バックオフィス業務をクラウドで支援するBizer、スタートアップの株主関連業務を効率化する新サービス

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投資家やVCから出資を受けて成長を目指すスタートアップにとって、会社運営の節目ごとに必要となる重要な業務が株主総会の手続きや株主管理だ。しかし立ち上げて間もない企業にとって、専任で株主関連業務を担当する人員を最初から確保するのは、なかなか困難なことも多いだろう。

中小企業向けのバックオフィスサービスを提供するBizer(バイザー)は3月1日、外部株主から資金調達をするスタートアップや中小企業を対象に、クラウド上で株主関連業務や株主とのやり取りをワンストップで行えるサービス「Bizer IR」の提供を開始した。

Bizer IRでは、株主名簿の作成、株主への株主総会招集通知や招集手続、総会関連情報や報告書の共有、総会議事録の共有等、株主総会に関わる業務をまとめて管理できる。また、株主とのファイル共有・連携が可能な「バインダー」機能により、必要なファイルがまとめて保管・閲覧できるため、必要な書類が漏れなくシェアでき、企業側のファイルのやり取りなどの業務負荷が軽減できるほか、VCなど、多忙な株主にとっても出資先とのやり取りや管理を効率化できるという。

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Bizer IRのベースになるサービス「Bizer」は、会社設立をはじめ、総務・人事労務・経理などのバックオフィス業務をまとめて管理できるクラウドプラットフォームだ。このBizerに含まれる「ToDoリスト」機能を活用することで、株主総会開催に必要な手順・業務も、抜け漏れなく遂行できる仕組みとなっている。

Bizer社代表取締役の畠山友一氏は「多くのスタートアップにBizerを使ってもらう中で、定時株主総会の開催はしたとしても議事録を株主と共有するといったコミュニケーションや、そもそも誰が何株保有しているのかといった株主管理を行うツールがないことが分かってきた。また、議事録などの書類や株主管理の必要性が理解されていなくて、シリーズBぐらいになって出資を受ける際に、過去の議事録を求められて困った、というケースもある」と言う。

2016年10月以降、商業登記の申請には、株主総会議事録とあわせて株主リストの添付が義務付けられ、株主管理の重要性は高まっている。一方で、株主総会招集のネットでの通知については、現在は株主の同意が義務付けられているが、同意なくネットで提供できるようにするための会社法改正の議論が進められ、株主関連業務のあり方も変わろうとしている。

これらの背景をもとに「株主関連業務や株主との情報共有で『これさえやっておけば大丈夫』というスタンダードになるサービスを作ろうと思った」と畠山氏は話す。

Bizer IRのリリースにともない、Bizerにもバインダー機能が組み込まれ、税理士、社会保険労務士といった士業の外部パートナーとの業務管理やファイル共有などの連携が、Bizer上で一括して行えるように強化されている。Bizer IRの利用料金は、Bizerと同じ月額2980円(税込)だが、今後、このバインダー機能を利用できる招待ユーザー数によって、料金が変動するプランを4月から取り入れるそうだ。「順調に調達が実施できて、士業パートナーのほかにもコミュニケーションする株主が増える、シリーズA〜Bぐらいのフェーズの企業からは上のプランを使ってもらうことを考えている」(畠山氏)

Bizer社では2月より、VCから資金調達をしているシリーズAフェーズまでのスタートアップ企業約100社を対象にBizer IRのβ版を先行公開し、モニター提供していた。その多くはバインダー機能を株主のほか、顧問税理士や顧問弁護士とのやり取りに利用していたそうだが、面白い利用方法があったと畠山氏は言う。「産業医と、これまではメールで行っていた社員の健康診断情報のやり取りに利用していて、なるほどと思った。10人、50人規模の会社では産業医が付くことはないだろうけれども、150人規模ぐらいになると、そうしたニーズもあるのかと。自分自身、スタートアップの経営者として自分が欲しい機能やサービスを作ってきていて、Bizerのヘビーユーザーとしての自負もあるけれど、これは他にも利用できるケースがあると思う。そうしたニーズに合わせて、Bizer IRに続くサービスを作っていって、Bizerを中堅規模の企業にも広めていきたい」(畠山氏)

短期的な採算性ではなく長期的な協業に——中小企業バックオフィス支援のBizerと法律事務所のAZXが資本提携した理由

中小企業のバックオフィス業務をクラウドで支援するサービス「Bizer」。このサービスを提供するビズグラウンドが5月18日、AZX Bizer Support Fund なるベンチャー投資ファンドを割当先とする第三者割当増資を実施したと発表した。投資額等は非公開だが、数百万円程度だと聞いている。

このAZX Bizer Support Fund 、実は今回の出資に向けて組成されたファンド。AZX 総合法律事務所を筆頭に、士業によるスタートアップ支援を手がけるAZX Professionals Groupがパートナーとなっている。外部資本も入っておらず、その名の通りビズグラウンドへの投資だけを行うファンドだ。

両者は今回の投資を契機に業務提携も実施。Bizerのユーザーは、AZXの弁護士に初回30分無料相談ができるようになるほか、AZXの契約書作成サービス「契助」の割引利用が可能になる。今後については、ビズグラウンド代表取締役の畠山友一氏いわく、「今のBizerのサービス範囲だけにとどまらず、新たな事業領域での協業も検討していく」のだそう。

法律事務所がスタートアップ投資をする意味

Bizerのユーザーからすれば弁護士によるサポートが強化されるワケだし、AZXからすれば投資先の支援をすることで将来的なキャピタルゲインも期待できる。さらにはスタートアップのクライアント獲得にもつながる話だ。ただスタートアップの法務に強いとは言え、法律事務所が投資まで行うというのは日本ではあまり聞かない。

ちなみに、米国シリコンバレーに拠点を置く大手法律事務所のWilson Sonsini Goodrich & Rosati Professional Corporation(ウィルソン ソンシーニ)もクライアントであるスタートアップに積極的に投資してきていることで知られている。これはスタートアップへの支援の強化につながる一方、士業として客観性を欠くことになるということで賛否両論あるようだ。

「もともとはBizerをAZXのクライアント向けに利用できないかという点を検討したことが最初の契機。だが出資をすることで、短期的な収益面での採算性ではなく、長期的な視点で一緒に協業していくことができると考えた」—AZX Professionals Group CEOで弁護士の後藤勝也氏は語る。

実はAZXでは1月頃からスタートアップへの投資を検討していたのだそうで、これが初の案件となる。「以前からフィーベース(都度士業に料金を支払って相談などをするという形式)でサービスを受けるのはまだ厳しい状況なので、株式を持ってもらえないかというような相談もあった。今回の出資は、フィーベースのサービスを無料・低額にするという趣旨ではなく、連携してサービスを作るためのものだが、今後はこのような趣旨でも投資していきたい」「我々もビジネスとしてやっている以上、お金をもらっていないとできないこともあったが、投資先であれば組織としてきっちりと支援していける」(後藤氏)

具体的な投資目標などは聞けなかったが、「ベンチャーキャピタル等が想定する資本政策を乱さないよう了解を得つつ投資を進める」(後藤氏)とのこと。また投資先ごとにファンド(ただし、基本的には外部のLPを入れない)を組成する予定だという。

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Simon Cunningham

 

月額2980円で士業に相談し放題のBizer、役所提出文書の自動生成が可能に

月額2980円で士業に相談し放題」でサービスを開始したビズグラウンドの「Bizer(バイザー)」。2014年12月からは士業への相談に加えて、中小企業向けのクラウド型バックオフィス機能「会社運営のダンドリ」を提供している。

会社運営のダンドリでは、必要な情報を入力するだけで株式会社設立に必要な文書を作成できるほか、テンプレートに従って作業をするだけで総務や労務、経理の処理ができる。

作業の途中で分からないことがあれば、士業に相談したり、手続きの代行を依頼したりもできる(ちなみに作業途中の質問は課題が明確なため、士業もこれまでに比べて素早く、適切な回答をしやすいのだそうだ)。ビズグラウンド代表取締役社長の畠山友一氏によると、会社の増資や年末調整、従業員の雇用・退職など、約120件のイベント(1つのイベントにつき10〜20件の作業が含まれる)を支援してきたそうだ。

今回その会社運営のダンドリに、役所への提出文書の自動生成機能が実装された。この機能を使うと、あらかじめ登録しておいた会社や従業員の情報をもとにして、役所へ提出可能な書類を自動生成できる。

現時点では、従業員の雇用時に必要となる「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」「国民年金第3 号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3 号該当)届」「健康保険被扶養者(異動)届」「特別徴収切替申請書」「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」の合計7つの文書に対応。印刷して押印さえすれば役所に提出可能だ。今後は従業員の退職や本社移転、増資などに関わる文書も追加する予定で、1年間で100種類の文書生成に対応するという。新機能も月額2980円の有料会員であれば自由に利用できる。

Bizerのサービス開始時にも畠山氏に「Bizerは士業の仕事を奪うようなものではないのか」といった質問をしたのだけれど、正直なところ今回の機能も同じような印象を受ける(もちろんユーザーにとっては大歓迎だろう)。これについて改めて聞いてみたのだけれど、「文書作成機能には士業の協力も得ている。書類作成のような単純労働ではなく、『士業でないとできない仕事』に集中する環境を作りたい」(畠山氏)とのことだった。


月額2980円で士業に相談し放題の法人向けQ&Aサービス「Bizer」、登記用の書類も自動作成

Q&Aサービスと言えばオウケイウェイヴの「OKWave」から、スマートフォンに特化したLINEの「LINE Q」、nanapiの「Answer」などを思い浮かべるかも知らないが、企業を支援するQ&Aサービスも存在する。弁護士ドットコムの「弁護士ドットコム」もそうだし、walkntalkの「Visasq(ビザスク)」もそう、今回紹介するビズグラウンドの「Bizer(バイザー)」もそういったサービスの1つだ。

Bizerは、会社運営に関する手続きについて税理士や社労士、行政書士、司法書士といった士業の人々にオンラインで相談できるサービスだ。価格は月額2980円で、相談回数は無制限となっている。

サービスを開始したのは5月。現在はユーザーの8割が10人以下のスタートアップだそうだが、数十名規模の中小企業まで約100社がサービスを利用している。相談は基本的に24時間以内に回答するとしているが、現在1〜2時間程度で回答が来ることがほとんどだという。回答する士業の人数は30人程度。現在のリソースで1000社程度のユーザーまでカバーできるそうだ。ビズグラウンドで実際に自社の登記変更を依頼するなどしてテストをして、信頼できる人物のみを採用するという徹底ぶりだという。

Bizerはユーザーと士業の相談に加えて、士業への仕事の発注までをサポートする。Bizer上で金銭のやりとりは発生しないが、士業はユーザーから発注された金額の20%を利用料としてBizerに支払っている。「個別具体的な話が多い。また地域によっては業種を理解している士業の人にリーチするのが難しかったりもする。そういった課題を解決したい」(ビズグラウンド代表取締役の畠山友一氏)。

これを聞いてしっくりきたのだけれど、最近地方発のあるスタートアップが、起業の際にあった課題の1つとして「ITを理解している税理士が近所に居なかった」と話していたことがあった。Bizerでも、実際に地方のITスタートアップとITを理解している都内の税理士が仕事をするといった事例が出てきているそうだ。

そんなBizerが6月30日、役所提出書類の自動生成機能を公開した。この機能を利用すると、あらかじめBizerに登録しておいた情報をもとに、公証役場の委任状、法務局の登記申請書など、会社設立時や設立後に必要な16の書類を自動で作成できるようになる。

ただこれを聞いて疑問に思ったのだけれども、この機能、士業の仕事を奪うようなものではないのだろうか?畠山氏はその可能性を認めた上で、「書類作成はあくまで単純労働のようなもの。そういったものではなく、士業でないとできない付加価値のある仕事に集中できるようにしてほしい」と語る。2013年の株式会社の登記件数は約8万件とのことだが、Bizerでは今度その1割に当たる8000社の利用を目指すとしている。また、Bizerは登録された情報などをもとに、新たなサービスも提供していけそうだ。

なおビズグラウンドは、インキュベイトファンドの運営するファンド「インキュベイトファンド2号投資事業有限責任組合」から出資を受けている。金額は非公開だが、数千万円程度とみられる。