2017年はビットコインを筆頭に仮想通貨の注目度が高まった1年だった。投資の対象としてはもちろん、文字通り「通貨」として会計に使える店舗もでてきているし、仮想通貨を活用した新たなベンチャーファイナンスの枠組みとしてICOが話題になった。
個人で仮想通貨の取引を始めた人も一気に増えたことによって今後大きな問題となるのが税務、つまり確定申告だ。ビットコインに関しては9月に国税庁が課税の取り扱いについての見解を公表しているが、実際どうしたらいいのかわからないという人も多いのではないだろうか。
そんな仮想通貨の税務問題に取り組むのが、12月1日にリリース(一次申し込み開始)予定の税理士紹介・記帳代行サービス「Guardian」だ。
提供元のAerial Partnersはサービス公開に先立って、総額約5000万円の資金調達を実施することを明かしている。第三者割当増資の引受先は日本テクノロジーベンチャーパートナーズおよびCAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、3ミニッツ取締役CFOの石倉壱彦氏を含む複数の個人投資家。500 Startups Japanが公開する投資契約「J-KISS」による資金調達だという。
仮想通貨に詳しい税理士の紹介と記帳代行システムをセットで提供
Guardianは仮想通貨に詳しい税理士の紹介と記帳代行システムをセットにしたサービスだ。一見シンプルな税理紹介サービスに見えるが、Guardian側で複数取引所の情報整理や取引を時系列に並べる機能をもつ独自システムを開発し、税理士に提供することで税務業務をサポートしている。
「仮想通貨のロジックがわかっていても人間が手作業で全て対応するのは難しい。そこで申告者に税理士の先生を紹介するだけでなく、記帳代行をスムーズにするシステムを開発している」(Aerial Partners代表取締役の沼澤健人氏)
国内外の取引所10社を中心に、取引履歴照会のAPIを公開している取引所についてはAPI登録のみで自動で所得を集計。APIを公開していない取引所についてもCSVアップロードなどで所得が集計できる。
沼澤氏によると将来的にはこの独自システムをさらに改良した上で、SaaSとして外部に提供することも検討しているとのことだった。ただし現状は法制度も整備しきっていないこともあり、あくまでもGuardianを支えるツールとしての位置付けだ。
現在はむしろ税理士側の啓蒙活動などアナログな取り組みに力を入れているそう。たとえば日本仮想通貨税務協会を設立して仮想通貨に対する講習を実施。認定された税理士をGuardianで紹介していく予定だ。
Twitterアカウント開設後2ヶ月で350件以上の税務相談
Aerial Partnersのメンバー。写真中央が代表取締役の沼澤健人氏
沼澤氏はあずさ監査法人で3年間勤務した後に独立。現在はチャット小説アプリ「peep」を手がけるTaskeyの共同代表や法人向けの会計業務を行うAtlas Accountingの代表を務めている起業家だ。今回新たに仮想通貨に関する事業を始めた背景には、7月に開設したTwitterアカウント「2匹目のヒヨコ」を通じて、多数の仮想通貨に関する税務相談が寄せられたことがあるそうだ。
「個人的に1年半ほど仮想通貨の投資をやっていたが、今年に入って一気に利用者が拡大する中で所得税の計算が大変なことになるだろうなと思い、税務相談ができるTwitterアカウントを立ち上げた。仮想通貨と税務の知識がどちらもある人が界隈にいないこともあり、150人以上の方から370件ほどの相談を受けた」(沼澤氏)
沼澤氏が約1000人に行ったアンケートでは1つの取引所のみを使っているユーザーは全体の1割ほどで、4割が5つ以上の取引所を使っていると答えたそう。中にはアルトコインを使うために海外の取引所を利用するユーザーも多い。そうなると円建てで計算する必要が生じ、後々個人で対応するのは難しいという。
相談をしてくる人の中には税理士に相談したところ対応が難しいと断られ、解決策を探し求めた結果沼澤氏のTwitterにたどり着いたという人もいる。「10年ほど前にFXが注目された時も申告していないためにペナルティを受けた人が多発した。同じような状況にするわけにはいかない」(沼澤氏)
当初は個人的に無償でアドバイスを行ったり税理士の紹介をしていたそうだが(沼澤氏自身は税理士ではないため)、案件が増え個人では対応できなくなり、8月後半から事業化に向けて急ピッチで動き出した。
「3月になって地元の税理士事務所に駆け込んでも、ほとんどの税理士は対応できない。そもそも申告が必要だと知らない人もいるので、申告者と税理士双方への啓蒙活動を進めながら今年の確定申告期を業界全体で乗り越えていきたい」(沼澤氏)