週明け開幕のWWDC 2019でアップルが発表するモノ

昨年のWWDCはApple(アップル)としては珍しくソフトウェア重視だった。WWDCに先立ってハードウェアのマイナー・アップデートのプレスリリースがいくつか出ていたが、WWDCでは新しいデバイスは一つも登場しなかった。その後アップルが力を入れてきたのはApple TV+関連のソフトウェアとコンテンツだった。

先週もこのパターンが繰り返された。MacBook Proのアップデートが発表されたが、懸案だったキーボードの改修が主な内容だった。これと対照的に来週のWWDC 2019はビッグイベントとなりそうだ。多数の関係者が「大きな発表がある」と予想している。ハードウェアも各種Proデバイスに動きがあるかもしれない。

Google I/OとMicrosoft Buildがどちらかというと地味なものだったのでアップルとしては来週のWWDCを盛り上げる必要がある。アップルといえどもスマートフォン市場の飽和といった大きなトレンドと無縁でいることはできない。最近の四半期決算報告でも、アップルはハードウェアからサービスに事業の中心を移す姿勢を見せていた。Apple TV+を通じてたコンテンツの獲得に巨額の投資が行われているのがよい例だ。

もちろんWorld Wide Developer Conferenceという名前が示すとおり、このイベントは本質的にデベロッパー向けだ。初日のキーノートはメディア全般の注目の的だが、本当に重要な話題はなんといってもデベロッパーに直接影響するアップルの各種プラットフォームに起きる変化だ。まず大きいところから検討してみよう。

iOS 13

リーク情報によれば、今年macOSで採用されたダークモードiOSにも登場するという。新しいダークモードはシステムを通して利用可能で、作業中の部分を除いた背景が暗くなり、目に優しく、バッテリー消費量が抑えられるという。アップル自身のアプリだけでなく、サードパーティーのアプリも必要なアップデートをすれば利用できる。

Bloomberg(ブルームバーグ)はYukonというコードネームで準備されているiOS 13に搭載されそうな機能について観測を掲載していた。ちなみにアップルは、すでに5GとARを目玉とするiOS 14の開発に取り掛かっており、コードネームはAzulだという。

当然だが、ヘルス関係のアプリがリニューアルされるはずだ。これにともなってユーザーからヘルスケア情報を取得するApple Watchなどもアップデートされるだろう。またiPadを外部モニターとして使えるDuet Displayアプリのような機能が標準でiOSに搭載されるかもしれない。外部モニター接続機能は以前から噂になっていたが、個人的に大いに興味がある。これは私の作業環境を一変させるかもしれない。メール、マップ、ホームもアップデートを受けるはずだ。

ハードウェアではバグフィックスは当然として、パフォーマンスの改善、旧機種への適合性の向上などが予想される。実際、消費者は以前より長期間デバイスを使い続けるようになった事実は受け入れざるを得ないだろう。

macOS 10.15モバイルデバイス同様、パソコンも過渡期にある。もちろんパソコンの危機はモバイルが主流となったときから続いている。今週、台北で開催されたComputex 2019ではWindowsパソコンのメーカーがこぞってモバイルデバイスのセカンドスクリーンとして利用できる機能を発表していた。

アップルとしてはMicrosoft(マイクロソフト)やSamsung(サムスン)の追撃を受けて侵食されたクリエイティブツールの王者という地位を取りも戻す必要がある。

昨年アップルはニュースなどいくつかのiOSアプリをデスクトップに移植した。これはMarzipan(マジパン、アーモンド粉の練り菓子)というコードネームのmacOSアプリ開発プロジェクトの一環だった。ちなみにこの1年のアップルのコードネームの中ではこれが一番面白かった。今後移植されそうなiOS機能はスクリーンタイム、iMessageのエフェクト、Siriのショートカットなどだ。

Macハードウェア

ハードウェアでは新しいMac Proが登場するらしい。長らく待たされていただけに実現すればエキサイティングだ。もちろんまだ確定ではない。実際、過去に噂に振り回されて痛い目にあったことがある。冒頭で述べたようにアップルはハードウェアに関しては一時停止ボタンを押した状態で、動きが止まっている。しかしこれはハイエンドのデスクトップを完全に一新する準備をしているせいだとも伝えられている。Mac Proがリニューアルされる必要があるのはもちろんだが、他のPro製品についても同様だ。

また 31.6インチの6K Proディスプレイが登場するという情報もある。これはMac Proにぴったりのカップルとなるだろう。ただし財布の中身は炎上しそうだ。

その他いろいろ

アップルの最近のイベントはほぼすべてApple TVがらみだった。新アプリも登場したことだし、引き続きApple TV+関連のアップデートがあるだろう。なんといってもケーブルテレビ会社だけでなくライバルの動画ストリーミング・プラットフォームもターゲットにした数十億ドル級の大プロジェクトだ。

Apple Watchを公共交通機関で利用する実験が進められていたが、明日からニューヨークの一部の地下鉄駅でApple Watchが使えるようになる。WWDCではヘルスケア関連で大きな動きがありそうだ。これはソフトウェアとサービスに力を入れる戦略の一環でだ。真剣な努力をしていることをアピールすればFDA(食品医薬品局)の認可を受けやすくなる。ヘルスケア提供企業との提携を深めることができるだけでなく、ライバルのウェアラブルに大きく差をつけるのにも役立つだろう。アップルは女性の生理周期をモニターして適切なメディケアを提供するサービスを開発中だ。

小さいところではボイスメモ、電卓、Apple Booksアプリなどのアップデートも発表されるかもしれない。

WWDC 2019は米国時間6月3日午前10時(日本時間、4日午前2時)に開幕する。TechCrunchも参加し、現地からライブブログで報じるほか、関連記事も多数アップする予定だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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