中高生向けのプログラミングキャンプ「Life is Tech!」を展開するライフイズテックが8月4日、総額約3.1億円の資金調達を実施したことをあきらかにした。引受先はジャフコやEast Ventures、Mistletoe(孫泰蔵氏の投資会社)といったベンチャーキャピタルや個人投資家のほか、キッザニアを運営するKCJ GROUPやディー・エヌ・エー、リクルートホールディングスといった事業会社が名を連ねる。
Life is Tech!は、春休みや夏休みの3〜8日間を利用した短期集中型の「キャンプ」、1年間毎週通学して学ぶ「スクール」、インターネットを通して学ぶ「オンライン」の3つの形態で、スマートフォンアプリの開発や動画制作などを学ぶプログラムを運営している。これまでの5000人の中高生がプログラムに参加しており、今夏のプログラムにも約1300人が参加する予定。ちなみに参加者の約8割がパソコンやスマートフォンをほとんど触ったことがない初心者なのだそう。また全体の約4割がリピートして再びプログラムに参加するという。そしてさらに驚くのは、すでにここから2人の学生起業家が生まれているということだ(もちろん実績としてはこれからだけれども)。
同社はこれまでにサイバーエージェントから出資を受けており、小学生向けプログラミング教育事業を展開するジョイントベンチャーのCA Tech Kids社も2013年5月に共同で設立している。
日本のIT教育を全部やっていきたい
これまでもLife is Tech!や受託でのプログラミング教育イベントの運営などを展開してきたライフイズテックだが、代表取締役社長の水野雄介氏は、「Life is Techだけでなく、日本のIT教育を全部やっていきたいと思った」と調達の意図について語る。同社が今回の調達で重視したのは協業。そのため、引受先にはVCに加えて複数の事業会社の名が連なる。KCJ GROUPとは、中高生向けのアントレプレナーシップ教育プログラムを展開する予定であるほか、DeNAやリクルートでもそれぞれ新事業について検討中だという。
協業に加えて、オンライン教育の強化やグローバル展開(すでにシンガポールで一度Life is Tech!を開催しているそうで、10月には現地法人を設立する)、学習管理システムの開発および販売なども進める。また、「Life is Tech! Stars」と題して、プログラム卒業生の起業家やAO入試合格者などを紹介しているのだが、将来的には卒業生への投資を含めた支援を検討しているという。「ITの世界でヒーローを生み出す仕組みを作りたい」(水野氏)。「IT教育全部」と聞くと最初はちょっと大げさとも思ったのだけれど、すでに東南アジアではすでにプログラム開催の打診を複数受けていたり、ニーズは明確に感じているそうだ。
ちなみに水野氏、慶応義塾大学大学院在学中に、2年間高校の物理非常勤講師を勤めたのち、人材コンサルティングに務めていた経験を持つ。学校教育から抜け出して、自身で教育のあり方を模索する中でLife is Tech!のプログラムにたどり着いたそうだ。
スタッフ育成、紹介も事業の柱に
実は今回の取材は、Life is Techのプログラムが開催されていた東京大学の中で行っている。そのため水野氏に話を聞く前に、プログラムの様子を見ていたのだけれど、これが非常に活気があるものだった。ある中学1年生の男の子は、前回「席替え」のためのくじ引きアプリを作っていたそうだが、現在はサーバサイドと連携した、ノートや写真の共有アプリを作っていた。もちろん今すぐこのアプリがヒットするかどうかは別の話だが、ここまで手がけられるものかと驚かされた。
また、プログラムでは4〜5人の中学生に対して1人の大学生がスタッフとして付いて指導を行っていたのだけれど、すでにこのスタッフの競争率は3倍(年間100人ほど採用するとのこと)になっているのだそうだ。そしてスタッフに採用されると60時間の研修を受ける必要があるとのことで、クオリティ管理には徹底している。そのためスタッフの学生に興味を持つ企業も多く、新卒としてスタッフの大学生を企業に紹介するといったケースもあるという。