GMがバッテリーのエネルギー密度向上でSolidEnergy Systemsと提携

GMのベンチャー部門は5年前にバッテリースタートアップのSolidEnergy Systemsに投資した。今回、GMはMITのスピンアウトを利用してバッテリーにより多くのエネルギーを詰め込もうとしており、これは同社が電気自動車へのシフトを加速させることを目的とした一連の動きの最新のものとなる。

GMのMark Reuss(マーク・ルース)社長は米国時間3月11日に行われたWashington Post Liveカンファレンスでこの提携を発表し、リチウムイオンバッテリーのエネルギー密度を向上する技術によりEVの普及が促進されることを期待していると述べた。合意の一環として、両社はマサチューセッツ州ウォバーンにプロトタイプ製造施設を建設し、2023年までに大容量バッテリーの試作完成を目指す。

SolidEnergy Systems(SES)は、寿命を改善する「アノードを使用しない」リチウムメタル電池を開発した。MITによると、SESのバッテリーは材料の進歩によってエネルギー密度が2倍になり、現在のスマートフォン、EV、ウェアラブル、ドローンなどに使われているリチウムイオンバッテリーに匹敵する安全性を維持しているという。バッテリーパックは小さく、軽量で必要とするスペースも小さくて済む。そのため車両を軽量にできるだけでなく、追加技術を搭載する余裕もできる。

Cairn Energy Research Advisorsの最新レポートによると、この技術とGM自身の知的財産を組み合わせることで、Tesla(最も安価なリチウム電池とEV用バッテリーパックを持つ自動車メーカー)に対する競争力をGMにもたらす。

GMの広報担当者Philip Leinert(フィリップ・ライナート)氏は「リチウムメタル電池に関しては、すでに多くの重要な知的財産があり、49件の特許が付与され、さらに45件が出願中です」と述べている。「リチウム電池のプロトタイプに関するSESとの共同事業で、IPの増加はさらに加速されるでしょう」。

GMには、EVに対して大きな野望がある。同社は2025年までに30種のEVをグローバルに導入し、2035年にEVのみを販売する計画だ。

今回のGMの発表は、同社がEV戦略の心臓部であるバッテリーとセルとモジュールとドライブユニットと電力関連電子回路のすべてを含むバッテリープラットフォームUltiumを発表した1年後のものだ。このUltiumプラットフォームは、「キャデラック」や「ビュイック」「シボレー」そして「GMC」といったGMの多様なブランドにまたがるEVで利用され、2020年に発表された自動運転シャトル「Cruise Origin」にも使用される。全電動の「GMVハマー」は2021年末に生産に入り、Ultiumの第1世代のバッテリーが搭載される最初のモデルとなる。

関連記事
GMが電気自動車戦略のコアとなるモジュラー式アーキテクチャー「Ultium」を公開
GMとホンダが協業開発した配車サービス用電動無人運転車が登場

またマーク・ルース社長は、Ultiumの次世代バッテリーにおけるブレークスルーについても触れた。具体的な話はなかったが、GMはコストを下げつつパフォーマンスを上げることを狙っているという。2020年代半ばにはエネルギー密度を倍増しバッテリーのコストを60%下げることが、同社の目標だ。そのために、SESとのパートナーシップが貢献することを期待しているという。

「EVの普及に必要なのは、低価格と航続距離です。この次世代のUltium化学技術により、エネルギー密度とコストが1世代に1度向上する時代が到来したと考えています。どちらの分野にも改良の余地があり、この分野で他社よりも早く革新を実現するつもりです」とルース氏は述べる。

GMがバッテリー開発の世界に参入するのはこれだけではない。同社は2010年に固体バッテリー企業のSakti 3に320万ドル(約3億5000万円)を投資しており、現在、米国に第2の大規模バッテリー工場を建設するための交渉を行っている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:GMバッテリー電気自動車

画像クレジット:General Motors

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。