マイクロソフトが、サプライチェーンと製造業を近代化する新ツールを発表

新型コロナウイルス感染流行は、原材料の欠如や労働力の不足など、様々な理由で世界のサプライチェーンに大打撃を与えた。問題は依然として続いており、Microsoft(マイクロソフト)はサプライチェーンと製造業の近代化に、多大なリソースを投入することを決定した。

これらの問題に対処するために、同社は「Microsoft Cloud for Manufacturing(マイクロソフト・クラウド・フォー・マニュファクチャリング)」と呼ばれる新しい製造業向けソリューションと、「Dynamics 365 Supply Chain Insights(ダイナミクス365サプライチェーン・インサイト)」という、サプライチェーンのルート上で起こっていることをより可視化し、問題が発生したときに対処するためのインテリジェンスを提供するためのツールを発表した。米国時間11月2日に開催された「Microsoft Ignite(マイクロソフト・イグナイト)」で発表された両製品は、同日よりプレビュー版が提供されている。

マイクロソフトの製造・サプライチェーン担当VPを務めるCaglayan Arkan(カグラヤン・アルカン)氏によれば、同社はこれらの問題を企業が解決するのに役立つ方法を考えるのと同時に、製造業にとって課題となっている、よりデジタルに注力した企業への進化を支援する方法を考えてきたと述べている。

アルカン氏によると、この事態を調査したマイクロソフトは、新型コロナウイルスの圧力に直面した際に、持ち堪えることができない脆弱なシステムを目の当たりにしたという。「製造業やサプライチェーンは非常に確固とした状態にあり、非常に引き締まっています。おそらく引き締まり過ぎているのです。これらの業界では、非常に長いサイクルと手動でサイロ化されたデータの状態に大変満足してきました」。

新型コロナウイルス感染流行が起こるまで、製造業は何年もこの方法で仕事をしてきており、変える理由がなかったのだと、アルカン氏は付け加えた。「(新型コロナウイルス流行によって)すべてが止まりました。従業員を現場に送ることができなくなり、物資もそこにはありませんでした。サプライヤーの顔を見ることもできず、商品がどこにあるのかもわからず、大きな混乱に陥りました」と、アルカン氏は説明する。

マイクロソフトの製造業向けクラウドは、工場のデジタル化を支援し、従来の記録システムからアルカン氏の言う「現実のシステム」へ移行することによって、完全なデジタル化への道筋を提供する。

つまり、製造企業は、市場でどんな需要があるか、現場で何が生産されているか、世界で何が供給されているかをリンクさせて、全体像を把握できるようになる必要があり、それによって新型コロナウイルス流行の初期にトイレットペーパーやPPE(個人防護具)の需要が急増したときのような、不意打ちをくらわないようにすることができるということだ。

Cloud for Manufacturingは、このような徴候を収集し、追加の供給が必要になった場合には製造業者に警告を発するように設計されている。そしてSupply Chain Insightsツールは、サプライチェーンのルートをマッピングし、ボトルネックが発生する前に、主要な原材料の供給に影響を与える可能性のある問題を根絶するように設計されている。これらのツールを組み合わせることで、製造企業は俊敏性と柔軟性を向上させることができる。

Microsoft Dynamics 365 Supply Chain Insights 画像クレジット:Microsoft

マイクロソフトは、これまで非常にゆっくりと近代化を進めてきたこの種の企業が、既存のシステムを引き剥がして取り替えたり、大規模なプロジェクトを抱えたりすることは望んでいないと理解している。アーカン氏が言うように、まずは1つのプロジェクトを成功させてから、次のプロジェクトに移る必要があり、アーカン氏によれば、このソリューションはそれができるように設計されているという。

しかも、それぞれのプロジェクトは互いに積み重なり、節約とイノベーションによって、次のプロジェクトの資金源になると、アーカン氏は言う。「デジタルトランスフォーメーションにおけるすべてのステップ、当社とのすべてのエンゲージメントは、次のプロジェクトに資金を追加するための経済的余裕を生み出します。なぜなら、当社のソリューションは、8~12週間のうちに、総収入や生産能力を増やしたり、コスト削減や品質向上をもたらすからです」と、アーカン氏は述べている。

これは大胆な約束ではあるが、もしマイクロソフトが本当にそれを実現できるなら、伝統的にこのような大きな変化を拒んできた企業にも、モダナイゼーションへの快適な道が開かれることになる。

マイクロソフトをはじめ、SAPやSalesforce(セールスフォース)などの大企業がこれらの本質的な問題を解決できれば、今日見られるようなサプライチェーンの問題が緩和される可能性がある。ソフトウェアだけでは、不足している原材料を魔法のように生産したり、物資の製造や配送のために十分な人員を雇用したりすることはできないが、将来におけるこのような危機を緩和するために役立つソリューションの一部となることはできる。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイクロソフトがビジネススイートのDynamics 365とコラボツールTeamsを緊密に統合

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収束せず、従業員がバラバラになって在宅勤務をするための条件がわかってくる中で、ユーザーはツールをもっと統合してタスクの完了に必要なクリックを減らしたいと望んでいるだろう。米国時間3月2日のIgniteカンファレンスMicrosoft(マイクロソフト)は、こうした問題を解決するために同社ビジネススイートのDynamics 365とコラボレーションツールのTeamsを緊密に統合すると発表した。

Microsoftのビジネスアプリケーション&グローバルインダストリー担当コーポレートバイスプレジデントであるAlysa Taylor(アリサ・テイラー)氏は、ネイティブに統合するこのアプローチの利点の1つは異なるアプリケーション間でのコンテクストの切り替えが減ることだと指摘した。同氏は「我々はコラボレーションプラットフォームとビジネスプロセスのレイヤーを1つにまとめ、営業職やサービス担当者、オペレーションマネージャー(と類似の職種)がコラボレーションと日常業務の両方の機能を備えた一元化されたプラットフォームを使えるようにコミットしています」と説明した。

その効果はマーケティング、セールス、サービスにさまざまなかたちで現れるだろう。例えばマーケッターはDynamics 365 Marketingツールでウェビナーを設定して管理し、Dynamics 365のコンソールに直接統合されたTeamsストリーミングセットアップを利用して、Teamsでストリーミングイベントを実施できる。

テイラー氏は営業を例に挙げ「販売担当者がLinkedIn Sales Navigatorを使って顧客の人事異動を追跡し、Dynamics 365 Salesを離れることなくMicrosoft Teams内で特定の販売記録を関連づけられます。このため、Salesアプリケーション内で顧客やTeamsで発生した顧客に関する変更事項をしっかりと把握でき、Salesは自動で更新されます」と話す。

Microsoft製以外にもさまざまなツールをワークフローに組み込んで使いたい企業の場合に関してテイラー氏は、Microsoftのクロスクラウドコネクタを使って別のサービスと接続でき、どのようなタスクかは問わないと説明する(コネクタが目的のアプリケーションに対応できればの話だが)。

ビジネスソフトウェア分野におけるMicrosoftの大きなライバルであるSalesforceは2020年末にSlackを270億ドル(約2兆9000億円)以上で買収し、Microsoftと同様の統合機能をSalesforceプラットフォームに導入した。テイラー氏は、この買収をMicrosoftがすでに構築を始め現在も継続している統合への対抗策と見ている。

関連記事:SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

同氏は筆者に対し「SalesforceはSlackを買収して(我々と同様の)コラボレーションを実現する必要があったと考えています。Salesforceは我々のようなネイティブの統合にはならないため、我々はSalesforceが提供しようとしていることより何年も先行しています。そのため私は、Salesforceの買収は我々がDynamics 365とTeamsでしようとしていることへの対抗策と見ています」と語った。

CRM分野の市場シェアではSalesforceがMicrosoftを上回っていることは指摘しておいた方がいいだろう。2019年のGartnerの調査によると、Salesforceが19%を超えているのに対しMicrosoftは3%に満たない。この調査以降に数字が多少は動いているかもしれないが、おそらく大きくは変わっていないだろう。

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

Microsoft Teamsに新機能多数、組織外とのチャンネル共有やPowerPointを使ったプレゼンも可能に

今週(バーチャルで)開催されている「Microsoft Ignite(マイクロソフト イグナイト)」は、ITを中心としたMicrosoft(マイクロソフト)の年次発表会だ。このイベントが最後にリアルで開催された2019年には、過去最多の2万6000人以上が参加した。そんな現在の状況を考えれば、2021年はMicrosoft Teams(マイクロソフト チームズ)が発表の中心となったことは当然と言えるだろう。なんといっても、今やTeamsはMicrosoftの生産性スイートの中核となっている。今回の発表は、新しい会議機能から会議室用ハードウェアに至るまで多岐にわたる。

Teamsの、そしてSlack(スラック)のような競合製品にとっても、中核となるのはチーム間にまたがるコラボレート機能だが、最近では組織外の人々とのコラボレーションも含まれるようになってきている。プライベートプレビューとして提供が開始されたTeams Connect(チームズ コネクト)は、組織の内外を問わず誰とでもチャンネルを共有することが可能になる。このようなチャンネルは、他のチームやチャンネルと並んで表示され、Teamsの標準的な使い方のすべてが利用できる。管理者はこれらのチャンネルを完全に管理でき、例えば外部のユーザーは必要なデータのみにアクセスできるように制限することも可能だ。この機能は2021年後半に広く提供される予定だ。

だが、個人ユーザーにとってより重要なのは、新たにPowerPoint Live(パワーポイント ライブ)機能がTeamsに追加されることだろう。この機能を使えば、いつもどおりプレゼンテーションを行えるだけでなく、同時にノートやスライド、ミーティングチャットを、1つの画面で参照することができる。また、プレゼンテーションを受ける側にとっても、自由に画面をスクロールしたり、音声読み上げ機能を利用するなど、不便を減らすための機能が用意された。この機能は発表と同時にTeamsで使用可能になっている。

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また、プレゼンテーションする側には、より見る人を惹きつけるために視覚的な効果を使ったPresenter mode(プレゼンター モード)が新機能として加わる。数種類のモードが用意される予定で、例えば「Standout(スタンドアウト)」モードでは、コンテンツの前にプレゼンターのビデオを放映することができる。「Reporter(レポーター)」モードは、ローカルTVのニュース映像のように、話し手の肩の上にコンテンツを表示する。そして「Side-by-side(サイド・バイ・サイド)」モードは、まあ、想像がつくだろう。この機能は2021年3月中に導入される予定だが、当初はStandoutモードのみで、ReporterとSide-by-sideは「近々」追加になると、Microsoftは述べている。

もう1つ、新たに加わる視覚的な機能は「Dynamic view(ダイナミック ビュー)」と呼ばれるものだ。これによってTeamsは、ミーティングのすべての要素を「最適な視聴体験のために」、それぞれの参加者に合わせてパーソナライズするという。「人がミーティングに参加したり、動画を流したり、発言を始めたり、発表を始めたりすると、Teamsは自動的に画面表示のレイアウトを調整し、パーソナライズします」と、Microsoftは説明している。だが、さらに便利なのは、画面の上部に参加者のギャラリーを配置し、自然な視線の維持を助けることだろう(AIによるトリックを使わずに)。

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大規模なミーティングでは、Teamsのユーザーは最大1000人もの社内外の人々と、インタラクティブなウェビナーを開催できるようになった。また、CEOが全員に向けてプレゼンテーションを行う必要がある場合などには、最大2万人までの視聴者を対象とした放送のみのミーティングも可能だ。これは2021年6月30日以降になると1万人に縮小される予定だが、その頃には新型コロナウイルスも収束し、ビジュアルイベントに対する需要の高まりも落ち着くだろうという考えに基づいている。そうなることを祈りたい。

我々がオフィスに戻れる時のために、Microsoftは会議室用の「Intelligent Speaker(インテリジェントスピーカー)」を開発している。これは最大10人の発言者の声を識別して、より正確な文字起こしが可能になる。また、同社ではDell(デル)などのメーカーと提携し、新しい会議室用のモニターやスピーカーバーも発売する。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイクロソフトがAIをエッジで動かすハードウェアとソフトウェアの新プラットフォーム「Azure Percept」を発表

米国時間3月2日、Microsoft(マイクロソフト)はAzureのAIサービスをエッジで活用するハードウェアとソフトウェアの新しいプラットフォーム、Azure Perceptを発表した。Perceptは、デバイスを管理しAIモデルを作るためのMicrosoftのAzureクラウドツールと、同社のデバイスパートナーが製作するハードウェアを組み合わせるプラットフォームだ。物体の検出、異常の検出、棚の分析、キーワードスポッティングなどをエッジで実行するためのAIをあらゆる業種の企業が簡単に構築し実装できるようにすることを目指し、そのためにAIモデルの構築から互換性のあるハードウェアへのデプロイまでのエンド・ツー・エンドのソリューションを提供する。

スタートに弾みをつけるために、MicrosoftはビジョンのユースケースのためのインテリジェントカメラであるAzure Percept Visionのハードウェア開発キットも同日に発表した。このキットにはエッジでモデルを実行するハードウェア対応のAIモジュールが搭載されているが、クラウドにも接続される。開発キットは広く使われている80/20 Tスロットフレームアーキテクチャに対応しているので、ユーザーは現場での概念実証を実施することもできる。

Percept Visionの他、オーディオのユースケースのためのAzure Percept Audioも発表された。

Azure PerceptデバイスのTrust Platform Module、Azure Percept Vision、Azure Percept Audio(画像クレジット:Microsoft)

Microsoftのエッジ&プラットフォームグループ担当コーポレートバイスプレジデントであるRoanne Sones(ロアンヌ・ソーンズ)氏は「我々はよく使われる2種類のAIワークロードである、ビジョンとボイス、サイトとサウンドから始め、メーカーが我々の取り組みの基本を把握できるように計画を明らかにしました。しかしメーカーは実際に利用されるパターンに対応するあらゆるフォームファクターを考案できます」と述べた。

Perceptの利用者はAzureのコグニティブサービスと機械学習モデルを利用でき、Perceptデバイスは自動でAzureのIoTハブに接続される。

Microsoftによれば、半導体や装置のメーカーと連携して「Azure Perceptプラットフォーム上での動作を認証したインテリジェントなエッジデバイス」のエコシステムを構築しているという。今後数カ月の間にMicrosoftはこのプログラムに関わる他社製デバイスを認証する計画で、利用者が概念実証を実施し簡単に認証済みデバイスにデプロイできるようにすることが理想だ。

MicrosoftのAzureエッジ&プラットフォームグループのプロダクトマネージャーであるChrista St. Pierre(クリスタ・サン・ピエール)氏は「この開発キットのいずれかを使ってプロトタイプを作れば、認証済みデバイスを購入した場合に追加の作業は不要です」と述べた。

さらにサン・ピエール氏は、このプラットフォームのコンポーネントはすべてMicrosoftの「責任あるAI」の原則に従い、広範囲にわたるセキュリティのテストに合格する必要があると言及した。

Microsoft Ignite 2021

カテゴリー:ハードウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft Ignite 2021Microsoft AzureエッジAI人工知能

画像クレジット:Microsoft

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトのマルチクラウドプラットフォームAzure Arcが機械学習のワークロードに対応

Microsoft(マイクロソフト)はコンテナのクラスターがどこでホストされているかに関わらずあらゆるKubernetes環境でAzureを実行できるサービスをAzure Arcで提供している。Arcは登場当初から幅広いユースケースに対応していたが、サービス開始時には残念ながら対応していない機能があった。それが機械学習だ。しかしArcのようなツールの利点の1つは企業がデータに関するワークロードを実行できることであり、それは現在ではそのデータを使って機械学習モデルをトレーニングするという意味であることが少なくない。

米国時間3月2日、Microsoft IgniteカンファレンスでMicrosoftは、Azure Machine LearningをArc対応のデータサービスに追加することでまさにこの機能をAzure Arcで利用できるようになると発表した。

AzureのGMであるArpan Shah(アルパン・シャー)氏は同日の発表で「機械学習の機能をハイブリッドやマルチクラウドの環境に拡大することにより、お客様は既存のインフラストラクチャへの投資を生かしつつ、データのある場所でトレーニングモデルを実行できます。データの移動やネットワークの遅延が減り、セキュリティやコンプライアンスの要件を満たすこともできます」と記した。

この新機能はArcの利用者にすでに公開されている。

Arcに機械学習機能が追加されたことに加え、MicrosoftはAzure Arc対応KubernetesがGAになったことも発表した。これによりユーザーは標準的なKubernetesの構成をあらゆる場所にあるクラスターにデプロイできる。

Azureのハイブリッドサービスの世界で新しい点としては、Azure Stack HCI上でのAzure Kubernetes Serviceのサポートがある。解説すると、Azure Stack HCIは顧客のデータセンター内にある標準化されたハイパーコンバージドなハードウェアセット上でAzureを実行するマイクロソフトのプラットフォームだ。このアイデア自体はAzure Arcより前からあるものだが、自社データセンター内でAzureを実行したい企業にとっては今でも妥当な代替策で、DellやLenovo、HPE、富士通、DataOnなどのベンダーがサポートを継続している。

Arcのオープンソースの面では、MicrosoftはArcがCNCF(Cloud Native Computing Foundation)の標準に適合するあらゆるKubernetesディストリビューションと連携して動作するように構築され、RedHat、Canonical、Rancherそして現在ではNutanixと連携してAzure Arc上でKubernetesの実装に関してテストと検証を実施していると強調した。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトがワークフローを自動化するPower Automate DesktopをWindows 10ユーザーに無料で公開

米国時間3月2日、Microsoft(マイクロソフト)はPower Automate DesktopをWindows 10ユーザーに無料で公開すると発表した。Power Automate Desktopはデスクトップベースのワークフローを自動化するエンタープライズレベルのツールだ。Power Automate DesktopはMicrosoftが「Attended RPA」と呼ぶソリューションだが、強力なマクロレコーダーのようなものと考えられる。複数のアプリケーションにわたるフローを構築するのに役立つ370のアクションがあらかじめ用意されているが、真価は何度も繰り返し実行する時間のかかるタスクを自動化するためのオリジナルのスクリプトを作れることにある。

Power Automate Desktopは2020年9月に発表された。2020年前半にMicrosoftがSoftomotiveを買収したことがベースにあるが、MicrosoftはSoftomotiveのテクノロジーを拡張し自社のスタックと深く統合してきた。

関連記事:マイクロソフトがビジネスパーソンが使えるワークフロー自動化ツールPower Automate Desktopを発表

Power Automate Desktopを試してみたいユーザーは現時点でMicrosoftからダウンロードできるが、今後数週間のうちにMicrosoftのInsider Builds for Windows 10に含まれ、最終的にはWindows 10に組み込まれて標準のWindows Homeエディションで利用できるようになる。これまでPower Automate Desktopの1ユーザーあたりのライセンス料は1カ月15ドル(約1600円)からとなっていた。

画像クレジット:Microsoft

MicrosoftのPower Platformエンジニアリング担当コーポレートバイスプレジデントであるCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏は筆者に対し「Power Platformですべての人にとって開発を民主化したいというミッションを持っています。これはもちろん誰もが利用できるプロダクトを作るという意味で、Power Appsでアプリケーションを作るにしてもPower Automateで自動化するにしても、つまりノーコード/ローコードということです。しかしもう1つ重要なことがあります。典型的なPCユーザーに自分が開発者になれると思ってもらえるような想像力をどのようにして広げるかということです」と語った。

今回の移行に関しラマンナ氏は、ライセンスにまつわる面倒を解消し、Windowsユーザーに対して自分でbotを作りタスクを自動化できるというメッセージを送ることになると考えている。同氏は「特にマクロレコーダーのような記録機能に関して我々が設計した方法、そして我々の経験により、ユーザーはループやクリックするアプリやテキストボックスのことを考えることなく、ただ記録して実行できます」と述べた。

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マイクロソフトがExcelの数式からヒントを得たオープンソースの新ローコード言語「Power Fx」発表
Microsoft AzureがNoSQLのApache Cassandraマネージドインスタンスを提供開始

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

Microsoft AzureがNoSQLのApache Cassandraマネージドインスタンスを提供開始

米国時間3月2日のMicrosoft Igniteカンファレンスで、Microsoft(マイクロソフト)はApache CassandraのAzure Managedインスタンスの提供開始を発表した。Apache Cassandraは最新のNoSQLデータベースシステムで、DatastaxなどCassandraセントリックの企業に対する競合となる。Microsoftはこの新しいサービスを「企業がCassandraベースのワークロードをクラウドでもっと活用するためのセミマネージドサービス」と表現している。

Microsoftは報道発表の中で「お客様は簡単にオンプレミスのCassandraワークロードを移行しクラウドで無制限にスケールでき、Apache Cassandraの最新バージョンとの互換性も完全に維持されます。このデプロイメントによりパフォーマンスとアベイラビリティが向上し、Azureのセキュリティとコンプライアンスの利点も得られます」と説明した。

同様のサービスであるAzure SQL Managed Instanceと同じで、ユーザーはスケーラブルなクラウドベースのデータベースにアクセスできるようになる。これまで企業がAzureでCassandraを利用するにはCassandra、MongoDB、SQL、Gremlin APIをサポートするスケーラビリティの高いデータベースサービスのCosmos DBに移行するか、バーチャルマシンまたはオンプレミスのインフラストラクチャを自社で管理する必要があった。

CassandraはもともとFacebookが開発し、2008年にオープンソースになって、その1年後の2009年にApache Foundationに加わった。現在はさまざまな業界で広く利用され、AppleやNetflixなどは中心的なサービスの一部に利用している。AWSはCassandra互換のマネージドサービスを2019年のre:Inventカンファレンスで発表し(現在はAmazon Keyspacesという名前になった)、Microsoftは2018年9月にCosmos DBのCassandra APIを提供開始した。今回の発表でMicrosoftはワークロードをクラウドに移行したい企業に向けてCassandraベースのサービスをフルレンジで提供できることになる。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトがExcelの数式からヒントを得たオープンソースの新ローコード言語「Power Fx」発表

米国時間3月2日、Microsoft(マイクロソフト)が、Excel(エクセル)の数式からヒントを得た新しいローコード言語、Power Fx(パワーFx)を発表した。Power Fxは、Microsoft自身のローコード環境であるPower Platform(パワー・プラットフォーム)上でカスタムロジックを書くための標準手段となる。一方同社はこの言語をオープンソース化して、他者も同様に実装を行うことで、この種のユースケースのためのデファクトスタンダードになることも期待している。

Power Platform自体はプロの開発者よりもビジネスユーザーをターゲットにしているため、始めるに際してビジネスユーザー層のExcelの既存の知識とExcelの数式への親和度を活用することは、賢いやり方のように思える。

「私たちはこの15年ほどの間に、長いプログラミング言語の歴史と、真に興味深い出来事を目の当たりにしてきました。それは、プログラミング言語が無償となり、オープンソースとなり、コミュニティ主導型になったということです」と私に語ったのは、MicrosoftのPower Platformエンジニアリング担当CVPであるCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏だ。彼はまた、C#(シーシャープ)やTypeScript(タイプスクリプト)、あるいはGoogle(グーグル)のGo(ゴー)のような内部言語でさえも、そうしたものの良い例となっていることを指摘した。

「それは現在進行形のトレンドなのです。そして興味深い点は、それらはすべてプロの開発者やコーダーのためのものだということです。振り返って、ローコード / ノーコード空間を眺めてみた場合にも、プログラミング言語が存在しています。例えばExcelのプログラミング言語のようなものがありますし、すべてのローコード / ノーコードプラットフォームもそれぞれ独自のプログラミング言語を持っています。しかし、それはオープンではありませんし、ポータブルでもなく、それぞれのコミュニティに閉じたものです」とラマンナ氏は説明する。

Microsoftによると、今回発表された言語はVijay Mital(ビジャイ・ミタル)氏、Robin Abraham(ロビン・アブラハム)氏、Shon Katzenberger(ショーン・カッツェンバーガー)氏、Darryl Rubin(ダリル・ルービン)氏らが率いるチームによって開発されたのだという。チームはExcel以外にも,Pascal(パスカル)、Mathematica(マセマティカ),1980年代に開発された関数型プログラミング言語であるMiranda(ミランダ)などの言語やツールからもインスピレーションを得ている。

Microsoftは、Power Fxを自身のローコードプラットフォームのすべてに導入する計画だが、コミュニティに焦点を当てていることから、Power Automate(パワー・オートメイト)やPower Virtual Agents(パワー・バーチャル・エージェント)などへの搭載がまず行われる予定だ。

しかし、チームは明らかにこの言語を他の場所でも採用して欲しいと考えている。ローコード開発者は、Power Apps Studio(パワー・アップス・スタジオ) のような製品の数式入力中にポップアップで表示されるのを目にすることになるだろう。しかし、より高度なユーザーは、Visual Studio Code(ビジュアル・スタジオ・コード)に移動して、より複雑なアプリケーションを構築するために使用することもできるようになる。

開発チームが指摘しているように、彼らは言語をただExcelのものに似せるだけではではなく、Excelのような振る舞いをさせることにも力を入れてきた、プログラム専門家ならREPLのようなものと言えば理解できるだろう。つまり数式は宣言的に書かれ、開発者がコードを更新すると同時に再計算が行われる。

最近のローコード / ノーコードツールの多くは、ユーザーがより洗練されたコードでアプリを拡張したり、ツールにコードベース全体をエクスポートさせたりするための脱出口を提供している。なぜなら結局のところ、こうしたツールたちには限界があるからだ。そうしたツールたちはデフォルトで幅広いシナリオをサポートするようになってはいるものの、どの企業も独自のやり方を持っているため、すべてのユースケースをカバーすることはできない。

「私たちは、おそらく開発者の大多数──私は『開発者』という言葉をPower Platformを使うコーダーとしてのビジネスユーザーを指しています──が、最後は何らかのかたちでこうした数式を書くことになると想像しています。基本的な想定として、Power Platformを使い始めた最初の日には、数式は書きませんよね?【略】そこで使われるのはマクロレコーダーだったりテンプレートです。Power Appsも同じです。純粋にビジュアルで、ドラッグ&ドロップを使い、数式は1つも書きません。でもPower Platformのすばらしい点は、これを使っていると2週目には、少しだけ洗練されたものを学んでいくことになるのです。そして少しずつ洗練された機能を使い始めることになります。そして、知らず知らずのうちに、さまざまな能力を身につけたPower Platformやローコード開発者のプロたちが手に入ることになるのです」。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)