オーロラ観測ロケット「LAMP」が高速に明滅する「脈動オーロラ」に突入、電子・光・磁場の詳細な観測に成功

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

名古屋大学は3月29日、名古屋大学宇宙地球環境研究所をはじめとする研究グループが、アメリカのアラスカ州よりNASAのオーロラ観測ロケット「LAMP」を明滅するオーロラに向けて打ち上げ、オーロラの中の電子、光、磁場の詳細な観測に3月5日(現地時間)に成功したと発表した。

これは、名古屋大学(三好由純教授、能勢正仁准教授)、宇宙航空研究開発機構(JAXA。浅村和史准教授)、東北大学(坂野井健准教授)、東京大学電気通信大学(細川敬祐教授)、九州大学からなる共同研究によるもの。ロケット実験にはこの他に、NASA、ニューハンプシャー大学、ドートマス大学、アイオワ大学の研究者も参加している。

オーロラは、宇宙から降り込んだ電子が地球の超高層大気と衝突して発光する現象だが、その中に、高速に明滅する「脈動オーロラ」というものがある。近年では日本の人工衛星「れいめい」「あらせ」による観測などで脈動オーロラの研究が進んでいるが、その発光層の広がりや、明滅と電子との関係、脈動オーロラにともなって降ってくる電子の上限エネルギーについては解明されていない。

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

研究グループは2020年、脈動オーロラが起きているときは「キラー電子」と呼ばれる数百キロ電子ボルトの超高エネルギー電子が降り注ぐ現象(マイクロバースト)も同時に起きているという仮説を示したが、脈動オーロラとキラー電子を同時に観測した例はなかった。そこで研究グループは、アメリカの研究者とともに「LAMP」(Loss through Aurora Microburst Pulsation)計画をNASAに提案。採択されると、日米の研究機関でロケットに搭載する観測装置の開発を行った。日本側は、名古屋大学が磁力計、東北大学が光学観測系、JAXAが電子観測系を担当した。

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

2022年2月24日、アラスカ州ポーカーフラットリサーチレンジの射場にロケットをセットし、同時に、アラスカ北方のベネタイとフォートユーコンにもオーロラ高速撮像用のカメラ群を展開すると、脈動オーロラの出現を待った。そして待機すること10日目の3月5日、大きなオーロラ爆発が起こり、それに続いて脈動オーロラが発生すると、ロケットが打ち上げられた。LAMPロケットは脈動オーロラに突入。すべての機器が順調に作動し、「理想的な状態」で観測が行われ、観測データの取得が確認された。今後の詳細な解析により、脈動オーロラの変調機構、キラー電子との関係が明らかになることが期待されている。

現在研究グループは、スウェーデンの次世代型三次元大型大気レーダー「EISCAT-3D」が2023年に稼働を開始するのに合わせて、その視野内に観測ロケットを打ち上げる「LAMP-2」の検討を進めている。


画像クレジット:©脈動オーロラプロジェクト

高専10校が共同開発した人工衛星「KOSEN-1」で初の宇宙技術実証に成功、Raspberry Pi CM1を衛星の心臓部に採用

高専10校が共同開発した人工衛星「KOSEN-1」で初の宇宙技術実証に成功、Raspberry Pi CM1を衛星の心臓部に採用高知工業専門学校(高知高専)を中心とする10校の高専が開発した超小型人工衛星「KOSEN-1」が、市販のLinuxマイコンボード「Raspberry Pi Compute Module 1」(CM1)を衛星の制御に使うオンボードコンピューター(OBC)として常時運用するという宇宙技術実証に成功した。

KOSEN-1は、10センチ四方の立方体を2つ重ねた大きさで、重量は2.6kgという超小型人工衛星(2Uキューブサット。サイズ10×10×23cm)。以下に挙げる10校が共同で開発した、木星が放射する自然電波の観測のための最新技術の実証を目的とした木星電波観測技術実証衛星だ。2018年にJAXAの革新的衛星技術実証2号機の実証テーマに選定され、50名以上の高専生が参加して2年半をかけて開発。2021年11月、JAXAのイプシロンロケット5号機で打ち上げられた。

開発参加校

高知高専
群馬高専
徳山高専
岐阜高専
香川高専
米子高専
新居浜高専
明石高専
鹿児島高専
苫小牧高専

今回実証に成功したのは、超小型で省電力な市販のLinuxマイコンボード「Raspberry Pi Compute Module 1」(CM1)を衛星の心臓部となるOBCに使い、宇宙で運用するというもの。このOBCと連動したカメラによる地球の写真撮影にも成功した。

KOSEN-1から撮影された地球

CM1のプログラムには、プログラミング言語Pythonを利用しているという。そのCM1とPythonの組み合わせには、いくつもの利点がある。まずはCM1のOSがオープンソースソフトウェアのLinuxで、OS本体だけでなくソフトウェアなどの膨大なリソースが自由に使えること。CM1は安価な市販のマイコンボードなので、ハードウェアのシミュレーションが容易に行えること。さらに、やはりオープンソースのプログラミング言語Pythonを使うため、インターネットで共有しながらプログラム開発が行えること。これらにより、多くの高専生が参加する画期的な「分散型OBCソフト開発」が実現できた。

OBCに使用された「Raspberry Pi Compute Module 1」

今後KOSEN-1では、「デュアルリアクションホイールによる超高精度姿勢制御」と「木星電波観測用6.6m長ダイポールアンテナ展開技術」の実証を宇宙で行うことにしている。

ポーラ・オルビスとANAによるCosmoSkinプロジェクトが開発中のスキンケア化粧品、JAXAの生活用品アイデア募集に選定

ポーラ・オルビスとANAによるCosmoSkinプロジェクトが開発中のスキンケア化粧品、JAXAの生活用品アイデア募集に選定

ポーラ・オルビスホールディングスANAホールディングスは3月22日、JAXAの「第2回宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」において、両社が「CosmoSkin」(コスモスキン)プロジェクトとして開発している宇宙で使えるスキンケア化粧品が選定されたと発表した。国際宇宙ステーション(ISS)の搭載を目指し、開発を進めるとのこと。

CosmoSkinで開発されているのは、宇宙船内の特殊な環境を想定したスキンケア製品。極度に乾燥していること、水が貴重であること、微小重量といった環境に対応するために、スキンケア製品にはこれまでにない機能性や使用法が求められるという。宇宙の生活では、全身にさまざまな変化が起き、精神的な健康の維持も重要になる。そのため、肌を美しく保つ機能だけでなく、「スキンケア行為を通して心も健やかに保つ体験価値」の追究を目指す。

また、資源が極端に限られ、ゴミを最小限にしなければならないといった制約に合わせて技術開発を行えば、それがそのまま地上でのサステナビリティー向上にもつながるとポーラ・オルビスホールディングスは話す。

両社は、それぞれ宇宙に目を向けている。ポーラ・オルビスホールディングスは、2018年に化粧品の枠を超えた新価値創出のための「マルチプルインテリジェンスリサーチセンター」(MIRC)を発足し、宇宙への取り組みを開始した。2020年からは、JAXAが推進する宇宙生活の課題から宇宙と地上双方の暮らしをより良くするビジネス創出プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」での活動を開始している。

ANAホールディングスは、2018年に宇宙事業化プロジェクトを発足し、衛星データ活用事業、宇宙物資輸送事業、宇宙旅行事業といった宇宙事業の検討を開始している。

CosmoSkinでは、ポーラ・オルビスホールディングスが「肌の知見や製剤技術を活かし宇宙ライフに適した化粧品の研究開発」と、ANAホールディングスが「地上よりも宇宙環境に近いとされる航空機内を実証実験の場として提供」することになっている。

タカラトミーとJAXAなどが共同開発した変形型月面ロボSORA-Qが月着陸実証機SLIMに搭載決定

タカラトミーとJAXAなどが共同開発した変形型月面ロボSORA-Qが月着陸実証機SLIMに搭載決定

変形型月面ロボット「SORA-Q」。画像中央部分左側が変形前、右側が変形後

タカラトミーは3月15日、JAXAなどと共同開発した超小型変形型月面ロボットが、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」に搭載され、月面でのデータ取得を行うことになったと発表した。これでこのロボットは、ispace(アイスペース)の月着陸船「HAKUTO-R」による月面探査と合わせて、計2回の月面ミッションを実施することになる。またこれまでのLEV-2という名称に代えて、「SORA-Q」(ソラキュー)という愛称が与えられた。

SORA-Qは、運搬時(変形前)は直径約8cm、重量約250gの球体だが、月面の放出されるとすぐに、走行可能な形態に変形する。球体が左右に開いて車輪となり、中央には前方撮影用カメラがせり上がり、後方には後方撮影用カメラと尻尾のようなスタビライザーが展開される。車軸を偏心させることで、レゴリス(月面の細かい砂)に覆われた傾斜地も乗り越えることができ、転倒しても起き上がれるようになっている。撮影した画像はSORA-Q自身が選別して、ペアで行動するもう1つの小型ロボット「LEV-1」にBluetoothで送られ、着陸船を介さず、そこから直接地球に送信される。

ミッションは、レゴリス上を移動して走行ログを取得して保存すること、着陸機周辺を撮影して画像を保存すること、画像データ、走行ログ、ステータスを「LEV-1」経由で地球に送ることなどとなっている。将来の月面有人自動運転技術や走行技術の検討に必要な月面データを集めることが狙いだ。ミッション実行時間は、1〜2時間が予定されている。

タカラトミーとJAXAなどが共同開発した変形型月面ロボSORA-Qが月着陸実証機SLIMに搭載決定SORA-Qという名前には、宇宙を意味する「宙」(そら)に、Question(問い)、Quest(探求)を表す「Q」をつなげているが、「Q」には「球」の意味もある。運搬時の体積を最小限にでき、着陸の衝撃に耐え、どの角度に放出されても展開できることから、球体が選ばれた。そこから月面活動ができる形態に変形させる技術には、変身ロボットやメカニズムの小型化といったオモチャの開発で蓄積されてきたタカラトミーの知見が活かされている。JAXAと共同で20回以上もの試作を重ねた末、ようやく完成させた。そもそもこのプロジェクトは、JAXAの「宇宙探査イノベーションハブ」共同研究提案公募の枠組みで2016年に開始したものだが、2021年にはソニーグループ同志社大学も参加している。

画像クレジット:
JAXA
タカラトミー
ソニー
同志社大学

持続可能な方法でなければ軌道上のゴミは宇宙のゴールドラッシュの妨げになる

空を見上げれば、何百もの廃棄された衛星、使用済みロケットの上段部、ミッション関連の物体が地球を回り、1兆ドル(約115兆円)規模の宇宙経済を支えるであろう宇宙をベースとするサービスや将来のミッションに危険を及ぼしていることがわかる。

欧州宇宙機関(ESA)によると、現在、10cm以上の物体が3万6500個以上、1cm未満の物体が数百万個、地球を周回しているという。当然ながら、軌道上での衝突は壊滅的な被害をもたらす。弾丸よりも速い毎秒7kmの速さで移動するデブリは、1cmの破片でも宇宙船に大きな損傷を与え、ミッション全体を終了させる可能性があるのだ。

今日の宇宙における持続可能性の危機は、60年にわたる探査と利用が、宇宙活動が環境に与える影響をほとんど無視し、人工衛星やその他の宇宙資産を単一用途のものとして扱ってきた結果である。

このようなアプローチの結果、持続不可能なモデルが生まれ、コストが増大し、宇宙経済の壮大な将来性が危険にさらされることになったのである。地球低軌道はすでに人口が多いため、衛星オペレーターは交差を評価し、貴重な資源を消費したり、サービスに支障をきたしうるデブリ回避機動を行うことを余儀なくされている。

誰が責任を取るのか?

技術的な対策だけでは、宇宙の持続可能性の問題を解決することはできない。軌道上の衛星整備市場は、国の宇宙政策と衛星整備を直接支援する国際標準によって推進されなければならない。国の規制政策は、技術の進歩、衛星人口の増加、軌道上での新しい活動の展開に追いつくのに苦労している。

1967年の宇宙条約や2019年の宇宙活動の長期的持続可能性のためのガイドラインなど、多国間の国連規定は大枠でのガイダンスを提供しているが、具体的なライセンス実務は個々の国の規制機関によって作成・実施されなければならないのだ。

これらのガイドラインや大枠での協定を国際的に協調して実施するためのテンプレートはなく、世界の宇宙活動は単一の国や国際機関の管理下にはない。したがって、世界の宇宙活動を統制する共通の規則も、宇宙ミッションの終了時にハードウェアの適切な廃棄を保証するメカニズムも存在しない。また、軌道上にすでに蓄積された何十年ものスペースデブリを一掃するための協調的な努力も存在しない。

しかし、意識は変わりつつあり、過去1年間で、この問題をめぐる緊急性に大きな変化が見られ始めている。2021年6月、G7加盟国は、軌道上デブリを宇宙分野が直面する最大の課題の1つとして確認し、宇宙の安全かつ持続可能な利用にコミットすることを約束する声明を発表した。

この声明は、宇宙の持続可能性に関する問題の範囲を認識する貴重なものである一方で、正しい方向への一歩に過ぎない。各国政府から民間の商業企業に至るまで、国際社会全体の主要なプレイヤーは、宇宙交通と環境管理の開発および調整に着手しなければならないのだ。

軌道上サービス、持続可能な未来への鍵

これまで衛星オペレーターは、軌道上にある衛星のリスクを低減するための選択肢を持っていなかった。しかし、軌道上でのサービスは、このリスクシナリオを変えつつある。D-Orbit(ディー・オービット)、Astroscale(アストロスケール)、ClearSpace(クリア・スペース)は、宇宙分野を持続可能な時代に移行させるために力を合わせ、軌道上サービスを新たな現実のものにしようとしている。

軌道上サービスは、地球上の路上での自動車サービスに匹敵する。燃料タンクが空になったり、バッテリーの充電が切れたからといって、高速道路の真ん中に車を乗り捨てる人はいないだろう。しかし、宇宙時代の幕開け以来、ほとんどの衛星オペレーターがまさにこの方法で仕事をしてきたため、この比喩的な「軌道上の高速道路」はより混雑したままになっているのだ。

米国連邦通信委員会や国際電気通信連合に提出された申請書によると、地球低軌道にある衛星の数は2030年までに1万から4万個まで増加すると予測されており、最近では30万個を超える衛星の単一システムが提案された。このような増加により、深刻な問題を指数関数的に悪化させることが約束されている。

静止衛星の配備には、通常1億5千万ドル(約173億円)から5億ドル(約578億円)の費用がかかる。今後15年間で、100機以上の静止衛星が予定されている引退年齢に達するため、衛星運用会社は、単に交換するのではなく、その資産の価値を延ばすための選択肢を追求する必要に迫られている。衛星の寿命を延ばすことで、商業運営者や機関運営者は、資本の使い方をより慎重に考えることができるようになる。

衛星オペレーター、特に大規模な衛星郡を構築しているオペレーターは、打ち上げ前に低コストのインターフェースを衛星にインストールし、将来必要となるかもしれないサービスのコストと複雑さを軽減することができる。衛星が故障したり寿命がきたりした場合、レッカー車が道路で故障した車を運ぶように、サービス衛星がその衛星を撤去することで、軌道を確保し、同じ衛星群に属する他の衛星との衝突のリスクを低減することができるのだ。

また、衛星の撤去から軌道上での点検まで行うことで、衛星に異常が発生した場合、オペレーターは衛星の状態をより詳細に把握することができるようになる。軌道上リロケーションサービスを利用すれば、衛星の初期配置から運用軌道への投入、自然減衰を補うための調整、カバレッジの問題を解決するための衛星の再配置、不具合を補うための衛星の再配置を、燃料費をかけずに実施することができるのだ。

1950 年代の宇宙開発競争のように、研究開発に多額の投資を必要とする長期計画と同様に、持続可能な軌道インフラストラクチャーを飛躍的に発展させるためには、国家政府の役割が不可欠である。欧州宇宙機関や宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、ClearSpaceやAstroscaleなどの民間企業と共同で、地球低軌道でのデブリ除去ミッションに資金を提供し、積極的にデブリ除去サービスを開始する予定である。

この地球規模の問題を解決するためには、官民の多大な投資と業界のシステム改革が必要だが、その潜在的な報酬は事実上無限大だ。宇宙経済、つまり新しい、制限のない競技場は、私たちの惑星の生命に影響を与え、私たちの太陽系とその向こう側に新しいフロンティアを開く可能性を持っているのだ。

編集部注:本稿の執筆者Luca Rossettini(ルカ・ロッセッティーニ)氏はD-Orbitの創設者兼CEO。Nobu Okada(岡田光信)氏はAstroscaleの創業者兼CEO。Luc Piguet(リュックピゲ)氏はClearSpaceの共同設立者兼CEO。

画像クレジット:janiecbros / Getty Images

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(文:Luca Rossettini、Nobu Okada、Luc Piguet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功

展開した膜型ダストセンサーをオンボードカメラで撮影した自撮り画像。センサーが固定されたパドル面には、千葉 工業大学の校章とPERCのロゴが印字されている

展開した膜型ダストセンサーをオンボードカメラで撮影した自撮り画像。センサーが固定されたパドル面には、千葉
工業大学の校章とPERCのロゴが印字されている

千葉工業大学惑星探査研究センター(PERC)は2月15日、宇宙塵探査実証衛星「ASTARISC」(アスタリスク)がJAXAのイプシロンロケット5号機で高度約570kmの地球周回軌道に打ち上げられ、初期運用に移行したことを発表した。

ASTARISCは、宇宙塵や微小なスペースデブリを観測するための、サイズが30×10×10cmというU3超小型衛星。世界初の方式による、展開すると30×30cmになる膜状の粒子観測装置(ダストセンサー)を搭載している。ダストセンサーは、ポリイミド製の膜に圧電素子を接着したもの。この膜に宇宙塵やスペースデブリが衝突すると、そのとき発生する弾性波を電気信号としてとらえ、独自の信号処理によりリアルタイムで粒子を観測できる。粒子が膜に衝突しさえすれば検出できるので「膜の面積を大きくするだけで大面積のセンサーを容易に実現できる画期的な技術」とのことだ。

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功

ASTERISC外観写真。写真左は、展開前の衛星外観。写真右は、30×30cmの膜型ダストセンサー(左方向に広げられたオレンジ色の膜)展開後の衛星外観。膜型ダストセンサーの膜面には、受信用の8個の圧電素子と2個の試験信号用の圧電素子が接着されている

 

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功ダストセンサーは、センサーの健全性と展開実施の要件を確認したあと、ニュージーランド上空付近で展開された。タイマーコマンドにより自律的に展開されたが、オンボードカメラの映像などによって、設計通りの形状で展開されたことが確認できた。すでに「真の粒子観測イベント」と判定できるデータが得られているとのこと。観測された粒子は、0.1〜1μm(マイクロメートル)程度のサイズと推定され、センサーが設計通りの感度を有していることも実証された。今後は、長期的な観測により、軌道上の粒子の量・飛来方向・運動量などを明らかにできるとしている。

宇宙塵は、太陽系の形成に大きく関わる重要な微粒子で、原始の地球に降り注いだ宇宙塵由来の有機物が生命の起源ともいわれている。また、スペースデブリの定量的な観測と評価も、今後の宇宙開発において重要な意味を持つ。しかし、宇宙塵や微小なスペースデブリを地上から観察することはきわめて難しく、その分布や量などの特性を調べるには、直接宇宙で観測しなければならない。

ただ、宇宙空間での宇宙塵や微小スペースデブリは存在が大変に希薄であるため、それらを観測するには大きな検出面積を持つダストセンサーが必要となるが、これまでの方式ではコストの面などで大型化が困難だった。そこで惑星探査研究センターは、容易に大面積化できるこのダストセンサーを開発した。

ASTARISCは、惑星探査研究センターと東北大学が共同で開発したもの。今回は同時に、将来のミッションを視野に入れた国産の衛星バス技術(電源系、通信系、データ処理制御系、姿勢系)の軌道実証も行い、成功している。

JAXA認定宇宙ベンチャー天地人、衛星画像から水道管の漏水可能性区域を判定する実証実験を開始

JAXA認定宇宙ベンチャー天地人、衛星画像から水道管の漏水可能性区域を判定する実証実験を開始

JAXA認定の宇宙ベンチャー企業であり、宇宙ビッグデータを活用して土地の価値を見出すスタートアップ天地人は、衛星画像を使って水道が漏水していると思われる箇所の推定を行う実証実験を開始する。これは、愛知県の豊田市上下水道局、漏水検査や地中探査事業を展開するフジ地中情報と共同で実施されるもので、豊田市全域を対象として、2022年2月1日から2023年3月下旬まで行われる。

この実証実験で天地人は、衛星画像をAIで高精度解析して水道管の漏水可能性区域を判定し、フジ地中情報が実施する路面音聴調査のデータをもとに、AIによる漏水可能性判定の分析と精度向上を行うことにしている。「最新の衛星データでどこまで漏水可能性区域を判定できるかを検証」すると天地人は話している。

同様の調査は、2021年8月、豊田市の一部地域を対象に行っているが、そのときの推定的中率は約3割だった(556の漏水可能性区域のうち154区域で漏水が判明)。このときは、判定区域の直径を200mとしていた。今回は、直径100m以内に狭め、的中率約6割を目指すという。

高専生による自主的な超小型人工衛星開発を目指す「第1回全国高専宇宙コンテスト」開催

高専生による自主的な超小型人工衛星開発を目指す「第1回全国高専宇宙コンテスト」を開催

国立高等専門学校機構は1月10日、高専生が人工衛星を使った宇宙ミッションのアイデアを競う「第1回全国高専宇宙コンテスト」を開催した(新居浜工業高等専門学校が主管校。一般参加は不可)。高専の「ものづくり教育」の一環として、学生が主体的に開発に参画する仕組み作りを目指すものだ。優れたアイデアは、今後打ち上げが予定されている高専開発による超小型衛星「KOSEN衛星」のミッションテーマとして検討されることになる。

KOSEN-1

高専では、「KOSEN-1」という超小型衛星を2021年11月にイプシロン5号機で打ち上げている。これは、高知高専、群馬高専、徳山高専、岐阜高専、香川高専、米子高専、明石高専、新居浜高専、鹿児島高専、苫小牧高専の10高専が共同開発した木星電波観測技術実証衛星。JAXA革新的衛星技術実証2号機に搭載される実証テーマに採択され、高専生が中心となり2年半かけて開発した。現在は、米子高専、群馬高専、高知高専、徳山高専、新居浜高専、岐阜高専の6校が、今年打ち上げ予定の「KOSEN-2」の開発を進めている。こちらは、JAXA革新的技術実証3号機に搭載される実証テーマに選定されたものだ。

KOSEN-Xシミュレーター

このコンテストでは、参加者に「KOSEN-1」と同等のコンピューター、センサー、カメラを備えた「KOSEN-Xシミュレーター」が渡され、考案したアイデアの実証実験が行えるようになっている。自由に使えるミッション用のスペースも確保されているため、実際に軌道を巡る衛星を想定した実験が行える。審査には、JAXAの研究者は技術者も加わり、アイデアと検証実験の双方から勝者が選出されている。

「はやぶさ2」が持ち帰った試料の初期記載データが公表、リュウグウは水と有機物に富む原始的な小惑星だった

はやぶさ2が持ち帰った試料の初期記載データが公表、リュウグウは水と有機物に富む原始的な小惑星だった

2020年12月に小惑星リュウグウから帰還した「はやぶさ2」が持ち帰った試料の初期記載(カタログ化)に関する論文が、12月21日、イギリスのオンライン科学雑誌「Nature Astronomy」に掲載された(「Preliminary analysis of the Hayabusa2 samples returned from C-type asteroid Ryugu」「First compositional analysis of Ryugu samples by the MicrOmega hyperspectral microscope」)。同試料から、リュウグウが水と有機物に富む原始的な小惑星であることがわかってきたという。

リュウグウが、炭素、有機化合物、水を含む炭素質のC型小惑星であることは、地上からの観測でわかっていた。この小惑星を探ることで、原始的な太陽系の様子がわかり、今の地球の成り立ちや生命の発生に関する手がかりがつかめる。地球には、炭素質コンドライトというC型小惑星とほぼ同じ組成の隕石が少数飛来していて、それを調べて太陽系形成期のプロセスを解明しようとする研究がなされている。だが、炭素質コンドライトはC型小惑星から飛来したと考えられるものの、物的証拠はこれまで得られていない。「はやぶさ2」ミッションの目的は、それを確かめるために、C型小惑星のリュウグウから直接試料を採取してくることだった。

JAXAでは、リュウグウの2カ所の表層から採取した計5.4gの試料を、フランス宇宙天体物理学研究所(IAS)で開発された赤外分光顕微鏡マイクロオメガを使って分析した。近赤外線の波長帯で試料を観察することで、それを構成する鉱物や、そこに存在する分子を調べることができるというものだ。それによると、地上観測で得られていた小惑星全体の特徴が反映されていることがわかった。リュウグウは、水や有機物に富む原始的な小惑星だったということだ。だが既知の隕石との比較では、炭素質コンドライトの中のCIコンドライトにもっとも似ていたが、密度が小さいことと反射率が低い点で異なっていたという。

この帰還試料は「実験室で入手できる最も始原的な試料の一つであり、太陽系の起源と進化の概念を再考させることになるであろう、唯一で貴重なコレクションである」とJAXAでは話している。今後は、初期分析、2次キュレーション分析、公募分析とより詳細な分析が行われる予定だ。

画像クレジット:JAXA

JAXAが13年ぶりの宇宙飛行士候補者募集の応募受け付けを本日開始、学歴は問わず

JAXAが13年ぶりの宇宙飛行士候補者募集の応募受け付けを本日開始、学歴は問わず

以前お伝えしたとおり、JAXAは13年ぶりとなる宇宙飛行士候補者の募集の受け付けを12月20日正午から開始した。今回は、月面有人探査ミッションへの参加も予定されている。募集要項は以前に比べて大幅に緩和され、学歴も問われない。

選抜は、書類選考、第0次選抜から第3次選抜まで行われる。その中では、英語、一般教養、STEM(理工系)分野の試験、小論文、適正検査、医学検査、面接、資質特性検査などの審査が行われる。JAXAが宇宙飛行士に求める人物像は、国際共同事業で多様性を尊重しつつリーダーシップがとれる人、極限環境でも柔軟な思考と着眼点で適時的確な判断ができる人、ミッションで得た経験を人々に伝える発信力のある人。

選抜で評価されるポイントは、明確な目的意識と達成意欲、任務と訓練に耐えうる健康状態、STEM分野の知識と論理的思考力、英語力、実務経験から得られた専門性、緊急事態にも的確に対処できるミッション遂行能力、環境や技術の変化に適用できる身体能力、精神的適応性、強靱性、未経験の知識や技量を速やかに習得できる能力などとなっている。

予定されている宇宙活動には、ISSでのシステム操作や保全・実験研究・船外活動、月周回ステーション「ゲートウェイ」での操作保全・実験研究・船外活動・月面での滞在・実験研究・船外活動などが含まれる。

カシオ計算機とJAXA、月面基地建設に向け高精度位置測位システムpicalicoによる位置測位の実験を開始

月面基地イメージ ©JAXA

申し込みには、エントリーシートの入力と健康診断書の提出が必要となる。

募集および選抜の実施概要

  • 採用人数:若干名
  • 受付期間:2021年12月20日から2022年3月4日まで
  • 選抜結果発表:2023年2月ごろ

12月1日に行われたオンライン説明会の様子は、こちらから見ることができる。

詳細はこちらを。

 

JAXA認定宇宙ベンチャー天地人、EC・欧州宇宙機関主催の衛星データ国際コンテストにおいて農業関連部門で優勝

JAXAが認定する宇宙ベンチャー天地人は、EC(欧州委員会)とESA(欧州宇宙機関)が主催するビジネスアイデアのコンテスト「Copernicus Masters」のうち、ドイツの農業団体BayWa(バイバ)とともに実施した「BayWa Smart Farming Challenge 2021」において、アジアのスタートアップで初めて優勝を飾った。

Copernicus Mastersの主催者であるCopernicus(コペルニクス)は、ESAが中心となって実施されている地球観測プログラム。Copernicus Mastersには9つの部門があり、BayWa Smart Farming Challenge 2021はそのひとつ。それぞれの優勝者の中から総合賞「コペルニクス・マスターズ」が選出される。

BayWaの課題は、牧草管理、農業および園芸における初期の作物病害の推定、園芸における収量予測の3つ。これに対して天地人は、「衛星データとAIを使って土地の利用を最適化するソリューション」を提案した。審査では、革新性、衛星データ活用サービスを実際に使用するエンドユーザーにとっての付加価値の有無、技術的な実現可能性、市場での実行可能性が評価された。

優勝した天地人には、特典としてBayWaとの協働の機会が与えられたほか、Copernicus Masters総合賞のファイナリストとしての権利が与えられた。総合賞の特典は、ESAのビジネス育成センターからの支援や、協賛企業からのビジネスサポート。さらに賞金と衛星データが贈られることになっている。

天地人は、今回の機会を活用してソリューション開発とグローバルでの販売の強化を目指し、気候変動に対応した農業や土地の特徴にあった農業の実践、CO2排出量削減に向けての取り組みなどを後押しするという。

宇宙で発生した電磁波が地上に伝わる5万キロにおよぶ「通り道」が世界で初めて解明される

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

金沢大学理工研究域電子情報通信学系松田昇也准教授らからなる国際研究チームは12月10日、複数の科学衛星と地上観測拠点で同時観測された電磁波とプラズマ粒子データなどから、電磁波の通り道の存在を世界で初めて突き止め、電磁波が地上へ伝わる仕組みを解明したと発表した

地球周辺の宇宙空間では、自然発生した電磁波が地球を取り巻く放射線帯を形成したりオーロラを光らせるなどの物理現象を引き起こしているが、1つの衛星や観測地点からの観測では、電磁波の伝搬経路全体を三次元的に捉えることができなかった。そこで研究グループは、日本のジオスペース探査衛星「あらせ」、アメリカの科学衛星「Van Allen Probes」、そして日本が世界に展開する地上観測拠点「PWING 誘導磁力計ネットワーク」とカナダが北米に展開する「CARISMA 誘導磁力計ネットワーク」を連携させて、同時に観測を行った。

それにより、宇宙空間の特定の場所で電磁波(イオン波)が生まれ、その一部だけが宇宙の遠く離れた場所や地上に届いていることがわかり、そのおよそ5万キロの旅の途中で宇宙のプラズマ環境変動を引き起こし、やがて地上に到達していることを解明した。

宇宙空間には冷たいプラズマが存在し、それが電磁波によって温められると、地上の大気の寒暖の変化のように、宇宙の環境が変化する。特に大規模な太陽フレアによる宇宙嵐が起きると大量の電磁波が発生し、人工衛星の故障、宇宙飛行士の放射線被曝、地上の送電網の障害など、多くの影響をもたらす。電磁波の通り道がわかれば、プラズマ環境変化が様々な場所で同時に発生する仕組みもわかる。

イオン波を4つの拠点で同時に捉えた観測結果

だがそれを解明するには、イオン波が発生している時間帯の、2つの科学衛星と2つの地上観測拠点の位置関係が大変に重要になる。研究グループは、そのタイミングを予測しつつイオン波の観測を続けたところ、2019年4月18日に4つの拠点でのイオン波の同時観測が達成され、同一のイオン波が地磁気赤道から地上に伝搬する「電磁波の通り道」が同定された。それによると、イオン波は5万キロの距離を移動するが、経路の断面はその1/1000ほどと小さい、細長いストロー状であり、広い宇宙空間で、きわめて局所的に伝搬経路が形成されていることもわかった。

あらせ、Van Allen Probesの衛星軌道と地上観測拠点の位置関係

「電磁波の通り道」が解明され、電磁波がどこで発生し、どう伝わるかがわかったことで、安全な宇宙利用に向けた「宇宙天気予報」の精度向上が期待されるという。同研究グループは「地球以外の惑星でも電磁波が発生し伝わっていく仕組みを解明し、宇宙環境変動の網羅的な理解と普遍性の解明へと歩みを進めていきたい」と話している。

この研究には、金沢大学の他、名古屋大学、東北大学、コロラド大学、ミネソタ大学、JAXA宇宙科学研究所、京都大学、九州工業大学、ロスアラモス国立研究所、ニューハンプシャー大学、情報通信研究機構、国立極地研究所、アルバータ大学などが参加している。

宇宙ロボットのGITAI、トヨタの月面モビリティ「有人与圧ローバ」向けロボットアームの開発に着手

宇宙ロボットのGITAI、トヨタの月面モビリティ「有人与圧ローバ」向けロボットアームの開発に着手

宇宙ロボットスタートアップのGITAI(ギタイ)は12月13日、トヨタが開発を進めている月面用モビリティ「有人与圧ローバ」(Luna Cruiser。ルナ・クルーザー)向けのロボットアームの開発に着手したことを発表し、開発中の試作機を公開した。

GITAIとトヨタは、2021年6月25日にLuna Cruiser向けロボットアームの開発を進める共同研究契約を締結している。今回公開されたのは、ロボットアームの先端ツールを着脱するシステム「グラップルエンドエフェクタ」(本体側インターフェイス)と「グラップルフィクスチャ」(受け手)のブレッドボードモデル(宇宙機における初期段階の設計実証用試作機)。

グラップルエンドエフェクタ

グラップルフィクスチャ

月面での探査・点検・メンテナンスを行うためには、ロボットには複数の仕事を行う「タスク性能」と、広範囲での作業を可能にする「移動性能」が求められる。この2つの課題を解決するのが、グラップルエンドエフェクタを両端に装着したロボットアームだ。ロボットアームは、片側のグラップルエンドエフェクタを有人与圧ローバ壁面のグラップルフィクスチャに固定して、反対側のグラップルエンドエフェクタに様々なツールを着脱して、いくつもの仕事をこなすことになる。移動は、ローバー壁面の別のグラップルフィクスチャにアームの先端を嵌合(かんごう。軸と軸受けがはまり合っていること。はめ合わせるといった意味)し、反対側を切り離すことで行う。フラップルフィクスチャをローバー以外の建造物などに設置すれば、移動範囲は無限に広がる。

床や壁面に設置されたグラップルフィクスチャと嵌合(かんごう)することで移動するロボットアーム

床や壁面に設置されたグラップルフィクスチャと嵌合(かんごう)することで移動するロボットアーム

グラップルエンドエフェクタとグラップルフィクスチャは、嵌合すると、機械結合、電力結合、通信結合がなされる。またアームには充電器があり、グラップルフィクスチャに充電機能を備えれば、移動しながらの充電も可能となる。

今後は、2029年のLuna Cruiserの打ち上げを目指し、自律制御技術と、低重力・真空・極低温~高温・レゴリスといった月面特有の過酷な環境への対応に取り組んでゆくという。

 

カシオ計算機とJAXA、月面基地建設に向け高精度位置測位システムpicalicoによる測位実験を開始

カシオ計算機とJAXA、月面基地建設に向け高精度位置測位システムpicalicoによる位置測位の実験を開始

月面基地イメージ ©JAXA

カシオ計算機は11月29日、JAXAと共同で月面基地建設を想定した高精度位置測位システム「picalico」(ピカリコ)による測位実験を実施すると発表した。神奈川県相模原市のサーティーフォー相模原球場で、グラウンドを月のクレーターに見立てて行われる。

これは、JAXAの宇宙探査イノベーションハブによる「第6回研究提案募集」で課題解決型の共同研究テーマとして採択されたもの。JAXAは、2030年代以降に月面にインフラを構築し、持続的な探査を目指す構想を掲げている。ただ当面は、月にはGPSなどの衛星測位システム(GNSS)がないため、月面探査車などの位置の正確な把握方法が求められている。これに、カシオ計算機は独自技術である「picalico」を提案した。

picalicoは、LEDの発光色を赤・緑・青の3色に変化させて構成される信号をカメラで捉え、その信号に紐付けられた座標から現在位置を算出するというもの。

信号は24回または12回切り替える色変化のパターンで構成され、そのパターンがひとつのID情報となる。信号パターンの組み合わせは100万通り(106万2882通り)以上あり、カメラ1台で100個の信号を同時に受信できる。カシオはこのシステムの提供を2019年3月より開始し、現在は工場や倉庫の自動搬送車やフォークリフトの作業動線の分析や所在管理などに利用されている。

 

実験は、11月29日から12月3日にかけて行われる。野球場のグラウンドを月面のクレーターに見立て、スタンドに複数のLED灯を配置。産業用カメラを搭載したトラクターを月面探査車に見立てて、フィールドを走らせる。

また実験自体は一般には非公開だが、その様子はJAXA宇宙探査イノベーションハブのTwitterアカウントに投稿される。

花王の衣類用洗浄シートと洗髪シートが国際宇宙ステーション・ISSに搭載決定、水を使わず清潔に

花王は11月22日、衣類の汚れや匂いを取る衣類用洗浄シート「Space Laundry Sheet」(スペースランドリーシート)と、簡単に頭皮や髪の汚れを拭き取れる洗髪シート「3D Space Shampoo Sheet」(スリーディースペースシャンプーシート)が、JAXAの「宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策のアイデア募集」に採用され、2022年頃に国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されることになったと発表した。

水が貴重な宇宙ステーションでは、衣類の洗濯ができず、宇宙飛行士は同じ服を何日も着ることになる。汚れがひどい衣類は廃棄するしかない。また洗髪も、ごくわずかな水と特別なシャンプーを使い、シャンプーが飛散しないよう注意しながら行う必要がある。こうした状況を改善しようと、花王はこれらの製品を開発した。

Space Laundry Sheetは、衣類用の洗浄液を染み込ませた不織布シート。水を使わず、汚れや匂いのある場所を拭き取ることができる。部分的ながら、洗濯機で洗ったときと同等の洗浄力があるという。抗菌、消臭成分も含まれている。

3D Space Shampoo Sheetは、洗髪用の洗浄液を染み込ませた、凹凸のある不織布シート。凸部で頭皮をマッサージしながら、頭皮と毛根部分の汚れを拭き取ることができる。水を使わないため、飛散の心配がない。「さわやかなみずみずしい香り」が付いている。

試作段階に宇宙飛行士に使ってもらいアンケートをとったところ、「地上より期待度を下げて適応していたISSでのやや不便な生活を、本品は快適にしてくれる可能性が高い」「運動後、短時間でリフレッシュするには効果的」などといった良好な反応が得られた。

この開発から得られた知見は、宇宙空間のみならず、「被災時や入院時、さらには水不足の国や地域への応用も期待されます」と花王では話している。

JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

現在、日本の宇宙飛行士7名の平均年齢は51歳。今のままでは月周回ステーション「ゲートウェイ」の搭乗が開始される2025年には、定年退職のために人数は4人となり、月面活動が本格化する2030年には2人に減る。そこでJAXAでは、月面探査などの新たなミッションに備えて、宇宙飛行士を若干名募集することになった。だが今回は、これまでと応募資格が大きく緩和された。

JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

申し込みには、エントリーシートの入力と健康診断書の提出が必要となる。

募集および選抜の実施概要

  • 採用人数:若干名
  • 募集開始:2021年11月19日
  • 受付期間:2021年12月20日から2022年3月4日まで
  • 選抜結果発表:2023年2月ごろ

応募資格

  • 2021年度末(2022年3月末)の時点で3年以上の実務経験を有すること。ただし、修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなす
  • 以下の医学的特性を有すること
    身長:149.5〜190.5cm
    視力、遠距離視力:両眼とも矯正視力1.0以上
    色覚:正常(石原式による)
    聴力:正常(背後2メートルの距離で普通の会話可能)

JAXAが宇宙飛行士に求める人物像は要約するとこうなる。

  • 国際共同事業において多様性を尊重しつつ協調性とリーダーシップを発揮できる人
  • 国際宇宙探査ミッションに備えて、適応能力があり、極限環境でも柔軟な思考と着眼点で適時的確な判断ができる人
  • ミッションで得た経験を世界中の人々と共有する表現力や発信力があり、人類の持続的な発展に貢献できる人。

選抜において評価されるポイントは次の8つ。

  • 宇宙飛行士の職務に対して、明確な目的意識と達成意欲の強さ
  • 宇宙飛行士に求められる任務・訓練に耐えうる健康状態
  • STEM分野の知識や論理的思考力、円滑な意思の疎通が図れる英語能力とともに、教育や実務経験等の中で取り組んできたことにおける専門性
  • ミッション遂行能力(自己管理、コミュニケーション、状況認識、リーダーシップ、問題解決、チームワーク、マルチタスクなど)とともに、緊急事態にも迅速かつ的確に対処する能力
  • 業務環境、技術、社会の急速な進歩や変化に適用する身体能力、精神心理的適応性、強靭性を有し、未経験の知識や技量を速やかに習得する能力、未経験の作業に知識や技量を柔軟に活用して対応する能力
  • 日本人としての誇りを持ち、人文科学や社会科学分野を含む広範な素養と知識を有し、異文化、伝統、価値観に敬意を払う国際的なチームの一員にふさわしい態度
  • 自らの体験や成果などを外部に伝える豊かな表現力と発信力
  • 国内外で求められる高いコンプライアンス意識

今回の宇宙飛行士候補者募集に向けて、JAXAでは一般から意見を募った。そこでは、学歴、専門性を問わないでほしい、女性枠を設けてほしい、任期制やクロスアポイントメントなど働き方を多様化してほしい、選考過程を透明化してほしい、落選者への対応がほしいといった意見が寄せられ、これらを反映しつつ、募集の方針は次のように決められた。

  • 学歴、専門は問わない。泳力、自動車運転免許証などは応募資格から除外
  • 募集人数が少ないので女性枠は設けず、女性応募奨励のための広報関連施策を行う
  • 働き方の多様性は、訓練の従事割合がほぼ100%、海外での訓練もあり難しい
  • 選考過程の透明性は、個人情報保護などを考慮しつつ、可能なものは積極的に公開する
  • 落選者へのフィードバックを検討する

JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

選抜は、書類選考、第0次選抜から第3次選抜まで行われる。その中では、英語、一般教養、STEM(理工系)分野の試験、小論文、適正検査、医学検査、面接、資質特性検査など数々の審査が行われる。JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

選抜後の予定

  • JAXA入社、基礎訓練開始:2023年4月
  • JAXA宇宙飛行士の認定: 2024年度末ごろ(2025年3月ごろ)

選抜された宇宙飛行士候補者は、次の流れで訓練を行うようになる。

  • 国内を中心に宇宙飛行士候補者訓練を受け、宇宙飛行士に必要となる科学や技術の知識、ISS「きぼう」システムの概要などを学ぶ。英語、ロシア語も習得する
  • 候補者訓練の修了後、これらの訓練結果の評価によりJAXA宇宙飛行士に認定される
  • ISS計画に参加する日本、米国、ロシア、欧州、カナダの宇宙機関にてISSの各システムとその操作技術などを学ぶ
  • ISS搭乗が決定すれば、ミッション遂行に必要なISS操作手順、実験操作手順などの訓練と、有人輸送機の操作訓練などを行う
  • 米国が提案する国際宇宙探査(アルテミス計画)、有人輸送機(米国新型宇宙船)、ゲートウェイに関連した訓練を行う

宇宙飛行士として予定されている宇宙活動は、以下のようなものだ。

  • 米国商業宇宙船などへの搭乗、 ISSでの滞在(長期)、ISSおよ「きぼう」システムの操作保全、実験研究、船外活動
  • 米国新型宇宙船への搭乗、ゲートウェイでの滞在(短期)、操作保全、実験研究、船外活動
  • 月面着陸船への搭乗、月面での滞在(短期)、月面での実験研究、月面での船外活動

募集説明会が、「JAXA公式YouTubeチャンネル」において、2021年12月1日18:00〜20:20(予定)に行われる(ライブ配信後はアーカイブ配信)。
JAXAが宇宙飛行士候補者の募集を開始、応募資格を大幅に緩和

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学は11月17日、国際宇宙ステーション(ISS)に1カ月滞在したマウスを解析し、宇宙旅行の際には、腎臓が中心となって血圧や骨の厚さなどを変化させることを発見した。また1カ月の宇宙旅行では血中の脂質が増え、腎臓で余った脂質の代謝や排泄に関わる遺伝子が活性化していることもわかった。

東北大学大学院医学系研究科の鈴木教郎准教授と山本雅之教授らの研究グループは、JAXA筑波大学と共同でこの実験を実施した。同グループは、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在した12匹のマウスの腎臓を解析したところ、血圧と骨量の調整に関わる遺伝子群の発現量が変化していることを突き止めた。また、血液中の脂質が増加していて、腎臓で脂質代謝に関係する遺伝子の発現が増加していることもわかった。

地上では、重力に逆らって姿勢を保ったり血液を体中に押し出す必要があるが、それらを必要としない微小重力環境では、体の基礎的なエネルギー消費量が低下する。これまで、宇宙では重力の変化により、血圧と骨の厚さに変化が起きることはわかっていたが、その仕組みは明らかになっていなかった。今回の研究で、そこに腎臓の遺伝子群が関わっていることが判明したわけだ。

この結果から、宇宙旅行の際には、腎臓の健康状態を確認したり、薬剤などで腎臓の機能を調整するなどの腎臓の管理が重要になるとことが示された。今回得られたデータは、東北メディカル・メガバンク機構とJAXAが共同で整備する公開データベースに登録され、世界中の研究者がアクセスできるようになっている。

窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリース

窓型スマートディスプレイのアトモフが1.5億円を追加調達、CG制作や世界展開を加速

窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリースアトモフ(Atmoph)は11月16日、国際宇宙ステーション(ISS)からの独自映像を撮影し、窓型スマートディスプレイ「Atmoph Window 2」の風景としてリリースを開始した。Space BD協力のもと、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の制度を利用して、アトモフのためだけに撮影された映像となっている。

ISSからの映像は、Atmoph Windowでも用意していたが、今回のAtmoph Window 2用映像は、ISSから見えるオーストラリア・ケアンズを定点で捉えた映像のため、まさに「窓から見える宇宙の風景」を再現しているという。

アトモフがこだわる、映画のような迫力のある構図でオリジナル撮影ができたことについて、同社代表の姜京日(かん きょうひ)氏は「SF映画の世界ではなく、もう人類の宇宙居住は始まっているということを感じてもらいたい」とコメントしている。窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリース

Space BDは、日本の宇宙ビジネスを、世界を代表する産業に発展させることを目指す「宇宙商社」。創業以来、宇宙への豊富な輸送手段の提供とともにISSを初めとする宇宙空間の利活用において、ビジネスプランの検討から技術的な運用支援までをワンストップで取り組んでいる。またJAXAと複数のパートナーシップを組む唯一の民間事業者として、ISS「きぼう」日本実験棟からの衛星放出事業、船外プラットフォーム利用事業などを核に事業開発を推進している。

Atmoph Window 2は、アトモフが独⾃に4K/6K撮影した世界各地1000カ所以上の風景とリアルなサウンドを楽しめる、27インチ窓型スマートディスプレイ。Wi-Fi(11ac)、Bluetooth 4.0を利用可能で、3Wフルレンジスピーカー×2を搭載。Googleカレンダー連携や、スマートスピーカーからの音声操作などIFTTT連携機能も採用している。Basicタイプのサイズは638×372×57mm。3台をつなげることで、パノラマ表示も可能。

 

月面など長期宇宙滞在時の食料生産を目指しISS「きぼう」日本実験棟で世界初の袋型培養槽技術の実証実験

月面など長期宇宙滞在時の食料生産を目指しISS「きぼう」日本実験棟で世界初の袋型培養槽技術の実証実験

密閉した袋内で栽培されたレタス。写真左は収穫前の様子、写真右が地上に回収する前の様子

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月22日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」にて、将来の月面探査などにおける長期宇宙滞在時の食料生産を目指した、世界初となる袋型培養槽技術の実証実験を実施したことを発表した。これは、「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」の共同研究提案公募の枠組みで、JAXA、竹中工務店、キリンホールディングス、千葉大学、東京理科大学によって2017年から行われてきた共同研究の一環だ。

袋型培養槽技術とは、小さな袋の中で植物を増殖させるというもの。密閉した袋の中で栽培されるため、雑菌の混入がなく、外に臭いが出ない。設備が簡易でメンテナンスしやすく、省エネルギーで、人数に合わせた数量調整も簡単に行えるコンパクトなシステムという特徴がある。今回の実験は、微小重力環境、閉鎖環境での有効性、水耕栽培や土を使った栽培と比べた優位性を確認するため実施した。

実証実験用栽培装置

実証実験用栽培装置

「きぼう」内の実験装置の設置場所

「きぼう」内の実験装置の設置場所

実験装置は、44×35×20cm、重量5kgという小さなもの。この中で、3袋のレタスの栽培が行える。内部にはISSの飲料水を無菌化して培養液を作り供給する装置と、生育状況を定期的に自動撮影する装置が組み込まれている。また袋の中の空気交換も行われる。

実験は、2021年8月27日から10月13日までの48日間行われた。9月10日にはレタスの本葉が確認され、その後、順調に成長して収穫に至った。今後は、レタスと培養液、生育記録を回収して、宇宙での適用可能性やこの栽培方式の優位性を評価するという。また、レタスが食用に適しているかを調べるとともに、培養液を分析して、ISSの環境制御・生命維持システムで再利用処理が可能かを確認する。

月面農場モデルイメージ

月面農場モデルイメージ

JAXAでは、地球からの補給に頼らず、月面に農場を設営して長期滞在のための食料を生産する研究を行っている。将来的には、この袋型培養槽技術を用いた宇宙船や滞在施設での大規模栽培により、持続的な宇宙活動に貢献できるよう研究を続けると話している。

本田技研工業がeVTOL、アバターロボット、宇宙技術に向けた計画を発表

本田技研工業は9月下旬、電動垂直離着陸機(eVTOL)、二足歩行ロボット、宇宙技術などの新規事業分野におけるイノベーション計画を発表した。

本田技研工業(HMC)のイノベーション部門である株式会社本田技術研究所(Honda R&D)が中心となり「モビリティの可能性を3次元、さらには時間や空間の制約を受けない4次元、そして最終的には宇宙へと広げて、人々に新たな価値をもたらすテクノロジーへの既成概念にとらわれない研究」を行なっていくという。

まるでSF小説のような話である。こういったイノベーション計画は結局うまく行かずに終わることも多々あるが、説明会で同社は過去73年間にわたって開発し続けてきた燃焼、電動化、制御、ロボティクスなどのコア技術が、これまでのモビリティニーズと大きく異なる未来の目的に適応し、いかに進化を遂げることができるかを論証したのである。

ハイブリッドeVTOLとそれに対応するモビリティ・エコシステム

画像クレジット:本田技研工業株式会社

eVTOLとヘリコプターの違いは、前者がバッテリーからの電力で駆動する独立したモーターを持つ複数のプロペラを備えているのに対し、後者は巨大で騒がしいローターを上部に備えていることである。つまりeVTOLは通常、より安全で静か、そしてクリーンであることになる。

世界中で開発されているeVTOLのほとんどがオール電化であるのに対し、HMCは「自社の電動化技術を活用し、ガスタービンハイブリッドのパワーユニットを搭載したHonda eVTOLを開発する」ことを目標としている。この分野での技術開発を進めていくという計画意図は4月の記者会見で初めて発表されたが、その中でHMCは2050年までに製品を100%EVにするという目標も掲げている。

HMCのコーポレートコミュニケーション担当マネージャーであるMarcos Frommer(マルコス・フロマー)氏はプレスブリーフィングの中で、全電動式のeVTOLは質量あたりのバッテリー容量の関係で航続距離が非常に短いため、新型車両のほとんどのユースケースが都市間移動やシャトル便などの近距離飛行に限られると説明している。2024年までの商業化計画を発表したばかりのJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)でさえ、これまでで最も長いeVTOLのテスト飛行は1回の充電で約150マイル(約241km)だったという。

「当社の市場調査結果によると、eVTOL機での移動における最大のニーズは、航続距離が250マイル(約402km)程度の長距離の都市間移動です」とフロマー氏。「自動車の電動化もあって、ホンダはリチウムイオン電池の研究開発に力を入れています。しかし、現在のリチウムイオン電池をベースに進歩しても、容量あたりのエネルギー密度は今後20年間で数倍程度にしかならないと予想されています。そのため、さらなる軽量化が求められる空のモビリティでは電池だけで長距離を実現するのは難しいと考えています」。

フロマー氏によると、将来的にバッテリーがさらに進化すれば、HMCはガスタービン発電機を取り外してeVTOLをオール電化にすることも可能だという。

ホンダはコアテクノロジーを活用しながら新分野へ取り組み、挑み続けている(画像クレジット:本田技研工業株式会社)

同社はeVTOLを核に、地上のモビリティ製品と連携した新しい「モビリティ・エコシステム」を構築したいと考えているという。同社の説明会ではアニメーションを使った次の例が発表された。ケープコッドに住むビジネスエグゼクティブが、1つのアプリを使ってハイブリッドeVTOLを予約。ニューヨークのオフィスまでは空路でわずか2時間の距離だ。このアプリはホンダの自律走行車に接続されており、離陸のためのモビリティーハブに向かう間には今日の天気を教えてくれるだろう。着陸すると自律走行のシャトルがビッグアップルで待機していて、オフィスに連れて行ってくれる。仕事が終わり、悠々と帰宅すれば、家族と一緒に自宅のテラスでディナーを楽しむことができるだろう。

「モデルベース・システム・エンジニアリング(MBSE)の手法を用いて、従来のものづくり企業から、システムやサービスの設計・商品化も行う新しい企業へと変革するために挑んでいます。予約システムのインフラ、航空管制、運航、自動車などの既存のモビリティー製品など、さまざまな要素からなる1つの大きなシステムを完成させてこそ、お客様に新たな価値をお届けすることができるのです。これらの要素をすべて弊社だけでまかなうことは不可能であり、多くの企業や政府機関とのコラボレーションが必要になるでしょう」とフロマー氏は話している。

HMCは2023年に試作機による技術検証を行い、2025年にハイブリッド実証機の飛行試験を行うことを予定している。商業化の判断はそれからだ。HMCがそこから進み続けることを決めた場合、2030年までに認証を取得し、その次の10年でローンチできるようにしたいと考えている。同社がTechCrunchに話してくれたところによると、商業化が実現した場合、一度に4人以上の乗客を乗せることができるeVTOLの価格は民間旅客機のビジネスクラスよりも低くなることが予想されている。

「商用化の可能性については、まだ詳細を議論中です。しかし、すべてのお客様が民間旅客機のビジネスクラスよりも安い価格で当社のeVTOL機を利用できるようになるよう努力しています」とフロマー氏は話している。2040年までにはeVTOLが日常化するとHMCは予想しており、それまでに市場規模は約2690億ドル(29兆8800億円)になると予測している。

ホンダのロボット「Asimo」で時空を超えた世界へ

ホンダのアバター・ロボット・レンダリングは、医師が遠隔で患者を助けることを可能にする(画像クレジット:本田技研工業株式会社)

ユーザーが実際にその場にいなくてもタスクを実行したり物事を体験したりできるという、第二の自分を持つことを可能にする、ホンダによるアバターロボットコンセプトの「Asimo」。ユーザーはVRヘッドセットと、手の動きを正確に反映させることができる触覚グローブを装着することで、アバターを接続して遠隔操作することができる。

「私たちはこれを、2Dや3Dのモビリティを超え、時間と空間を超越した4Dモビリティと位置づけています」とフロマー氏。

Asimoは、世界で通用するような外科医がいない発展途上国では高いニーズを得るであろう遠隔手術や、人が住めない場所や人が到達するのが困難な場所にアバター版の人間を送る宇宙探査などの用途を想定している。

「アバターロボット実現の核となるのが、弊社の強みであるロボット技術を活かして開発された多指ロボットハンドと、ホンダ独自のAI支援の遠隔操作機能です。多指ハンドを使って人間用に設計されたツールを使いこなすことができ、AIによってサポートされた直感的なユーザー操作に基づいて複雑な作業を迅速かつ正確に行うことができるアバターロボットを目指しました」と同社は話している。

トヨタ自動車にもテレプレゼンスでコントロールできる同様の二足歩行アバターロボットT-HR3があり、テスラも最近人型ロボットの計画を発表している(テスラのロボットは遠隔操作技術をベースにはしていないようだが)。もしホンダがAsimoの計画を進めるならば、操作を容易にするためにも、ロボットの学習のためにも、遠隔操作の利用は理に適っている。ロボットに動作を直接行わせるというのは、ロボットを訓練する上で最良の方法なのかもしれない。

同社は2030年代にはAsimoを実用化したいと考えており、2024年3月期末までにテストを実施したいと考えている。

宇宙技術の研究・開発を強化する

循環型の再生可能エネルギーシステム(画像クレジット:本田技研工業株式会社)

同社はさらに宇宙技術分野、特に月面開発の研究開発を加速する計画も発表した。その中で少し触れたのが、同社が以前発表した循環型再生可能エネルギーシステムだ。6月、本田技術研究所と宇宙航空研究開発機構はこのシステムの共同事業化調査を発表した。月面上の基地や惑星探査機に酸素、水素、電気を供給し、人間が長期間にわたって宇宙で生活できるようにすることを目的としたシステムについてである。このシステムは、ホンダの既存の燃料電池技術と高差圧水電解技術を活用したものだという。

同社は宇宙飛行士が宇宙に飛び出す際のリスクを最小限にするために、月面で遠隔操作のロボットを使うこと、さらには地球からバーチャルで月を探索できるようにするということも検討している。月面用ロボットには、アバターロボットで開発中の多指ハンド技術や、AI支援の遠隔操作技術に加え、ホンダが衝突被害軽減のために使用しているトルク制御技術が搭載される予定だ。

同社はまた、再利用可能なロケットの製造に向けて、流体や燃焼、誘導、制御などのコア技術を役立てたいと考えている。

「このようなロケットを使って低軌道の小型衛星を打ち上げることができれば、コネクテッドサービスをはじめとするさまざまなサービスにコア技術を進化させることが期待できます」とフロマー氏はいう。「これらのサービスはすべて、ホンダの技術と互換性を持つことになるでしょう」。

フロマー氏によると、同社はロケット製造を夢見る「若いエンジニア」たちに、2019年末に研究開発を開始する許可を与えたという。ホンダは宇宙に関するいずれの取り組みについても、それ以上の具体的な内容を明らかにしていない。

画像クレジット: Honda Motor Company

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)