ソフトバンクがVR/AR開発ツールのImprobableに出資――調達総額は5億200万ドル

仮想世界やシミュレーションの開発ツールを手がけるロンドンのImprobableは米国時間5月11日、新たに資金を巨額な調達して同社のプロダクトおよびディベロッパー・エコシステムの拡大を図ると発表した。サンフランシスコにもオフィスを構えるImprobableは、リード投資家のソフトバンク、そして既存投資家のAndreessen HorowitzとHorizons Venturesなどが参加する調達ラウンドで合計5億200万ドルを調達した。

同社はバリュエーションを公開していないが、共同創業者兼CEOのHermann Narula氏によれば、今回投資家が入手した株式は全体の過半数に満たない数だという。今回の資金調達以前にImprobableが調達したのは5000万ドルのみ。当時のバリュエーションはおよそ10億ドルだった。

いくつかの数字付きで今回の資金調達のうわさが最初に流れたのは数週間前のことだった。

Narula氏が私に話してくれたところによると、今回のソフトバンクによる出資はVision Fundを通して行なわれたものではない。Vision Fundは1000億ドル規模の巨大ファンドで、Appleもパートナーとして参加している ― ただし、このファンドに関する正式なアナウンスはまだ行なわれていない。将来的にはVision Fundからの出資を受ける可能性もあるとNarula氏は加えた。

今回の資金調達によって、Improbableは大きな一歩を踏み出したことになる。VR/AR業界の他社と比べると話題にのぼることが少なかった同社のことを見て、「improbable(日本版注:起こりそうにもないの意)」だと感じた人もいるだろう。

「機は熟しました」とNarula氏は語る。「コアとなるソリューションを提案することができる状態になりました。エコシステムとテクノロジーに大きく投資するべき時が来たのです」。

Improbableの名を世に知らしめたのは、同社が開発したSpatialOSと呼ばれるプラットフォームの存在だ。昨年ローンチしたSpatialOSを使うことで、ディベロッパーは機械学習テクノロジーが利用された分散クラウドコンピューティング・ストラクチャーを用いて仮想現実の世界を細部まで作りこみ、構築することができる。

Google VRやUnreal Engineと同じように、SpatialOSは仮想現実世界の構築を加速するための方法を提供しているといえる。近い将来、私たちは様々なサービス―実用的なものから、そうでないものまで―を仮想現実の中で利用することになるだろう。

「私たちの目標は、巨大なスケールの仮想現実世界の構築方法を再定義する、巨大なスケールのインフラストラクチャーをつくり上げることです」とNarula氏は話す。

今のところ、SpatialOSによって作られたのはVR/ARゲームが多い―マルチプレイヤー・ゲームのWorlds Adriftなどがその例だ。Narula氏は、ゲーミング分野は今後も大きな市場になると話している:彼はSupercellとの協力関係は「今のところはない」と話しているが、Improbableがソフトバンクとのコネクションを獲得したことで同社とSupercellのあいだに良い関係が生まれる可能性はあるだろう。

Improbableとソフトバンクが手を組んだことは財務的な意味だけをもつものではない。これにより、Improbableは他のビジネス領域へとつづく扉を開けることができたのだ―その例が交通分野であり、次世代のマッピング技術や自動運転技術は現代のテックゲームの主役だ。Improbableのプラットフォームによって作られる仮想世界と同じように、同社にとっての市場機会は巨大なのだ。

今回の出資により、ソフトバンクのマネージング・ディレクターであるDeep Nishar氏がImprobableの取締役に就任する。

「Improbableがもつ技術は革新的なものであり、彼らのプラットフォームは世界中のゲーム業界にとって欠かせないものとなるでしょう」と彼は話す。「可能性はゲームだけではありません。彼らが生み出した巨大なスケールでのシュミレーションによって私たちがより良い意思決定を下せるような世界になるかもしれません」。

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(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

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TechCrunch Japan

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