AI活用で「報道の機械化」進めるJX通信社、テレビ朝日やフジらから数億円を調達

AIニュースサービスを展開する報道ベンチャーのJX通信社は4月12日、テレビ朝日ホールディングスフジ・スタートアップ・ベンチャーズ、既存株主等を割当先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。具体的な金額は非公開だが、数億円規模の調達になるという。

JX通信社が現在力を入れているのが「FASTALERT」や「News Digest」など、ニュース速報の分野でAIを活用した事業だ。FASTALERTはSNS上の事件、事故などの緊急情報をAIが自動収集・解析するサービス。従来は報道機関が警察や消防に取材をして集めていたような情報を、SNSを通じてよりスピーディーに収集できるのが大きな特徴だ。

すでに在京の民放キー局とNHKが導入しているほか、地方のテレビ局でも活用が進んでいる状況。JX通信社の代表取締役を務める米重克洋氏によると「(具体的な数までは言えないが)全国の大半のテレビ局に採用されている」という。

もうひとつのNews Digestは報道価値の高いニュース速報をAIが検知、配信するアプリ。速報スピードがウリだ。JX通信社ではこれまでも報道現場でのAI活用を進めてきたが、今後も世論調査の自動化や記事の自動生成など「報道の機械化」に向けて各社と連携して取り組む方針だ。

「報道産業は何から何まで人間がやるビジネスという側面が強く、労働集約的になりがちだった。実際のところデジタルシフトも遅れていて、現場ではコストの削減とともに付加価値をあげた収益性の向上が求められている」(米重氏)

米重氏の話では、速報レベルの情報はかなり機械化できる要素があるという。記者の業務には人間が仕方なくやっているものも多いのが現状。これらをシステムに任せることができれば、コストを下げることに加えて、記者が本来やるべきことにより多くの時間を使えるようにもなる。

JX通信社はこれまでも共同通信社や、大手金融情報サービス事業者QUICKらから資金調達を実施。今回のラウンドで、新たに民放キー局が2社株主に加わった。

「今回の調達は組織基盤の強化の目的もあるが、報道機関との連携をより強めていきたいという意図が大きい。報道の機械化というのは、現場の理解があってこそ実現できる。今後はもっと報道の現場に貢献できる総合通信社を目指してチャレンジを続けていきたい」(米重氏)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。