短期的な採算性ではなく長期的な協業に——中小企業バックオフィス支援のBizerと法律事務所のAZXが資本提携した理由

中小企業のバックオフィス業務をクラウドで支援するサービス「Bizer」。このサービスを提供するビズグラウンドが5月18日、AZX Bizer Support Fund なるベンチャー投資ファンドを割当先とする第三者割当増資を実施したと発表した。投資額等は非公開だが、数百万円程度だと聞いている。

このAZX Bizer Support Fund 、実は今回の出資に向けて組成されたファンド。AZX 総合法律事務所を筆頭に、士業によるスタートアップ支援を手がけるAZX Professionals Groupがパートナーとなっている。外部資本も入っておらず、その名の通りビズグラウンドへの投資だけを行うファンドだ。

両者は今回の投資を契機に業務提携も実施。Bizerのユーザーは、AZXの弁護士に初回30分無料相談ができるようになるほか、AZXの契約書作成サービス「契助」の割引利用が可能になる。今後については、ビズグラウンド代表取締役の畠山友一氏いわく、「今のBizerのサービス範囲だけにとどまらず、新たな事業領域での協業も検討していく」のだそう。

法律事務所がスタートアップ投資をする意味

Bizerのユーザーからすれば弁護士によるサポートが強化されるワケだし、AZXからすれば投資先の支援をすることで将来的なキャピタルゲインも期待できる。さらにはスタートアップのクライアント獲得にもつながる話だ。ただスタートアップの法務に強いとは言え、法律事務所が投資まで行うというのは日本ではあまり聞かない。

ちなみに、米国シリコンバレーに拠点を置く大手法律事務所のWilson Sonsini Goodrich & Rosati Professional Corporation(ウィルソン ソンシーニ)もクライアントであるスタートアップに積極的に投資してきていることで知られている。これはスタートアップへの支援の強化につながる一方、士業として客観性を欠くことになるということで賛否両論あるようだ。

「もともとはBizerをAZXのクライアント向けに利用できないかという点を検討したことが最初の契機。だが出資をすることで、短期的な収益面での採算性ではなく、長期的な視点で一緒に協業していくことができると考えた」—AZX Professionals Group CEOで弁護士の後藤勝也氏は語る。

実はAZXでは1月頃からスタートアップへの投資を検討していたのだそうで、これが初の案件となる。「以前からフィーベース(都度士業に料金を支払って相談などをするという形式)でサービスを受けるのはまだ厳しい状況なので、株式を持ってもらえないかというような相談もあった。今回の出資は、フィーベースのサービスを無料・低額にするという趣旨ではなく、連携してサービスを作るためのものだが、今後はこのような趣旨でも投資していきたい」「我々もビジネスとしてやっている以上、お金をもらっていないとできないこともあったが、投資先であれば組織としてきっちりと支援していける」(後藤氏)

具体的な投資目標などは聞けなかったが、「ベンチャーキャピタル等が想定する資本政策を乱さないよう了解を得つつ投資を進める」(後藤氏)とのこと。また投資先ごとにファンド(ただし、基本的には外部のLPを入れない)を組成する予定だという。

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Simon Cunningham