アップルがShazamKitでAndroidも含む開発者にアプリのオーディオ認識機能を提供

Apple(アップル)は2018年に、音楽認識アプリShazamの4億ドル(約437億8000万円)の買収を完了した。そして今回はShazamのオーディオ認識能力を、ShazamKitという形で開発者の手に渡そうとしている。この新たなフレームワークでAppleのプラットフォームAndroid双方の開発者が、Shazamの大きな楽曲データベースと、さらに開発者が録音したオーディオによる独自のカスタムカタログも利用して、音楽を認識できるアプリを作成することができる。

すでに多くの消費者が、ボタンを押すと今聴いている楽曲を教えてくれるだけでなく、歌詞を確認したり、楽曲をプレイリストに加えたり、音楽のトレンドを調べたりすることもできるモバイルアプリShazamのことをよく知っている。2008年にローンチしたShazamは、Appleが買収したときすでに、App Storeにおける定番アプリの1つだった。

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Appleは、Shazamを単なる音楽識別ユーティリティとしてだけではなく、もっと良い使い方に導こうとしている。新たなShazamKitにより、開発者はShazamのオーディオ認識能力を利用して独自のアプリ体験を生み出すことができる。

新しいフレームワークは、3つの部分で構成されている。まずShazamカタログ認識は、開発者が楽曲認識機能を自らのアプリに追加する。カスタムカタログ認識は、任意のオーディオに対するオンデバイスのマッチングを実行する。3つ目は、ライブラリの管理だ。

Shazamのカタログ認識は、Shazamを代表するほど非常にポピュラーな機能だ。その環境でかかっている楽曲を認識して、そのタイトルやアーティストといった楽曲のメタデータを取り出す。ShazamKitのAPIは、楽曲のジャンルやアルバムの図柄など、その他のメタデータも返す。また、オーディオのどの部分がマッチしたのかも教えてくれる。

楽曲を照合する際、Shazamは実際には楽曲そのものを照合するわけではない。その代わりに、シグネチャーと呼ばれる非可逆的な表現を作成し、それと照合する。この方法により、ネットワーク上に送信する必要のあるデータ量が大幅に削減される。また、シグネチャーを使って元の楽曲を復元することはできないため、ユーザーのプライバシーも保護される。

Shazamのカタログは何百万曲もの楽曲で構成されており、クラウドでホストされ、Appleによってメンテナンスされている。新しい曲が利用可能になると、定期的に更新される。

ユーザーが開発者のサードパーティ製アプリを使用してShazamKitによる音楽認識を行う場合、Shazamライブラリに曲を保存したいと思うことがあるかもしれない。これはShazamアプリにインストールされているか、音楽認識コントロールセンターモジュールを長押しすることでアクセスできる。ライブラリはデバイス間でも同期される。

Appleは、認識した曲がこのライブラリに保存されることをアプリがユーザーに認識させるよう提案している。ライブラリへの書き込みに特別な権限は必要ない。

画像クレジット:Apple

一方、ShazamKitのカスタムカタログ認識機能は、Shazamの音楽カタログではなく、開発者の音声を認識することで、アプリ内で同期したアクティビティやその他のセカンドスクリーン体験を作り出すことができる。

これにより、生徒がビデオレッスンに沿って学習する教育アプリで、レッスンの音声の一部が生徒のコンパニオンアプリでのアクティビティの開始を促すことができる。また、お気に入りのテレビ番組を見ながら、モバイルショッピングを楽しむことも可能だ。

ShazamKitは現在、iOS 15.0以上、macOS 12.0以上、Mac Catalyst 15.0以上、tvOS 15.0以上、watchOS 8.0以上でベータ版が提供されている。Androidでは、ShazamKitはAndroidアーカイブ(AAR)ファイルの形で提供され、音楽やカスタムオーディオにも対応している。

カテゴリー:ソフトウェア
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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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