リソース不足のスモールビジネス向け高品質ビデオ制作ツールVimeo Createがスタート

Vimeoは2019年にビデオの編集アプリのMagistoを買収したことでソーシャルメディア向けビデオ制作・編集市場に参入する構えを見せていた。今回、Magistoの買収完了後数カ月にわたって続いていた開発の成果が明らかになった。

Vimeoは、スモールビジネスがソーシャルメディア上のマーケティングのために制作する高品質なビデオ制作を助けるツールを発表した。スモールビジネスは予算やノウハウなどのリソースが不足しているため、ソーシャル・マーケティング向けビデオの制作ができないことが多い。

Vimeo Createはデスクトップとモバイルアプリの双方で提供される。アプリにはビジネス向けの高品質なテンプレートが用意されており、ユーザーはこの中から自分のニーズに合ったテンプレートを選んでカスタマイズすればよい。スキルのあるユーザーはゼロから新しいビデオを作ることもできる。

Vimeoによれば、アプリにはHDビデオクリップ、写真、また商業利用のライセンスを得ている楽曲など大量のストックコンテンツが用意され、追加料金なしで利用できるという。ユーザー企業はカラーテーマ、フォント、レイアウトなどを編集し、自社のロゴや必要なテキスト、動画を加えて容易にマーケティングビデオを完成させることができる。ビデオをクリックしてショッピングに移るコール・トゥ・アクションを加えることも簡単だ。

Vimeo Createは写真、動画、音楽、テキストをスムーズに一体化するためにAIテクノロジーを利用しており、経験のないユーザーでも短時間で高品質のソーシャルビデオビデオクリップが制作できる。

ソーシャルメディアはプラットフォームごとにビデオのフォーマットが異なっているが、Vimeo Createはコーデック、サイズ、アスペクト比などをプラットフォームの要求に適合させる。アップロード先を選択するだけでFacebook、YouTube、Instagram、Twitter、LinkedInでビデオを公開できる。

ソーシャルビデオ制作分野への進出は、個人、企業に対して動画の制作とオンラインでの公開のためのワンストップ・ショップになるというVimeoのさらに大きな戦略の一環だ。Vimeo はかなり前にYouTube のライバルになるという野心を捨て、ビデオ制作という市場の逆側に大きな可能性を見出している。

現在の同社におけるビジネスの中心は、大小のユーザー企業に対してビデオ制作ツールとサービスを提供することだ。最近、Vimeo は多数のソーシャルメディアに横断的にライブでビデオストリーミングができるツールをスタートさせた。またこれまでデスクトップのビデオ制作アプリにしかなかった機能を追加するなどモバイルビデオアプリのアップデートも行っている。

Vimeoがソーシャルビデオをビジネスの中心とする戦略を採用したのは、同社の独自調査に基づいている。その調査によればソーシャルメディアに、ビデオを十分にアップロードできていると考えているスモールビジネスの経営者はわずか22%しかいない。オーナーたちはビデオが十分にアップロードできていない理由として、時間やコスト、制作過程の複雑さを挙げている。またほとんど全員(96%)がこうした障害が取り除かれれば、さらに多数のビデオをアップロードしたいと答えている。

今回発表されたVimeo Createは、買収したMagistoのAIとバックエンドのテクノロジーを利用しているが全体のデザイン、機能、インターフェース、Vimeoの各種ツールへの統合の容易さなどはすべて新たに独自開発されたものだという。

Vimeo Createはスタンドアローンで提供されるサービスではなくVimeo PRO、Vimeo Businessなどのサブスクリプションに含まれる。同社ではCreateの追加によりサブスクリプションメンバーの増加を期待している。

VimeoのCEOであるAnjali Sud(アンジャリ・スッド)氏は「【略】このサービスはスモールビジネスにも十分なビデオ制作の能力を与えることでビデオ業界を変革するようなプロダクトだ。誰でもアイデアを簡単にビデオとして実現できる。スモールビジネスは新しいビデオ戦略をとることができる」と声明で述べた。

もちろんスモールビジネスのソーシャルビデオのニーズに注目しているのはVimeo だけではない。2019年秋、Facetuneを提供しているLightricksも新しいプロダクトのシリーズをリリースしている。これはスモールビジネスがソーシャルメディア向けにマーケティングキャンペーンを行う際に簡単にビデオを制作できるツールだ。これ以外にもAdobeやAppleなどの巨人に加えてCanva、PicsArtなどのスタートアップからも、テンプレートから簡単にソーシャルビデオを制作できるツールが提供されている。こうしたサービスにはテンプレートの他に各種のストックコンテンツが含まれており、ワンクリックで多数のソーシャルメディアにビデオが公開できる。

Vimeo Createは2020年1月にベータ版として公開されたが、今回の正式公開でウェブ、 iOS、Androidの各バージョンも利用可能となった。

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滑川海彦@Facebook