くなったアルトゥンドゥアガ博士の祖母にちなんで名づけられている。

「このデバイスは、呼吸器系の患者が避けなければならない、急性の悪化の早期診断と管理を容易にしてくれます。私たちは、医師や患者に重要な情報を提供することで、より早い段階で治療法を切り替え、入院を防ぐことができます。これは私の祖母に起こったことです。彼女は慢性閉塞性肺疾患を患っていましたが、突然症状が悪化し、敢えなく亡くなってしまいました。私は、恐ろしくも、一般的なこの結果をきっかけに、医師としてのキャリアを捨て、このSylveeの開発に専念しました」とアルトゥンドゥアガ博士は述べている。

Respira Labsは、米国内外で500人以上の患者を対象とした大規模な試験を実施することで、空気のとらえ込み測定精度を90%にすることを目標としている。また、2022年後半には有名なジャーナルに論文を発表する予定だ。このデバイスは現在試作中で、今後18カ月以内にFDAの認可が下りる予定だ。

画像クレジット:Respira Labs

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

認知症領域の課題解決を目指す医療AIスタートアップSplinkが11.2億円調達、脳ドック用AIプログラムの全国普及・拡大推進

VRリハビリ機器を提供する「mediVR」が5億円のシリーズB調達、「成果報酬型自費リハ施設」開設を計画

認知症領域の課題解決を目指す医療AIスタートアップSplinkが11.2億円調達、脳ドック用AIプログラムの全国普及・拡大を推進認知症領域の課題解決を目指す医療AIスタートアップSplinkは11月17日、総額約11億2000万円の資金調達を発表した。引受先はジャフコ グループ、東京海上日動火災保険、三菱UFJキャピタル、博報堂DYホールディングス、個人投資家。調達した資金により、引受先とのシナジーを活用するとともに製品化・事業化を加速する。

Splinkは、2017年の創業以来、認知症予防の促進を目指し、脳ドック用AIプログラムとして「Brain Life Imaging」の提供を進めてきた。都内を中心に様々な医療機関が利用しており、今後全国への普及・拡大を推進するという。また、この先行サービスで得られた知見を活用し、開発を進めてきた「脳画像解析プログラムBraineer」では、診断・治療フェーズにおける認知症見逃しを防ぐ医療機器プログラムとして2021年6月に薬事認可を取得した。

同社は、今回の増資により主力製品Brain Life ImagingおよびBraineerの製品強化を引き続き進めるという。さらに、複数アカデミアとの共同研究を通じて開発パイプラインの製品化に向けた投資も実施する。認知症という高齢化社会における課題に対し、健常段階の予防から発症後の病気と共生できる社会に寄与すべく、認知症の予防から診断まで一貫したソリューションをワンストップで提供するとしている。