アドビ、同社コアアプリの機能やAIツールをそれぞれ必要十分なだけ利用する新ツール「Creative Cloud Express」を発表

Adobe(アドビ)は米国時間12月13日、Creative Cloud Expressの提供を開始した。これは、広範をカバーするCreative Cloud SuiteとAcrobat PDFツールの優れた機能を1つに統合したモバイルとウェブの新アプリで、ソーシャルメディアへの投稿からプロモーション用のポスターや動画まで、あらゆるものをすばやく作成することができる。

Creative Cloud Expressは、テンプレートファーストのアプローチを採用し、ストック画像やその他のアセットへのアクセスが組み込まれているため、個々のCreative Cloudアプリよりもはるかに利用しやすいものとなっている。このアプリには、無料版と、より複雑なテンプレートのライブラリや機能を追加した月額9.99ドル(約1130円)の有料版が用意されている。この新しいアプリへのアクセスは、AdobeのCreative Cloud All Appsとフラッグシップのシングルアプリプランにも含まれる。

画像クレジット:Adobe

ウェブアプリの他に、無料のアプリがAppleのアプリストア、Google Play、Microsoft Storeで提供されている。

Creative Cloud Expressの一般的な考え方は、プロではない人に自分のビジョンに命を吹き込むために必要なツールを提供することだ。AdobeのAshley Still(アシュリー・スティル)氏が指摘したように、同社は近年、プロではないユーザーを増やしてきた。しかし、これらのユーザーの多くは、最初はCreative Cloudのフルアプリの精度とコントロールが欲しいと考えるかもしれないが、実際には同じタスクを迅速かつ簡単に実行できる方法を求めていることが多い。

「Creative Cloud Expressで行っていることは、幅広いウェブアプリやモバイルアプリ、そしてPhotoshopや画像、動画などのCreative Cloudのコアテクノロジーから得られた知見を、Creative Cloud Expressという統一されたサービスに集約することです。これは、プロセスではなく結果を重視する人たちのためのものです。彼らは真っ白なページからではなく、1億7500万ものAdobe Stockライブラリから画像を選んで始めたいのです。フォントを作成するのではなく、Adobe Fontライブラリにある2万種類のすばらしいフォントにアクセスするのです。チラシを作るために複数のアプリを使い、そして印刷できるようPDFを作成したりはしたくありません。1つの場所ですべての作業ができるようにしたいのです」。

画像クレジット:Adobe

実際には、膨大な数のテンプレートにアクセスできるようになるだけでなく、画像から背景を削除したり、Photoshopスタイルのフィルターやエフェクトを適用したりするツールも利用可能だ。また、Creative Cloud Librariesとの統合により、同僚が作成したPhotoshopやIllustratorの作品を、Creative Cloud Expressアプリで再利用することもできる。

また、動画をGIFに変換したり、文書をPDFに変換したりするツールもある。ここで興味深いのは、Adobe Stockの統合だ。Adobe Stockには無料プランはないが、Creative Cloud Expressの無料版に(いくつかの制限付きで)統合されている。無料プランのユーザーは、約100万点の画像やその他のアセットにアクセスできる。プレミアムプランのユーザーは、1億7500万点のAdobe Stockの写真、2万点のフォント、Photoshop ExpressとPremiere Rushへのアクセスが可能になる。

「Creative Cloud Expressでは、『Less is more(少ない方が豊か)』です」とスティル氏は話す。「Photoshopですべてのことができる必要はありません。例えば、ニューラルフィルターは必要ではなくても、背景の削除や画像の簡単な編集など、いくつかの簡単なことができなければなりません。Acrobatでは、PDFをパスワードで保護する必要はなく、PDFを作成したり編集したりすることができれば十分です。シンプルさの多くは、人々が達成しなければならない最も重要なことは何かということを、私たち自身が編集することで実現しています。彼らの意図は何なのでしょう?」。

Creative Cloud Expressは、ソーシャルグラフィックスや短編動画、ウェブサイトを構築するツールであるSparkを少しだけ進化させたようなもののように感じるかもしれない。Adobeはそうは言わないだろうが、もしSparkが強化されたものとあなたが考えるなら、それは大きな間違いではないと筆者は思う。なぜなら、Creative Cloud Expressは、ユーザーインターフェイスのデザインや全体的な哲学の多くを共有しているからだ。実際、発売前にadobe.com/expressにアクセスすると、Sparkのホームページにリダイレクトされていた。

しかし、スティル氏が述べたように、同社はこれをSpark、Photoshop Express、Premiere Rushなどのアプリの代替とは考えていない。これらのアプリはすべて、Adobeのコア機能やAIツールをより利用しやすくするためのものでもある。

また、Creative Cloud Expressの対象ユーザーはもう少し広い。Adobeは、Creative Cloud Expressを、学生から中小企業の経営者まで、誰もが気軽に利用できるコンテンツ制作ツールにしたいと考えている。

AdobeのCreative Cloud部門の最高製品責任者で執行副社長のScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏は「誰もが伝えたいストーリーを持っており、誰もが自分のアイデアを表現できるようにすることが我々の使命です。何百万人もの人々が個人やプロフェッショナルのブランドを構築しているこのユニークな時代に、Creative Cloud Expressを発表できることをうれしく思います。創造、コラボレーション、共有のプロセスを統一するシンプルなテンプレートベースのツールで、誰もが簡単に作成できるようになります」。

画像クレジット:Adobe

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

アドビ、同社コアアプリの機能やAIツールをそれぞれ必要十分なだけ利用する新ツール「Creative Cloud Express」を発表

Adobe(アドビ)は米国時間12月13日、Creative Cloud Expressの提供を開始した。これは、広範をカバーするCreative Cloud SuiteとAcrobat PDFツールの優れた機能を1つに統合したモバイルとウェブの新アプリで、ソーシャルメディアへの投稿からプロモーション用のポスターや動画まで、あらゆるものをすばやく作成することができる。

Creative Cloud Expressは、テンプレートファーストのアプローチを採用し、ストック画像やその他のアセットへのアクセスが組み込まれているため、個々のCreative Cloudアプリよりもはるかに利用しやすいものとなっている。このアプリには、無料版と、より複雑なテンプレートのライブラリや機能を追加した月額9.99ドル(約1130円)の有料版が用意されている。この新しいアプリへのアクセスは、AdobeのCreative Cloud All Appsとフラッグシップのシングルアプリプランにも含まれる。

画像クレジット:Adobe

ウェブアプリの他に、無料のアプリがAppleのアプリストア、Google Play、Microsoft Storeで提供されている。

Creative Cloud Expressの一般的な考え方は、プロではない人に自分のビジョンに命を吹き込むために必要なツールを提供することだ。AdobeのAshley Still(アシュリー・スティル)氏が指摘したように、同社は近年、プロではないユーザーを増やしてきた。しかし、これらのユーザーの多くは、最初はCreative Cloudのフルアプリの精度とコントロールが欲しいと考えるかもしれないが、実際には同じタスクを迅速かつ簡単に実行できる方法を求めていることが多い。

「Creative Cloud Expressで行っていることは、幅広いウェブアプリやモバイルアプリ、そしてPhotoshopや画像、動画などのCreative Cloudのコアテクノロジーから得られた知見を、Creative Cloud Expressという統一されたサービスに集約することです。これは、プロセスではなく結果を重視する人たちのためのものです。彼らは真っ白なページからではなく、1億7500万ものAdobe Stockライブラリから画像を選んで始めたいのです。フォントを作成するのではなく、Adobe Fontライブラリにある2万種類のすばらしいフォントにアクセスするのです。チラシを作るために複数のアプリを使い、そして印刷できるようPDFを作成したりはしたくありません。1つの場所ですべての作業ができるようにしたいのです」。

画像クレジット:Adobe

実際には、膨大な数のテンプレートにアクセスできるようになるだけでなく、画像から背景を削除したり、Photoshopスタイルのフィルターやエフェクトを適用したりするツールも利用可能だ。また、Creative Cloud Librariesとの統合により、同僚が作成したPhotoshopやIllustratorの作品を、Creative Cloud Expressアプリで再利用することもできる。

また、動画をGIFに変換したり、文書をPDFに変換したりするツールもある。ここで興味深いのは、Adobe Stockの統合だ。Adobe Stockには無料プランはないが、Creative Cloud Expressの無料版に(いくつかの制限付きで)統合されている。無料プランのユーザーは、約100万点の画像やその他のアセットにアクセスできる。プレミアムプランのユーザーは、1億7500万点のAdobe Stockの写真、2万点のフォント、Photoshop ExpressとPremiere Rushへのアクセスが可能になる。

「Creative Cloud Expressでは、『Less is more(少ない方が豊か)』です」とスティル氏は話す。「Photoshopですべてのことができる必要はありません。例えば、ニューラルフィルターは必要ではなくても、背景の削除や画像の簡単な編集など、いくつかの簡単なことができなければなりません。Acrobatでは、PDFをパスワードで保護する必要はなく、PDFを作成したり編集したりすることができれば十分です。シンプルさの多くは、人々が達成しなければならない最も重要なことは何かということを、私たち自身が編集することで実現しています。彼らの意図は何なのでしょう?」。

Creative Cloud Expressは、ソーシャルグラフィックスや短編動画、ウェブサイトを構築するツールであるSparkを少しだけ進化させたようなもののように感じるかもしれない。Adobeはそうは言わないだろうが、もしSparkが強化されたものとあなたが考えるなら、それは大きな間違いではないと筆者は思う。なぜなら、Creative Cloud Expressは、ユーザーインターフェイスのデザインや全体的な哲学の多くを共有しているからだ。実際、発売前にadobe.com/expressにアクセスすると、Sparkのホームページにリダイレクトされていた。

しかし、スティル氏が述べたように、同社はこれをSpark、Photoshop Express、Premiere Rushなどのアプリの代替とは考えていない。これらのアプリはすべて、Adobeのコア機能やAIツールをより利用しやすくするためのものでもある。

また、Creative Cloud Expressの対象ユーザーはもう少し広い。Adobeは、Creative Cloud Expressを、学生から中小企業の経営者まで、誰もが気軽に利用できるコンテンツ制作ツールにしたいと考えている。

AdobeのCreative Cloud部門の最高製品責任者で執行副社長のScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏は「誰もが伝えたいストーリーを持っており、誰もが自分のアイデアを表現できるようにすることが我々の使命です。何百万人もの人々が個人やプロフェッショナルのブランドを構築しているこのユニークな時代に、Creative Cloud Expressを発表できることをうれしく思います。創造、コラボレーション、共有のプロセスを統一するシンプルなテンプレートベースのツールで、誰もが簡単に作成できるようになります」。

画像クレジット:Adobe

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

アドビが「ウェブ版」アプリに力を入れる理由とは?Creative Cloud製品群・最高製品責任者ベルスキー氏インタビュー

アドビが「ウェブ版」アプリに力を入れる理由とは?Creative Cloud製品群・最高製品責任者ベルスキー氏インタビュー

Webブラウザ版Photoshop

アドビは10月27日から28日にかけて、クリエイティブの祭典「Adobe Max 2021」を開催する。本稿では、同社Creative Cloud製品群の最高製品責任者であるスコット ベルスキー(Scott Belsky)へのグループインタビューを元に、質疑応答の内容を抜粋してお届けする。

アドビ、Creative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者)のScott Belsky(スコット ベルスキー)氏

アドビ、Creative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者)のScott Belsky(スコット ベルスキー)氏


── 2021年におけるクリエイター市場でのトレンドをどのように把握していますか?

いくつか興味深いトレンドがありました。例えば、写真でしたら、当然普段なら実際にその場所へ行ったりとか、もしくはスタジオで撮影したりするわけです。こういった部分での成長は大きくありませんでした。一方で、ビデオや、3D、「イマーシブクリエーション」と呼ばれる没入型のコンテンツ制作の分野に関しては、かなり大きな成長が見られました。

特に企業やブランドがお客様に対し、エンゲージするためのコンテンツを作りの重要性を認識したことで、さまざまなソーシャルプラットフォーム上でビデオが使われるようになりました。また、3D&イマーシブというセクターにおいては、以前でしたら多くの企業がスタジオで物や人を撮影していましたが、最近は3Dでレンダリングすることが増えてきています。

──トレンドとして挙げられた3D&イマーシブジャンルについて、アドビとしては3Dモデリング制作ツールなどの展開をどうお考えですか?

3D&イマーシブにおけるクリエイティブの世界は、まだ早期の段階にあると思います。これまでにコンシューマーの多くが3Dを経験したのかと考えても、そうではないはずです。一方で、将来的には私たちは、ARを駆使した世界で生活し、エンターテインメントの多くもVRになっていくことでしょう。こういった世界においては、全てのクリエイティビティに関するプロフェッショナルが3Dや没入型、あるいはインタラクティブなコンテンツものを作らなくてはならなくなります。

私たち自身がよりバーチャルな世界で生活することを「メタバース」と言ったりもします。そんな世界では、ファッションや、アクセサリー、そして3Dの空間といったものが、一層必要とされてくるのだと思います。そのため、私たちにとっても、「Adobe Substance 3D Collection」を充実させるのが非常に重要だと思っています。これはクリエーターの方々が、新しいバーチャルな世界において、制作活動を続けていくために欠かせません。そのためには、 やはり3Dの能力や機能をPhotoshopやIllustratorといったプロダクトに含めていくことが重要であると考えています。

──今回、Creative CloudスペースやCreative Cloudカンバスなど、Web上でのコラボレーションを想定した新サービスが登場しました。その背景についてお聞かせください。

クラウドドキュメントの開発は、私たちにとっても長い旅路になると思っています。元々、最終的には全てのプロダクトをクラウドに持っていきたいという意図はありました。また、お客様からも私たちの製品をあらゆるところで使いたい、例えば「どんな場所にいてもiPadでPhotoshopを使いたい」とか、「Webでのコラボレーションをより簡単にしたい」といった、要望がありました。

こうした背景もあって、私たちはクラウドドキュメントに対して方向性を定めなければいけないと考えてきました。アドビという企業はかつて、ローカルでのファイル格納や、デスクトップ製品に慣れていました。そういう意味において、Web上でのサービス提供は大きなトランスフォーメーションになると思います。こうした変化は、コロナ危機によって加速したと言える側面もあります。

私たちとしては、クラウド上にプロダクトを持ってくることによって、より多くの可能性を開放できると考えています。皆さんがより共同作業を行いやすくなりますし、異なるデバイスを使うこともできる。クラウドでしか実現できないようなAIのパワーをワークフローに取り入れることも可能です。さらに、その他のWebアプリケーションやクラウドサービスとの相互接続性も担保されていきます。

──10月に買収完了した「Frame.io」についてお伺いします。同社由来の機能をCreative Cloud製品群へのネイティブに実装することで、どのような進化が期待できるでしょうか?

Creative Cloudの全てのセグメントでどのようなコラボレーションをしたいか、を表しているのがこの「Frame.io」です。まず、このFrame.ioには、深いオプションがありまして、権限管理や、ビデオのウォーターマーク(透かし)付与、エディターのフィードバックの管理などが行えるのが特徴です。Frame.ioを使うようになったお客様は、よく「Frame.ioを使っていなかったころ、どうやっていたのか覚えていない」と仰られることが多いですね。

我々は、Adobeのプロダクトを利用する全てのお客様に対して、こういった魔法のようなコラボレーション機能を同じレベルで提供したいと考えています。

──Adobe MAXの完全オンライン開催は今回で2年目になります。昨年の経験が活かせた部分などはありますか?

「どういうふうになるのか」が何となく想像がついている点で、昨年よりも今年の方がよりリラックスして臨めましたね。例えば、私は基調講演の収録をしますので、自分が語りたいストーリーを考える際に、新しい人たちだったり新しい製品だったり、新しい声だったりを十分にカバーできたと思います。

ただ、そうは言っても、実際にお客様とお会いするということがなかなかできないのは少し残念には感じます。通常でしたらカリフォルニアや東京で行うイベントですので、現場でコミュニティやお客様との繋がりが生まれることになります。それができないのは大変残念です。

将来的には、オフラインとオンラインのハイブリッドでできればな、と思います。オンラインのセッションで何百万人もの人たちに、色々と語る機会があって、同時にコミュニティの繋がりを生むイベントなどもできればいいなと思っています。

──ありがとうございました。

なお、昨年開催されたAdobe MAX 2020における動画視聴回数は2100万回以上を記録したという。400以上のセッション、キーノート、MAX Sneaks、ワークショップが実施され、Adobe.comのイベントサイトへの訪問は220万回以上、ソーシャルインタラクションは5000万回以上を記録した。

2021年のAdobe MAX 2021は、日本時間10月27日~28日の2日間に渡って開催され、基調講演や400以上のブレイクアウトセッションが公開される予定だ。日本向けのオリジナルセッションも50以上用意され、すべて無料で視聴できる。アーカイブ視聴も用意されるので、ぜひチェックしてみて欲しい。

(井上晃(AKIRA INOUE)。Engadget日本版より転載)

アドビ、次世代Creative CloudでもAIの推進を続ける

ここ数年、Adobe(アドビ)はAIに全力で取り組んできた。2021年のMAXカンファレンスでも、同社のAIプラットフォーム「Sensei」を搭載したほぼすべての製品のアップデートが行われ、その成果が披露された。Lightroomのマスキングツールやプリセットの推奨、Photoshopでの画像間の色のトランスファー、Character Animatorのボディトラッカーなど、さまざまな機能がアップデートされている。


Photoshopを使ったことのある方なら、対象オブジェクトを正確に選択して操作することの難しさをご存知だろう。「自動選択ツール(英語だとMagic Wand Tool=魔法の杖ツール)」を使っても、魔法のようにはいかないことが多かった。2020年、AdobeはAIを使った「オブジェクト選択ツール」を追加した。今回のアップデートではさらに一歩進んで、画像内のさまざまなオブジェクトを自動的に認識する「オートマスキング」が導入された。Adobeは、まだすべてを検出するわけではないということをかなりオープンに認めているが、この機能は時間とともに改善されるだろうとも述べている。

画像クレジット:Adobe

同様に、2020年、Adobeは「ニューラルフィルター」と同社が呼ぶ機能を導入した。これにより、古い白黒画像のカラー化、ポートレートの改善、深度ブラーまたは画像のズームアップなどの機能が追加され、ニューラルネットワークが自動的にすべてのディテールを再作成しようとする。

画像クレジット:Adobe

2021年は「ランドスケープミキサー」という機能が導入されている。いくつかのスライダーを動かすだけで、プリセットを使ったり、または自分でカスタマイズして、例えば秋や冬に撮影されたような写真にすることができる。または、前景が少し暗いけれど、緑のイメージにしたいとしたら、青々とした緑の風景が写っている画像を探してきて、そのスタイルをトランスファーすることができる。

画像クレジット:Adobe

また、以前から搭載されていた深度ブラーは、焦点距離を事後に変更できるようになり、画像内のオブジェクトの周囲をすべてぼかすことに主眼を置いていた従来のフィルターに比べて、かなりプロフェッショナルな印象を与える。

一方、Lightroomでは、写真編集者が新機能を使って空を自動的に選択できるようになった(反転させて空以外のものも選択できる)。また、AIとは関係ないが、Lightroomの「見つける」フィードに「リミックス」タブが追加され、写真家が自分の作品を共有し、他のユーザーに自分が行った編集を見てもらうことができるようになった(変更を許可することも可能)。

ビデオグラファー向けには、Premiere Proに、音楽クリップの長さをビデオシーケンスの長さに合わせて自動的に調整することができる新しいAI機能を追加する。Creative CloudスイートのオーディオエディターであるAdobe Auditionで初めて採用された(やや紛らわしいが「Remix」と呼ばれる)この新機能は、シーケンスが終わったときに曲の途中でフェードアウトしないようにする。音楽クリップを短くする際に、曲の最後がシーケンスの最後に残っているようにオーディオを自動的にカットするという。

画像クレジット:Adobe

Creative Cloudのその他のアップデートとしては「Creative Cloud スペース(Creative Cloud Web)」がある。これは、ウェブ上のファイルやライブラリにアクセス、整理、共有するための新しいハブだ。これはまだプライベートベータ版で、Fresco、Illustrator、XD、Photoshopでのみ利用できる。これは、チームがアセットにテキスト、ステッカー、画像を追加できるリアルタイムのコラボレーションスペースを備えている。なお、これはウェブ上のPhotoshopやXDではない。プロジェクトやアセットを話し合うための場に過ぎない。

画像クレジット:Adobe

しかし、絶望することはない。PhotoshopとIllustratorのウェブ版(パブリックベータ版)も発表され、ブラウザ上での基本的な編集ツールをサポートしている。

その他にも、Creative Cloudのすべてのツールにさまざまなアップデートが行われている。明らかなのは、Adobeがクリエイティブプロフェッショナルやホビイストの作業をより楽にするために、AIに大きく賭けているということだ。ある意味では、SkylumのLuminar AIのような、AIをアプリケーションの中心に据えている競合他社に追いつきつつあるとも言える。しかし、Adobeの優位性は、その機能セットの幅広さであり、新規参入者がこれを再現するのは難しいだろう。

画像クレジット:Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)