2018年、スタートアップが進出する領域としてトレンドのひとつになった旅行関連サービス。チャットでざっくり条件を伝えるだけで旅行プランの提案・予約ができる「ズボラ旅 by こころから」や後払いで旅行に行ける「TRAVEL Now」、LINEとTravel.jpとの提携でスタートした「LINEトラベル.jp」など、旅行領域への進出は盛んに行われていた。
大きな市場があり、ディスラプトする余地が残るジャンルとして、旅行カテゴリーはスタートアップや投資家にとって、まだまだ魅力的な開拓先のようだ。8月8日には、新たにAIを活用した旅行サービス「AVA Travel(アバトラベル)」のベータ版リリースが発表された。サービスを提供するのはAVA Intelligence(アバインテリジェンス)。創業者はホテルのプライシングサービス「MagicPrice」を提供、TechCrunch Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した空で開発企画、マーケティング、広報PRを担当していた宮崎祐一氏だ。
メタサーチ+AIでスマートな旅選び体験を提供
AVA Intelligenceは2018年10月の設立。ユーザーデータをもとに、それぞれに合った選択肢や情報を提供するアバターAIを開発するスタートアップだ。今回リリースされたAVA Travelは、ユーザーの性格や旅行に関する条件をもとに、AIが適した旅行先を提案。旅行先情報の閲覧・保存から、航空券・ホテル検索までを1プロダクトでまかなえるサービスである。
宮崎氏は高校生の頃から起業すると決めていたそうだが、旅行サービスで創業しようと決意したのは、自身が約30カ国へ旅行した経験からだ。「予約サイトではサイトによって値段などが違い、情報の非対称性が大きい。また、それを解決するために価格比較サイトなどでよく使われている『メタサーチ』の手法では情報量が多くなりすぎて、逆にユーザーの選択が不自由になるという点に課題を感じた」と宮崎氏はいう。
AVA Travelでは、メタサーチによって旅行予約サイトや旅行情報サイトなど、複数サイトにある多くの情報を自動収集しながら、AIにより各ユーザーに合った情報だけを判断して提供。情報の非対称性は解消しつつ、自分に合った情報に絞って提案してくれる。
検索・提案の効率のほかに、既にある旅行提案アプリやサービスと違う点として宮崎氏が挙げるのは、「タビマエの提案サービスというだけでなく、タビナカ、タビアトといった旅行の一連のプロセスで一貫して使えるサービスを目指しているところ」だという。
「AVA Travelでは旅行先を決める際に必要なインスピレーションをAIが瞬時に与え、旅行先ではどんなことができるのかを詳しく見ることができる。これにより旅行メディアサイトを複数、自身で見に行く必要はなく、気に入った旅行先情報があれば、それをAVA Travelのユーザーページ内にストックできる。今回のリリースでは実装していないが、今後はこのストックした旅行先情報から簡単に旅行先スケジュールを生成する機能の実装も計画している。また、訪れた旅行先情報をまとめて管理したり、必要に応じて公開したりできる、タビアト機能も実装予定。タビログ管理ができることに加えて、このタビログ情報をもとにAIがよりユーザーの好みを理解し、学習するようになる予定だ」(宮崎氏)
今回のベータ版では、ユーザーはAIからの旅行提案を実際に受け、予約まで行える。AIの学習度や提案できる都市の数(現状では海外の100超程度の都市が対象)の関係でベータ版としてリリースしているが、今後AIの学習度を進め、日本国内の提案も可能として、正式版公開を目指すという。
「空での経験は実に多く生かせている」
宮崎氏は起業にあたり、「空での経験は実に多く生かせている」という。そもそもAIを活用してホテル料金の提案を行うMagicPriceとは「旅行×AI」という分野が同じ。それゆえ「旅行業界における知見や人脈、そしてAIの可能性、生かし方が感覚として身についている」と宮崎氏は述べている。
また「スタートアップでのサービスをグロースさせる経験ができたことも非常に良かった」と宮崎氏。空CEOの松村大貴氏は「起業家が日本にどんどん増えていってほしい」と語っており、その思いは宮崎氏も同じだという。「スタートアップで働く人がどんどん増え、またそこからさらに新しいスタートアップを創業する人が増えていって欲しいと思う」(宮崎氏)
今回、プロダクトリリースの発表と同時にAVA Intelligenceでは、サイバーエージェント・キャピタル、インキュベイトファンド、TRADコンサルティング、汐留パートナーズを引受先としたJ-KISS型新株予約権方式による増資と、日本政策金融公庫、みずほ銀行からの融資による、総額4000万円超の資金調達実施を明らかにしている。調達資金は、さらなるプロダクト開発、採用とユーザーへのコミュニケーション強化などに充てるという。