暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.16~8.22)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年8月16日~8月22日の情報をまとめた。

米ハワイ州、デジタル通貨の規制サンドボックス制度にbitFlyer USA、Geminiら12社を採択

米国ハワイ州は8月18日、暗号資産関連企業向けとなるデジタル通貨の規制サンドボックス制度の採択企業12社を発表した。ハワイ州商務・消費者省事務局の財政部門(DFI)ハワイ技術開発公社(HTDC)が共同で取り組む「デジタル通貨イノベーションラボ」が、3月より参加企業を募集していたパイロットプログラムがスタートする。

米ハワイ州、デジタル通貨の規制サンドボックス制度にbitFlyer USA、Geminiら12社を採択

同プログラムに採択されたデジタル通貨発行企業12社は、規制のサンドボックス制度を利用することで、向こう2年間、ハワイ州のデジタル通貨関連の送金者ライセンスを取得することなく、ハワイ州でデジタル通貨関連ビジネスを行える。規制のサンドボックス制度とは、地域・期間・参加者など限定のもと現行法・現行規制を一時的に適用させず技術実証などを行えるようにする取り組み。

これまでハワイ州では、暗号資産取引に関する連邦法の規制に加えて、暗号資産取引所に対し顧客から預かる暗号資産と同等の法定通貨を保有する必要があるという、消費者保護に関する厳しい規制をDFIが2017年から課していた。それによりハワイにおいて暗号資産取引所を運営していたCoinbaseを始めとする企業は、事業撤退を余儀なくされた経緯がある

パイロットプログラムでは、各企業はDFIと協力し合い、暗号資産(デジタル通貨)の早期導入を通じてハワイの経済的機会を創出することを目的に活動する。期間は、2022年6月30日を持って終了。期間終了後は、明示的な承認が与えられない限り、参加企業はすべての暗号資産取引を完了する必要がある。参加協定に従い、削減計画と出口戦略を実行することになっている。DFIは、企業が事業を継続するに価すると判断した場合は、適切なライセンスを決定することもあるとした。

なおハワイ州は、プログラムを通して得られた知見を、将来同州における暗号資産に関する法規制を決定する際の指針として活用する狙い。

LayerXらが4社共同で事故発生の自動検出と保険金支払業務自動化の実証実験開始、MaaS領域におけるブロックチェーン活用実証へ

すべての経済活動のデジタル化を推進するLayerXは8月18日、ブロックチェーン技術を活用したMaaS(マース。Mobility as a Service)領域における実証実験を開始したSOMPOホールディングス損害保険ジャパンナビタイムジャパンの3社と共同で実施するもので、保険事故発生の自動検出と保険金支払い業務を自動化する技術を実証していく。

MaaSとは、ICT(情報通信技術)を活用して、電車・バスといった公共交通機関を始め、タクシー・レンタカー・カーシェアリング・レンタサイクルなど交通手段をひとつのサービスとして捉え、モビリティ情報をクラウドで一元化し、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念。顧客の利便性を第一に考え、時刻表・経路検索・運行状況・運賃情報から支払いなど、運営会社を問わず情報を一括管理できる仕組みを目指すというもの。

MaaS社会では、保険においてもデジタル技術を活用した自動化・効率化による利便性の向上を図ることが求められると考えられる。実証実験では、MaaS社会の到来を見据え、保険の新たな顧客体験の可能性を検証する。

今回は、ナビタイムジャパンが提供する経路検索アプリケーション「NAVITIME」および「乗換NAVITIME」の利用者からテストモニターを募集。LayerXのブロックチェーン技術を活用した、保険事故発生の自動検出と保険金支払業務自動化の技術検証を主目的に、4社共同で実証実験を実施する。

具体的には、保険事故発生に「電車の運行遅延」を保険金請求事由として見立て、ブロックチェーン上でプログラムを自動的に実行できるスマートコントラクトの仕組みを活用し、保険金支払業務を自動化する。

LayerXらが4社共同で事故発生の自動検出と保険金支払業務自動化の実証実験開始、MaaS領域におけるブロックチェーン活用実証へ

今回の実験では、JR宇都宮線・高崎線・埼京線の遅延情報を自動検知し、位置情報をもとに、テストモニターのうち遅延の影響を受けたと判定された者に対して保険金に見立てたデジタルクーポン(NewDaysで使える200円クーポン)を即時に自動発行、配付する。こういったサービスが、利用者にとって受容されるサービスとなり得るかなどを検証するという。

実証実験は、SOMPOホールディングスが全体を統括し、実証実験モニターのニーズ調査を損害保険ジャパンが、モニター募集・API提供をナビタイムジャパンが、システム企画・開発をLayerXがそれぞれ担当する。

実施期間は8月18日から9月30日まで。モニター参加条件は、JR宇都宮線・高崎線・埼京線を日常的に利用し、スマートフォンで「NAVITIME」アプリからの通知を受け取れ、同実験に関する簡単なアンケートに協力できる者。応募方法は、実証実験モニター募集ページ(iPhone版Android版)にアクセスし、モニター登録手続きを行う。先着100名がテストモニターに選ばれる。なお、モニター登録数の上限に達した場合には登録は終了となる。

MaaSの現状

Maasの概念は、2016年のフィンランドで、MaaS Globalによる MaaSアプリ「Whim」のサービスから始まった。現在は、欧州からアジア・環太平洋地域(日本、韓国、米国、オーストラリア)に渡る地域においてMaaS AllianceとしてMaaS構築に向けた共通基盤を作り出す公民連携団体が活動している。MaaS Allianceには、日本からも東日本旅客鉄道(JR東日本)や日立、ソニーらが参画している。

MaaSでは、ICTにより交通機関などの経路、時刻表などのデータを検索し組み合わせ、利用者のニーズに合うサービスが提案される。このためMaaS社会においては、交通機関の運行情報や、駅の地理的情報などのデータが自由に利用できる必要があり、欧米ではオープンデータとして整備されている。日本では、2015年9月に公共交通オープンデータ協議会が設立され、「公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会」が検討を進めている。

さにら、国土交通省は2018年10月にMaaSなどの新たなモビリティサービスの全国展開を目指し、都市・地方が抱える交通サービスの諸課題を解決することを目標に、第1回「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」を開催。2019年をMaaS元年とし、日本版MaaSの展開に向けて地域モデル構築を推進していくことを決定・選定するなど、日本においてもMaaS社会の実現に向けて、さまざまな研究開発・実証実験が行われている。

ビットコインのハッシュレートが史上最高値を記録、8月16日129.075EH/sに

ビットコインのハッシュレートが史上最高値を記録、8月16日129.075EH/sに

Blockchain.comによると、ビットコイン(BTC)のマイニングにおけるハッシュレートが8月16日、129.075EH/s(エクサハッシュ)を記録し、過去最高値を更新した。先週より軒並み125EH/sを超えており、先月末から立て続けにハッシュレートが上昇している。

ハッシュレートとは、ビットコインのマイニングにおいて1秒間に行う演算回数であり、採掘速度を示す数値となる。E(エクサ)は、K(キロ)、M(メガ)、G (ギガ)、T(テラ)、P(ペタ)と続く単位のひとつ上の単位で、1EH/sは1秒間に100京回のハッシュ計算を行えるを意味し、100EH/sは、1万京回となる。

  • KH/s: 毎秒キロハッシュ。1秒間に1000回ハッシュ計算
  • MH/s: 毎秒メガハッシュ。1秒間に100万回ハッシュ計算
  • GH/s: 毎秒ギガハッシュ。1秒間に10億回ハッシュ計算
  • TH/s: 毎秒テラハッシュ。1秒間に1兆回ハッシュ計算
  • PH/s: 毎秒ペタハッシュ。1秒間に1000兆回ハッシュ計算
  • EH/s: 毎秒エクサハッシュ。1秒間に100京回ハッシュ計算

ハッシュレートは、その平均値の高さにより、マイナーが収益性を重視していることを示しており、ビットコイン価格との相関性を検討する者もいる。ビットコインの価格は、2020年8月に入って120万円を超えており、先週は一時期130万円をも超え、2020年8月下旬時点で120万円台を推移していることから、ハッシュレートの上昇は、ビットコインの価格上昇の影響と見られている。

また、ビットコインはハッシュレートが上昇することで、マイニング難易度(Difficulty)も調整するようマイニングアルゴリズムが設計されており、先月中旬にマイニング難易度も過去最高の数値を示した。その後は、調整され少しずつ難易度が下がりつつあるものの、現在も最高水準の難易度をキープしている。ビットコインは、2週間に1回(2016ブロックに1回)の頻度で、その難易度を自動調整する仕組みを備える。

ビットコインのハッシュレートが史上最高値を記録、8月16日129.075EH/sに

ハッシュレートの上昇は、PoW(Proof of Work。プルーフ・オブ・ワーク)に参加するマイナーが増加していることを意味するため、ビットコインネットワークのセキュリティ向上につながる。一方、上昇しすぎるとマイニングの際の消費電力量が上昇し、マイナーの収益性が低下することにもなる。

難易度が上がるということは、マイニングにおいて個人マイナーには不利となり、有力マイニングプールが有利になることから、中央集権的な状況になる恐れもあるため、注視していきたい。

関連記事
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.9~8.15)
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.2~8.8)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。