農業テックスタートアップのBrightFarmsは、シリーズCで3010万ドルを調達し、アメリカ中に同社のハイテク温室と新鮮な農作物を提供しようとしている。
同社は、スーパーの店頭に並ぶ果物や野菜を、海外から輸入したり遠隔地から輸送したりせずに、全て地産し、新鮮な状態で消費者に届けることを使命としている。
アメリカの太陽光電力事業者の戦略からヒントを得たBrightFarmsは、同社の温室を使って育てられたサラダ用野菜やトマトを、長期間に渡ってスーパーに定額で販売するサービスも提供している。
同社CEOのPaul Lightfootは、BrightFarmsが”農作物買い取り契約”をまとめてから、経済開発プログラムや、さまざまな銀行・投資会社などを通じて資金を調達し、新たな温室を建設していると説明する。
実際のところ、温室内で作物を育てはじめる前に、BrightFarmsの原価のほとんどが農作物の販売契約でカバーされている。
Catalyst Investorsがリードインベスターとなった今回のラウンドには、BrightFarmsにもともと投資していた、WP Global PartnersやNGENが参加した。
Catalyst InvestorsのTyler Newtonは、BrightFarmsへの投資の理由について、その大半がビジネスモデルの革新性や、アメリカに存在する他の食物生産者を”上回る”同社の力だと話す。
消費者は、地元の企業から食料品を購入し、近隣に住む人たちの生活費をまかなっている仕事をサポートしたいと間違いなく考えている。アメリカ農務省の研究によれば、地産された食料品の売上額は、2014年に120億ドルを記録しており、この数字は2019年までに200億ドルに達すると予測されている。
「これまで、天候に恵まれない時期は、地元で育てられた作物を買うというオプションがなかったため、その選択肢が生まれるだけでも素晴らしいことです。しかし、BrightFarmsで育てられたトマトやルッコラを、西部から輸送されてきた野菜と食べ比べてみると、明らかに味の面でも勝っていることがわかります。これこそ、スーパーが求めているものなのです」とNewtonは話す。
BrightFarmは、現時点でカリフォルニア州とアリゾナ州以外の、競争が緩やかで規模の大きいマーケットを狙っている。
農務省の最新のデータによれば、農業は毎年1兆7720億ドル(アメリカのGDPの約1%)もアメリカの経済に寄与している。
そして、アメリカで消費されるサラダ野菜の90%が、カリフォルニア州とアリゾナ州で生産され、そこから国中で販売されるか、国外に輸出されている。
そのほかの農業テックスタートアップとしては、AeroFarmsやFreightFarmsが挙げられる。彼らは、地産された新鮮で美味しい食べ物を求める都市部の消費者の需要に応えるべく、屋内で使えるコンテナ型の農場を製造している。
しかしLightfootは、自然光を(当然)利用しているBrightFarmsの温室の方が、屋内農場に比べて、環境的に持続可能かつ費用対効果が高く、さらにコンテナ型や屋上に設置された農場よりもたくさんの収穫物を得ることができると考えている。
その理由について彼は、BrightFarmsの環境制御温室は、屋内農場に比べて、温度や光のコントロールに必要な電力の消費量が少ないと話す。なお、どちらのタイプも、例え精密なかんがいシステムが構築されているものを考慮しても、旧来の農場に比べるとずっと水の消費量は少ない。
現在までに、BrightFarmsは、大フィラデルフィア地域、ワシントンD.C.、シカゴの都市部に建てられた3つの温室を運営しており、それぞれに25名のフルタイム従業員を抱えている。
干ばつが長引けば、BrightFarmsもそのうち”サラダボール”・カリフォルニア州やその他の農業ハブへ進出し、旧来の水を大量に使用することの多い農場を代替することができるかもしれない、とLightfootは語る。
しかし、しばらくの間BrightFarmsは、新鮮な農作物に対する高い需要がありながらも、旧来の農場を運営できる程の耕作地や天候状況に恵まれていない都市部にフォーカスしていく予定だ。
これまでのBrightFarmsの顧客やパートナー企業には、Kroger、Ahold USA、Wegmans、ShopRiteなどのスーパーが名を連ねている。
Lightfootによれば、シリーズCで調達した資金は、新たな温室の建設に加え、品種の拡大にも利用される予定で、同社は近いうちにもパプリカやイチゴの栽培を開始しようとしている。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)