Facebook、ネット時代の「新聞」を目指して「Paper」をリリース。新しいスタイルで「ストーリー」を提供

ある情報源をチェックしていなかったことが理由で、非常に大きなニュースの入手が遅れてしまうというようなことはある。パーソナライズされたネットメディアから情報を入手していることの多い現在、むしろそのようなケースは増えているかもしれない。そうしたケースへの対応策としてFacebookが用意してきたのがPaperだ。

iOS用スタンドアロンのアプリケーションで、従来のニュースフィードのみでなく、人間とアルゴリズムの双方を活用してキュレーションを行ったニュースも提供する。Tech、LOL、Pop Cultureなどのカテゴリを購読することもできる。アメリカにて、Facebookの10回めの誕生日を控えて、2月3日より提供されることとなった。

このPaperはFacebook Creative Labsから登場する最初のアプリケーションということになる。Facebook Creative Labsは、Facebook内で身軽なスタートアップのように活動する小規模グループだ。ザッカーバーグが収支報告で話した通り、モバイルで主導権を握るために、各種単機能アプリケーションをリリースしていくための主体として機能する。Facebook本体の機能拡充を目指すのとは、また別の動きを見せることになるわけだ。

Paperはニュースフィードの提供方法を根本的に変革するものだが、このアイデアについては、1年前にその萌芽を目にすることができた。またTechCrunchのIngrid Lundenも6月にこのプロダクトを目にしていた。さらにはRe/codeのMike Isaacが今月頭に詳しい記事を掲載してもいる。このように、あちこちでいろいろと話題になってきたPaperが、ついにオフィシャルな存在になったわけだ。機能についてはビデオでも紹介されており、こちらでもそのビデオを掲載しておいた。

Paperの使い方

Paperは、ザッカーバーグが言うところのモダンエイジの新聞としてのサービスを目指す存在だ。

Paperを開くと、まずは新しいスタイルでFacebook上のニュースフィードが表示される。画面の上半分には写真やビデオなどが大きく表示される。下半分に、ステータスアップデートや、関連ストーリーが表示されることになる。右から左にスワイプすると別ストーリーが表示され、あるストーリーをタップすればフルスクリーンモードとなり、動画があれば自動で再生される。ストーリーをピンチすれば元に戻って、改めてPaperのフィードを確認することができる。

そしてPaperのフィードには「セクション」を追加することができるようになっている。

セクションは予めいろいろと用意されていて、たとえば「Score」(スポーツ)、「Headlines」(ワールドニュース)、「Cute」(BuzzFeed風の可愛らしい動物たち)、「Planet」(サステナビリティについてや風景写真など)、「Enterprise」(ビジネス)、「Exposure」(写真)、「Flavor」(食べ物)、そして「Ideas」(日々、面白そうな知的テーマを紹介する)などがある。

それぞれのセクションにはFacebookの編集者が選んだものと、そして出版者やブロガー、著名人などが公に投稿したものからPaperのアルゴリズムが選別してくるものが併せて掲載される。New York Timesなどのような大手の記事を流していくだけでなく、これまで目にしたことのなかったブロガーのの記事や、その筋の権威からのコメント、あるいは一般の人からの意見などもあわせて載せていこうとするわけだ。今のところ、同じセクションを追加した人は、全員が同じストーリーを目にすることとなる。しかし、たとえば「Score」セクションなどで、お気に入りチームの試合結果を優先的に見られるようなパーソナライズ機能を持たせることも考えているところなのだそうだ。

Paperでは、もちろん自分の投稿したストーリーも公開されることになる。編集時には、これまでよりもビジュアル面を強化した編集画面を使うことになる。公開時にどのように見えるのかを、正確にプレビューすることができるようになっているのだ。ストーリー中からどの写真がフィーチャーされることになるのかを気にする必要はない。また、これまでウェブやモバイルであったように、写真のどの部分が表示されるのかと気にする必要もなくなるわけだ。

当初はPaperには広告は表示されない。但しFacebookとしてはPaperに自然な形で広告を掲載するにはどのようなスタイルが良いのかと、検討を行っているところなのだそうだ。

コンテンツ・セレンディピティ

人力および機械の双方を活用したキュレーションは、いわゆる「コンテンツ・セレンディピティ」を可能にするものだ。これまでは、Facebook上では友達からの記事や、フォローしているページからの情報しか見ることはできなかった。従来の「新聞」などでは、エディターの側が主導して、重大であるとか、あるいは読者がきっと面白く感じるはずだと思う記事を掲載するようになっている。読者はエディターを信用することで、自分では積極的に面白いと思っていなかった記事にも目を通すことになり、そこに新たな発見があるようなケースもあった。

Paperというのは、Facebookに軸足をおきつつ、しかし新聞と同様の「驚き」ないし「発見」を読者に届けようとするものだと言える。あちこちのページに「いいね」をしていて埋没してしまったビッグニュースや、あるいはPaperのエディターがこの記事はぜひ見ておくべきだと思うようなものが流れてくることになる。もちろんこれまでも、広い意味では「友達」がキュレーターの役目を果たしていたわけだ。しかし、すべての友達と興味の範囲を同じくしているわけでもあるまい。ビジネスニュースに興味を持つ人や、フード関係に興味を持つ人が友達の中にいないということもあり得る話だ。このような場合も、特定のページを購読したり、あるいは「いいね」しなくても、Paperがニュースを届けてくれるようになる。

Facebookは、従来のアプリケーションもある中、Paperのプロモーションを大々的に行うつもりはないとしている。しかしそれでもFlipboard、Prismatic、Circa、あるいはPulseなどのニュースリーダー系アプリケーションにとっては脅威となるだろう。もちろんそれぞれに強みを持ってはいる。Flipboardは他の利用者からのキュレーションを雑誌風におしゃれにフィードすることがその特徴だ。またPrismaticは「関連」記事をAIを通じてもってくる点に強みがある。Facebookには、特定の利用者がどのようなデータをシェアしたのかという膨大なデータが蓄積されている。これは他のサービスからすると相当の脅威とうつるはずだ。但し、そうした「驚異的」な利点がありながら、FacebookはCameraアプリケーションやPokeなどで悲惨な失敗を繰り返してきてもいる。事態がどのようになっていくのかは、予断を許さないというのが現状であるのだろう。

Paperチームは15名で構成され、1年以上をかけて開発を行ってきた。Facebook VPのChris Coxも陣頭指揮を取り、ザッカーバーグも大いに関与しているように思われる。但し立場的なプロダクトマネジメントはMichael Reckhowが行い、デザインの責任者はMike Matasとなっている。大きな組織の中で鈍重な動きをするのではなく、PaperチームはFacebookの初期時代のように「すぐ動き、物事を変革する」といったポリシーで動いているようだ。

Paperがうまく機能すれば、Facebook上を流れる情報はさらに膨大になっていくこととなるだろう。Paper上で注目されれば、膨大な数の「いいね」を獲得し、またフォロワー数も一気に増えることとなる。そうしたインセンティブをアピールできれば、Twitterに流れるコンテンツクリエイターも取り戻すことができるだろう。最近行っているTwitter対策の一環として捉えることもできる。

ウェブというのは非常に広大な世界だが、Paperは膨大なデータと優秀なエディターにより、新聞のように情報をまとめて提示できるように成長していくことになるかもしれない。

Facebookが新たに提唱しているスタンドアロンアプリケーション戦略については「Facebook’s Plot To Conquer Mobile: Shatter Itself Into Pieces」という記事もご覧頂きたい。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


投稿者:

TechCrunch Japan

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