オープンソースの3Dコンテンツコラボプラットフォーム、中国Taichi GraphicsがシリーズAで約57.7億円を調達

共同創業者のユアンミン・フー氏とイー・クアン氏(画像クレジット:Taichi Graphics)

長年、中国のオープンソースソフトウェアは開発者から注目されるだけで、リターンを求める投資家からの理解はなかなか得られなかった。しかしついに、欧米のような動きが現れつつある。

資金調達を果たした中国の最新オープンソースプロジェクトが、Taichi Graphics(タイチグラフィックス)だ。同社は創業10カ月のスタートアップで、3Dコンテンツを簡単に制作できるようにすることを目指している。同社は、3Dグラフィックスの制作、共有、リモートでの共同作業をするクラウドベースのプラットフォームで「3DコンテンツのためのFigma(フィグマ)」と表現する「Taitopia」を運営している。このプラットフォームの基盤は同社のオープンソースのプログラミング言語「Taichi」で、3Dビジュアルグラフィックスのような空間的にスパースなデータ構造に対してパフォーマンスの高いコンピューティングを可能にしている。

Taichi GraphicsはSource Code Capital、GGV Capital、BAI Capitalが主導するシリーズAで5000万ドル(約57億7000万円)を調達した。このラウンドには以前に投資したSequoia Capital Chinaも参加した。TechCrunchは同社の事業や評価額について問い合わせている。

Taichi Graphicsの3Dコンテンツプラットフォーム「Taitopia」を利用して、クリエイターはリモートで共同作業ができる(Taichi Graphicsのデモビデオから撮影したスクリーンショット)

同社は、米国で学んだり働いたりしてから中国に戻った中国人が創業したオープンソースソフトウェア企業の1つだ。このような創業者たちは中国市場にフォーカスするというよりは、米中双方での経験を活かして最初から世界のユーザーに向けたプロダクトを作っている。クラウドネイティブのイベントストリーミングプラットフォームで2021年にシリーズBで2300万ドル(約26億5400万円)を調達したStreamNative(ストリームネイティブ)は、Twitterの元従業員が創業し中国と米国の両方で事業を運営している。非構造化データ分析スタートアップのZilliz(ジリズ)も同様の経緯をたどっている

Taichi Graphicsを創業したのは、MITでコンピュータサイエンスの博士号を取得したYuanming Hu(ユアンミン・フー)氏と、Googleに在籍していたYe Kuang(イー・クアン)氏だ。同社は世界の開発者コミュニティで徐々に関心を集めてきた。同社のプロジェクトはGitHubで2021年現在、1万7700個のスターを獲得し、これは2020年の1万2700個からの増加であると同社は説明している。2021年までに10数カ国、152人の開発者がTaichi Graphicsにコントリビュートした。

2019年にTaichiを紹介した論文の中で、フー氏と共同執筆者は3Dコンテンツのコンピューティングにドメイン特化言語が必要である理由を次のように説明している。

3Dビジュアルコンピューティングのデータは空間的にスパースであることが少なくありません。このようなスパース性を利用するために、階層的なスパースデータ構造が開発されてきました。マルチレベルのスパースボクセルグリッド、パーティクル、3Dハッシュテーブルなどです。しかしこのようなハイパフォーマンスなスパースデータ構造の開発や利用は、本質的に複雑でオーバーヘッドであるため難しいものです。我々は、このようなデータ構造に対して効率よくオーサリング、アクセス、メンテナンスをする新しいデータ指向プログラミング言語のTaichiを提案します。

Taishi Graphicsのツールはこれまでに物理的なシミュレーション、AR、AI、ロボティクス、映画やゲームの特殊効果に使用されている。

同社は新たに調達した資金でこの並列プログラミング言語の影響力を強化し、デジタルコンテンツのクリエイター向けツールを開発する計画だ。また、研究開発、プロダクト開発、収益化、戦略、デザインの人材採用も継続する。

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

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