Anycaが遊休資産となった法人車両のカーシェア実証実験を開始、参加自治体・地場企業を募集

Anycaが遊休資産となった法人車両のカーシェア実証実験を開始、参加自治体・地場企業を募集

カーシェアサービス「Anyca」(エニカ)提供のDeNA SOMPO Mobilityは8月20日、自家用自動車有償貸渡(レンタカー)事業ではなく、共同使用契約の枠組みを活用し、法人所有車両のカーシェアを可能にする実証実験を開始した。2021年3月まで実施する。また全国から、先進的なカーシェア活用に取り組みたい自治体や地場企業を募集している。

Anycaは、DeNAとSOMPOホールディングスの合弁会社DeNA SOMPO Mobitlityが運営するカーシェアサービス。今回の実証実験は、コロナ禍などで遊休資産となった法人車両を活用したいというニーズや、利用頻度が落ちた車両などをシェアしてクルマの維持費を軽減したいというニーズに応えたものという。

1事業所あたり登録可能台数は3台までなど一定の条件を設けることで、共同使用契約の範囲内で法人がカーシェアを可能とする実証実験としている。またプラットフォーム手数料として、法人オーナーの場合使用料の20%(個人オーナーは使用料の10%)を支払う必要があるほか、設定できる共同使用料の上限金額および下限金額が設けられている。

Anycaが遊休資産となった法人車両のカーシェア実証実験を開始、参加自治体・地場企業を募集

クローズドな実証実験は2019年11月から開始しており、現在では60台以上の法人所有の車両が登録されているという。遊休資産の活用や維持費の軽減を図りつつ、地域住民との関係性を築きたいというニーズが一定数あり登録台数は増えているとした。

また今回の実証実験では、自治体や地場企業が持つクルマを、通常業務で使用していない時間帯に地域住民の生活の足として活用できる取り組みを行うべく、全国から先進的なカーシェア活用に取り組みたい自治体や地場企業を募集。

法人所有の車両におけるカーシェア活用モデル例として、「移住・帰省」モデル、「離島」モデルを提案している。

移住・帰省モデルは、人口が少なく、ビジネスでのレンタカー事業が難しいような地域における維持費軽減を目的としたもの。「共同使用」のため、帰省で帰る人や移住の検討に来ている人など、地域コミュニティの一員の反復利用を想定。地域内クルマをシェアすることで、地域経済にも貢献できるとしている。

離島モデルは、離島部住民の移動コスト軽減とともに、遊休資産の有効活用やシェアリングエコノミーの形成への寄与を狙ったもの。離島部の場合、例えばフェリー代が高価で大きな負担となっている地域や、そもそもフェリーなどが運行されておらず離島・本土間でクルマを運搬できない地域がある。
本土側の住民・企業が島民とクルマをシェアできれば、移動コストの低減や遊休資産の活用につながるとしている。

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ディー・エヌ・エーとSOMPOホールディングスの合弁会社である、DeNA SOMPO Mobilityは5月16日、同社が運営する個人間カーシェアサービス「Anyca」(エニカ)において「0円マイカー」のオーナー募集を開始した。

「0円マイカー」は、DeNA SOMPO Mobilityが所有する、レンタカー登録およびカーシェア受け渡し用機器を取り付けた車をオーナーが管理。レンタカーとしてカーシェアをサポートすることを条件に、オーナーは一定回数を無料で利用できるサービス。提供車種は、BMW、メルセデス・ベンツ、レクサスなど外車を含む人気13車種。実際には、エリアなどの条件から分析してAnycaが提示する。

オーナーは駐車場を提供し、洗車、清掃などを含む管理によって付与されるポイントの範囲で、同社から貸与された自動車をマイカー代わりに使える。ガソリン代や道路料金などは、一般的なレンタカーと同様に利用者が負担する。

対象地域は、港区(六本木、南麻布、麻布十番、白金、元麻布など)、江東区(豊洲、東雲など)、渋谷区(恵比寿、恵比寿南、広尾、本町、西原、上原など)、世田谷区(三軒茶屋、太子堂など)、中央区(勝どき、月島など)、品川区(上大崎など)、目黒区(祐天寺、青葉台、大橋、下目黒など)、新宿区(西新宿、四谷など)、中野区(中央、本町、弥生町など)の東京23区中9区。同社が用意している車種は以下のとおり。

車種候補一覧

  • セダン
    BMW 3シリーズ、メルセデス・ベンツCクラス、トヨタプリウス
  • SUV
    メルセデス・ベンツGクラス、レクサスNX、トヨタランドクルーザープラド
  • コンパクト
    MINI、BMW 1シリーズ、メルセデス・ベンツAクラス、日産ノート、トヨタアクア
  • ミニバン
    トヨタアルファード、日産セレナ

建物の種類にもよるが、自宅の車庫やマンションの共同駐車場を駐車スペースに指定して0円マイカーのオーナーになるのは、防犯上や管理上で悩ましい問題が出てきそうだ。一方、自宅から離れた場所に駐車場を借りている、一軒家で屋根のない駐車スペースが近くにあるといった場合は、0円マイカーを活用できそうだ。

DeNAが個人間カーシェア「Anyca」を開始、1日3000円の低料金も「痛車」もある

所有するクルマを個人間で貸し借りできるC2Cカーシェアリングサービス「Anyca」(エニカ)を今日、DeNAが開始した。すでにテストマーケティング的にサービス自体は2、3カ月前から開始していて、登録済みのクルマの台数は約200台。当面の注力エリアは東京ではあるものの、全国で利用可能だ。1台を1日借りると車種によって3000〜5000円となる。5人乗りのプリウスという乗用車で比べると、Anycaで5500円(うち保険料が1000円)のところ、レンタカーだと1万2000円、B2Cカーシェアだと8300円というのが1日の利用料の相場だ。タイムズカープラスなどのカーシェアは6時間という短時間で4000円とか夜間のみ2000円といった柔軟性もあるので単純な比較はできないものの、1日出かける、ということならAnycaはレンタカーやカーシェアよりも価格競争力を持ちそうだ。

もっとも料金はクルマを提供する所有者が決めることができ、高級車やスポーツカーだと7000円とか1万円というのもある。この料金にはドライバーがかける1日限定の保険料も含まれる。保険は東京海上日動とのシステム接続で実現していて、マッチングが成立した契約時に保険も同時購入となる。サービスを提供するDeNAは手数料10%を取り、残り90%をクルマの提供者であるオーナーが受け取る。

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実際の貸し借りはオーナーがクルマをサービスに登録し、それを借り手がカレンダーから予約。カギの受け渡しは対面で行うというもの。現在、物理的なカギの受け渡しを不要とするためにODB2ポート(クルマのメンテ用のデータ通信ポートでハンドル下部にあるのが一般的)経由で開錠・施錠コマンドを車載システムに発行して、スマートキーが実現できるデバイスを準備中という。

DeNAのAnyca責任者で立ち上げを担当するオートモーティブ事業部の大見周平氏(カーシェアリンググループグループマネージャー)によれば、今回のサービスは法的な分類上は道路運送法でいう「共同使用」となっていて、「有償貸渡業」と呼ばれるレンタカーの規制対象となるサービスではないそうだ。この共同使用という枠組みは2006年までは許可制だったが、2007年に撤廃されている。

中国やアメリカでも伸びるC2Cカーシェアサービス

法規制上は違う分類とはいえ、C2CカーシェアのAnycaはマーケットとしてはレンタカー、B2Cカーシェアリングなどと近い領域のサービスだ。東京や大阪といった都市部でクルマの保有率が下がるなか、これらの市場は近年大きく伸びていて、レンタカー市場は矢野経済研究所が8月末に発表した資料によれば2014年は前年比4.1%増の6350億円となっていて、まだ今後も同様のペースで伸びるとの予想だ。カーシェア市場も右肩上がりを続けていて、2011年に50億円規模だったものが2014年には約154億円規模に成長、2015年は200億円を突破するとしている。

DeNA自身の調査によれば、日本の自家用車の台数は6000万台。これは、レンタカーの28万台やB2Cカーシェアリングの1.5万台に比べて圧倒的に規模が大きい。そのうえ自家用車の稼働率は低く、DeNAによれば1年で10日間(約3%)というレベルだそうだ。

これは日本に限った話ではなく、海外でもC2Cカーシェアリングのサービスが立ち上がっている。米国ではRelayRidesGetaroundが、中国ではAtzuche.com、シンガポールからはiCarsclubというスタートアップが登場している。この辺の市場調査をした大見氏によれば、特に中国の立ち上がりの勢いが「意味が分からない」というレベルで、Atzuche.comは2014年5月に上海でローンチして1年で100万ユーザー、3万台の登録というハイペースでの普及を見せているという。

当初は尖ったクルマを集めて「乗ってみたい」出会える楽しさを

今日の正式サービススタート時点で、Anycaに登録されている200台のクルマのうち、約半分が一般車で、残り100台は「尖ったクルマ」だ。

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Anyca責任者のDeNA 大見周平氏

「始まりは(ユーザー規模が)小さいので、多種多様なクルマというのでサービスを尖らせています。C2Cサービスは、ある程度密度が高まらないとサービスの利便性が上がりません。最初のうちは近所の駅に登録されてるクルマは1台にしかならない。だから、2、3駅ぐらい出向いて取りに行っていいと思えるような、そういうクルマを集めています。クルマっていいよねという体験を提供していきたいですね」

確かに、アプリでクルマをブラウズすると、特にクルマ好きでもないぼくでも1度くらいは乗ってみたいと思うようなスポーツカーや、ネタとして借りてみたい「痛車」、パンダの顔のスクールバスみたいものが目に付く。以下のような感じだ。

これは古くはAirbnbが当初にインパクトのあるお城の写真やジャングルの中のツリーハウスの写真を掲載して「泊まってみたい」と思うようなアイテムを揃えたのと同じで、サービス初期の立ち上げ時にトラクションを作る方法の定石となってきた感もある。日本だとB2Bの場所貸しサービス「スペースマーケット」が球場やお寺などをトップページで見せているが、実際のビジネスのボリュームゾーンは退屈な空き会議室だろう。

同様に、Anycaも「乗ってみたい」を当初は強調するのだろうし、これはこれでまた違ったニーズとニッチ市場があるのは間違いない。軽自動車ばかりが売れ、クルマが経済合理性だけで選ばれる傾向が強まる一方で、クルマ好きのファンたちは個性派のクルマの維持費用を正当化できずに頭を抱えている。だから、大見氏らはこれまでAnycaでクルマ好きのコミュニティーに事前登録を依頼するようなことをしてきたのだという。

レンタカーやB2Cカーシェアサービスではコストダウンのために車種を絞る力が強く働く。大見氏によればレンタカーで稼働率が70%、カーシェアリングでも稼働率30%あたりがブレイクイーブンではないかといい、たとえ高級車などを一部に取り入れても、これを下回るようだと「銀色のプリウス」に置き換えざるを得ない事情がある。C2Cの場合は、すでに市中にあるクルマ好きの多種多様な車種を扱えるのが強みとなる。

普及した先にはC2C売買や横展開、新しい所有モデルの提供も

「初年度は一定地域で密度を高めて利便性を検証していく計画です。これが都内で2000台とか3000台になってくると、だいぶ密度が高くなってくる。23区で数千台、3年後に数万あるいは数十万というのが目標です」

「ある程度普及してCPAやLTVが見えてきたら、横展開していくことも考えています。所有とシェアは近づいてくるはずと考えているので、第二ステップとしては、例えば、新車を買うときにシェア前提で共同所有するオーナーたちのために新しいオートローンを作るというのもあり得ます」

サービス提供で集まってくるデータを使った事業の展開というのはDeNAのようなネット企業の得意とするところ。「例えば、われわれには車検がいつ切れるのが分かります。珍しいクルマを持っている人をディーラーに送客するとか、C2Cの売買を導入することも考えられます」