2025年に15兆円超の農産物販売を目標を掲げる中国eコーマスのPinduoduo

中国のeコマーススタートアップのPinduoduo(拼多多、ピンドゥオドゥオ)は、黒字化と偽商品の悪評を打ち消す努力を続けているが、このたび2025年に向けて新たな野心的な目標を掲げた。年間の農作物の総取引額(GMV)で、1兆人民元(約15兆3000億円)を上回るというものだ。

この発表は、中国時間8月21日金曜日に同社の第2四半期の結果開示とともに行われた。参考となる情報としては、中国商務省の統計によれば、2019年の中国内の農産物のオンライン販売額は、その1年前に比べて27%増加して、4000億人民元(約6兆1000億円)に迫っている。

なおGMV(総取引額)という用語は、割引、返金、返品などを考慮せずに、プラットフォームを通じて販売された商品の金額を合計しているものであるため、収益を示すための標準的な会計用語としては受け入れられていないことに注意することが重要だ。とはいえこの用語は、Pinduoduoなどの赤字で稼働しているスタートアップの、トランザクションサイズを表す場合には役立つ。

ここでの重要なメッセージは、Pinduoduoが中国の農業セクターのデジタル化をリードしたいと考えているということだ。調査会社iiMediaのレポートによれば、2019年は中国の農産物のわずか2.5%がオンラインで流通し、半分以上が伝統的な生鮮市場で売られ、そしておよそ3分の1がスーパーマーケットで売られている。

Pinduoduoは、2015年に果物のグループ購入サービスとして立ち上げられ、それ以降、Alibaba(アリババ)やJD.com(ジンドン)に匹敵する多目的eコマースサービスへと成長してきた。果物と野菜は今でも重要なカテゴリであり、2019年には2億4000万人(38%)の年間アクティブユーザーが、その市場を通じて農産物を購入した。

Pinduoduoは、その「拼」(ピン、グループ購入)アプローチが、成長プロセスを標準化し、小規模農場に規模の経済をもたらす役に立つと考えている。米国のように農業の機械化が普及している国と比較した場合、中国は1人当たりの耕作可能面積がはるかに少ないため、小規模な農場が大部分を占めている(Melbourne大学レポート)。新しく任命されたCEOのChen Lei(チェン・レイ)氏は、業績報告会で次のように語った:

「私たちはプラットフォーム上で消費者の需要を組み合わせて、スケール効果を生み出します。また得られた消費者に関する知見を活用して、何を植えるか、いつ収穫するかなどの、栽培サイクル全体で、農家が情報に基づいた意思決定を行う支援を行うことができます」。

Pinduoduoの年次報告書はより詳細なものである。

「私たちは、消費者の需要を集約し、農産物の収穫とマッチさせるためには、『拼』(ピン、グループ購入)が効果的な手段だと考えています、中国に浸透している手頃な価格の物流機能を活用することで、生鮮食品を農場からユーザーへと直接配送し、複数の流通層を回避できます。これは、ユーザーエクスペリエンスを向上させるだけでなく、さらに重要なことに、さまざまな品質、品種、量で提供される小規模農業生産物を、半分カスタマイズされたバッチ処理メカニズムへと変えることができるのです。これによって農業消費の不要なコストを削減し、小規模なカスタマイズされたサービスを実現できる可能性があるのです」。

同社の農業推進策には、農家を訓練するために農業の専門家を派遣することや、ロボット、IoTセンサー、低電力データ伝送などの精密農業技術への投資も含まれている。

Pinduoduoの台頭は、間違いなくそのライバルを驚かせた。スタートアップの6月末締めの年間アクティブバイヤーの数は6億8300万人を記録した(Pinduoduoリリース)。比較するならば、Alibabaは3月締めの年間国内アクティブバイヤーの数を7億4200万人と主張(Alibabaリリース)し、JD.comは8月締めのバイヤー数を4億1700万人と計上している(JD.comリリース)。

だが、Pinduoduoの顧客1人あたりの支出額は、ライバルたちに比べて大きく水を開けられている。年間GMVとアクティブバイヤーの数値を使用して計算するならば、JD.comは消費者1人あたり約5760人民元(約8万8000円)のGMVを記録(JD.comリリース)したのに対し、Alibaba(中国内)は約8447人民元(約12万9000円)であり(Alibabaリリース)、Pinduoduoは1127人民元(約1万7000円)となる(Pinduoduoリリース)。中国の農産物は利益率が低いことで有名であるため、Pinduoduoの課題は、中国の農業を変革するという夢に向かうために、健全な収益をいかにして達成できるかということだ。

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Pinduoduo

画像クレジット:Pinduoduoでザクロを売る農家 / Pinduoduo

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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